マル激トーク・オン・ディマンド 第377回(2008年06月21日)
日本の「ガラパゴス」携帯の持つ可能性と課題
ゲスト:谷脇康彦氏(総務省総合通信基盤局事業政策課長)
日本でもいよいよiPhoneが発売される。昨年6月から米国で先行発売され、すでに100万台を売り上げる人気を博しているiPhoneだが、規格の違いから、日本では発売されていなかった。このほど7月11日にソフトバンクから発売されることが正式に決まったが、これはiPhoneが現在日本で普及している3Gという携帯電話の規格を採用したことで初めて可能になったものだ。日本の携帯市場は、昨年末で契約数1億台を突破するほど世界有数の市場だが、世界の趨勢とは異なる規格を使っている上、機能面でも独自の進化を遂げており、「ガラパゴス」と揶揄されるほど、世界でもかなり特異な市場となっている。
日本の「ガラパゴス」状態の証左と名指しされるのが、端末メーカーのシェアだ。ノキア、モトローラ、サムスン電子など世界市場で上位に入る端末メーカーの携帯が、なぜか日本ではほとんど普及していない一方、日本では幅をきかせている日本の端末メーカーが、国外ではまったくシェアをとれていない。日本では25%のシェア占めるシャープや、パナソニック、富士通などの国産メーカーは世界市場では、合わせても10%以下のシェアを占めるに過ぎない。
また、機能面でも日本の携帯電話はかなり特殊だ。世界の多くの国々で携帯電話は単なる通話ツールとして普及しているのに対し、日本ではメールやデータ通信に使用される比重がかなり大きい。それが多機能高性能の端末を次々と生み出し、データ通信に適した第3世代の規格が世界に先駆けて普及した背景でもあるが、それが逆に日本の携帯料金の高さの原因となっている。
実際、日本の携帯電話料金は他国と比べてとても割高だ。もともと通話料金が高い上に、高価な高性能端末を安く販売する代わりに、毎月の通話料金でこれを回収することを可能にする販売奨励金分が上乗せされているからだ。日本では極端な場合端末は無料で購入できるが、これはキャリアから販売店に販売奨励金が支払われているためだ。この奨励金のために、販売店は本来の端末原価より安い価格で販売でき、キャリアは月々の通話料でそれを回収する仕組みになっている。販売奨励金のおかげで実際は高価な高性能端末が売りやすくなっている反面、ユーザーは高い通話料金を払わされることになる。同じ端末を長く使う人ほど、また通話の多い人ほど、損をする仕組みでもあり、不公正との指摘も根強い。
こうした日本独自の「携帯文化」が、海外のメーカーが日本でシェアを伸ばせない原因であると同時に、日本のメーカーが日本で培った技術を世界で活かせない理由にもなっている。しかし、総務省でモバイルビジネスの振興の旗振り役を努めてきた谷脇康彦氏は、日本のこの特殊な携帯文化こそ、これから日本にとっては大きなチャンスになると語る。高速でネットにアクセスできる3G携帯がこれほど普及している国は他にはなく、海外の企業は日本で成功することが、明日の世界の携帯電話ビジネスの成功を約束すると見て、日本進出の機会をうかがっていると指摘する。見方によっては、日本が世界から取り残されているのではなく、世界の一歩先をいっているというのが、谷脇氏の見立てだ。
しかし、日本がその技術的な優位性を確たるものにするためには、一層の規制緩和と競争が不可欠であると谷脇氏は指摘する。谷脇氏も参加する総務省の研究会「モバイルビジネス研究会」(通称モバ研)は、販売報奨金の見直しや各キャリアがユーザーの囲い込みのために行っているSIMロックの解除、MVNO(ネットワークを持たないサービス業者)の新規参入の促進などの提言を行っている。
日本の携帯電話市場は、キャリアの力が圧倒的に強く、キャリアを中心とした垂直統合型の関係の中に、端末メーカーや代理店、コンテンツ・アプリケーション業者などが極めて閉鎖的な関係を築いている。また、コンテンツ面でも日本ではキャリアによる囲い込みが当たり前のように行われ、キャリアに認定されない限りは、公式サイトからはたどり着けなくなっている。通常のサイトが「勝手サイト」などと呼ばれていることも見ても、キャリア主導であることは明らかだ。谷脇氏は、規制緩和によって、このキャリア主導の体制を、よりユーザー主導の体制に変えていくことが日本の携帯市場が世界に通用するための条件となると説く。
課金や認証システムをキャリアから切り離せば、MVNOの参入は進み、新しいビジネスが登場する可能性も高い。現に、公式サイトを上回る水準で、勝手サイトは伸びており、利用者側には新たなコンテンツやサービスを求めるニーズは高まっている。谷脇氏は、いずれは携帯電話市場も、インターネットの有線接続サービスのように、利用者が端末からネット接続サービス、コンテンツに至るまで自由に選択でき、参入が容易な水平分業型ビジネスを目指していくべきであり、将来は有線も、携帯の垣根を越えて、大きなネットワーク上であらゆる端末がつながった状態が作り出されていくだろうと、携帯電話の未来図を描く。
今回は、iPhoneの日本上陸の意味と、日本の携帯電話市場が世界の流れとどのように乖離しているのか、またそれは私たち消費者にとっては何を意味するのか、そして、未来の携帯電話はどのように進化していくのかなどを、総務省の携帯電話行政のキーマンと議論をした。
谷脇 康彦たにわき やすひこ
(総務省総合通信基盤局事業政策課長)
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1960年愛媛県生まれ。84年一橋大学経済学部卒業。同年郵政省入省。郵政大臣秘書官、電気通信局事業政策課調査官、在米日本国大使館IT政策担当参事官、総合通信基盤局料金サービス課長などを経て07年より現職。著書には『インターネットは誰のものか』、『世界一不思議な日本のケータイ』ほか。 |
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この記事へのコメント
分り易い説明でした。でも、何か物足りなさを感じます。
モバイル研究会の動きも気になりますが、行政がそこまでデザインを描かないといけない事なのかな。素朴に疑問を感じます。
きんさん |
2008年07月15日 22:17
ゲストの受け答えが「官僚的」との批判があります。
ですが、私には、この方が官僚的な答弁をしているときに、アイロニーが透けて見えておもしろいです。
学者さんやNGOの方もいいですが、時には実務に携わる官僚さんも良いですね。
246 |
2008年07月11日 09:03
同じ意見の方もいましたが、テーマを考えるとゲストの人選を間違えたのでは?と思います。
現在の日本の携帯業界の特殊性はもっと根の深い問題ですし、現キャリアの功罪はかなり大きいです。しかし、役人の方にはそれを公の場で論ずることはできないでしょう。
途中宮台さんが発した「端末メーカーが何故現状に甘んじているのか?」って質問も、完全な官僚答弁ではぐらかしてましたし。。
また、テーマの1つでもある「iPhone」についても、現段階では本当に何も決まっていないので、「予測」をするしかないですが、「予測」や「予想」は、立場上役人は公の場で語らないでしょう。
神保さんがいればもっと突っ込んだ質問をしてくれたかもしれませんが、どのみちこのゲストの方は何も答えないでしょうし。。
個人的には、このタイミングで扱う話であれば、お役所的な行政指導の話ではなく、ビジネスの生の現場が「iPhone」襲来で今後どう変わっていくのか??その辺りをズバズバ予測してくれる人をゲストに呼んで論じて欲しかったです。
よねお |
2008年07月06日 23:55
東南アジアの首長族(くびながぞく)でも携帯電話を持ってる時代だから、最近のガラパゴスでは(人間はもちろん)動物にも携帯が搭載されてるだろう。というわけで、日本の携帯文化を「ガラパゴス」状態と揶揄することはガラパゴスに対して失礼なんじゃないか?w むしろ、ガラパゴス住人の方がより進化した携帯電話(欧米や韓国の携帯電話)を利用してるんじゃないか?www
www |
2008年06月30日 03:25
地味だけど、とても内容の濃い番組だったと思う。地上波にはこれは無理だろう。
一言 |
2008年06月29日 17:10
イギリス留学中、イラン人留学生の友達がシムカードを入れ替えるだけでいろんな端末使えるのを教えてくれ、便利だなーと思ったことがあったのをふと思い出しました。 彼は、「日本の携帯はそんなこともできないのか?」と、逆に不思議がっていました。 向こうにいる期間は、端末は低機能だが非常に安く(nokiaの1000円くらいだった)プリペイド方式のを使っていたので非常に身軽な感じで使えたなー。
syogoki |
2008年06月27日 18:19
販売奨励金?が事実上なくなってきたのに、相変わらず携帯利用料金が減額された実感がないということは、事実上携帯会社だけが儲かったような気がする。もしそうなら、以前のほうがよい時代だったように思えてしまう、
実際はどうなんだろう?事実上私たちの利用料金は下がっているのだろうか?そのあたりが今一わからなかった。
kopi |
2008年06月26日 12:42
ニュースコーナーの充実はとてもうれしいです。
関連して。秋葉原事件を受けてM死刑囚の執行がなされてわけではないと思います。というのも、いくらなんでも時間的に事件から執行まで早すぎるからです。
法務完了の知り合いに聞いたところ、「それなり」に時間と手間をかけて死刑執行のための資料精査をするそうです(官僚の方が…大臣は不明ですが)。
kopi |
2008年06月25日 16:54
ケイタイの話はわからん。
料金、安くしてくれ。
GPの件は、ゲームがはじまったところだ。
起訴猶予になるかもしれないし。
GPの大義とオウムの大義と、何か変わりあんのかな?
ま、気の毒だが青森県警には手に負えかねる問題だな。
警視庁公安部主導で落ち着くところに落ち着くだろう。
GP呼べよ。面白いから。
名無し草 |
2008年06月23日 16:35
GPの件は…おそらく窃盗は窃盗でも、
捕鯨自体に反対する国民が少数だから
ああいう記事の書き方になったのかもしれませんね。
GPの知られざる内面を知りたいので、
是非一度番組に呼んで頂いて、
鯨を保護する理由を説いて頂きたいです。
無記名 |
2008年06月22日 23:22
神保さん、宮代さんのニュースが少なくて寂しかったところ、とても満足でした。
継続でお願い致します。
朝日の死神発言goodjobですw
あさきち |
2008年06月22日 21:35
普段と比べアドリブの少ないかなり型の決まった内容に見えましたが、谷脇さんの極めてロジカルでクリアーな受け答えにひたすら感心させられました(笑) 宮台さんの言うエリート,又はアーキテクチャーの上層に位置するのはまさしく谷脇さんのような人なのでしょうね。
アノニマス |
2008年06月22日 17:12
神保さんが望まれているとおりの、ニュースとして独立した番組があったら、そっちも絶対見ます!
料金は少し値上げしても、毎月1冊本を買うと思えば安いものだと思います。
これからも、楽しみに見ています。
セビジッタ |
2008年06月22日 15:53
谷脇さんのお答えは非常にクリアでわかりやすかったです。
メーカー、事業者、消費者がそれぞれプラスになるように真摯に考えておられ、すばらしい役人さんがいるのだと頼もしく感じました。
gout |
2008年06月22日 13:37
役人さんに出演してもらい直で発言をして欲しい。また、討論を視聴したい。
初めは、番組が、つまらなくなるかもしれないが、目クソ・鼻クソ・チ●●●のバカなマスコミの垂れ流し、紋切り型の報道よりもよい。
直で聞く、直で話す、直で訴える、直で議論する。
役人さんのロジック、懐疑の点、知らないこと などが見えてくるかもしれない。
もちろん、突っ込みもワンセットが前提ですが。
出演交渉は難しいかな?
TVよりもハードルは低いと思いますよ。「うちの番組は、視聴者数も少ないので、影響力ありませんよ〜」と。
ウソをつくのも必要でしょう(笑)
tk |
2008年06月22日 01:04
役人の答弁そのままで、見ていてひじょうにつまらない。ゲストの選択を誤ったのではないか。表面的な受け答えしかしないゲストに対して、町田氏も宮台氏も、もっとしつこくつっこんで聞いてほしかった。こういうときは、神保氏にいてほしいと思う。
smo |
2008年06月21日 23:34
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