BPによるメキシコ湾の原油流出事故が、史上最悪の環境災害になっている。
4月20日にメキシコ湾のルイジアナ州沖合80キロで発生した海底油田を採掘するプラットフォームの爆破炎上とそれに伴う油井の破損は、事故発生から2カ月が経過した今も、依然として原油の流出が止まらない。
すでに石油の流出事故としては、1989年のアラスカのプリンスウィリアムズ湾におけるエクソン・バルディーズ号事件を抜いて、史上最大の規模となってしまった。
周辺の生態系や漁業への被害だけではない。メキシコ湾はハリケーンシーズンを迎えており、このまま流出が続けば漏れた原油がアメリカの東海岸にまで拡散する最悪の事態になりかねない。
原油漏れを止められない最大の理由は、この海底油田が1500メートルの深海にあるため、従来の対策がことごとく通用しないからだ。これと似た海底油田プラットフォームは、世界には6000基以上も存在する。
石油問題に詳しい丸紅経済研究所の柴田明夫代表は、今回の事故の背景には、陸上から容易に取り出せる「イージーオイル」の枯渇が始まり、石油需要を満たすためには、海底深くの油田を掘ったり、オイルサンドのように抽出に膨大なコストがかかる「ハードオイル」に依存しなければならなくなっている現実があると指摘する。
柴田氏によれば、イージーオイルは2010年前後にピークに到達している可能性が高く、これまでと同じような石油需要を満たさなければならないとすれば、ハードオイルへの依存をますます高めざるをえない。その結果、石油の採掘コストが上昇するだけでなく、今回の事故のようなリスクも増すことが予想される。いずれも、石油価格の上昇圧力となる。
しかも、インドや中国などの新興国の石油需要が急増している。このため人類は2000メートルを超える海底や、不純物が多く混じるため抽出コストがかかるオイルサンドやタールサンドなどのハードオイルへの依存度を高めていくことになる。
メキシコ湾の事故は、石油時代の終わりの始まりを告げる歴史的な出来事となるのか。それとも人類は、この事故をも乗り越え、飽くなき油田の開発を続けることになるのか。この事故をきっかけに、世界最大の石油消費国アメリカが、石油依存体質から脱却し、再生可能エネルギーにシフトしていく可能性はあるのか。
人類史における石油の意味を問いつつ、メキシコ湾の原油流出事故の影響を柴田氏と議論した。
- 保守派優勢の米最高裁が銃規制に違憲判決
- 検察は控訴の断念を 郵便不正事件で村木被告最終弁論
- 危機に瀕するもう一つのワールドカップへの参加
マル激トーク・オン・ディマンド 第372回(2008年05月17日)
日本が再生可能エネルギーを推進すべきこれだけの理由
ゲスト:飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)
マル激トーク・オン・ディマンド 第349回(2007年12月08日)
カネさえ出せば資源が買える時代は終わった?!
ゲスト:柴田明夫氏(丸紅経済研究所所長)
マル激トーク・オン・ディマンド 第466回(2010年03月20日)
なぜわれわれは社会の敵を求めるのか
ゲスト:弘中惇一郎氏(弁護士)
柴田 明夫しばた あきお
(丸紅経済研究所代表)
|
1951年栃木県生まれ。76年東京大学農学部卒業。76年に丸紅入社。鉄鋼第一本部、調査部、業務部を経て、02年丸紅経済研究所主任研究員、06年同所長を経て、10年より現職。著書に『原油100ドル時代の成長戦略』、『資源争奪戦 最新レポート2030年の危機』など。 |
|