マル激トーク・オン・ディマンド
政治の機能不全を脱するために
マル激トーク・オン・ディマンド 第388回(2008年09月06日)
政治の機能不全を脱するために
ゲスト:飯尾潤氏(政策研究大学院大学教授)
 9月1日、福田首相が突然辞任した。これで日本の総理大臣が2代続けて、任期の途中で政権を放り出したことになる。国会の衆参両院の勢力がねじれ状態にあるなど、国会運営が難しいなどの事情もあろうが、それにしても日本の政治がもはや完全に機能不全に陥っていることは、誰の目にも明らかだ。
 辞任会見の中で福田首相は、ねじれ国会によって次期国会でも重要法案成立のメドが立たないことを、辞任の理由に挙げている。しかし、政策研究大学院大学教授の飯尾潤氏は、そもそも衆院と参院の多数派が違うことで議会運営に困難をきたしてしまうこと自体が、日本の議院内閣制が機能していないことを示していると語る。
 議院内閣制を採用している諸外国では、二院の意見が異なることは決して珍しくない。独立して投票される二院制を採用していれば、むしろそれは当然のことで、自民党の長期支配のもと、与党が両院を支配していることを前提に、政権が容易に運営できたこれまでの日本の政治のあり方自体が、世界的に見ればむしろ異常だったというわけだ。
 日本ではよく、国民から直接選ばれる大統領の方が、議院内閣制のもとでの総理大臣よりも強い権限を持っていると思われがちだが、実際はそれは間違っていると飯尾氏は言う。議院内閣制では、国会の支配勢力と行政の長たる内閣総理大臣が同じ政党となるため、三権分立の2つが事実上政権与党によって支配されることになり、首相には大統領よりも遙かに大きな権力が集中することになる。
 しかし、本来は強い権限を持っているはずの首相が、なぜか日本では強力なリーダーシップを発揮することが難しくなっている。戦前の制度の名残で、省庁や官僚の代理人と位置づけられた国務大臣によって内閣が作られる言わば官僚内閣制とでも呼ばれるべき独特の制度があるため、実質的な政策立案は官僚が行い、閣議も次官会議で決定された議題を承認するだけで、国会が選んだ内閣には実質的な決定権はほとんど何もないのが同然の状態が続いてきた。
 一方、議会の側も、自民党政権が長く続いたために、自民党の総裁選が事実上の首相選挙となり、首相は民意とは無関係に、自民党の党内事情で好き勝手に変えられてきた。国会で首相を選ぶ首班指名選挙が、単なるセレモニーに過ぎないことは、日本人であれば誰もが知っている。大臣も当選回数や派閥の推薦などで決められてきたために、国民の任を受けた国会が内閣を選び、首相と大臣が行政を代表するという議院内閣制の本義が、希薄になっていたと飯尾氏は指摘する。
 その一方で、日本の官僚内閣制のもとでは、省庁が企業や業界の要望を吸い上げ政策に反映させる仕組みが機能していたため、国民の意見は議会を通してではなく、官僚制度を通じてある程度政策に取り入れられてきた。そのため、与党の族議員は、国民全体のためというよりも、自分たちが利益を代表する業界や団体の代弁をすればよく、それが結果的に議院内閣制の更なる弱体化につながったと飯尾氏は言う。
 その意味で、小泉政権は議院内閣制の原理に沿って、官僚の抵抗を排してでも、首相が選挙で掲げた政策や方針がそのまま政策に反映される、日本の政治史上では、むしろ異例の政権だったと飯尾氏は指摘する。しかし、小泉政権以降、日本の政治は再び官僚内閣制に舞い戻っている。
 いずれにしても、このまま政治の機能不全が長引けば、日本は山積する国内外の問題にほとんど対応できない閉塞状態が、今後何年もの間続くことになる。今日本の政治が、議院内閣制本来の機能を取り戻すために何が必要なのか。福田首相辞任の背景にある日本の政治プロセスが抱える根本的な問題を、飯尾氏とともに議論をした。
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飯尾 潤いいお じゅん
(政策研究大学院大学教授)
1962年兵庫県生まれ。86年東京大学法学部卒業。92年東京大学大学院博士課程修了。法学博士。埼玉大学大学院助教授、政策研究大学院大学助教授などを経て、00年より現職。01〜02年ハーバード大学客員研究員として滞米。著書に、『日本の統治構造』、 『政局から政策へ』など。
この記事へのコメント

自民党・・・日替わり定食党
民主党・・・パッケージ党
社民党・・・セルフで選べるよ党
共産党・・・日替わり定食に付いてくる容器党
公明党・・・日替わり定食のメニューを選ぶよ党
国民新党・・・おいしい香りでご飯を食べちゃう党
新風・・・家庭料理

ノクノク | 2008年09月22日 01:20

国全体を主体と見たときに、それが合理的な判断ができるのなら、外部不経済も発生せず(国の外との関係ではわからないが…)、lump sumで判断できるので真の厚生極大点を得ることができ合成の誤謬も現れなくなる。
またもし主体が十分に小さければ完全競争状態に近くなるので、個々の主体の最適化が最終的に全体の厚生を極大化していくことになる。
その意味で全体の厚生を極大化して行こうとする”ひだり”側がこのどちらかを希求するのは理にかなっているのではないかと思う。
これに対し自分の身の回りの厚生を極大化したいと思うのが”みぎ”側で従ってコミュニティ重視で、地縁血縁を重んじるのだと思う。
非常に荒っぽい議論だが、こうすれば飯尾氏と宮台氏の議論を整合的に繋げられるのではないだろうか。

賈雨村 | 2008年09月21日 08:26

議院内閣制などというどうでもいい制度についてゴチャゴチャとテクニカルな話に終始していて、お世辞にも日本と日本人に取って役に立つ議論とは言えなかった。日本の政治の一番の制度的問題は政治に自衛隊(=軍)が関与できないことである。軍の役割というのは、国防だけではない。軍の対内的な役割として、軍が自身が正義の体現者であると自覚し、その高貴な気概に則って政治・社会・経済・文化に積極的に関与することである。極論すれば民政が腐敗すれば、すかさず軍事クーデターを起こすべきなのである。軍が自身の役割をちゃんと理解しているタイやパキスタンのことを羨ましいと思う。

平均的日本人@生存確認 | 2008年09月19日 02:51

珍しくかみ合った議論で、中身の濃い良い番組だったと思います。
ただ、神保さんがいなかったために、分からない人は分からないまま議論がどんどんすすんでいった感はあります。
ただ、オンデマンドなんだから、何度も一時停止したり、巻き戻したりして聞けばいいことだとは思いますが。

無記名 | 2008年09月15日 17:12

次の総裁は麻生太郎君のようですが、
たいへん楽しみですね。
こんなに器の小さい首相が存在していいのでしょうか。
いかに無様な終焉っぷりを見せつけてくれるのか、
ほんとうに楽しみですね。

枯渇 | 2008年09月11日 23:28

神保さんのリポートに有ったブッシュ大統領を再評価する声ですが、あまりに内向きなので気持ち悪くなりましたね・・・ちょうどNHKの歴史番組の録画を見た後だったので、かつての大日本帝国首脳部の姿とダブってしまいました。
「貧すれば鈍す」なのか「鈍すれば貧す」なのかは忘れましたが、こうして「罪」と言うものは人間の中に生まれていくのか、と思いました。「〜の為だから仕方が無かった」という言い方が無条件に通ってしまうなら、とても恐ろしい事になってしまうと言う例になりますね。

少し前にはてな界隈で起こったトリアージ論争も、そういうある種の鈍感さに対する反発も有って激しいものになった様な気がします。

それと本編の感想ですが、一見何の問題も無く回って見えるものであっても、原理原則を忘れそこから外れたものは結局破綻するのだな、というものでした。
しかし、その原理原則を守る事こそ困難なのが浮世の定めなので、色々言い訳をしながら道を外れてしまうものなのでしょう。言い訳を言い訳と見抜けない鈍さもまた、後世の批判を呼ぶものでないかと自戒も込めてコメントしたいと思います。

デミトリー | 2008年09月11日 21:45

飯尾潤というのですか、この人の話、早口でわかりません。
何か言ってたようだけど、その割に、「では、どうしたらいいですか?」という問へのお答えは、あまりにも平凡でしたね。
翻って、その程度のお話だったのかと納得した次第です。
我が国でも民主党への政権交代がいよいよ現実味を帯びてきましたが、本当に大丈夫ですかね。
民主党が与党になれば、マル激の皆さんも与党ですか?
危ういですね。
身の程知らずというか・・・

 

武です | 2008年09月11日 16:11

三笠フーズの毒米問題を取り上げて欲しい
業者も悪だが、それ以上に国のシステムのいろんな悪い面が浮き上がった事件だと思う。
自民独裁が続く限りは、こんな事がつづくのではないか?

おっちゃん | 2008年09月10日 15:22

 概念が整理されていて見ていて気持ちよかった。綺麗な見立てで分かりやすい。

 中国問題を扱っていた回の一郎さんの具体例の多数引用方法と組み合わせたら大著が出来そう?。

 福田さん退陣。ご苦労様です。日本の総理の座が如何に軽いものかって事が証明されて良かった。皮肉ではなくて良かったんじゃないかな。

 

きんさん | 2008年09月08日 15:52

神保さんが予見したとおり、ペイリン候補のぼろが出てきているようです。Anne Kilkennyというアラスカ在住の女性が書いたペイリン候補に関するEmailが、今アメリカで多くのMainstream Mediaに取り上げられて話題になっています。(全文英語http://community.adn.com/adn/node/130532)
ペイリン候補がこれまでにおこなってきた政策が記されています。

nobu | 2008年09月07日 12:11

ニュースパートだが、ペイリン候補に関し2点、大事な点に触れていないと感じた。

1点目は、ペイリン候補が、妊娠中にダウン症と診断された子どもを、中絶せず生み育てている事実。中絶問題は米国の国論を二分する大問題だが、ペイリン候補は中絶反対の立場を、口だけではなく行動で示した。保守派は、ペイリン候補であれば、他の主張についても信念を貫いてくれるはずだと期待し、だからこそ強く支持している。

もう1点は、ペイリン候補の息子がイラクに派兵される予定であることだ。「イラクで従軍中の兵士たちが国家に対し重大な貢献をしている」という認識に関しては、米国内に強固なコンセンサスがある。これは、ブッシュ大統領のイラク政策に対する賛否とは別のものだ。ところが、マイケル・ムーアが『華氏911』で指摘しているとおり、連邦議員の子弟でイラクやアフガンで従軍している者は皆無に近い。ペイリン候補のエピソードは、米国民の反エスタブリッシュメント意識に訴えるものがある。ここでも、「口だけではない」というイメージがペイリン候補にとってプラスに働いている。

無記名 | 2008年09月07日 11:48

飯尾潤氏の解説の序盤がわかりにくかった。AだからBだからCだからDという連鎖で語られると途中で意味がつかめなくなる。
テーマ選択はよかったし、若干の見解の対立があったのもないよりはよかったし、いいマル激だったと思います。
終盤もうちょい具体的だったらさらによかったと思います。

ja | 2008年09月07日 01:54
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