日本が再生可能エネルギーを推進すべきこれだけの理由
マル激トーク・オン・ディマンド 第372回(2008年05月17日)
日本が再生可能エネルギーを推進すべきこれだけの理由
ゲスト:飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)
 7月の洞爺湖サミットを前に、来月発表される「福田ビジョン」では、2050年までに温室効果ガスの60〜80%の削減という思い切った目標を日本として打ち出すことが報じられている。しかし、その実現可能性については大いに疑問が残る。なぜならば、エネルギー政策の抜本的な転換を抜きに、80%ものCO2を削減することは難しいと考えられているにもかかわらず、日本は世界の先進国の中でも、エネルギー政策の転換が大きく遅れを取り始めているからだ。
 現在、欧米では温室効果ガス削減の根本的な解決策として、再生可能エネルギーが注目され、各国ともその開発や普及に本格的に力を入れ始めている。中でもドイツの伸びが突出しており、2030年までにエネルギーの45%を再生可能エネルギーで賄う目標をたてているほどだ。地球温暖化問題には後ろ向きと批判されることの多い米国でさえ、2020年に15%という目標をたてているが、日本は2014年までに使用電力の何と1.63%を再生可能エネルギーで賄うことを義務化しているに過ぎない。明らかに桁が違うのだ。
 「世界から見れば、日本の数値目標はジョークにしか思えない」と再生可能エネルギーの普及に尽力してきた環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏は苦笑し、世界の趨勢から取り残されつつある日本の状況を嘆く。
 再生可能エネルギーとは、風力、太陽光、太陽熱、地熱、バイオマス、水力、波力など、何度も資源が再生するエネルギーのことを指す。石油や石炭などのように枯渇することもなく、地域的に偏在がないため、地政学上のリスクがない。化石由来燃料とは違い、温室効果ガスがほとんど出ないため、温暖化防止対策としても最も好ましいエネルギー源なのだ。
 日本のようにエネルギー資源をほぼ100%輸入に頼らざるを得ない資源小国にとって、再生可能エネルギーは21世紀の夢のエネルギー源と言っていいだろう。
 しかし、その日本が、既存の化石燃料や問題の多い原子力から再生可能エネルギーへの転換が図れずに、世界の趨勢から取り残されつつある。再生可能エネルギーの中で最も普及している風力発電で日本は、ここ数年の間に中国やインドにも抜かれて、現在、世界13位にまで落ちている。2004年まで発電量では世界一を誇っていた太陽光発電でも、累積導入量を2005年にドイツに抜かれて以来、差は開く一方だ。
 90年代にスウェーデンやデンマーク、ドイツが再生可能エネルギーを政策的に優遇することで普及を一気に増やしたのを横目に、日本はもっぱら原子力偏重のエネルギー政策を進め、再生可能エネルギーを軽視してきた。軽視どころか、むしろ次々と補助金を打ち切るなどして、市場を縮小させるような政策をとってきたのが実情だ。
 飯田氏は、ドイツやスペインの成功例から、再生可能エネルギーを普及させるために何が必要かは十分わかっており、あとはそれを実行する政治的な意思があるかどうかだけが問われていると指摘する。しかし、新しいエネルギーの台頭は、既存のエネルギー産業、とりわけ電力会社の権益と真っ向から衝突するため、経済産業省も政治も、電力会社の政治力の前で、わかりきった施策を実行に移すことができないでいると言うのだ。
 再生可能エネルギー普及の遅れは、他の面にも悪影響を及ぼし始めている。かつて、世界の太陽光発電機器のシェアではシャープを筆頭に日本企業が上位を独占してきたが、ここにきてシャープはついにドイツのメーカーQセルにトップの地位を奪われてしまった。現在世界3位にある中国の太陽光発電専門メーカーのサンテックは、ナスダックに上場し、猛烈な勢いでそのシェアを伸ばしている。
 ドイツは、再生可能エネルギー関連産業を「21世紀の自動車産業」とまで位置づけ支援し、17万人の雇用創出をし、2兆5000億円の経済効果を発生させている。産業政策的にも、再生可能エネルギーの可能性に目をつぶり続けることはできない状況となっているが、この期に及んでも、日本は舵を取ろうとしないのはなぜか。
 今週は、イラク戦争、原油高と、これほどまでに化石燃料依存のリスクが顕在化し、欧米諸国や中国インドなどの新興国まで再生可能エネルギーを一気に伸ばす中、本来であれば真っ先にそれを推進していなければならないはずの資源小国日本は、なぜいまだに二の足を踏み続けているのか、またその結果がどのようなリスクを生んでいるのかなどを、日々この問題と格闘している飯田氏とともに考えた。
飯田 哲也いいだ てつなり
(環境エネルギー政策研究所所長)
1959年山口県生まれ。83年京都大学工学部原子核工学科卒業。同年神戸製鋼入社。電力中央研究所勤務を経て96年東京大学大学院先端科学技術センター博士課程単位取得満期退学。00年NPO法人環境エネルギー政策研究所を設立し、所長に就任。92〜06年日本総合研究所主任研究員を兼務。90〜92年スウェーデンルンド大学環境エネルギーシステム研究所客員研究員。著書に「北欧のエネルギーデモクラシー」、編著「自然エネルギー市場 新しいエネルギー社会のすがた」など。
この記事へのコメント

 自然再生可能エネルギー利用の、日本の現状と問題が、具体的によく判りました。
 本当に”政治中枢の化石化””私利私欲(グループ)の利権保持構造”は酷いですね。早く打破しないと。
 この話は、本なり雑誌なりでベストセラーになれると思います。インパクトが大きいので、是非、広めたいですね。

tanouejkrs | 2008年07月21日 16:55

再生可能エネルギーの現状から政策形成の裏話まで、幅広い話が聞けてとても面白かった。
エネルギー関連では最近急に話題となっているメタンハイドレートの話も出来れば今後取り上げて欲しい。

一言 | 2008年06月02日 15:50

http://www.meti.go.jp/press/20080523001/20080523001.pdf

を見ると、先に紹介した例に限らず日本の電力会社達は海外で多くの再生可能エネルギー発電事業(CDM)をやっています。水力、風力の例が見られます。大体、内閣府懇談会の排出権取引議論は、「導入に関して検討を継続する」といった感じでお話になりません。日本こそ削減フロンティアなんだという認識を国民全体に知らしめる必要があると思われます。
 日本は原単位(効率)では世界的に優等生だということで、宮台氏は業界に対して一定の理解を示しておられますがそれは違んじゃないでしょうか?

horowitz | 2008年05月25日 23:29

http://www.meti.go.jp/press/20080523001/20080523001.pdf

によると東京電力はCDM(clean development mechanism、先進国から途上国への投資によるCO2削減開発事業。この排出削減効果に見合う排出権CERが得られる)で「中国新疆ウルムチ市におけるボジェダ40.5MW 風力発電プロジェクト」をやるらしい。もしも日本国内の電力営業のために排出権が必要なので中国に風力発電を作るという話なら、最初から日本に風力発電を作ってCO2を削減したらどうなんだろうか?日本はそのままにしておいて、海外で開発事業をやるというのが一番儲かるンですかね?

horowitz | 2008年05月25日 21:24

トミーさん、
特にあなたにというわけじゃないけど、書き込みが少なかったようなので・・・ダシに・・・失礼。
それにしても、うーん。
みなさん、賢そうなのに、わかっているのか、いないのか?
こっちがいくら心配してあげてもね、裏ではちゃんと自然再生可能エネルギーでどうやって儲けるかを考えてるんですよ、電力会社の奴らは。
馬鹿なことをしてるようで、実はそうじゃない。
時間稼ぎしてるだけ。
あんたが主役になられては困るんだよ、飯田さん。
それより、オレはいつか来る明日、電気を止められたときのことを考えている。
日本(の電力会社)の将来の心配よりもね。

不利未定夫 | 2008年05月24日 14:51

そうですよねwww
十把一絡げはよくないですよねwww
同じ認知症でも症状の進行度合はいろいろですしねwww

あああ | 2008年05月24日 14:44

>ああ
そうは思わないよ。京大理系が相変わらず威張っている姿が面白いだけ。また、宮台さんとの議論が面白いだけ。
十把一絡げに日本の権力エリートが馬鹿というのもどうですかね。ピンからキリまでいろいろだから、何ともいえないんですけど。

あ | 2008年05月24日 04:42

そうですよねw
馬鹿が馬鹿っていわれるのはおもしろいですよねw
馬鹿が支配する日本は落ちぶれるべくして落ちぶれてますよねw

ああ | 2008年05月24日 03:17

今回のゲスト、言葉の節々に「理工系至上主義」が感じられて面白かったw
京大に多いと思うけど、文系蔑視するのねw
宮台さんと組むと法学部や政治家・役人を小馬鹿にする論調になるんだねw

あ | 2008年05月24日 02:02

不利未定夫さん!
もしかして、僕のコメントへの返答ですか?
だったらどうもありがとございます。
ですね。心配ないといいですね。

でもやっぱり経済的な問題にならないと動きませんよね。赤木智弘さんの問題もそうですが、市場原理は嫌いなくせにわけのわからないところは市場原理ですよね。ご都合主義的市場原理です。(いま作りました。)
政治的ツケを市場原理(なるようになる!)で解決するのはほどほどにしてもらいたい。教育の問題何てどうやって解決するつもりなんだ。経済的に問題にならないと触れないのか。
 
触らぬ神に祟りなしなんでしょうが、挑戦してくる人間と逃げ惑って見ないでおこうとする人間なら、神が正義なら勇敢にも挑戦してくる人間を愛すると思います。たとえ同じ結果であっても。
コメント欄に勇ましいこと書いても情けないだけですが。

たぶんここでコメントされてる方たちは(僕を含めて)結構辛いことになってる人が多いと思いますので、みなさん頑張って下さい。余計な邪推しました!では(><)

トミー | 2008年05月24日 00:22

 「再生可能エネルギー」(RE)なるものの概念をはじめて知りました。何とはなしに”クリーン”というイメージは持っていましたが、明確な定義があったのですね。
 資源小国といわれる日本でも、このREならば安定的に入手でき、しかも、コストも受容可能であるという情報は、国民にとってとても重要だと思います。
 いま、原子力という、リスクもコストもきわめて高い発電方法に政界も経済界も固執して、REという合理的な選択になぜシフトできないでいるのか不思議でしたが、その舞台裏といいますか、霞ヶ関の政治力学を垣間見ることができ、これもたいへん勉強になりました。
 また、飯田哲也氏の軽妙な語り口もたいへんよかったですね。政局が動いた後、再度のご登場を期待いたします。
 末筆ですが、フリップを撮るときのカメラワークがたいへん落ち着いたものとなり、ストレスを感じなくなりました。おそらく、フリップの作り方や映し方に工夫をされたものと思います。ご対応に感謝します。

シュウ | 2008年05月23日 23:36

コスト上昇分は電気料金上乗せで経営上は成り立っているのだから、
今のままでも電力会社の未来は充分明るいと言うべきでしょう。
電気だけに・・・

EN | 2008年05月22日 11:54

自然再生可能エネルギーの未来は明るいと思う。
しかも、日本には水力、風力、太陽光、潮力などは豊富にあるのだから、エネルギー資源的には隣国に領土を盗られない限り全く心配ない。
問題はむしろ発電効率、調電、蓄電、送電、低コスト化などの技術革新だろう。
もっともっと飛躍的な革新が必要だ。
ドイツ方式の普及システムやビジネス・モデルの導入も必要だろうが、それは外国との競争の問題がないので、環境税も作った上で、ゆっくりと家庭とか小地域完結型でやって行けば良い。
まだまだ総体的にレベルが低い現時点で、やれ外国に後れを取るとか、だから日本はダメなのだとか、自虐オナる必要はないと思うが。
だいたいドイツもそんなに風力や太陽光発電で電力需要がまかなえるなら、現在の原油価格の高騰もまったく心配ないはずだ。
だけど、そうでもないんだろ?
石炭、石油、ウランなど化石燃料がどんどん高くなり、環境税創設でガソリンなども今以上に高くなれば、企業もおのずから自然再生可能エネルギーの利用に目が向くようになる。
心配ないよ。予定調和だ。
不安をあおっているのは誰だ?
投稿が少ないのは、関心が無いのではなく、そう考えている人が多いからじゃないのか?

不利未定夫 | 2008年05月22日 09:42

私は自転車通勤してるからわかるけど、風力発電は有望だよw
とくに北風は強いからね。一年の半分くらいは相当な強風が吹き荒れてるんじゃないか(徒歩・自動車・電車だとわからないけど)w
その風圧たるや、土砂降りの大雨より不愉快なんだなーw
ものすごいエネルギー量だよ、あれはw

風力発電 | 2008年05月22日 02:59

直接このテーマには関係ありませんが、この番組を見ていても思いますが
社会に適応するべきなのかすべきでないのか日本社会においてはよくわからない。
社会に適応することが良いことであるためには
社会がいいものではなくてはならないけど(バイみやだい、たぶん)
日本社会はいいものなのだろうか?よくわからない。
日本社会に適応すべきという人たちも本当は適応してなさそうだし。
それに、社会に適応するって言っても日本の場合その旗ふり役についていくのが日本社会に適応することのようだし。
なんか旗を振るのも旗についていくのも問題があるような気がしてくる。
かといって適応しないとまず生きていけない。でも疑問を持ちながら適応するのって日本社会じゃ相当スキルいるかなって思います。
この国は?なんなんだろうか。

優等生は堕落し、劣等生は何も思考せずに奴隷となる。
堕落も奴隷に甘んじることができないヤツは偉大な学者か芸術家はたまた犯罪者かニートかひきこもりかリストカッターそのあたり周辺。
いったいどこで間違ったんだろうか。
結局どうしようもないな〜。レレレー。
それにしても丸劇視聴者(コメントする人たち)は環境とか著作権とかあんまり興味ないんだな〜。レレレー

トミーリージョーン・ズ | 2008年05月21日 23:38

いつも楽しく拝見しています。

コメントを書いた前々回以降フリップボードに出典を明示していただくようになり、議論がより明確になった気がいたします。また、神保さんも口頭で資料や出典について補足していただきわかりやすくなりました。

ご配慮いただきありがとうございました。

k | 2008年05月21日 02:53

宮台先生の仰る「集権的な行政官僚が認知症に陥ってる」と言う事に関して、ウォルフレン・アムステルダム大教授が自著で書いていた事が私の頭の中で強く蘇ってきたので、チョッと引用してみたいと思います。

──────────────────
 ヨーロッパの民主主義国では、閣僚は省庁の長として部下の官僚のすることに責任がある。そのため、閣僚は官僚たちに、自分のしていることについて説得力のある完璧な説明ができるようにさせる。もし官僚が説明できなければ、スキャンダルに発展する。
(中略)
 日本の現状では、政治エリートのなかで最強の集団が、自分たちのしていることを誰にも説明する必要がないため、日本の国民にとって生死にかかわるような多くの問題が考慮すらされないという危険な結果が生じている。役人が自分たちのしていることの説明を求められなければ、自分の行動を十分に分析する能力が身につかず、したがって国の運命を左右するきわめて重大な問題を認識できないからである。
──────────────────
(新潮OH!文庫「人間を幸福にしない日本というシステム」より)

私自身を振り返れば非常に保守的な風土の中、子供の頃から「自分の感じてる事、考えてる事を他者に詳らかにしてはいけない」と父から教育されてきました。それよりは周囲の集団的意思を読み取り、それに合わせる事を強く求められてきました。自分の考えを述べるのは秩序への挑戦とされ勝ちでしたね。
長じて体力的に父を凌駕する様になってからは徐々に内面を発露できるようになって来ましたが、そうなる前の父の非論理性たるや目を覆わんばかりでしたっけ。日本の官僚は私の父より遥かに高学歴な人ばかりですが、人間的な方向性はそう違わない様に思いますね。

ぶっちゃけ田吾作、て事ですよ(苦笑)

デミトリー | 2008年05月20日 00:01

ヨーロッパでは電力会社から独立して送電会社があるというのが驚き。送電も電気に関することだから電力会社がやっていることに何の疑問も感じていなかったので(日本の電力会社のCMで、原子力のCMは眉唾物だと思ってたが、電線修理のCMは素直に見ていた)。
日本では不可能に思えることを夢想しても仕方ないが、電力会社から独立して送電会社ができたら、本当に電力は合理的に生み出されるようになるんでしょうね。風力も増えるでしょう。化石燃料とコストがほとんど変わらないといいますし。

まあ、そこまでいかなくとも、地方から突破口が見出せるかもしれないという話は現実味があるし、そんな小さな光明があるだけでも救いかな。

a | 2008年05月19日 00:30

地球温暖化の要素も考えなければいけないんじゃないかな?
もし、急速に地球温暖化が進めば、映画「デイ・アフター・トゥモロー」のように、一転して地球に氷河期が来ることになるかもしれない。
風力発電、太陽光発電は氷河期でも耐えられるのか?
まあ、そのときには地球の人口も数分の一にまで減少しているだろうから、どうでもいいけどね。

暗黒未来 | 2008年05月18日 18:26

釣りしないでね↓

YULA | 2008年05月18日 11:22

神保大将が日中雪解けムードとか仰ってましたが、何言ってるの? って感じです。自分も含めて絶対にそんなことはありません。中国=日本を含む全人類の平和と安全対する不倶戴天の敵! というイメージは完全に固ってます。事実そうですし。
福田政権の醜態から国民が得た教訓は「仮にどれだけ政治的能力が高くても媚中派だけは総理にしてはいけない。それなら逆に内政でどれだけ無能でも対中強硬派を選ばなくてはいけない」
これは国民の総意ですよ(笑)!!!

匿名 | 2008年05月18日 08:47

京都大学とかケンブリッジ大学の関係者には変わった人が多いですねw

それにしても | 2008年05月18日 07:22

軍事・エネルギー・食糧と三大安全保障が日本だけうまくいかず、世界に遅れをとっている理由がはっきりしてきました。
化石燃料に頼って動きが取れない化石頭の権力構造の実態を明らかにしてくれた優れた番組でした

すべて共通の問題があり、根っこは一緒みたいですね。
意外にも利口そうな政官業のお偉方が実は認知症だったとは!

だから解決は簡単、バカでもろい相手だから倒すのは「足すくい」が一番、正面攻撃でなく、絡めてから行く手ですよね。不意打ちで!

100%勇気 | 2008年05月18日 00:32
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