『政策討論クロストーク』第3回は、選択的夫婦別姓の是非を2人の論者に徹底的に論じてもらった。
婚姻届を出す際に、妻と夫が、同じ姓を名乗るか、違う姓を名乗るかを選択できる「選択的夫婦別姓」は、90年代後半から法務省により導入が検討されてきた。しかし、与党自民党が「家族制度を破壊する」との理由から強く反対し、国会への提出は見送られてきた。
02年には、反対議員に配慮した「例外的夫婦別姓案」を提示し、原則は夫婦同姓とするが、例外的に夫婦別姓を認める案を提示したが、これもまた自民党法務部会で紛糾し、結局提出は見送りになった。
04年には、自民党の一部から「家裁許可制夫婦別姓案」という、家庭裁判所で許可を受けた場合に限り別姓を認める案も提案されたが、法案提出には至っていない。現在、高市早苗内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画担当)らが、姓を変えた配偶者が様々な場面で結婚前の姓を使用できる「通称使用」の法律化を提唱しているが、法案成立のめどはたっていない。先進国の中では、日本だけが夫婦別姓を法的に認めていない状態が続いている。
自ら夫婦別姓を実践してきた水島広子氏は、2人の子の母として「夫婦別姓が家族制度を破壊し、離婚を増加させるというのは誤解」と主張する。別姓を貫くために事実婚状態を続けていても強い絆で結ばれている夫婦は多いし、逆に法律婚をして同姓になっても、バラバラな夫婦は多いと水島氏は自民党の主張に代表される家族の絆問題を一蹴する。
一方、長谷川三千子氏は、「夫婦別姓」と「夫婦同氏」という東アジアの伝統的家族モデルの2つの類型を提示し、日本は「いっしょに暮らす夫婦や子をひとつの氏」でまとめる「夫婦同氏」システムを採用してきた社会であると解説し、この2つが混ざり合う選択的夫婦別姓案には問題があると主張する。また、混合があり得ないとすれば、どちらかを選ばなければならず、その場合は、日本には夫婦同氏の方が適していると説く。
また、賛成派の水島氏は、法改正にこだわる理由を、事実婚では子どもの親権を両親が共有できないなど、実質的に数々の不都合があることをあげる。また、反対派が主張する通称使用案が、日本の法体系にはなじまないことを指摘する。
それに対し長谷川氏は、個人的な不都合を法改正へ結びつけることへの疑問を呈し、「(水島氏のような)先駆者は意識が高く、家庭崩壊も心配はないだろうが、これをそのまま全国的に広げていいものだろうか」と反論する。
<政策討論クロストーク第3回『選択的夫婦別姓の是非を問う』の論点>
・なぜ、夫婦別姓に賛成なのか。反対なのか。
・なぜ選択制ではダメなのか。
・日常生活ではどのような不都合があるのか。それが選択的夫婦別姓導入の理由となり得るのか。
・通称使用ではなぜダメなのか。
・夫婦別姓は、家族関係に影響を与えるか。
・日本国民は、選択的夫婦別姓を選べる民度に達しているのか。別姓問題と民度は関係があるのか。
水島 広子みずしま ひろこ
(精神科医・前衆議院議員)
1968年東京都生まれ。92年慶応大学医学部卒、同大学院修了。医学博士。00年衆院初当選(民主党)。05年の総選挙で落選(当選2回)。現在、慶応大学医学部非常勤講師、アティテューディナル・ヒーリング・ジャパン代表。対人関係療法専門クリニック院長。著書に『国会議員を精神分析する』など。専門は思春期前後の問題や家族の病理、漢方医学。
長谷川 三千子はせがわ みちこ
(埼玉大学教養学部教授)
1946年東京都生まれ。69年東京大学文学部哲学科卒、同大学院修了。75年、東京大学助手、埼玉大学講師、助教授を経て、87年より現職。著書に『民主主義とは何なのか』、『バベルの謎』など。専門は比較哲学。