2017年12月19日
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判例違反の疑いも顧みずに上告を棄却した最高裁決定は不当
藤井前美濃加茂市長の弁護団が強い抗議を表明

インタビューズ(2017年12月19日)

 最高裁の上告棄却により事実上有罪が確定し辞任に追い込まれた岐阜県美濃加茂市の藤井浩人前市長の弁護団が、12月19日、ビデオニュース・ドットコムのインタビューに応じ、明確な理由もないまま一審判決を覆し逆転有罪判決を下した高裁判決が判例違反に当たるとする弁護側の主張を、最高裁が一顧だにせずに上告を棄却したことへの強い幻滅と怒りを露わにした。

 「最高裁は上告趣意書を読んだ痕跡すら見られない。不当な判決だ」と主任弁護人の郷原信郎氏は語った。

 2013年6月2日、28歳の史上最年少で美濃加茂市長に当選した藤井氏は約1年後の2014年6月24日、業者から賄賂を受け取った収賄容疑で逮捕され一ヶ月にわたり勾留されたが、一貫して無実を訴えて裁判で争ってきた。この事件では金銭の授受を裏付ける明確な物証がなく、事業に有利な取り計らいを受ける見返りとして藤井氏に30万円を渡したとする名古屋市の業者の証言が事実上、唯一の証拠として争われていた。一審で名古屋地裁は2015年3月、贈賄側の業者の発言が信用できなないとして、藤井氏に無罪判決を言い渡していた。

 ところがこの判決を不服として検察が控訴した結果争われた二審では名古屋高裁が2016年11月28日、逆転有罪判決を言い渡していた。新たな証拠が出てきたわけではなかったが、贈賄側の業者の証言を改めて吟味した結果、高裁は証言が信用に足ると判断したというのが判決理由だった。

 藤井氏は即日上告したが、最高裁の第三小法廷は2017年12月13日までに藤井の上告を棄却する決定を下し、藤井の有罪が事実上確定していた。最高裁の決定を受けて藤井氏は同日、公職選挙法第99条による失職を待たずに、辞任を表明した

 逮捕直後から一貫して藤井氏の弁護を引き受けてきた郷原信郎弁護士は、弁護側が上告趣意書の中であげた上告理由を一顧だにせず、理由も明示しないまま上告を棄却したことに対して、強い怒りを露わにした。

 元東京高等裁判所の裁判官で上告審から藤井氏の弁護団に加わった原田圀男弁護士は、弁護側が上告趣意書の中で主張した「論理則・経験則違反」の原則を、最高裁が無視した決定を下したことを残念がった。最高裁自身が判例で、控訴審で一審判決が覆される場合、一審判決に「重大な事実誤認」があり、これを破棄しなければ「著しく正義に反する」ことが条件とされている。また、最高裁は判決が覆った事に対し、一審判決の判断が「論理則・経験則に照らし不合理といえるかどうか」の観点から審査すべきであるとされているが、上告棄却を通達する文書には、なぜ一審判決が論理則・経験則上不合理と考えられるのかについての説明は皆無だった。

 今回、最高裁が名古屋地裁の一審判決に「重大な事実誤認」があり、それが「論理則・経験則に照らし不合理といえるかどうか」について明確な判断をしないまま上告を棄却したことは、将来に大きな禍根を残すことになると原田氏は指摘した。

 同じく上告審から弁護団に加わった喜田村洋一弁護士は、名古屋地裁が被告や数々の証人の証言を直接聞いた上で認定した事実を、新しい証拠もないまま被告人の言い分を一切聞かずに高裁が逆転有罪判決を下したことが、近代裁判の直接主義、口頭主義の大原則に著しく反すると語った。

 最高裁による美濃加茂市長の上告棄却にはどんな問題があったのか。多くの無罪判決を書いたことで知られる著名な元裁判官の原田氏と、ロス疑惑事件や薬害エイズ事件で被告の無罪を勝ち取ったベテラン刑事弁護士の喜田村氏、元検事で特捜部経験もある郷原氏ら藤井氏の弁護団に、最高裁決定の問題点をジャーナリストの神保哲生が聞いた。

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