マル激トーク・オン・ディマンド
思いやり予算、そろそろやめませんか
マル激トーク・オン・ディマンド 第370回(2008年05月03日)
思いやり予算、そろそろやめませんか
ゲスト:田岡俊次氏(軍事ジャーナリスト)
 去る4月、国会が年金や日銀総裁の人選、ガソリンの暫定税率論議でにぎわう中、参議院で歴史的なできごとが起きていた。野党主導の参院が、憲政史上初めて、外国との条約を否決したのだ。
 4月25日、いわゆる思いやり予算として知られる在日米軍駐留経費の日本負担分を定めた新特別協定案を3年間延長する案が、参議院で否決された。日米協定は条約とみなされるため、憲法61条で外国との条約には衆院の優位が定められていることから、協定そのものは難なく延長されたが、民主党の支持率が自民党を上回り、政権交代が現実味を増す中、野党が思いやり予算を否決したことの意味は大きい。
 思いやり予算は、元々日米地位協定で日本側に負担義務の無いはずの米軍駐留費用の一部を日本が負担することになった際に、法的根拠を問われた当時の金丸信防衛庁長官が、苦し紛れに「知り合いがお金に困っているとき、思いやりの気持ちを持つのは自然でしょう」とはぐらかした結果、「思いやり予算」と呼ばれるようになったというものだ。
 日米地位協定では米軍が基地に使用する土地や施設の提供及びその補償費用以外は、全て米政府が負担することが明記されている。しかし、1970年代に入り、ドルショック以降の急激な円高やベトナム戦争の泥沼で経済的に疲弊した米国側から、基地で働く日本人職員の手当の杜撰さが批判されるようになった。基地従業員の労働組合との板挟みになった日本政府が1978年、年間62億円の日本人従業員の労務費の手当部分を負担することになったのが、事の始まりだった。
 しかし、それが「蟻の一穴」(田岡氏)となり、その金額はその後ウナギ登りに増えていく。この4月の新協定延長を受けて、今年度日本側が負担する思いやり予算は2083億円にのぼる。その範囲は、当初の日本人従業員の手当部分を遙かに超え、今や全従業員の給与と手当の全額の他、光熱費や住居、娯楽施設の整備費などが全て含まれている。今国会でも、なぜ日本国民の税金で、米軍人や軍属のためのネイリストやゴルフ場のキャディーの給与まで払う必要性があるのかが、野党議員から追求されている。
 軍事ジャーナリストの田岡俊次氏は、「思いやり」という法的な根拠もない理由で、支払う義務がないものを払い始めたことが、そもそも間違いの始まりだったと指摘する。そうでなくとも日本人にとっては不公正きわまりないと批判されることの多い日米地位協定にさえ負担義務が課せられていないコストまで、「思いやり」などいう意味不明の理由で負担をしてしまったために、その後米側から増額要求を突きつけられたときに、日本政府はそれを拒絶する根拠を失ってしまった。法的根拠などなくとも気前よく費用負担をしてくれる日本に対する米側の要求がエスカレートしないはずがない。
 田岡氏によると、在日米軍の駐留に関する日本の負担分は、実際には思いやり予算よりも遙かに多く、政府が無償で提供している基地の地代なども含めると、既に年間6000億円を越えているという。ドイツや韓国などにも米軍は駐留しているが、日本の負担額は桁違いに大きい。
 田岡氏はまた、思いやり予算が漫然と支払われてきた背景にある、「在日米軍は日本を守ってくれているのだから」という認識に、大きな事実誤認があると指摘する。在日米軍の戦力をつぶさにみれば、日本を防衛する目的にかなった装備や編成にはなっていないことは一目瞭然であり、むしろ実態としては、在日米軍を自衛隊が守るような状態になっていることがわかる。97年の日米防衛協力のための指針でも、日本の本土防衛の「プライマリー・リスポンシビリティー」(一義的責任)は自衛隊にあることが明記されているように、日本が在日米軍の駐留を必要としているとの認識は、「冷戦体制下でできあがったある種の思考停止状態」に他ならないと、田岡氏は嘆く。
 また、台頭する中国や暴発の危険をはらんだ北朝鮮の脅威に対応するためには在日米軍が必要との主張に対しても、実態を見れば、朝鮮半島から徐々に米軍は引き上げており、米国が、中国や北朝鮮、ロシアなどをもはや重大な脅威とはみなしていない事は明らかだ。むしろ、日本が気前よく思いやり予算などを払ってくれるので、米国は経費削減目的で軍隊を日本に駐留をさせているのが実態なのだと、田岡氏は怒る。
 しかし、今回野党が思いやり予算を否決したことで、もし野党が政権の座についたときに、思いやり予算問題、ひいては在日米軍問題にどう対応するかも、大きな争点になる可能性が出てきた。思いやり予算問題への対応が、日本が日米同盟のあり方に対する思考停止から抜け出すための、一つのきっかけとなるかもれない。
 今回は、思いやり予算の経緯と中身を検証し、そこから透けて見える現在の日米同盟が抱える矛盾や今後の日本の戦略を、日本屈指の防衛専門家の田岡氏と、じっくり議論した。
田岡 俊次たおか しゅんじ
(軍事ジャーナリスト)
1941年京都府生まれ。1964年早稲田大学政経学部卒業。同年朝日新聞入社。社会部防衛庁担当、編集委員、「AERA」副編集長などを経て、04年よりフリーに。99年より筑波大学客員教授を兼任。74〜75年米国ジョージタウン大学戦略国際問題研究所主任研究員兼同大学外交学部講師。86〜87年ストックホルム国際平和研究所客員研究員。著書に「日本を囲む軍事力の構図」、 「北朝鮮・中国はどれだけ恐いか」など。
トラックバック
 ご存じ田岡元帥を迎えて行なわれた<マル激トーク・オン・ディマンド第370回(2008年05月03日)思いやり予算、そろそろやめませんか>を見ての感想を... [政治] 日米安保条・・・
(日録(不定期))|2008年05月04日 01:04
"元帥"こと田岡俊次氏が、何やらまたヤラかしちゃった模様。テーマは在日米軍への思いやり予算の批判で、それ自体は以前から田岡氏の持論だし何時も通りだなぁ、と... 田岡元帥、在日米軍航・・・
(週刊オブイェクト)|2008年05月19日 22:11
前回の記事※の補足になります。コメント欄を読むまで自分もはっきりとは気付いていなかった事を纏めて見ました。 いちぎ-てき 0 【一義的】 >意味が一種類... 「一義的」「第一義的・・・
(週刊オブイェクト)|2008年05月19日 22:13
この記事へのコメント

田岡御大が言うほどに自衛隊が強いんだったら、ちょっと頑張って特ア反日カルト三国をフルボッコにして、向こう300年くらい日本に逆らえないようにしちゃえばいいのに・・・と思う世界の平和と繁栄を心から願う日本人は自分だけでしょうか?

通りすがり | 2008年05月12日 10:06

宮台さんの重武装中立論はシャレとして、(エッ、そうじゃない?困ったな)重武装したら、何もわざわざ、かたくなに中立でいる必要はないと思います。
田岡さん、日本が既に重武装しているというのなら、いつでも周辺諸国と戦争できる状態にあると言うことですか?
頼もしいですね。

ええかげん | 2008年05月11日 20:43

重武装化というのは高度な武器を所有しているということだけでなく運用面等含めた安全保障戦略の意味と思います

s | 2008年05月10日 21:01

宮台先生の持論「脱アメリカのための重武装化」は田岡さんの話で見直されるのでしょうか?

田岡さんは日本の自衛隊は既に重武装化しているとの見解でした。これ以上の重武装化(ミサイル防衛)は効果がない。アメリカの駐留軍は日本を守る体制にない。中国は国境の延長距離からすると軍事費はまだ足らない状況にあり軍備についてはまだ遅れている。北朝鮮は核を持っているにしても核ミサイル攻撃を仕掛けるほどの力は持っていない。たとえ中国・北朝鮮が核攻撃力を持っていたとしても現在計画されているミサイル防衛では一斉に多数の弾頭が飛んでくるのを防ぐことは出来ない。等々要するに重武装化論の見直しを迫られるものばかりでした。

もしかしたら宮台先生の持論は対米従属の甘い罠にかかって抜け出せない官民に対する警告を含めた方便で、本気でそうしようと言うのとは違ったのかもしれませんね?
むしろこれを機会に方便であったと認めていただきたいものです。

100%勇気 | 2008年05月10日 16:37

非常に面白かった。
抽象的になりがちな安全保障問題をここまで具体的に解説できるのは田岡さんをおいていないのではないかと思わせる内容だった。
後半の内容についても、安全保障問題の延長としての国家論ということで、興味深い内容であったと思う。
ただ、米軍が抑止効を有しないならば、単純に出て行ってもらえばいいのか、それは可能かという点について、もっと詳しく話をうかがいたかった。
あと、技術的な話であるが、ゲストは冒頭ですぐ紹介した方が良いような気がした。
田岡さんのように、今週のニュースにもちょっとコメントしたいと思うゲストはいるはずであり、それならばコメントして頂いても全く支障は無いと思うからだ。

一言 | 2008年05月10日 06:20

いろいろな問題点が提起されていて面白かった。
最後のほうでは、田岡氏が「すでに国家の存在の根拠(内在論理)が崩れてきている」という見方を示したのに対し、宮台先生が「国家は新たな内在論理を作り出してゆくのではないか」という意味のことを言っていたように理解するが、まあそれは、結局、国家が無ければ存在しえない「官僚」と「軍人」がそれを作り出し、(無知蒙昧な)「国民」がなんとなくそれについていっちゃう、ということになるのだろうか。

風塵 | 2008年05月09日 22:26

宮台先生、誰かに似てるなあ、と思っていたら、最近先生のダイエットが奏功されたのか、はっと思い当たりましたよ!新撰組にでてた俳優さんに似てますね。

ていうか、湾岸戦争の頃に大活躍してた平野、日刊現代のなんとかいう人、そしてこの人。あの頃の報道はもっと、執拗に検証されるべきだと思います。木を見て森を見ないような口舌の徒は所詮、寸足らずの知恵者なんだなあ、という感をますます強くしました。何年経っても。
寸足らずの知恵者に何かを仰ぐというのは、ハルバースタムの著作をひくまでもなく悪徳の一種ではないかとさえも思えるくらいです。

短い記憶に長い舌、という風に記憶しております。なので、全く信用できませんね。

オッサン | 2008年05月09日 01:51

結局、軍事力というのは「ヤクザとのコネ」みたいなものでしょうか。

使い始めたらお互い損する図式ですね。

総合すると、日本はとにかく「核保有」をチラつかせて、アメリカ、中国から実質的利益を得るのがいいと思います。国会議員には与野党協議でそのくらいの芝居をしてもらいましょう。

話は変わりますが、日本政府は日本の食の安全保障をどうするのか。ぜひ近いうちにとりあげてください。やっぱり今のうちにみんなで知恵ださないと。

マル激ガンバレ! | 2008年05月06日 23:54

ワーキングプアや子供にもっと「思いやり」をください

GEN | 2008年05月06日 21:12

原子力空母の乗組員は安全だが、寄港地の横須賀は危ないのだ。
原子力空母の行くところが戦闘地域なのだから。
デモに行く人間は安全なのだ。
なぜか知らないけど。

hen | 2008年05月06日 06:33

つまり、横須賀に原子力空母は要らないと言うことですよね。税金使って、あんな危険極まりないものを常駐させるとは正気の沙汰とは思えません。

マサガタ | 2008年05月05日 22:16

今回はお茶なんですね。(たぶん)

勤務中の脱水症状の予防〜効率的な供給手段としてのマグカップ・その妥当性及び周辺諸問題を巡る議論〜 | 2008年05月04日 21:08

日本政府の無駄遣いと無能さがよくわかりました。暢気な日本人に日米安保の実態を教えてくれる優良な情報でした。
だた、日米共同で開発している次世代ミサイル防衛システムの予算についても論じて欲しかった。米軍の開発費負担を軽減するために日本が出している開発費負担も米軍を思いやる予算とみなすことができるのではないでしょうか?
もっと徹底して防衛問題と防衛費にかかる無駄を明らかにしていただきたいです。

五三桐 | 2008年05月04日 19:35

見たいものを見たいようにしか見ない、という結論だったとすると。
ゆとり教育批判世代の非ゆとり教育の弊害とも言えるのか?憂鬱ですね。

EN | 2008年05月04日 15:25

問題提起としては面白かったね。
しかし、平時の在日米軍の戦闘能力が高いとか低いとかいうより、そこに直ぐに使える基地があること自体が大事なのでは。
軍隊の実力だって分からないほど良いのだということが分からない人がいるから笑える。
まあ、そろそろ思いやり予算もやめ時ではあるな。 

戦死人 | 2008年05月04日 15:19

田岡さん…w

光一 | 2008年05月04日 12:30

「からすればちんけな議論」「北朝鮮みたいな」「中国みたいな」「暴論」「全く訳がわかりません」..........「無記名」さんの文章そのものwww

いやいや | 2008年05月04日 06:02

「無記名」さんの論理が意味不明というか破綻してるだけw
ただのノイズにすぎませんw

いや | 2008年05月04日 05:57

>無記名 | 2008年05月03日 21:28

日本全国大爆笑wwwwwww
日本語もできないアホがマル激を視聴wwwwwww
バカ丸出し恥ずかしすぎwwwwwww
池沼かわいちょwwwwwww

あ | 2008年05月04日 05:53

もしやストックホルム症候群でわ?

無記名 | 2008年05月03日 23:48

前回のM&Aの議論ではグローバリズムを利用して云々と言いながら今回の回ではグローバリズムは限界がある、みたいな議論を展開している宮台先生の議論の限界、というより方便はなんですか?資本主義がアナキズムであるということを認めるなら前回のM&Aではグローバリズムの弊害を容認できなくなるはずなのに何故か容認して今回の議論では
「もともとそうです」みたいな話をしながら各国の相互依存関係は「いやそうならないでしょう」みたいに言う。
今回の議論で宮台さんが主張しているケツなめ外交からの脱却論も核武装論からすればちんけな議論であることが証明されましたが、核武装論を容認してしまえばいよいよ日本が北朝鮮みたいな国になってくる、中国みたいな国になる、ということは無視している。
暴論を言えば勢いがあるように見える日本のケツ舐め外交そのものみたいで笑えました。
抑止論の限界は無視してひたすらアメリカのケツ舐めがどうのこうのいう宮台先生は全く訳がわかりません。
宮台先生が「コミットメント」している政党の議論そのものを見ているようでした。

無記名 | 2008年05月03日 21:28
ご利用方法・ご入会
メルマガ登録
E-mail:
登録 解除 
最新情報 一覧
ビデオニュース・オン・ディマンド 一覧
無料放送回 一覧
マル激トーク・オン・ディマンド 一覧
政策討論クロストーク 一覧
永田町コンフィデンシャル 一覧
スペシャルリポート 一覧
プレスクラブ 一覧
地球報告 一覧


Web videonews.com

本サイト内の映像の視聴には、動画ソフト「ウィンドウズ・メディアプレーヤー」が必要です。
無料でダウンロード >>> Windows Media Player を入手する