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マル激トーク・オン・ディマンド 第28巻(第281〜290回収録)詳細
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収録日 2006年08月18日(PART1:1時間30分 PART2:1時間40分)
『小泉政治の総決算』その3:働かない日本 働けない日本
ゲスト 鎌田慧氏(ルポライター)

 小泉政治の5年間を検証する「小泉政治の総決算」シリーズ第3弾は、長年にわたり日本の労働者の現状をつぶさに取材してきたルポライターの鎌田慧氏をゲストに迎え、小泉改革の負の遺産と言われる格差社会の現状について、鎌田氏の豊富な現場情報をもとに議論を進めた。
 鉄鋼全盛の時代から労働問題を取材してきた鎌田氏は、今日の労働者の権利は1950年代並に悪化していると指摘し、その背景に労働者派遣法や労働基準法などの大幅な法改正があると言う。厚生労働省の統計によると、パートやアルバイト、派遣などの社員ではない不安定な形で雇われている人の数は04年に1500万人を超え、今や全雇用者の3分の1を占める。
 かつて戦後日本の炭鉱や土木現場で行われていた、期間工や日雇い労働者を集めてきて賃金をピンはねする行為は違法行為とされ、それがヤクザ発祥の源になったとまで言われる。しかし、86年に労働者派遣法が制定されて以来、労働者を派遣して上前をはねる行為が正当なビジネスとして急速に拡大した。一見、雇用者にも被雇用者にもメリットがあるかのように喧伝されている労働者派遣ビジネスだが、その実は最少のリスクで都合良く使い捨ての労働力を得たいと考える企業のためにあり、多くの労働者が厳しい雇用条件のもとで経済的に不安定な生活を強いられていると、鎌田氏は警鐘を鳴らす。
 鎌田氏はまた、企業がグローバル市場での熾烈な競争に晒される中、かつては企業が担っていた日本における相互扶助のシステムが崩壊しており、低賃金で不安定な仕事を転々とする中で将来の見通しがたたない労働者が、行き場を失っていると言う。特にそれが若い世代で増えていることも、問題をより深刻にしている。
 そして、彼らの閉塞感や絶望感に巧みに訴えることで、本来は彼らを追いつめる政策を実行しておきながら、彼らからまんまと票や支持を取り付けることに成功していたのが小泉政権の本質だというのが、鎌田氏の見立てだ。
 それにしても日本はいつから働きたい人が働けない国になってしまったのか。格差社会の長期的な影響はどこに現れるのか。小泉政権の交代で、状況が改善される可能性はあるのか。鎌田氏と共に考えた。
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収録日 2006年08月26日(PART1:1時間2分 PART2:1時間17分)
シリーズ『小泉政治の総決算』その4:幸運か実力か小泉政権が5年続いた理由(わけ)

ゲスト 角谷浩一氏(政治ジャーナリスト)

 小泉政権の評価については、現在もそして未来においても、意見が分かれるだろうが、政権が5年という長期にわたった点と、過去の政権が取り組むことができなかった大きな課題に取り組んだという意味では、歴史に残る本格政権だったことだけは言を待たない。
 確かに小泉政権下では、安全保障面でテロ特措法や有事法制、日朝会談など長年の懸案事項が進展した他、内政面では郵政の民営化など、55年体制下での既得権益の破壊が大きく進んだ。
 中身の評価は横に置くにしても、派閥の領袖ではないために党内に権力基盤を持たず、自身も必ずしも主要閣僚を経験してきたわけでもない小泉首相の政権が、なぜ5年間も続き、しかもこれだけの大きな仕事をなしえたのかは検証に値する。
 確かに小泉首相にとっては時の運もあった。小泉政権実現の発端となった2001年の自民党の総裁選で受けた党員からの圧倒的な支持も、小渕、森と続いた前政権があまりにも不人気だったため、参議院選挙を控えて党員の多くは、実力の橋本龍太郎元首相よりも人気があり有権者受けする小泉氏を好んだ結果だった。また、政権発足直後にアメリカで9・11の同時テロが発生し、ブッシュ政権との同盟関係の強化が不可欠となっていたことも、小泉政権の外交政策を容易にした。また、最大野党の民主党が不祥事や党内抗争に明け暮れていたことも、小泉政権を更に利する結果となった。
 しかし、2002年の電撃的な訪朝を実現したあたりから、首相の「自民党をぶっ壊す」といったレトリックが国民に圧倒的な支持を受け続けるにつれて、小泉政権は自民党史上希有な本格政権へと進化していった。
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は、小泉政権の力の源泉は、55年体制下で自民党を支配してきた経世会(旧田中派)政治に対する強烈なルサンチマン(怨念)にあったと分析する。小泉政権の政策面での功績を見ると、全てと言っていいほど、経世会の既得権益の破壊を伴う案件ばかりが並んでいるからだ。経世会支配に対する長年の恨みが、「どのボタンを押せば壊れるかをいやというほど知っている」首相を誕生させた。また、経世会の「数の政治」に対抗するためには「人気の政治」が不可欠だったというのだ。
 郵政を民営化することで、経世会の強力な集票マシーンでこあった特定郵便局を弱体化させると同時に、公共事業や特殊法人に垂れ流されてきた郵貯や簡保を財源とする財政投融資もコントロールすることに成功した。また、首相官邸のもとに諮問委員会を設置して官邸自らが直接政策を打ち指すことで、族議員たちが跋扈する党内の部会の機能を弱めることもできた。これらはいずれも、小泉改革の柱であったと同時に、経世会政治をぶっ壊す結果につながっている。その意味では、小泉政権とは、自らが恨みを持つ経世会をぶっこわすことが、たまたま日本の構造問題の改革にもつながるという、また別の意味においても幸運な政権だったのかもしれない。
 しかし、運と経世会への怨念だけで、本当にあれだけの長期政権が築けるものなのだろうか。小泉政権がお化けした背景には、それ以外にも何かもっと大きな構造的な変化があったのではないか。角谷氏とともに小泉政権の5年間を振り返り、節目節目で何が起きていたかを再検証しながら、小泉政権の真の力の源泉が何だったかを再考してみた。
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収録日 2006年09月01日(PART1:1時間15分 PART2:37分)
シリーズ『小泉政治の総決算』その5:小泉内閣は改革政権にあらず
ゲスト 植草一秀氏(名古屋商大大学院教授)

 小泉政治を検証するシリーズ企画の第5弾は、小泉政権の経済改革に一貫して異論を唱えているエコノミストで名古屋商科大学大学院の植草一秀教授をゲストに迎え、小泉政権の5年間の経済政策とその影響を議論した。
 まず植草氏は小泉政権が、構造改革によって日本経済を復活させた政権であるとの一般的な評価に対して「笑止千万」であると、この見方を全面的に否定。「通信簿で言うなら、一旦「オール1」までさがった後に、ちょっと成績が上がった」ため、大多数の国民があたかも改革が成功したかの錯覚に陥っていると酷評する。
 そもそも小泉政権は改革の2本柱として国債発行を30兆円以下に抑える緊縮財政と不良債権処理を推進することで退出すべき企業は退出させる方針を明確に打ち出していた。しかし、この政策によって日本経済は金融恐慌寸前の状態に陥り、政権発足2年後の03年の4月末には株価が政権発足時の約半分の7000円台にまで暴落した。
 そこで小泉政権は、自ら掲げた改革路線を180度転換させ、退出すべき企業も救済すると同時に、緊縮財政廬論もかなぐり捨て、国債発行30兆円枠も自ら放棄した。
 その政策転換が顕著に出たのが、03年5月のりそな銀行の救済だったと植草氏は言う。本来破綻処理されるべきりそなを、監査法人による不透明な自己資本比率の査定によって救済対象とした上で2兆円の公的資金を注入して、りそな銀行を存続させた。この時「退出すべき企業は退出させる」改革路線の放棄が明確になり、株式市場はその安堵感から上昇に転じた。これが小泉改革が終わった瞬間だった。この夏を機に日本経済は回復に向かったが、それは小泉政権が「改革」を放棄したからであって、それを改革の成果と主張するのはまったくのナンセンスであると植草氏は主張する。
 また、「とは言え、結果的に景気が回復したのだからいいのではないか」との指摘に対しては、退場させるべきプレーヤーを退場させずに救済したことで、重大なモラルハザードを招いたことを忘れてはならないと植草氏は警告する。不透明で中途半端な政策転換により、日本経済は再びバブルを起こしやすい体質を抱え込むことになってしまったというのだ。
 他方、小泉改革が残した負の遺産は非常に深刻だ。植草氏によると、小泉政権前期の「改革」により、日本経済は極度の劣化を起こし、失業や倒産が増加、多くの中小企業経営が路頭に迷ったり、自殺に追い込まれたりした。しかもその間、生活保護や老人医療費、健康保険の給付、身体障害者の支援などは一貫して減額されており、小泉政権の5年間で低所得者や過疎地域の「少数弱者」の切り捨てが徹底して進んだと指摘する。
 しかし、植草氏は小泉政治にはより大きな罪があると言う。それは、「構造改革」の名のもとに行った様々な制度改革はその内実をよく見てみると、実際はこれまで日本の政治を支配してきた旧田中派の建設・運輸関連と郵政関連の利権を破壊し、それを小泉氏自身の出身母体となっている財務・金融利権へと塗り替えただけでのものに過ぎないというのだ。そこには国民の生活をよりよくするなどの「国民の側に立った視点」はまったく欠如している。しかも、その「利権の移動」を、アメリカの後ろ盾で行いながら、アメリカのファンドなどにはしっかりと稼がせているという。これが、植草氏が、小泉改革を「売国奴的」とまで呼んで酷評する最大の理由だ。
 小泉政権の経済政策は何を壊し何を救ったのか。小泉政権の経済改革で、われわれ国民はより幸せになったのか。安倍政権が小泉改革路線を継続した場合、今後日本経済にはどのような影響が出るのか。植草氏と共に考えた。
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収録日 2006年09月06日(PART1:1時間13分 PART2:1時間46分)
シリーズ『小泉政治の総決算』その6:小泉劇場はなぜ飽きられなかったのか
ゲスト 世耕弘成氏(参議院議員):篠田博之氏(「創」編集長)

 小泉政権の5年間を検証するシリーズ企画の第6弾は、「小泉政治とメディア」をテーマに取り上げた。前半は小泉政権のもとで党の広報戦略を取り仕切った世耕弘成参議院議員、後半では長年マスコミを見てきた雑誌「創」編集長の篠田博之氏をゲストに迎え、小泉政権がなぜ改革のイメージを維持することに成功し、高い支持率を維持し続けることができたのかを議論した。
 NTTの広報マンから参議院議員だった伯父の地盤を引き継いだ世耕氏は、小泉政権以前の自民党では民間企業では当たり前に行われているような広報体制が、まるで確立されていなかったと言う。そのため安倍幹事長の下で広報体制の刷新を委ねられた世耕氏は、PR会社の採用や情報管理の一元化など、基本的な広報体制の整備を進めた。その成果が如実に表れたのが05年9月の郵政選挙だったと世耕氏は言う。あの選挙で自民党は、PR会社や世論調査機能を駆使しながら、郵政一本で押して本当に有権者がついてきてくれるかどうかの難しい判断を下し、選挙に勝利した。「あの選挙の大勝で党内に広報の重要性がある程度は認識された」と自負する世耕氏は、「次は官邸の広報体制だ」と、安倍晋三氏の側近中の側近として、早くも次期政権の広報体制にまで思いを馳せる。
 他方、『創』の篠田編集長は、小泉政権は国民の期待感を高め、「国民に近い総理」を演出することに成功したが、本来その中身をチェックするはずのメディアが、その義務を怠ったために、総理の高い人気が続いたと指摘。今日のメディア関係者の間では既に「メディアは権力を批判するもの」との前提が成り立たなくなっていると警鐘を鳴らす。「小泉劇場」が人気を博し続けることができたのは、「政権のメディア操縦のうまさと、メディアの権力チェック機能の弱体化」の両方が背景にあると篠田氏は言う。
 なぜ、イラク戦争への自衛隊派遣や靖国参拝、弱者切り捨てと格差の拡大などの困難な課題を抱えた小泉政権が、これほど長期にわたり国民からの高い支持を維持することが可能だったのか。小泉劇場においてメディアはどのような役割を演じたのか。安倍政権下では政治とメディアとの関係はどう変わるのか。小泉政権のメディア戦略の成功の背景と影響を世耕氏、篠田氏と共に考えた。
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収録日 2006年09月15日 (PART1:60分 PART2:1時間2分)
WEB2.0は本物か
ゲスト 大津山 訓男氏(アットマーク・ベンチャー株式会社代表取締役社長)

 「WEB2.0」という言葉が、飛び交っている。一般的には情報が個別に存在していたWEB1.0時代に対し、双方向性をもって情報のやり取りができるインターネットの進化をあらわした概念とされるものだが、その象徴とされるSNSの最大手mixi(ミクシィ)が今週東証マザーズに上場した際には、買い手が多すぎて初日で値がつかないほどの人気ぶりだった。どうやらWEB2.0バブルとも呼べそうな現象が起きつつあるようだ。
 しかし、2000年にWEB1.0バブルがはじけた時のように、このバブルも早晩消えゆくものなのだろうか。はたまた、WEB2.0は本物なのだろうか。
 インターネットの黎明期から長年ウエッブビジネスに深く関わってきた大津山氏は、WEB2.0の真価はこれから問われることになると説く。例えばミクシーはまだ「デジタル井戸端会議」でしかないが、これがカーナビや家電製品と融合すると、ウェッブビジネスは新たな段階に突入する可能性を秘めていると言うのだ。「バブルな状況はあるが、決してそれだけでは終わらない実態もある。」これが大津山氏のWEB2.0の見立てだ。
 大津山氏はまた、WEB2.0の本当の意味を、「今までウェッブビジネスをパソコンやマイクロソフトに独占されてきた自動車メーカーや家電メーカーが、巻き返しを図るビジネスチャンス」と位置づける。CPUの性能が上がると同時にブロードバンドや無線のインフラが整備されたことで、自動車やあらゆる家電にもネット機能が盛り込まれることになる。そしてそれは、OSやPCに依存しないウェッブ利用が可能になることをも意味するからだ。現にグーグルは、ネットにつながりさえすればOSもソフトも一切必要のない、すべてはウエッブ上で利用が可能な100ドルのPCを売り出し始めていると言う。
 果たしてWEB2.0に実態はあるのか。これもまた一つのバブルとして消えてゆくのものなのか。それとも、今回は本物なのか。仮に本物だとすると、それは私たちの生活にどう影響し、社会をどう変えていくのか。ウエッブ界の仕掛け人大津山氏とともにWEB2.0を議論した。
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収録日 2006年09月22日 (PART1:60分 PART2:49分)
安倍政権「美しい国」への提言
ゲスト ジェラルド・カーチス氏(コロンビア大学教授)

 安倍内閣が発足する。
 国民的人気は高いものの、年齢的にも政治経験の上でも未知数の安倍新総理に対しては、現在の内外の難局の舵取りをまかせる側としては、期待と不安が相半ばする。
 しかし、海外から長年日本の政治をウォッチしてきたコロンビア大学のジェラルド・カーチス教授は、安倍政権が小泉政権の真似をして安直なポピュリズム路線を走れば、新政権は短命に終わるだろうと予測する。そもそも小泉劇場は小泉純一郎という個人の資質に請うところが大きかった上、現在日本が置かれた現状は小泉政権が誕生した2001年とは経済的にも政治的にも大きく異なってきているからだ。
 その一方でカーチス教授は、一見タカ派色が強く右寄りと言われる安倍総理が、意外にも現実路線を選択し、靖国参拝を行わずに、中国との関係修復に向かう可能性が高いと見る。現在の日中関係や日米関係を考えると、それ以外の選択肢はあまりにも日本にとってリスクが大きすぎるというのがその理由だ。
 現実路線を軌道に乗せ、国民の支持を集めることができれば、安倍政権が本格政権となる可能性も十分にあるとカーチス教授は言う。
 「安倍首相がそのような路線を選んだ時、日本のメディアと有権者が、安倍政権を支持し続けるかどうかが、政権の命運を左右することになるだろう。」カーチス教授はこう述べ、これまで安倍人気を支えてきた強硬派路線の信望者たちが、逆に安倍政権が現実路線を選ぶことの足枷になる可能性を懸念する。
 安倍政権は、唯一の資産と言ってもいい人気を温存しながらも、現実路線を選択することが可能なのか。その場合の条件は何なのか。安倍氏の「美しい国」とはどんな理念であるべきなのか。カーチス教授とともに考えた。
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収録日 2006年09月29日 (PART1:1時間15分 PART2:1時間15分)
安倍内閣、支持率70%の中身を問う
ゲスト 山口二郎氏(北海道大学教授)

 5回目の金曜日のある月恒例となった無料放送の5金スペシャル。
 今回は前半に山口二郎教授と安倍内閣の実像に迫った。
 発足直後のマスコミ各社の世論調査で70%前後の高い支持率を得た安倍政権だが、その人気の源とは何なのか。日本人は安倍内閣に何を期待しているか。その期待は現実のものとなる可能性がどの程度あるのかなどを考えた。
 また、山口教授は安倍内閣の布陣を見ると、自民党が右翼政党の様相を呈し始めていると主張するが、その根拠とは何か。アメリカのホワイトハウスを彷彿とさせる内閣補佐官の増員によって、官邸主導政治はますます強まるのか。その結果政治の世界にどのような変化が起きるのかなどを、山口氏とともに考えた。
 後半は恒例となった視聴者メールの一気公開。今回は食品添加物博士の安部司氏、光市母子殺人事件被告の代理人で死刑廃止運動を引っ張る安田好弘弁護士、独特な歴史論争を繰り広げた漫画家の江川達也氏、番組出演直後に痴漢容疑で逮捕された植草一秀氏の回の放送に対するコメントが多く寄せられた。また、宮台氏の独特の言い回しや過激な表現、難解な横文字言葉への注文なども相次いだ。
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収録日 2006年10月06日 (PART1:1時間33分 PART2:1時間26分)
私が脳死移植に断固反対する理由
ゲスト 小松美彦氏(東京海洋大学教授)

 四国の宇和島で金銭のやりとりが介在する腎臓の生体移植が行われていたことが明らかになり、衝撃を呼んでいる。この事件そのものは、お金を貸していた人が、返済と逆融資の見返りに腎臓を提供したが、お金が支払われなかったために警察に訴え出たという、少々わけのわからない話。病院も、まさかそんな背景だとはは知らずに手術をしてしまったと言っているが、いずれにしてもこれは言わば非常にアブノーマルなケースだったために事件が明るみに出たが、借金の肩代わりに臓器提供を求めるなどの事例が水面下で横行している可能性を示唆する事件として注目される。
 しかし、この事件はもう一つより大きな問題提起をしている。それは、この事件を発端に、世論が臓器移植をより厳しく取り締まるべきであるという方向よりも、むしろ臓器移植をより容易にすべきではないかとの方向に傾く可能性が非常に高いということだ。
 この事件のメディア報道を見ると、臓器の売買はいけないことだが、結局は臓器移植の需要が高いにもかかわらず、供給、すなわち臓器を提供してもいいと考えるドナーの数が圧倒的に少ないため、このような事件が起きるんだという言説が目につく。現に、脳死を無条件で人の死と定義し、本人の承諾がなくても脳死者からの臓器の取り出しを可能にする改定臓器移植法の法案が今国会に上程されており、現時点ではそれが可決・成立する可能性が非常に高いとみられている。宇和島の事件も、法案成立を後押しする要因となる可能性が高い。この法案が通れば、日本でも欧米と同様に脳死が人の死となり、欧米並の数の臓器移植が行われるようになる可能性が高い。このこと、つまり国内での臓器移植がより容易になること自体が、一見いいことのように喧伝されているようでもある。
 しかし、科学史・生命倫理学の専門家で臓器移植推進の流れに異を唱える東京海洋大学の小松美彦教授は、こうした流れに対して強い危機感を抱いているという。小松氏によると、そもそも脳死を人の死とする考え方自体が、その後のさまざまな科学的知見によって崩れてきているにもかかわらず、世界はより脳死の定義を緩め、臓器移植を容易にする明らかに危うい方向に向かっていると言うのだ。
 確かに、脳死判定の結果、脳死と宣告されても、まだその患者の心臓も動いているし体温も維持されている。だからこそ臓器移植が可能なわけだが、その体から臓器を取り出そうとすると、患者の体からは汗が噴き出し血圧もあがるなど、痛みを感じる時とほぼ同じような症状が見られるという。そのため欧米では、脳死者から臓器を取り出す際にモルヒネなどの麻酔を打つことが常識となっている。何と、死体が暴れることがあるので、死体に麻酔を打っているというのだ。暴れる死体が本当に死体と言えるのか。小松氏はそう問いかける。
 現に脳死を宣告されながら、その後何年も生き続けているケースも少なからず出てきているし、脳死状態でも、家族の呼びかけには顔を紅潮させるなどの形で反応するケースもあると小松氏はいう。そもそも脳死というものが、単に人間が作った脳死判定基準のもとで反応が見られないという意味であったり、自らの意思表示をするなどのアウトプットはできなくなっていても、インプット、つまり声を聞いたり理解できている可能性はあるというのが、脳死を人の死とはできないと主張する根拠の一つとなっている。
 また、小松氏は、移植をすればより長く生きられるという前提そのものにも疑問を呈する。臓器移植をしなければ助からないが、臓器移植をすれば命が助かり、その方がより長く生きられると考える根拠は、必ずしもデータで裏付けられているものではないと言うのだ。更に、臓器移植を受ければ、その後の人生は免疫抑制剤による免疫力の低下からくる感染症との熾烈な闘いになる。移植した臓器で生きられる年数も限られているケースがほとんどだ。にもかかわらず、なぜそうまでして脳死移植を推進しようとするのか。小松氏は疑問を呈する。
 しかし、そうした実質的な議論を全て横に置いたとしても、小松氏は、何をもって人の死とするかの基準を国や政府が決めることに、根本的な問題があると主張する。人の死生観という人間にとって最も根本的な価値観は、国によっても個人によってもさまざまであるべきで、単に臓器を有効に活用したいというだけの理由で国や権力にそれを決定する権限を与える法案には、何があっても断固反対していくと小松氏は言う。
 1997年に制定された日本の臓器移植法では、脳死を人の死と確定するところまでは合意が得られず、「臓器移植の場合に限り脳死を人に死とする」という少々意味不明な玉虫色の定義のまま見切り発車した形になっている。それから9年。その後、脳死については何が明らかになったのか。日本は欧米並に脳を人間の「核」と位置づけ、脳死を人の死と確定できるところまで、われわれは本当にこの問題と十分に向き合ってきたのか。臓器移植については、受け手側のメリットばかりが強調され、その全体像が理解されていないというようなことはないのか。宇和島の事件を発端にあらためて浮き彫りになった疑問点を、脳死反対論者の急先鋒の小松氏にぶつけながら、今あらためて臓器移植と脳死問題を多面的に考えてみた。
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収録日 2006年10月13日 (PART1:1時間32分 PART2:1時間14分)
麻原の神格化は大きな過ちだった
ゲスト 上祐史浩氏(アーレフ代表)

 先月15日オウム真理教の教祖麻原彰晃こと松本智津夫被告の死刑が確定し、96年の初公判から10年半近く続いた裁判に終止符が打たれた。一方、名前をアーレフに改称した教団は、教祖への帰依から脱却し新しい教義に基づく教団を目指すM派(上祐派)、松本被告の三女を担ぐA派(反上祐派)、まだ態度を決めていない中間派の3 派に分裂状態にある。
 オウム真理教時代に教団の表の顔としてメディアに頻繁に登場し、逮捕・出所後はアーレフに改称した教団を代表として率いてきた上祐氏は、現在の分裂騒動はそのまま麻原教祖への帰依の度合いを反映していると説明する。神格化された教祖への帰依から脱し、新たな方向を探る人々が上祐氏のもとに集まる一方で、その行為を教祖への裏切りと見て、教祖とその後継者とされる松本氏の三女への帰依を続ける人々が、A派(三女の宗教名のアーチャリーの頭文字をとったもの)を形成しているというのだ。
 10年以上もの間麻原教祖に心酔し、その権威を絶対視していた上祐氏自身は、偽証罪等の罪で服役中に、教祖の預言の矛盾や不規則発言に対する疑念が頭をもたげ始め、出所後にオウムの起こした事件を自分の中で総括するうちに、松本被告の神格化が教団の暴走を許した大きな原因であったとの結論に達したと言う。「元代表(麻原教祖)は霊的な能力は強かったが、それがイコール神様となることの矛盾に、その時は気づかなかった。霊的なるものへの免疫ができていなかった」上祐氏はそう振り返る。
 また、この期に及んで宗教教団を維持している理由について上祐氏は、「世間から絶対悪とされた自分たちでも、変われることを示す」ことが事件の遺族や被害者への償いの必要不可欠な部分になるとの考えを示した。と同時に、今後、松本被告の死刑が執行された際に心の拠り所を失った信者の受け皿も必要になると説く上祐氏は、来年早々にも新しい教団の設立を計画中であることを明らかにした。
 それにしても、なぜたった一人の、傍目には子供じみた発想しか持ち得ていないようにさえ見える教祖が、地下鉄サリン事件など日本犯罪史の中でも前代未聞の凶悪なテロ事件を引き起こすまでに、一宗教教団を先鋭化することが可能だったのか。あれだけの大事件を起こした教団が、教祖を乗り越えて、その体質を根本から変えることなど本当に可能なのか。分裂騒動に揺れる中で、賠償問題は今後どうなるのか。上祐氏に一つ一つ問いただす中で、オウム事件を今改めて再考した。
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収録日 2006年10月18日(PART1:60分 PART2:53分)
金正日は核で何をしようとしているのか
ゲスト 武貞秀士氏(防衛研究所主任研究官)

 10月9日に北朝鮮が行った核実験について、追い詰められて自暴自棄になった金正日の最後のカードとの報道がされている。しかし、長年朝鮮半島を見てきた防衛研究所の武貞秀士氏は、今回の実験には、制裁を受けるコストを払ってでも核兵器を持つことで、朝鮮半島の統一を有利に進めるという金正日の長期的な国家戦略に基づく意図があるとの見方を示す。
 また、核実験を機に日本の核武装論についての発言が閣僚から相次いでいることについて武貞氏は、「少し飛躍しすぎ」と評したうえで、「日本が通常戦力で攻撃をすれば、北朝鮮は無事ではないと言える能力をつけることは可能だし、その議論の方が合理的」と言う。
 さらに、今後日本が行うべきこととして、常に定点観測できる数の情報衛星など導入によって、情報収集能力を高めることも必要だと説く。「7月のテポドンミサイル発射や今回の核実験に関する情報を日本政府は受け取っていたとの報道があるが、むしろ日本が調査した結果を中国・韓国・アメリカに状況説明をできるだけの情報収集能力が必要だ。ソフトウェアの分析や地上の施設などの情報収集が大事であって、それを飛び越えての核武装には、防衛戦略としての各論が全くない」と述べた。
 北朝鮮がこのタイミングで核実験を行った意図はどこにあるのか。日米韓の対北朝鮮政策は失敗だったのか、日本の防衛戦略はどうあるべきか。武貞氏とともに考えた。
 
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