マル激トーク・オン・ディマンド
世論という名の魔物とのつきあい方
マル激トーク・オン・ディマンド 第430回(2009年07月04日)
世論という名の魔物とのつきあい方
ゲスト:菅原琢氏(東京大学特任准教授)
 世論という魔物が、政界はおろか、日本中を跋扈しているようだ。
 支持率の低迷で、自民党内からも公然と退陣を求める声が上がるなど、麻生降ろしが本格化し始めている。もともと国民的人気が高いという理由から、選挙の顔として擁立されたはずの麻生首相だが、今は人気の無さを理由に、首相の座から引きずりおろされようとしている。これも世論らしい。
 かと思うと、宮崎県で圧倒的な人気を誇る元タレントの東国原知事の国政進出をめぐり、自民党の大幹部が右往左往するなど、いつ来てもおかしくない総選挙を控え、政界は「人気がすべて」の様相を呈し始めている。これも世論だそうだ。
 確かに人気は民意を推し量るバロメーターの一つかもしれない。しかし、人気が政治を支配するようになると、何か大切なものが失われるような思いを禁じ得ない。そもそも私たちが「人気」と呼んでいるものに、実態はあるのだろうか。
 人気を測るツールの一つに世論調査というものがある。民主政治を機能させる目的で戦後直後に新聞社によって始められた世論調査は、今や毎月のように頻繁に行われるようになったが、少なくとも当初の世論調査は「輿論(よろん=public opinion)」を知るための手段と考えられており、現在のような単なる「大衆の気分」を意味する「世論(=popular sentiment)」の調査ではなかったと言われる。世論調査を報じる新聞記者たちの間にも、「輿論を聞け、世論には惑わされるな」という意識が共有されていたそうだ。
 しかし、いつしか「輿論」は「世論」に取って代わられ、政治は変質を始める。もともと代議制は、世論の政治への影響を緩和するための間接民主主義としての意味を持つが、人気に振り回されている今のポピュリズム政治は、事実上直接民主制と何ら変わらないものになっている。
 現在の政治はこの世論の動向に敏感に反応し、世論が政策決定にも大きな影響を及ぼすようになっている。政府は長期的には重要であることが分かっていても、短期的に不人気になる政策を実行することがとても難しくなり、外交や死刑制度といった国民の生活に関係する問題も、いわば俗情に媚びた決定を繰り返すようになった。
 世論調査に詳しい政治学者の菅原琢東京大学特任准教授は、そうした傾向の中で、ポピュリズム政治の代名詞と見られることが多い小泉政権こそが、最近ではもっとも世論をうまく利用した政治のお手本だったとの見方を示す。そしてそれは小泉首相が、人気取りをしなかったところに、そもそもの勝因があると言うのだ。
 確かに、日朝会談や郵政選挙など、小泉政権を代表する政策は、必ずしも当時の国民の間で人気の高い政策ではなかった。しかし、小泉首相は次々と大胆な改革を断行することで世論を味方につけ、高い内閣支持率を支えに、さらに次の改革を打ち出すことで、長期にわたり高い国民的人気を維持することに成功した。政策の中身の是非はともかく、小泉政権の高い人気が、結果的に過去の政権が成し遂げられなかった多くの施策の実現を可能にしたことは紛れもない事実と言っていいだろう。
 しかし、その後の自民党政権は、逆に人気ばかりを気にするあまり、思い切った政策を打ち出すことができなくなっている。一時的に人気のある人を首相に据えても、政策的に無策なため、たちまち支持率が低迷し、ますます大胆な政策が打てなくなる悪循環に陥っている。高い人気に後押しされて大きな成果をあげた小泉政権と、人気を気にし過ぎるが故に、大胆な施策を打てない安倍政権以後の政権のあり方は、実に対照的だ。
 一方、財源問題を抱える民主党も、支持率低下を恐れて、消費税は絶対に上げないことを公約するなど、明らかな人気取りに走っている。政権を取るためにはやむを得ない選択との指摘もあるが、小泉政権とそれ以後の政権の対比から、政治は何も学んでいないのだろうか。
 しかし、泣いても笑っても、天下分け目の総選挙は近い。有権者の中にも、世論調査や選挙予想を気にしながら、そろそろお目当ての候補者を見定め始めている人も多いはずだ。また、各党の人気取り合戦の方も、いよいよ熱を帯びてきている。
 政治に限らず、我々の周りには人気投票やランキングであふれかえっている。そうしたものに振り回されないで生きるためには、我々は何を支えに、どのような視座で「人気」というものを考えればいいのだろうか。
 今週は世論調査を入り口に、「輿論」と「世論」の違いや「人気」との付き合い方を議論した。

マル激トーク・オン・ディマンド 第331回(2007年08月03日)
データから見えてくる「やっぱり自民党は終わっていた」
ゲスト:森 裕城氏(同志社大学法学部准教授)

プレスクラブ (2009年06月30日)
『報道の指摘は基本的に事実』
鳩山民主党代表が自身の献金問題について会見

菅原 琢すがわら たく
(東京大学先端科学技術研究センター特任准教授)
1976年東京都生まれ。01年東京大学法学部卒業。06年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。06年より現職。法学博士。
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<民主・岡田副代表>沖縄返還時密約 政権取れば公開 『民主党の岡田克也副代表は1 <民主・岡田副代表>・・・
(おたきち雑記帳)|2009年07月05日 22:39
この記事へのコメント

やっと見ました。
なぜかみなさんコメントをしていないのですが、宮台さんがご自分のラジオリスナーに対するアンケートと一般の世論調査の結果に乖離が大きくなってきているということをおっしゃってましたが、宮台さんのラジオ番組を聞いて、わざわざアンケートに答える人というバイアスもまた相当なもんだと思いますよ。
新聞社の世論調査のバイアスが云々いうなら、そっちのバイアスもきちんと評価しないといけません。

JJ | 2009年07月15日 05:00

菅原さんの話は参考になった。
学問的裏打ちのある話は安心して聞ける。まあ、目から鱗的な話がなかったのが残念と言えば残念だが。

突っ込みどころが特にないので、番組の要約に突っ込むことにするw

小泉政権が大きな成果を上げた??
思わずのけぞった。
どんな成果なのか具体的に挙げて欲しい。徹底的に批判できる。
「米百俵の精神」「人生いろいろ」「自衛隊のいるところが非戦闘地域」
「公約を守らないのは大した事ではない」等の迷言を連発したお笑い内閣というのが妥当な評価だろう。

また、消費税を上げないのは、民主党の人気取りというのも、呆れるというより、怒りを感じる。

自らの言論がポピュラー・センチメントに過ぎないのかもしれないという内省を持つべきだろう。

まぐ | 2009年07月14日 07:15

本エントリへの直接のコメントではなく、番組への要望です。

しつこいようですが、マル激が都議会選挙をテーマにできなかったのは残念です。有権者は都議会民主党が石原都政の99%に賛成している事実を知らないままでしょう。これでは政策の是非は置いたとしても公正な判断はできないでしょうね。選挙後でも構わないので「行革110番」かもしくは初の共産党議員をゲストに呼んで下さい。頼みますよ。

白魔女さん | 2009年07月11日 00:17

存在さん

 あんまり深追いしたくないのですが・・・

>DNAの回は純粋に科学がテーマというわけではなく、それが決定的な証拠として裁判資料となることの問題点を指摘した回だ

という理解は正しい(というよりそうあるべき)と思います。私が指摘している問題点は、おそらく文章に起こすときに少し気をつければ消えてしまう程度のことです。理論的に追っていればちゃんと理解できるけど、なんとなく聞いていると違う印象を持ってしまうということです。その意味ではこの回は福岡伸一の回ほどひどくはなく、許容範囲かもしれません。だからあまり細かい議論したくはないのですが、丸激の科学回の問題点は出ていると思うので言及したのです。

>多数の方は認識しています。

かどうかはコメント欄を見る限りかなり疑問です。かなりの人がDNA鑑定は全く使えない技術だと思ったようですよ。
その原因はゲストの語り口(100でなければ0か?)と神保氏の対応にあります。視聴者の科学リテラシーレベルも、福岡伸一の回の反応をみるとそんなものだろうと思います。

>あなたはおそらく「疑わしきは被告人の利益に」と言う言葉の意味をわかっていませんね。

わかっていますが、問題にしていません。 

かぴばら | 2009年07月10日 12:26

>DNA鑑定の回では、注意深く聞けばそう言ってはいないのですが、遺伝子鑑定は全く使えない技術であるという科学的には間違った印象をかなりの人に与えたようです。

かぴばらさん
DNAの回のコメント欄を拝見しましたが、あなたはおそらく「疑わしきは被告人の利益に」と言う言葉の意味をわかっていませんね。
DNAの回は純粋に科学がテーマというわけではなく、それが決定的な証拠として裁判資料となることの問題点を指摘した回だと多数の方は認識しています。
残念ながら、間違っているのはかなりの人の印象ではなく、あなたの番組趣旨認識であるようです。

だから神保さんは下のコメントを気にせず、好きなように番組作りをしてください。楽しみにしています。

存在 | 2009年07月09日 18:15

世論と言う魔物との付き合い方 というタイトルに沿うかどうか分かりませんが、以前から気になっていることをコメントいたします。

挑発する知  国家、思想、そして知識を考える


という本のなかにある

--? 戦争と暴力--
自由を監視する社会
アメリカ社会に内在する全体主義
他者性がもたらす不安とどう向き合うのか
国民国家とは
(p18〜34)

あたりにでてくる「セキュリティー」あるいは「公安側にブレる」などのキーワードと、


 最近の日本における防犯意識、白色街灯や白色パワーライトやHID車両ヘッドライトの増加傾向とは関係あるでしょうか?

(白色灯、たとえば蛍光灯は戦後の暗い影をぬぐうかのように「新しい時代の到来」とともに急速に普及し、高度経済成長期の社会における舞台装置として、あるいは国策的なインフラ整備として、市民の生活感を蛍光灯等の白色灯にとって一定の枠に依存させることによって生じるフラストレーション(そもそも白色灯にはストレッサーとしての側面や、世界観を手元に向ける性質やシグナル幻想にともなう中毒性があり、実際に蛍光灯照明が原因として知られているもの... 頭痛、目の傷み、目の痒み、疲れ、イライラ、コルチソール(ホルモン)増加によるストレス、皮膚アレルギ皮膚炎、流産、網膜老化、皮膚ガン などの諸影響もすでに前々から報告されています。これがタナトスやなにかその手の類のものとの絡みがあって)によって、大量生産をコンスタントに消費させるための流れを作りやすい、などの利点から生じる利権との絡みによって、国策的には白色灯の普及にはそもそも積極的であったという経緯があるのかもしれません。)

(おそらくこのような利権に絡む思考停止的な時代背景によって、昨今の光害や国道沿いのどこまで行っても同じ赤や黄色の看板の氾濫などの環境問題についても日本では本格的な取り組みがなされないのではないかと思います。それからもう一つは、高度経済成長期にはそのようなストレッサーがうまく機能したのかもしれませんが、今は時代が違うので、そのようなストレッサーがどのように機能しているのか分かりません。それはいつの間にかこれまでとは別の方向性に加担する可能性があります。)


・防犯としての白色灯の増加には、地域を犯罪から守るといった「立派な社会人」としてのナルシシズムを動員させやすい。

・(車検上限25万カンデラという基準値の設定、またその背景にある市場の過剰光による権益、その正当性)すなわちHIDライト55wなどで「手前の安全性を確保」し、場合によっては「前の車を煽り立てる」、ような自己顕示欲、やそのような能力や正当性を「発揮する」

・過剰光によるストレスを、受ける側、よりもむしろストレッサー側に居ることのVIP感への同調圧力。→公安へのブレ。


といった問題があるように思えるのですが、(文章が分かりにくくてすみませんが、)いかがでしょうか?

kuwa | 2009年07月09日 13:08

 丸激は無料のころから視聴させていただいております。政治、社会に関する話では大いに勉強させていただくことが多いのですが、科学問題を扱う回ではゲストの人選、科学に対する態度、語り口、に問題を感じています。

 神保さんがミツバチ自体に興味を持っておられるとは思えず、何か他の事を言いたいためにこの話題を取り上げられるのではという危惧を感じています。

 DNA鑑定の回では、注意深く聞けばそう言ってはいないのですが、遺伝子鑑定は全く使えない技術であるという科学的には間違った印象をかなりの人に与えたようです。

 今週のミツバチの回でも、一級の科学者を呼び、科学的な態度で真摯に原因を追究し、学会での議論を反映したものにするというより、いろいろ言われている原因の中から特定なものをピックアップして、視聴者にある印象を与えることになるような気がしてなりません。事前に危惧を表明しておきます。そうならないことを期待します。

 

かぴばら | 2009年07月08日 12:14

世論とエリートの関係性の話は、非常に難しい関係だと思います。どちらも魔物なのではないでしょうか。同じエリートでも菅原さんと宮台さんの会話のかみ合わなさも非常に勉強になりました。

toto | 2009年07月08日 04:53

児童ポルノ法を取り上げて欲しい

無記名 | 2009年07月07日 21:52

間接民主主義の長所の話は、これまでに丸激で何度も出ていると思うのですが、聞くたびに、認識しなおしています。私の場合、学校教育で刷り込まれた知識がなかなか上書きされないようなので。直接民主制は実施が困難だから間接で済ますのだ、と学校で聞いた覚えがあります。直接民主制が最善、間接民主制は次善という訳ですが、そんな単純ではないのですね・・・「みんなが投票に行くことが、いいことなのかどうか」という問いは、答えるのが難しいですね。

かんぽ | 2009年07月06日 19:29

来週のミツバチ本当に楽しみにしています。

さて、支持率調査で思う宮崎県の勘違い知事さん。

あの方の実績って本当に何なんですかね?

宣伝効果って事だけですかね?あとは入札制度改革ぐらいしか聞こえてこないのは残念です。

私が現在住んでいるところの知事も多選知事で業績がまったく見えてこないばかりか、いる意味あるの?という思いすらしていたので、当初タレント知事が良く見えていたことも事実。

ですが・・・昨今の言動をみると、パフォーマンスだけしか見えてこない方っていうのもどうなのかな?究極の選択ですが、知事職も遊びの場ではないので、選択は重要であると改めて思います。

世論に乗せられた結果、虚偽(自称)剣道有段者・元衆議院議員知事を誕生させてしまったような事がおこらないよう、せめて自分だけは注意しないと。

はぁ・・・ | 2009年07月06日 17:00

神保さんに定例会見で鳩山さんに聞いてほしいことがあります。

鳩山事務所によると鳩山氏の政策秘書(会計責任者のH氏)は現在病気療養中らしく、また一部では交通事故にあって入院しているという情報もあります。
一方、虚偽記載をした第一秘書のK氏の消息報道も全くありません。

鳩山氏の秘書K氏とH氏は現在どのような状態なのか、解任解雇された第一秘書のK氏鳩山氏との現在の雇用関係(まだ事務員として解雇されていないのか)などを是非質問していただきたいとお願いします。

また前回の釈明会見に当事者の第一公設秘書K氏及び政策秘書=会計責任者H氏が出席していなかった理由も知りたいところです。

さらに、現在のところK氏やH氏へのインタビューも報道されていないので是非当事者のインタビューもしていただきたいと願います。

匿各 | 2009年07月06日 13:58

世論調査とは直接関係ないかもしれないが、俳優がCMに出演するという状況はアメリカでもありですか。日本は有名アイドルや俳優がビールや菓子、食品、自動車などありとあらゆる製品の宣伝をしているが、影響力のある人間が一方的にある製品やサービスの宣伝をすることによって、真実が正しく伝わらず内容よりもその俳優の容姿などを元に売り込んでいることにならないか。それでもいいのだろうか。消費者は場合によっては誤った情報によって購入を誘導されているのではないだろうか。政治にしても有名な芸能人を立候補させてその知名度、影響力によって人気を集め、票に結びつけるということが日本では許されているのだが、他の先進国ではどうなのか。教えてください。

あき | 2009年07月05日 22:33

【Nコメについて】
ロールズは、少年期の夏の日に「どうして黒人はいつまでも不遇なの?」と疑問を抱き、それを大人になっても常に考え続けた裕福な白人でした。
鳩山由紀夫氏がそのロールズにあこがれるなら、そうすればいいと思います。今、鳩山氏の眼前には黒人ではなく「障がい者」「自殺者」「アイヌ民族」「虐待される子ども」「戸籍のない子ども」「永住外国人」「性同一性障がい者」「難民」「難病指定が受けられない稀少疾患患者」「ホームレス」「中国残留邦人」「公害被害者」「被爆者」「ひとり親」たちがいます。その人たちでも生きていけるような社会にするために、身銭を切ることはすばらしいことです。そのために少々小細工が必要だったことは認めましょう。早く、カミングアウトしてほしいと思います。

しかし、脱税はダメです。これを正当化する正義の論理はありません。私利私欲から発せられたもの以外ないのです。

ウマ | 2009年07月05日 13:06

「社会学者が当たり前に知っていることを有権者が知らない」との話がありましたが、このことは鳥瞰図的に見て制度の問題以前にエリート側の社会的機能が働いていないことが問題なのではないかと思います。エリートは何のために存在するのか。

山田博英 | 2009年07月05日 09:40

次週の蜜蜂に期待

zaru | 2009年07月05日 05:37

神保さんの説明が正しいのであれば政権交代はないでしょう。
神保さんは変わるべき歴史を止めてしまった歴史に残る人物になるのでは?
余りにも責任有る重大な推理ですが、この推理をネットで流す前に民主党に乗り込んで裏を取ったか、覆すことの出来ない確かな情報をもっているかなのでしょうね。
それほど民主党にとって治癒不可能な深い傷だと思います。
これにより暗黒の自公政権が延々と続くのか・・・・・・・残念です。

ひろ | 2009年07月05日 01:59

・Nコメついて

政治は相対評価。候補や政党を比較することで評価する。多くの国民は鳩山氏個人に期待するのではなく、民主党に期待するわけでもなく、自民党と比較した上での政権交代のインパクトに期待している側面が強いので鳩山氏の評判が落ちたところで衆院候補の当落には影響ないのだろうと思います。これで無党派の取り込みが困難になったのは確定ですが、それは前からなのでやはり変化なし。結論、鳩山献金問題は政局全般に影響なし。しかし舛添などが登場した場合、無党派が取られるスキを与えたという意味では影響あり、か。

・本編について

地方分権とポピュリズムの関係について語って欲しかったです。国民の参加意識と民度で分権=参加の是非が変化するはず。世間的には依然として「道州制の是非」とか「300基礎自治体の是非」とか「橋下案か小沢案か」といった不毛な二項図式が展開されていて心配です。欧州では左翼であればあるほど地方分権に懐疑的です。欧州憲法反対に象徴されるようパトリを重視するようになっています。分権化=参加型=民意反映になるため肝心の成熟化した民主主義と乖離する恐れがあるからです。小沢案だと1800から300に基礎自治体が少なくなるので1500にも及ぶ市町村が合併で「消失」することになります。おそらく人数の多い自治体であれば二大政党に有利になるという思惑もあるのでしょうが、だとすると矢祭町みたいなのも国立市みたいのもトヨタ市みたいのも消えるわけで、それは良いのかどうか、微妙なのです。一部左翼のように合併に無条件に賛成するは論外としても、というか、なんで日本の左翼は合併に賛成してパトリを放棄するのか意味がわかりませんが……しかし名古屋市やさいたま市や千葉市のように中道候補が当選しやすいというメリット(?)もあるでしょう。小沢案は大正デモクラシーの地方議会運動の帰結がそうであるように「分権化=地方に関心を持つ=国政に関心を持たない」を確信犯的に実地した上で小選挙区制のように二大政党寄りの制度にするという意図が透けて見えます。連邦制に反対するのもそのせいではないかと。一方で自民や経団連の道州制案は「州にすれば北海道などへのバラマキが増える」という意図もあるようで、しかし橋下案はそこは違うようで。一緒に道州制を目指していたはずの渡辺義美とも距離をとり始めたし……。このあたり、どうも「小沢的な保守派vsネオリベ派」もあってか混乱しているように見えます。仮にパトリや少数派も大事したいとするならば基礎自治体は減らさずに道州制を実地するというパッケージが良いのではと思うのですが、これだと極端な奴が権力を握ってしまうデメリットもありますね。自治体が多すぎると国民のチェックが届かないですし。左派ブログでは小沢案の1500の自治体を消失させるという発想に賛成する人も多いようですが、ダイレクトに人気を反映させることの是非、道州制的な緩衝材の是非といった議論を踏まえると、安易に「自治体は多くていい、少なくていい」みたいなのは危険なのかな、と。鳩山氏は小沢案と同じく都道府県廃止で300基礎自治体との二層制でいくとのことですが(最近、方針転換したという説もあり)これだと物凄いことで、300というと、記憶のいい人なら暗記できるくらいの数ですよね。「自治体ランキングサイト」が出るかもしれない。(笑) 総合すると、とてもじゃないけど、二項図式とも思えず単純じゃあありません。「地方が近代化してないのに分権化していいのか論」もありますし、いちど、人気主義問題を理解しておいて、今度は「地方分権」をテーマにして欲しいです。

でも、左派ブログが小沢案=物凄い勢いで合併しまくる、に賛成するのは理解できませんね。共産市政は全滅するけど、それで良いのかい?(笑)

白魔女さん | 2009年07月05日 01:55

「悪貨」と「良貨」の責任のなすりあいなのかも知れません。

無記名 | 2009年07月04日 23:09

いつもながらNコメ神保・宮台コンビの掛け合いは素晴らしい。今回も教えられました。第4の権力としてのジャーナリズムの心意気を示すものだ。両氏にとかくのコメントが寄せられるが、今後も臆することなく丸劇トークオンデマンド発信継続を願います。僭越ながら、心身健康がファンダメンタルズなのでご自愛下さい。

TOYO | 2009年07月04日 23:01

本編の方の細かいことなのですが、英国は鉄板選挙区を誰にあてがうかの人事機能によって、政党が政党として機能しているというのは私にとって発見でした。しかしどのような経緯で上記のシステムが定着したのか、とても興味があります。普通に考えて不自然ですもんね。

本編の本質論的な話は、まあ、ビジネスと考えればいいのではないかと思いました。つまり目先の人気にとらわれている企業は長期投資ができずに倒産しますし、目先の人気を全く気にしないと資金繰り倒産をすると。要はそのバランスではないでしょうか。

toyokawa | 2009年07月04日 22:46

 Nコメは2本とも神保・宮台コンビのツボに入った会心作ですね。ただ鳩山さんの件は母親からのお金だとすると贈与税回避のための脱税という線が出てきます。「全部明らかにすれば大丈夫」という話では済まないのではないでしょうか。

toyokawa | 2009年07月04日 20:40
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