ニュース・コメンタリー
キム・ヒョンヒ氏訪日をめぐるもう一つの疑問
ニュース・コメンタリー (2010年07月24日)
キム・ヒョンヒ氏訪日をめぐるもう一つの疑問
 元北朝鮮の工作員キム・ヒョンヒ氏の来日をめぐり、その厚遇ぶりが一部で物議を醸しているが、より重要な疑問がもう一つある。それは、偽造した日本のパスポートで大韓航空機に搭乗しこれを爆破したキム氏は、明らかに日本の法律を犯しているにもかかわらず、今回の訪日中に日本の警察がキム氏に対して捜査を行った形跡が見あたらないことだ。これをわれわれはどう理解すべきか。Nコメで議論した。
 キム氏の来日については、日本の入管法が、1年以上の懲役や禁錮の刑が確定した外国人は入国できないと定められているため、本来であれば日本入国はできない人物だが、その一方で、その規定には特例措置が設けられている。千葉景子法相が記者会見の場で、今回はその特例措置を適用したと明言している以上、その政治判断の是非は当然議論や批判の対象となり得るが、少なくとも法律上の問題は見あたらない。
 しかし、キム氏が大韓航空機爆破の際、偽造した蜂谷真由美名義の日本のパスポートを使用して同機に搭乗していたことから、氏が日本の旅券法もしくは偽造文書行使罪などの容疑者であることは明らかだ。また、その後キム氏が国外に在住していることから、時効の適用もない。
 それを警察が逮捕も事情聴取もしなかったとすれば、警察自身が自ら政治判断を下して警察権の行使を控えたか、あるいは政府が警察の捜査に政治介入しかたの、いずれかしか考えにくい。もし、警察が嫌疑不十分など何らかの合理的な理由で、本件は捜査に値しないと判断したのであれば、そのような説明がないのも不自然だ。
 報道などでは、警察は韓国の意向を受けて事情聴取を見送ったとされているが、23日の記者会見でビデオニュース・ドットコムからこの問題について質問を受けた中井洽国家公安委員長は、「事情聴取をしているとか、していないとか一切言えない」と述べ、この問題での警察の立場を明らかにすることを全面的に拒否している。しかも中井氏は、「一方的に非難するのもおかしい。事情聴取をしていないという証拠があるんですか。」とまで語り、一切説明する必要はないとの立場を明確にしている。
 キム氏が入国して以来、重大なテロ事件を過去に起こした人物を入国させたことやその厚遇ぶりへの批判は聞こえてくるが、政治判断によって明らかに通常なら行われるべき警察活動が行われていないことを疑問視する声は聞こえてこない。
 今週のニュース・コメンタリーでは、キム氏来日に際して警察が逮捕をしなかったことの持つ法手続上の問題やそれについて政府から明確な説明が未だなされていないことについて、神保哲生と宮台真司が議論した。
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