マル激トーク・オン・ディマンド 第433回(2009年07月25日)
密約問題が示す無法地帯と化した日本外交の現実
ゲスト:河辺一郎氏(愛知大学現代中国学部教授)
戦後の日本外交を象徴すると言っても過言ではない、核兵器の持ち込みをめぐる日米間の密約が、皮肉にも日本外交の実態を白日の下に晒し始めている。
60年の日米安保改定時に、核兵器を搭載した米艦船の寄港や領海通過を日本が容認したとされる「密約」は、過去にライシャワー元駐日大使の証言や機密指定が解かれ公表された米公文書資料によって、その存在が何度となく取りざたされてきた。しかし、このたび村田良平元外務次官らが密約の存在を正式に認めたことで、密約の存在を否定し、非核三原則を国是として掲げてきた日本政府の外交政策の正当性が、いよいよ問われる事態を迎えている。なんと言っても日本は、唯一の被爆国として戦後一貫して核兵器に反対し、核軍縮に努めることを国内外に向けて高らかに謳ってきた国だ。にもかかわらず、その国が実は自国への核兵器の持ち込みを容認し、しかもその事実を50年間も隠し続けていたということになるからだ。
日本政府は依然として、密約の存在も、核持ち込みの有無も言下に否定するばかりで、半世紀もの間、その存在を否定し続けてきた理由を説明しようとしない。そのため日本では、米軍の核持ち込みが容認されているという現実の上に立って、これからの安全保障を議論することすら、できないでいる。
国益を守るためには、自国民や他の国に対して外交交渉のすべてを明らかにできない場合もあり得るだろう。その意味では、密約そのものを全面的に否定すべきではないかもしれない。ただし、それは一定の期間を経た後に、必ず事実が明らかにされ、その正当性が検証されることが大前提となる。この期に及んでも、密約の存在すら認められない日本政府や外務省の立場を見ると、そもそもこの密約が真に国益を守る目的で秘密にされてきたかどうかすら、怪しくなってくる。
日本外交をウォッチしてきた愛知大学の河辺一郎教授は、日本は外交の舞台で核軍縮に関してイニシアチブをとったこともなければ、国連の核兵器に反対する議決に対しても、率先して反対もしくは棄権をしてきたのが現実だという。安全保障政策においてアメリカの核の傘に依存する日本にとって、核軍縮はもはや外交上の大きな関心事ではなかったのだ。むしろ、核の傘を提供してくれているアメリカの意向を慮ることこそが、日本外交にとっては唯一無二の重要課題であり、こと外交に関する限り、それ以外のことは真剣に考える必要すらなかった。
つまりアメリカの核の傘に守られているからこそ、そしてそれが密約という形で担保されているからこそ、日本は表面上は非核三原則や核廃絶や平和主義を訴えることができたが、実際にその真贋が問われる外交交渉や国連決議の場では、実は日本外交は何度も馬脚を現していたということになる。知らぬは日本人ばかりなりということか。
河辺氏は、日本の外務省が事実上法を超越した存在として、国会のチェックすら及ばない状態にあることに、日本外交が国民から乖離したり、暴走したりする原因があるとの見方を示すが、その一方で、その責任は外務省だけはなく、外交政策のチェックや検証を怠ってきた外交の専門家やジャーナリストにもあると指摘する。
来る総選挙で民主党が勝利し、政権交代が実現した時、日本のチェック無き外交の病理を断ち切る千載一遇のチャンスがめぐってくる。しかし、今のところ外交政策や外務省のあり方が選挙の争点になる気配は全く見られない。残念ながらこれが今の日本の実情のようだ。
今回は密約問題を入口に日本外交が抱える問題を河辺氏と議論した。また、国連の専門家でもある河辺氏に、民主党の国連中心主義への評価を聞いた。
マル激トーク・オン・ディマンド 第256回(2006年02月23日)
日米偽装同盟はここから始まった
ゲスト:西山太吉氏(元毎日新聞記者)
ニュース・コメンタリー (2009年07月17日)
河野外交委員長が密約で政府答弁の変更を求める
外相は応じない構え
プレスクラブ (2009年03月17日)
西山太吉さんらが密約文書の開示を求めて提訴
河辺 一郎かわべ いちろう
(愛知大学現代中国学部教授)
この記事へのコメント
この番組の面白いところは他のメディアでは触れることのできないクオリティの高い(勿論その判断をするのは個人の自由です)情報を仕入れる事ができるからであって、番組や出演者の思想や人格は二の次だと思っています(大多数の方がそうでしょう)。
どうしても人格攻撃をしたいのなら自分自身の発信媒体の中ですればいいのであってこの場で個人的な欲望を発散させるのは非常に見苦しいです。
今回の外務省に係わる裏?情報も大変興味深く拝見させていただきました。物事を抽象化して説明することに長けている宮台さんも圧倒的な事実の前にややトーンダウン気味でしたね、やはりその問題の渦中で考えることと外側から論じることでは(思想の歴史を踏まえて物事を鋭く示唆することが得意の宮台さんでも)温度差が生まれてしまうのでしょう。 自分の立ち位置をしっかりしたいのならいろいろな方向、例えそれが自分にとって好ましくない方面からのものであっても時には検討する頭のやわらかさを保つことが必要なのだと、個人レベルでも考えさせられました。
新政権にその度量がある事を期待しつつ、しっかりチェックしたいと思います。
マルキク |
2009年08月23日 12:18
アメリカのクロスオーナーシップの件は、その当時、ニュース23で報じられていました。意外だな?と思いました。
マサガタ |
2009年08月10日 10:42
当記事について
>密約そのものを全面的に否定すべきではないかもしれない。
これを、ジャーナリズムが言っちゃまずいのではないでしょうか?確かに、国益につながる密約はあるでしょう。しかし、一時的にでも政府が国民を欺くことになるわけで、それはルソーの言う「一般意思」の問題にも関わってくると思います。なるたけ多くの政治についての情報を与えることで妥当な「一般意思」を形成するのがジャーナリズムの仕事なのではないですか?これは、「理想」ではなく「定義」(ジャーナリズムの)だと思います。
結果的にそれが国益につながったとしても、少なくとも言辞の上で容認するというのは、ジャーナリズムの「定義」に反することなのではないでしょうか。。あとは、言辞の外で「暗黙の容認」をすればよいだけのことで。もちろん、宮台さんのような学者が言う分にはかまわないと思いますが。
なんか重箱の隅をつつくようなことをいってすいません。ただ、ちょっと気にかかったもので。。。
翠 |
2009年08月01日 09:27
野党民主党が24日、メディア関連法の無效を主張して、議員総辞職を決議した。(東亜日報)
http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=050000&biid=2009072527638
こういった野党の強硬な対応が、韓国国民に受け入れられているとは到底、思えません。確かに日本の左派メディアには「李明博政権は新自由主義」「ハンナラ党=悪、民主党=善」とひたすら書かれてますが、それは左派の方がそう思いたいだけで、実際の韓国全体の平均的な民意は「ハンナラ党も問題ではあるが民主党も強硬に反対ばかりするのヤメロよ」という程度ではないでしょうか。事実、日本以上に無党派志向は強くなってます。大多数を占める中道的な人からすれば「KBSの急進的な報道(日本でいう社民党や共産党のような主張垂れ流し)はとても理解しがたいものになってるはずです。ネットには日本と同じく急進的な書き込みも多いようですが、それが本当の民意かといえば疑問ですね。その証拠に民主党がどんなに反対連呼してもまったく支持率が上がりません。「民主党」同士、似たもの同士ですね。むしろアメリカでの議論を踏まえながらも「メディア法=悪と決めつけていいのか」という視点が必要でしょう。韓国が厄介なのは古い側面(地上波テレビが極左すぎる上、日本以上に利権だかけ)と新しい側面(既存マスコミとネットの融合によって兼業禁止といった規定の形骸化)が重層的に被さっていることです。同時攻略しなければならず、なかなか困ったものですね。なお、「日本語で読める韓国情報」のサイトは主催者のイデオロギーに都合良く解釈されてるのが多いので注意が必要です。
白魔女さん |
2009年07月30日 18:01
大使館の菊の御紋は国章のつもりではないか?
パスポートの一重の菊、五七桐は内閣の紋だろう。
国章・家紋については各自調べていただきたいが、ロシアの国章である東ローマ帝国の双頭の鷲と同じように天皇家家紋の十六弁八重菊、五七桐等という便利なものが日本にもあったということだ。
それにしても、ゲストのような人達が増えてくると、日の丸、君が代と並び国章についても法律で決めておく必要があるかもしれない。
外交官の忠誠心というかプライドの源泉は時の政治体制を超えるものにある。
それは天皇によって象徴される曖昧模糊とした日本及び日本人であって、天皇そのものではない。
こういうことは、なかなか知の足りない主知主義者が多くて、理解できないかもしれないが。
名無し草 |
2009年07月30日 07:53
外務省の高級官僚が、天皇を崇拝しているということに驚きました。日本の中枢というか上層部って、こんな感じなのでしょうか。一部の日本人にとって、天皇は、ダライ・ラマとかローマ法王のような存在ということ?
また、親子代々が外務官僚となっている家系があるという話がありましたが、日本のことを知るには、具体的な人脈や家系の知識も必要だな、と思いました。
それにしても、外交とか軍事の話は、知らないことばかりで難しいです。「集団的自衛権」って、簡単に言えば軍事同盟なんですね。理解の助けになりました。初歩的過ぎ?(笑)
かんぽ |
2009年07月28日 21:00
"国益"の言葉が出てきましたが、この言葉の歴史には非常に多くの意味が含意されているように感じます。江戸時代に平賀源内などの洋学の人たちが多用したということを指摘した論文を読んだことがあります。神保氏の反応でもアメリカではあまり用いられない言葉であることが知られます。一度この言葉に関する回を設けても良いかもしれません。
今回、愛知大学の先生が呼ばれたのは大きなことのように思われます。東亜同文会の後継であるこの大学は、アジア主義に関心のある宮台先生にとってはまさに憧れの大学かもしれません。
賈雨村 |
2009年07月28日 13:05
河辺氏は現代中国論が専門だが、著作には「平和学」や国連を主にしたものばかりだ。また、所属する愛知大学は企業向けの中国講演会を定期的に続けている。
これには朝日新聞のようなスタンスを感じて、河辺氏に良いイメージを持てない。
そこで、河辺氏は具体的にはどのように中国を論じているかを知る為に資料を探した結果が以下だ。
http://www.geocities.jp/kawabe_ichiro/papers/041.html
「『第三世界』としての『中国』−いわゆる台湾の国連再加盟問題をめぐって−」
その他「中国外交を見る視点」
これは第三世界の代表として中国を捉える視点から書かれた論文で、充分に中国に好意的に書かれている。
これらの論文と今回の日本外交批判を見比べた場合、ダブルスタンダードをどうしても感じてしまう。
すると、今回の氏のような主張をどのように捉えるべきかの問題になる。
まあ、共産党系の市民オンブズマンの指摘ぐらいに捉えるべきかなというのが私の結論だ。
まぐ |
2009年07月28日 08:32
あまり過大な期待を今回の政権交代劇に持つのはどうも危険なのだろうと思う。
鳩山代表の政治資金の透明性の問題と今度発表になったマニフェストが現実に合わせたものになっている事がそういう気分にさせる。もう分かったような気もするし前からうすうすは気が付いていてここに来て少し明瞭になった事なのかもしれないとも思う。彼らの行動原理または行動様式は既存のものと余り変わらないということが。
hide |
2009年07月28日 01:32
関連の西山太吉さんの回を見ました。佐藤栄作首相は日本を売ってノーベル賞を取ったという話、おおいに納得しました。国会による外交へのガバナンスが失われたままだと、アメリカに、中国に、下手をすると北朝鮮にまで国を売る輩が続出するのは生態学的に見て当たり前のことです。外交を考えないとどれだけ損をするかが非常によく分かりました。
私の前のコメントで行き過ぎた表現がありました。訂正してお詫びします。
toyokawa |
2009年07月27日 18:57
マル激では食傷気味のテーマですね
もう飽きちゃいましたw
まだ本編は見てないんですけど、目新しい内容もなかったし厨は5年ROMれ、ググレカスでよかったんじゃないですか?
匿各 |
2009年07月27日 05:43
前半は噺家みたいに話す人だなあと思えて、大学の退屈な講義を思い出したりしながら聴いていましたが、やっと後半の国連の話になったたら川辺さんの本音が出て来たようで面白かったです。最初からこのテンポで切り込んで頂きたかったな。
Nコメを聞いていて、革命が成就すると真っ先に粛正されるのは党員だという話を思い出した。
既に心変わりしている恋人の不実を必死にかばう宮台・神保らの姿は哀れである。
反体制でしか生きられない者がなまじ革命に参加しようとするから、無理があるのだ。
そのうち幻滅するか抹殺されるかどちらかだ。
あるいは彼らが権力者となるか。
だが、善玉が権力を握ったら、どうなるか?
それこそ歴史を見ればわかる。
自由を求める国民はむしろ悪玉に支配される方が数倍良いと思い知るだろう。
しかし、これもまたお勉強だ。
目を凝らしてよく見てみろ。
差し障りがある人はコメントしなくなったから。
名無し草 |
2009年07月26日 21:34
村田元外務次官とはそういう人だったんですか。知らなかった。新聞を読んでヒーローのような印象を持ってしまった自分が恥ずかしい。とすると河野外務委員長のあのスタンスというのも単に密約の暴露以上の意味もあるのでしょうか。
あき |
2009年07月26日 18:09
今回もたいへん面白かったです。
河辺氏の「国民がミラージュを見ている」との発言を聞いて、映画「マトリックス」を思い出しました。ザイオンが民主党で、モーフィアスは小沢一郎ですかね。エージェント・スミスは官僚かマスコミといったところでしょうか。この番組を見ることで僕の外務省プラグはすっかり外れてしまいました。
アメリカで「利益集団民主主義」から「参加型民主主義」への動きが活発になるきっかけはアレントの「人間の条件」の出版だと思いますので、日本は半世紀ほど遅れてますね。急いで巻きかえさなくっちゃ。
この番組を見て、たくさんのネオが誕生することをお祈りしております。
ウマ |
2009年07月26日 18:03
最後に日本人の国際感覚について触れた部分、歴史/地政学的に考えるとむしろ現状の説明がつく気がする。それが、現在/今後の国際感覚にどうはたらくのかが問題だろう。
stigmac |
2009年07月26日 16:54
佐藤優さんはお断りになったのでしょう?
あれほど企画が良ければどこへでも、という姿勢で大量に露出していらっしゃるようなのに、videonewsは断る、それ自体が強いメッセージだと受け取りました。
私は立派なご見識だと思います。
ベンジャミンフルフォードさんがいらしたとき、非常な緊張状態にあったこともそういうことなのでは、などと想像が広がりますね。
副島隆彦さんにご依頼されることはあるのかしら…
匿名 |
2009年07月26日 16:44
この学者面白くないな。。
卑しい学者という印象.
北岡のこと、別に言わなくてよいだろうに。
無記名 |
2009年07月26日 15:33
正力松太郎の地元は富山なので原子力発電所が福井にあることの理由としては不適当だと思います。正力に関しては独立の回を設けて扱って欲しいです。
賈雨村 |
2009年07月26日 03:58
大判昭和5・5・24は、当時の議員選挙法の「解散から30日以内に選挙せよ」という規定の理解に関して、期間計算の大原則として民法140条を援用し、かつ同法73条が任期を定めるにあたりわざわざ初日算入を宣言していることと対比すれば初日不算入の原則によったものであると判断しているから、きわめて整合性の高い判断であると思います。
ところで、現在民法(債権法)改正の提案が、非公式な形で進んでいますが、おそらく議論している当事者たちは、民法がこういうマターまで包摂する一般法だということを忘れていることと思われます。
法務省・(株)商事法務筋は、短期間に仕上げるとの姿勢のようですが、民法は一国の基本法であって、拙速な改正は末代まで禍根を残します。
民主党政権は、少なくともこのような改正は時間を(40年くらい)かけてやるべきだ、という認識に立ってもらいたいものです。
匿名 |
2009年07月26日 03:33
勉強になったことの最大のポイントが、戦前の軍部が「統帥権の独立」の名のもとにシビリアンコントロールの枠を外れていたことと同じ構造が、戦後の外務官僚にあったということです。「なるほど。そういうことだったのか」と思い当たることがあります。ここはストンと来ました。
toyokawa |
2009年07月26日 02:29
フェアであることと日本を否定することは同じではないですよね。河辺というこの人は何をフェアの基準にしようとしているのでしょうか。滅茶苦茶に違和感をおぼえました。
外務官僚と霞クラブの程度が低いのは私も同意します。しかし外務官僚を憎んで日本国を憎むのは違うでしょう。そもそも日本のODAは誰のためのODAだったのか。長らく日本最大のODA供与対象であった中国がその核兵器の照準を日本にあわせ、日本の領海を侵し、日本の安保理理事国入りに反対している事実をどう見るのか。そういう議論でしょう。
議論の中に勉強になったところも同意できる面もあったのは事実です。しかし正直に申し上げて薄汚い売国サヨクを見た思いです。非常に不快でした。表現が厳しくて申し訳ありませんが。
toyokawa |
2009年07月26日 02:21
無記名 |
2009年07月26日 00:36
今週は |
2009年07月25日 23:43
ゲストの方がリベラルで理想主義なのは学者だし悪くはないのですが、平板で深みのない印象を受けてしまいました。外務省が問題ある組織なのはわかりましたが、非核三原則や核廃絶や平和主義だけが評価基準の話だったのだろうか、という疑問がわいてきました。
アメリカやヨーロッパのリベラル(反ブッシュ、環境保護)が国益とは言わずもっと高次の理念を掲げる、というのは分かりますが、それも結局はエゴイズムの隠れ蓑ではないのか。日本はナイーブに理想を目指せということで、彼らのようにずるく理想を掲げて自己の利益を追求せよと言いたいわけではなさそうですね。
外交の話というともっと現場のどろどろした話を聞きたいです。佐藤優さんはまだ来ないんですね。
かぴばら |
2009年07月25日 23:19
民主党の政策集「INDEX2009」はどこでダウンロードできるのでしょうか?民主党のページをあさっても見つからないのですが…。
すぎた |
2009年07月25日 21:25
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