自動車産業が日本から消える日
マル激トーク・オン・ディマンド 第373回(2008年05月24日)
自動車産業が日本から消える日
ゲスト:土屋勉男氏(明治大学政治経済学部客員教授)
 2007年、トヨタ自動車が、自動車生産台数でGMを抜いて初めて世界のトップとなった。トヨタの08年3月期の営業利益は、過去最高を記録し、世界各地に積極的に拠点作りを進めた成果が実ったとされているが、その一方で、09年3月期の営業利益は3割減という厳しい予想を発表している。他の日本のメーカーも09年3月期の営業利益について、軒並み3割減から、5割減という厳しい見通しを出している。
 決算発表の席で、渡辺捷昭トヨタ自動車社長は「昨年後半から今年に入って潮目が変わった」と語り、日本の自動車産業を取り巻く環境に大きな変化が起きていることを示唆した。今回は、その大きな変化とはなにか。そして、一見我が世の春を謳歌しているかに見える日本の自動車産業の深層で何が起きているのかを、自動車産業に詳しい明治大学政治経済学部客員教授の土屋勉男氏を招いて議論をした。
 世界を席巻してきた日本の自動車産業は現在、ふたつの大きな問題に直面していると土屋氏は語る。ひとつが、2013年のポスト京都議定書をにらんだ環境対策であり、もうひとつが、インドや中国など新興国のメーカーとの競争だと言う。土屋氏は、この2つは、これまで日本の自動車メーカーが直面してきたものとはまったく質の異なる戦いを強いられていると指摘する。
 今まで、日本の自動車産業は、危機にいち早く対処することで、ピンチをチャンスに変えてきた。70年代、80年代は、石油ショックや米国の排ガス規制にいち早く対応し、燃費のいい小型車を他国のメーカーに先んじて投入することに成功した。90年代の円高には、徹底的な合理化と現地生産を進めることで乗り切った。00年代の地球温暖化対策に対しては、いち早くハイブリッド車の実用化を実現し、圧倒的な優位を保った。しかし、これまでのような、優良な技術を開発し、対応を素早く行うだけでは、これからの市場の変化には対応できないと土屋氏は憂う。既に欧州のメーカーはクリーンディーゼル車普及のために連合を作り、そこにホンダも一部加わった状態で、さながら「トヨタ包囲網」が形成されている。
 また、今後の市場については、これから需要が拡大する中国やインド、ブラジルなど新興国に、日本メーカーも焦点を移さざるを得なくなっている。しかし、新興国の市場は、欧米の市場とはまったく異質であり、日本のメーカーの苦戦が見込まれる。インドのメーカー・タタが発表した「ナノ」は、25万円台という低価格で、インド国内の中流層をターゲットにしているが、このような低価格のエントリーカーが今後世界標準になる可能性は高い。そうなったとき、日本のメーカーの、高い技術に裏打ちされた伝統的な高付加価値戦略が通用するのか。また、日本の自動車メーカーが果たして、低付加価値戦略に転じることができるのか。土屋氏は疑問を投げかける。
 一方、国内の市場に目をやると、若者の車離れやガソリン価格の高騰などから、日本では今年に入って3ヶ月連続で自動車の保有台数が減少し、自動車市場の縮小がいよいよ現実のものとなっている。今や、日本の主要メーカーの多くは、海外での生産台数が国内生産を上回っており、利益の多くを海外で得ている自動車メーカーが日本に本拠地を置き続けるメリットは失われつつある。
 しかし、20世紀の日本の経済発展を支えた日本の自動車産業が直面する挑戦は、「ものづくり」という21世紀の日本の国作りの柱となる理念にも、大きく影響する。ものづくりを失った日本は、この先何を糧として国を興していくのかも、考えなければならないだろう。
 今回は、一見絶好調のように見える日本の自動車産業の裏で起きている未曾有の変化について、議論した。
土屋 勉男つちや やすお
(明治大学政治経済学部客員教授)
1946年埼玉県生まれ。1972年 東京工業大学大学院理工学研究科修了。同年三菱総合研究所に入社。取締役本部長、常勤監査役、上席研究理事などを歴任し、07年に退社。同年より、現職。著書に「日本ものづくり優良企業の実力」、共著「世界自動車メーカー どこが一番強いのか?」など。
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(車の技術)|2008年06月01日 21:04
この記事へのコメント

 世界のトヨタ。そう、世界のトヨタなんだよ。雇用は外に落ちる。これで本社を外に置くと、税金も外に出る。
でも、その時は、政治との関係は弱くなりそうだな。キャノンさんも同じ。

 車に興味がなくなってる。実感だな。お金の問題が主な原因。もし、あれば乗るだろうし。。要は稼げる人間になんないと話になんないって事か。

 

きんさん | 2008年07月29日 02:53

 今まで日本のメシの種だった産業のかなりの部分が収益力を減じることが見えている状況で、これから日本はどうやって食っていくんだ?っていうテーマの典型例ですね。
 産業構造はどのみち変わるんだから、変化を前提にして自分がどうしたら稼げるかを考えるしかないよ。

匿名 | 2008年05月31日 12:18

グリーンピースの窃盗は知りませんでした。
正確には住居侵入罪と窃盗罪の併合材ですね(最高刑懲役15年)。

グリーンピースは国家機関ではなく、私人なので、違法に収集した証拠でも、原則として証拠として有効となり得るものだと思いました。

ただ、グリーンピースも思い切ったことをするなぁ。

キョロ | 2008年05月29日 12:12

「歴史から学べ」ってことだろうか。
時代を先取りして戦略的に適応していこうと。
そのためにも「歴史をな学べ」。

雇用を回復する上でも自動車産業だけじゃなくてその他の企業が活気づいたり新しく生まれたりしたらいいですね。
再配分って言っても配分するパイがないと意味ない。

タカラ | 2008年05月26日 17:38

 一番最初の投稿者「無記名」さんが「国内で車売れない売れないというけど、・・・第一車買えるわけないじゃん。給料低くて。今時いつかはクラウンとかいって車買う人いるわけないじゃん。終身雇用にするならそういう思考はでてくるんでしょ。」といっておられますが、私も強く同意します。この点に言及がなかったことは『マル劇トーク』としては物足りなかったですね。
 土屋先生と宮台先生は、国内販売・保有台数が減った原因として、?少子高齢化、?若年層の車に対する興味が減退(物に対する執着の減退)、?可処分所得・可処分時間のソフトへの移行、?車保有者に対する政策的圧力(税金)を挙げておられました。
 たしかにその通りではあるのでしょうが、さらに、5つ目として、非正規雇用者の増大という社会問題を挙げるべきでしょう。
 90年代前半から現在までの十数年間で、数百万人規模の若年・中年非正規雇用者が発生しました。これが車の購入台数の減少と無関係なわけがありません。
 非正規雇用者増大の主たる原因は、製造業の生産が海外移転をし続けたことです。そして、現在残っている国内生産拠点も非正規雇用者によって支えられています。
 国内販売・保有台数の減少は、このような経済構造の変化に原因がある以上、この構造を変えなければ食い止めることはできないでしょう。税金を下げるなどの政策的誘導で足りるとする見解もあるでしょうが、やはり弥縫策でしかないと思います。
 とはいえ、資源を大切にしなければならない時代に、本当に国内販売・保有台数を増やす必要があるのかも考えるべきです。軽自動車の販売台数は増えていることを考えると、各個人が必要最小限の装備の車で満足する時代になったのかもしれません。

シュウ(自動車製造工) | 2008年05月26日 14:45

ようするに、これから自動車業界も困るよ、どうしよう?という話でしょ。
それに、根本的な話になると、歯切れが悪いね。
まずね、燃料のことを考えると、何をどうしようと環境と自動車とは両立しないと思う。
日本ではようやく「もう自動車はいいよ」という時代に入った。
幸か不幸か、それはこれまでの政策の積み重ねが導いたものだ。 
結果として、都市に人口が集中して自家用車が持てなくなるのなら、環境面から考えれば、むしろその方が良いのでは?
インドや中国の市場のことは俺たちがあれこれ心配することじゃないね。
モノ作りが文化文化と言うけど、安い賃金でこき使われている労働者に何の関係があるの?
一般財源化するなら自動車関係税を半分にしろだって?
そういう筋が通るもんか!
宮台さんも、金持ちならそのぐらい負担しろよ。

不利未定夫 | 2008年05月26日 12:44

番組進行中、カラスの鳴き声が聞こえてきたり、救急車か消防車のサイレンが聞こえてくる気がするが、私の錯覚・幻聴だろうか?w
今回もカラスが元気よく鳴いてたけどww

あれ? | 2008年05月26日 05:07

付加価値の追求→高コスト体質→競争力の低下
エネルギーにも著作権にもVNの番組に見出される典型的図式の一つですね。
ただ、自動車の場合は解決は容易でしょう。日本のメーカーは、一旦アメリカが
コストパフォーマンス車を望むと、目の色変えて開発にかかるでしょうから。
問題は日本社会がこのままだと、日本人(日本の自動車メーカー)による
日本passingが起こるということでしょうか?既に起きてるけど。

EN | 2008年05月25日 12:29

今回は車に関係した税金の国際比較をされていましたが、わたしたち日本人が(なぜ、世界から裕福にみられていて)、(なぜ、その実 実感がないのか)いままでマスコミが覆い隠していた部分を宮台先生に、教育、医療、マイホーム、その他この国に生まれて死ぬまでを、国際比較してもらえれば、おもしろいと思います。

牛乳屋 | 2008年05月25日 04:48

町田さんってただの産業界の人というかんじ。
バイクで日本失敗したっていうけど結局原チャリ4ストエンジンに変えたのだってごく最近だし。壊れやすい2ストエンジン自分たちが回転させるために今まで作ってきたんでしょ。だから海外でという話にそりゃなるわね。
国内で車売れない売れないというけど
じゃあ軽自動車とか小型車従来どおりの規格で売ってるだけなんだし、それ以上の大型車なんて日本で乗る意味わかんないんですけど。邪魔なだけ。
第一車買えるわけないじゃん。給料低くて。
今時いつかはクラウンとかいって車買う人いるわけないじゃん。終身雇用にするならそういう思考はでてくるんでしょ。
都合のいいことばっかり言ってるね。

車の税金安くしたってみんな買わないと思う。だって軽だって税金あんなに安いのに全然買わなくなってるし

匿名 | 2008年05月25日 03:19
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