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マル激トーク・オン・ディマンド 第32巻(第321〜330回収録)詳細
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収録日 2007年05月25日(PART1:65分 PART2:64分)
新聞ビジネスはすでに破綻している

ゲスト:河内孝氏(元毎日新聞社常務取締役)

 日本は、世界に比類無き新聞大国だ。朝日、読売、毎日、産経、日経の全国紙5紙を筆頭に毎日4700万部もの新聞が宅配され、人口一人当たりの普及率も世界で群を抜いている。免許事業のテレビ局のような監督官庁の干渉を受けることもない新聞は、まさに独立した言論の府として確たる地位を築いているかに見える。しかも、この5大紙は全国ネットの放送局を始め、日本中のテレビ局やラジオ局に資本参加し、その多くを実質的な支配下に置いている。今日若者の活字離れやインターネットの急進に牙城を脅かされているとはいえ、日本の新聞ほど強力な言論機関は世界でも他に類を見ない。
 ところが、その新聞王国が、外からの脅威によってではなく、自らの足下から崩れ始めている。毎日新聞社で常務まで勤め、昨年まで経営面から新聞界を見つめてきた河内孝氏は、すでに「新聞ビジネスは破綻している」と言い切って憚らない。
 高度成長期に、人口増と核家族化の波に乗り発行部数を急拡大した全国紙は、部数至上主義に走った結果、販売経費が売り上げの4割を超える超高コスト構造に陥っているというのだ。販売経費を節約しようにも、戸別配達制度を支える専売店を切り捨てることは簡単ではない。その異常な収益体質を支えるのは広告費だが、バブル期以降、広告効果によりシビアになった広告主は、新聞の選別を進めている。
 広告費は減少し、若者の活字離れで1日の新聞の閲覧時間も既にラジオを下回り、インターネットの半分にも満たないところまで落ち込んでいる。河内氏は、朝日、読売、日経の3強以外の新聞社は、ビジネスとしてすでに破綻しており、このままでは近い将来、市場から退場せざるをえなくなるだろうと言い切る。
 また、新聞社はもう一つ深刻な問題を抱えている。それは、現在の新聞ビジネスが数々の法的な特権の上の成り立っており、その特権を失えば新聞社の大半は経営が成り立たなくなるという問題だ。しかも、新聞社の特権の多くは、自分たちがその実態を報じないために一般社会に知られていないが、一度それが市民の知るところとなれば、とてもではないが社会的正当性を持たないものばかりなのだ。
 例えば、その最たるものが再販制度だが、今再販制度という特権を失えば、大半の新聞社は軒並み赤字に転落する可能性が高いという。現に公正取引委員会はこれだけの繁栄を享受している新聞を再販という特権で保護することに対して、繰り返し見直し意向を表明している。これまでは新聞社のなりふり構わぬ抵抗で何とか再販制度の廃止は免れてきたが、河内氏はそもそも、再販制度自体が、戦前の統制経済の残滓であり、それに依存した経営体質自体が、現在の自由化の波の中ではもはや通用しないビジネスモデルであることの証左となっていると指摘する。
 しかし新聞業界が抱えるより深刻な問題は、これだけの問題を抱えていながら、それに対する有効な施策をとれないところにある。そしてその最大の理由が、新聞の強大なメディア支配力ゆえに、他のメディアで新聞のこの構造的問題が明らかにされることがないからだ。新聞社は東京のキー局から地方局にいたるまでのテレビに、BS、CS、ラジオ、地方紙らを、資本関係と人的交流で強固な支配構造を作り上げた。このマスコミ同士のズブズブな関係が、メディア間の相互批判を妨げ、結果的に新聞の自浄能力を失わせている。
 しかも、新聞は再販に加えて、国有地の払い下げや買収の脅威からの保護など、数々の特権を政府によって保証されている。新聞はすでに言論機関としての批判能力や権力の監視能力を発揮できる立場にはないと河合氏は指摘する。
 一見新聞にとっては力の源泉となっているかに見えるテレビ局との系列化も、河内氏は新聞が牙を抜かれる原因となったと指摘する。1960年代から70年代にかけて、郵政族のドンだった田中氏の采配で5つの全国ネット放送局が5大紙と系列化されたが、本来政府から何の干渉も受けない立場にあったはずの新聞が、免許事業のテレビを抱えたことで、政府に対する批判能力はいやがおうにも低下したと河内氏は指摘するのだ。もし田中氏が、新聞の牙を抜くためにテレビという一見甘そうな毒を飲ませたとすれば、田中角栄という政治家の戦略眼には脱帽するほかない。
 河内氏は、新聞が再販制度や幾多もの法律上の恩恵を受けるのであれば、自ら情報開示を行い、合理化努力をすべきだと説く。1日に数時間しか稼動しない自前の印刷工場や、年に何回かしか利用されない取材用航空機を保有する愚を新聞社はいつまで続けるのか。バブル期以降、落ちる一方の販売部数や広告売上を実感しながら、新聞社内部の危機意識は、恐ろしいほど低いと河内氏は言う。
 新聞を愛するが故に問題の告発に踏み切ったと言う河内氏とともに、ロンリーダイナソー(孤独な恐竜)新聞の厳しい内実と未来像について考えた。
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収録日 2007年06月01日(PART1:77分 PART2:50分)
プロ野球の凋落にみる日本問題の深層

ゲスト:大坪正則氏(帝京大学経済学部教授)

 昨年11月、米メジャーリーグのボストン・レッドソックスは、西武ライオンズの松坂大輔投手の獲得のために、総額で120億円をつぎ込んだ。日本で選手獲得にこれだけの資金を使えば、確実に経営が成り立たなくなる。日本のプロ野球の各球団は、発足から73年たった現在にいたっても、親会社からの赤字補填なしには、経営が成り立たないところが多いのが実情なのだ。
 その松坂は既にメジャーリーグで7勝をあげ、レッドソックスのアメリカンリーグ東地区首位独走の原動力となっている。来年以降、日本野球のトッププレーヤーが次々とメジャーに引き抜かれていることになることは必至だろう。もはや日本のプロ野球には、松坂レベルの才能を引き止めるだけの力が存在しないのだ。
 しかし、アメリカのスポーツビジネスに詳しい大坪正則氏は、松坂獲得のための投資は「決して、高くはない」という。なぜならば、レッドソックスは松坂獲得でテレビの放映権を含む膨大な収益をあげることができる構造がメジャーリーグには出来上がっているからだ。
 アメリカンフットボールやバスケットボール、アイスホッケーなど多種多様なアメリカのプロスポーツの日本国内でのマーケティングを手がけてきた大坪氏は、アメリカのプロスポーツが商業的に成功している理由として、フランチャイズによる独占とコミッショナーによる営業力強化で、常に売り手市場で交渉を進められる立場を貫く戦略をとっている点を強調する。
 プロスポーツのクラブ(球団)にとって収入源は、チケット販売と、球場での物販、試合の放映権や商業化権、広告料の5種類あるが、アメリカではその5つのうち、チケット販売収入と球場での物販収入はそれぞれ地域でフランチャイズ(地域独占権)を持つ球団が握るが、試合の放映権や商業化権、広告料については、コミッショナーが一括して交渉権を持ち、その利益はコミッショナー経由で全球団に分配されるようになっている。そうすることで、収入源の5つすべてにおいて、売り手側が独占的に交渉できる立場に立つことが可能となり、より有利な条件が引き出せるというのだ。
 そして、200億円を超える1チームの収入の内、60%が選手の報酬に使われている。結果的にメジャーリーグの選手の平均年俸は日本のプロ野球の8倍にも上り、松坂のような素質のある選手が次々と日本を去っていくことにつながってしまうと大坪氏は言う。
 一方、日本のプロ野球は、各球団が5つの収入源をすべて球団ごとに保有している。各球団がバラバラに営業をしている上、球団間で利害が競合するため、常に買い手市場となり、買い叩かれてしまう。例えば、野球帽を売りたいと考えた百貨店は、ある球団との取り引き条件が悪ければ、別の球団と交渉することが可能だ。メジャーでは、これはコミッショナー権限となるので、全球団の帽子を置かなければならないなどの条件をつけることも可能になる。
 そして、日本のプロ野球がいまだにそのような原始的なマーケティングのシステムしか構築できていない最大の理由は、読売巨人軍の存在にあると、大坪氏は分析する。巨人だけは個別のマーケティングでも儲かる構造を持っているため、営業権を手放そうとしないというのだ。
 そもそも、日本プロ野球は発足の時点から、読売新聞のオーナー・正力松太郎氏が、朝日新聞や毎日新聞が高校野球の権利を握っていたのに対して、新聞の販売促進のためにプロ野球リーグを設立したという経緯がある。日本のプロ野球はいち新聞社の新聞を売るためのツールとしてスタートしたものだったわけだ。当然の帰結として、日本のプロ野球はファンではなく、親会社の顔色を常にうかがう経営に終始することになる。
 メディアと野球をミックスさせる「正力モデル」も、当初はうまく機能した。高度経済成長期においては、“巨人”こそが“プロ野球”という存在であり、日本人の大半を占めるとさえ言われた巨人ファンが、プロ野球の人気を支えてきた。それとともに、読売新聞や日本テレビは大きく業績を伸ばすことに成功した。
 しかし、かつては20%を越えていた巨人戦の視聴率は、いまや1桁台に落ち込み、プロ野球の人気の凋落に歯止めがかからなくなってきている。その理由として、大坪氏は、日本のプロ野球の過った「自由競争」の考え方が野球を面白くなくしていると指摘する。
 日本では巨人が強くなりすぎたことへの批判が高まり、戦力を均衡させるための施策として1965年からドラフト制度が導入されてきた。しかし、93年の長嶋監督復帰を機に、やはり強い巨人がいなければ野球人気は維持できないとの機運が高まり、ドラフト制度が骨抜きになっていく。昨今の裏金問題の温床となった「逆指名制度」も、その一例だ。大坪氏は、こうした施策は、サッカーのJリーグ発足に焦りを感じたプロ野球が、困った時の長嶋頼み、巨人頼みに走った結果と指摘する。
 翻ってアメリカのプロスポーツでは、チーム間の健全な競争を維持するために「戦力の均衡」に心血が注がれている。一定の競争環境を維持するために、自由競争とは逆の社会主義的な施策が取られているのだ。「プロスポーツの商品は試合」と言い切る大坪氏は、勝つことが目的ではなく、ファンが喜ぶおもしろい試合を常に提供できるかどうかが、そのスポーツが収益をあげられるかどうかの分かれ目になると説く。
 今回は、日米のプロ野球の収益構造や運営の仕組みを通して、既得権益と顧客重視という観点から現在の日本経済が抱える根深い問題を考えた。
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収録日2007年06月07日(PART1:80分 PART2:42分)
なぜ報道被害は無くならないのか

ゲスト:梓澤和幸氏(弁護士)

 「報道被害」という言葉が聞かれるようになって久しい。個別の事例としては、事実に反する情報が報道される事件は昔からあったが、近年の報道被害には、夥しい数のメディアによる集団暴力的な色彩が強い点が、明らかに過去の単なる誤報事件とは性格を異にしている。メディア側がなかなか間違いを認めようとしない点も、単純な誤報事件とは大きく異なる点の一つだ。
 一旦メディアスクラムの対象となれば、標的となった本人はもとより、その家族、親戚、隣人などを巻き込んだ大騒動となる。本人の生活は根底から覆され、その社会的地位も人格も全てがボロ布のようにされてしまう。
 また、このような著しい報道被害が相次いで発生しているにもかかわらず、加害者となっている報道機関が、自ら進んでその事実を報じないため、一般の市民にはその実態がほとんど知られていないのも、近年の報道被害の特徴と言っていいだろう。
 長年報道被害者の救済活動に取り組んできた弁護士の梓澤和幸氏は、誰もが知るような多くの事件や事故の背後では、人権を無視した報道被害が軒並み発生しているという。そして、中には被害者が自殺に追い込まれたり、精神障害を抱えるところまで追いつめられるケースもあるという。
 それにしても、なぜ報道被害は起きるのだろうか。
 報道被害の原因として梓澤氏は、「過当競争」、「警察との関係」、「情報公開の不徹底」、「メディアの責任意識の欠如」などをあげる。報道機関が裏付けの無いいい加減な情報を報じる際、各社が同じような情報を一斉に報じている限りは「赤信号、みんなで渡れば恐くない」的な心理が働く。仮に報道内容がまちがっていても、全社が一斉に間違えていれば、個々の報道機関や記者一人一人のリスクはほとんど皆無に近くなる。また、被害者側も、一つや二つのメディアならば抗議をしたり法的措置をとることも可能だが、それが10社、20社となると、対応のしようが無い。要は、取材対象をサンドバッグ状態にできれば、メディア側にとっては「やったもん勝ち」状態になるということだ。
 また、桶川ストーカー殺人事件や松本サリン事件に見られるように、報道被害の多くは、警察のリーク情報を報道機関がそのまま報じることで発生しているケースが多い。記者クラブという閉鎖的な取材環境の中で、メディアと警察がズブズブの癒着関係となり、事件報道は、どれだけ警察に食い込んで未発表の捜査情報を引き出せるかの競争となっている。そのため、警察がリークした情報は、裏が取れていなくてもそのまま報じられる場合がほとんどだ。ほぼ100%の有罪率を誇る日本の警察から出た情報なので、メディア側にとってのリスクもほとんど無い上、警察から「頂戴した」情報を報じなければ、警察との良好な関係すら危うくなる。
 一向に報道被害が無くならない状況に対し梓澤氏は、匿名報道の導入を呼びかける。スウェーデンのように、私人を対象とする事件や事故の報道の際は、警察は実名を公表すべきではないという立場だ。匿名にすることで警察のでっち上げや隠蔽のリスクが高まる可能性については、情報公開制度を整備し、弁護士などが求めれば実名の情報が入手できるようにすることで最小化できると梓澤氏は主張する。
 いずれにしても、何らかの対策が急務であることだけは確かだ。報道被害が続く間に、一般市民の間では、国による報道の規制はやむを得ないとの空気が強まっている。むしろそれを歓迎するところまで、メディアに対する世論の風当たりは強い。今後、有形無形の報道規制が導入されることが避けられない状況だ。統治権力にとっては不都合な「自由なメディア」に介入するチャンスを、政府が見逃すはずが無い。
 長年報道被害に取り組んできた梓澤氏とともに、報道被害の実態とその背景、そして考えられる処方箋を議論した。
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収録日 2007年06月14日(PART1:137分 PART2:46分)
コムスンを叩くだけでいいのか

ゲスト:服部万里子氏(立教大学コミュニティ福祉学部教授)

 『コムスン』の不正に端を発する親会社グッドウィル・グループの折口雅博会長兼CEOが、メディアから袋叩きにあっている。
 確かにコムスンが行った不正の数々には弁解の余地はない。しかるべき処分を受けるべきだろう。しかし、どうも報道の焦点が、折口会長の田園調布の邸や自家用ジェットを所有し芸能人を侍らせる金満ぶりの方向にばかり向かい、今日の日本の介護業界が抱える構造的な問題が取り上げられないことには違和感を禁じ得ない。
 実際、介護の現場では、深刻な問題が起きている。20年以上にわたり、福祉の現場に関わってきた服部万里子氏は、介護保険の導入後、相次ぐ給付の抑制で、介護の現場は疲弊し果てていると指摘する。
 介護保険が導入された当時は、まだ介護の市場が未整備だったために、質の高い介護サービスを提供できる業者の数が非常に少なかった。介護保険からの財源があるのに、十分なサービスが提供できなくなることを恐れた厚生労働省は、介護業界への参入を促すために、業者を優遇した。コムスンもそうした状況のもとで華々しく介護市場に参入した業者の一つだった。ところが、参入業者の数が充実するにつれて、政府は給付を抑制し始め、業者の利益率も減っていった。だからといって不正行為を正当化できるわけもないが、数々の不正は行政の見通しの甘さと、その後の締め付けの結果であったとの指摘が根強いのはそのためだ。
 服部氏は今回のコムスンの不正問題は、何があっても利益をあげなければならない営利企業が、福祉の担い手になることの危険性が露呈したものと指摘する。福祉はその性格上、金儲けを優先した営利企業には合わない性格を持っているからだ。
 実は介護保険が儲からないことは、介護保険が国民から保険料を徴収する保険システムを採用したときに、明らかだった。事実上税金と同じような性格を持つ介護保険を40歳以上の全ての国民から徴収している以上、仮に企業努力によって利益が出たとしても、利益が出るのなら政府は保険料を下げるか給付を上げるかする必要が出てくるからだ。そのような、元々儲けることが難しい構造を持った介護産業に営利企業が入ってくれば、コストを下げるために無理な営業努力を行うなどのモラルハザードが発生しやすくなり、それが行き過ぎれば、不正の温床となるリスクがあることは、制度導入の当初から指摘されていた。
 介護保険の施行時に華々しく介護産業に参入した営利企業の多くは、「介護を新たなビジネスチャンスと勘違いをしてしまったのではないか」と、服部氏は言う。
 しかし、もしそうだとすると、赤字のコムスンに、これだけ多くの一流企業が引き受け先として名乗りを上げているのは、なぜなのだろうか。
 服部氏はそこにもう一つのモラルハザードが存在すると指摘する。介護ビジネス自体は儲からなくても、複合的に事業を展開することで、介護は巨大なビジネスチャンスを生む可能性があると言うのだ。
 介護サービスを利用する高齢者は、サービスの提供を受ける際に、詳細な個人情報を業者に提供することになる。業者は利用者の財産状況から趣味、食事の嗜好、場合によっては「トイレの回数」まで把握できるのだ。その情報を元に、旅行から、高級有料老人ホームの斡旋、資産運用、リバースモーゲージなど、高齢者の人生と財産をまとめて囲い込むことが可能になる。服部氏は、そこにも営利企業が福祉の担い手となることの危険性があることを強調する。
 本来福祉は、営利企業が高齢者を「食い物」にしないようにするために、利用者と業者の間に、ケアマネジャーが介在し、それが利用者にとって最良の介護プランを作成することが前提だった。しかし、介護保険制度の立ち上げ段階でのケアマネジャー不足を懸念した厚生省は、コムスンのようなサービス提供業者がケアマネジャーを雇うことを認め、ケアマネジャーの存在意義を骨抜きにしてしまった。その後介護報酬の削減も漸次行われたため、現在、ケアマネジャーは業者から独立して営業していくことが難しくなってしまった。現在の介護システムは、本来利用者側に立つはずのケアマネージャーが、業者と癒着しなければ生きていけないような制度になっているのだ。
 福祉の現場事情に精通する服部氏から、コムスン騒動で露わになった介護現場の実情とその対策を聞いた。
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収録日 2007年06月22日(PART1:54分 PART2:56分)
やっぱり日本人にはまだ憲法は書けそうもない

ゲスト:猿田佐世氏(弁護士)

 自公連立与党は5月14日『国民投票法』を単独で可決した。これで、日本国憲法第96条に定められた憲法改正に必要な国民投票の手続きが確立された、とメディア上では解説されている。
 しかし、その成立過程や条文の内容を詳細に検証してみると、その説明を額面通りには受け止められない数々の問題点が浮き彫りになってくる。
 この法案をめぐる議論は、少なくとも2006年末までは国会の憲法調査特別委員会を舞台に「立憲主義の前提」に立った良識的な議論が、改憲に反対の社民・共産党も含めて、淡々と続けられてきた。手続き法とはいえ、国の根幹に関わる問題である以上、過半数を制した勢力による専横が許されないことは言うまでもない。党派制を超えた、抑制の利いた冷静な議論が進められてきたといっていいだろう。
 ところが、今年年頭に安倍首相が、憲法改正を参院選の争点にすると発言して以来、憲法問題が政局に翻弄されることになる。予算審議が終わった3月以降、国民投票法案をめぐる審議は、当初安倍首相が設定した「5月3日の憲法記念日まで」の期限に向かって一気に爆走を始める。
 4月12日、怒号が飛び交う中、衆議院憲法調査特別委員会で採決が強行され、連日6時間に及ぶ異例の審議の末、与党参考人たちからも上がった「慎重な審議を」の声を無視し、5月14日、国民投票法案は参議院本会議で可決、成立した。
 この法案の国会審議を傍聴し、自身のブログでその一部始終を報告してきた弁護士の猿田佐世氏は、法案をめぐる国会審議を、「国民不在」の一言で一蹴する。特に年頭の安倍発言以降、「立憲主義」の意味すら理解できていない人たちによって、この法案の審議はずたずたに切り裂かれてしまったと猿田氏は残念がる。
 国民投票法が政争の具になったことの最大のツケは、明らかに穴だらけの法案が、そのまま法律になってしまったことだ。国民投票法案をめぐっては、憲法調査会・特別委員会で5年余り自民党の船田元氏と民主党の枝野幸男氏を中心に議論が続けられてきた。しかし、最低投票率の是非や投票年齢の20歳から18歳への変更など、多くの論点が未解決のまま、拙速に法案が採決されてしまった結果、「法案は通ったが細部はこれから議論」というような馬鹿げた事態に陥っているのが、国民投票法の実情なのだ。
 しかし、皮肉なことに、改憲を旗印にしたい安倍首相の号令の元、与党は民主党を置いてきぼりにして国民投票法を可決したことで、実際の改憲の可能性はかえって遠のいた。民主党の支持無くして、憲法改正案の発議に必要な参院の3分の2を押さえることは事実上不可能だからだ。安倍首相こそが「最大の護憲派」と揶揄される所以はそこにある。つまり、安倍氏の改憲論は、改憲論者であることのアリバイを優先しているだけで、実際の改憲はどうでもいいのではないかと、真性の改憲論者が訝るようなレベルのものだということだ。
 一方の民主党も、憲法を争点にされると党内で意見が割れる可能性や、改憲に舵を切ることで、来る参院選に政治生命を賭ける小沢代表にとっては、社民党との選挙協力が難しくなるなど、多分に政局的な事情を優先した結果、自民党内では「譲りすぎ」との批判を受けるところまで船田氏が歩み寄ってきたにもかかわらず、その妥協案を民主党は蹴っている。小沢氏の指示は「民主党案の丸呑みでなければダメ」だったと言われている。
 要するに、自民、民主両党ともに、参院選を控えた政局的な判断によって、国民投票法案という改憲手続きを規定する法案を、「何が国民にとって最善か」とは無関係に、単なる政争の具として弄んでしまったということになる。最低投票率の規定も無いまま、低投票率の国民投票で仮に憲法改正に有効投票数の過半数が賛成したとしても、そこで成立した憲法改正案など、正統性に疑問が生じることは目に見えている。国民投票法は政局上の都合から形だけは通っているが、実際はまだこれから多くの審議を必要としている欠陥法案と言っても過言ではない状態にあるのだ。
 「憲法に関わる問題くらいは無関心ではまずい」と考え、「メディアが伝えてくれないなら自分で伝えよう」との思いで、自ら国民投票法案の審議を傍聴し、議員にロビーイングを行いながらこの法律の成立過程を間近で見守ってきた弁護士の猿田氏とともに、政局に翻弄された国民投票法審議の舞台裏から、「こんなことで本当に日本人に憲法が書けるのか」という日本にとっての根本問題を議論した。
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収録日 2007年06月29日(PART1:96分 PART2:76分)
5金スペシャル 右翼も左翼も束になってかかってこい

ゲスト:小林よしのり氏(漫画家)、萱野稔人氏(津田塾大学准教授)

 今年2回目の5金は、ジャーナリズム宣言を残して失踪中(?)の神保哲生抜きで、マル激司会の宮台真司が二人のゲストと徹底的に語り合う特別企画をお送りする。ゲストは、『ゴーマニズム宣言』でおなじみの漫画家小林よしのり、国家やナショナリズムについて鋭い評論を発表している新進気鋭の哲学者、萱野稔人津田塾大学准教授の両氏。
 「ワシの本をどう読んだら、『嫌韓流』に向かうのか。ワシは誤解されとるのよ」と勘違い右傾化を嘆く小林氏。小林氏と同席しただけで「友人の何人かは口を聞いてくれなくなる」と悲壮な決意で参加した萱野氏。2人のくせ者論客をどのように仕切るか、宮台真司の司会ぶりも要注目。
 「今日は、右も左も切り刻むことになる」と宮台真司が不敵に笑ってスタートした鼎談は、小林氏の沖縄へのこだわりから始まり、右派左派の欺瞞から、ナショナリズムと格差社会へと、縦横無尽に広がっていった。
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収録日 2007年06月28日(PART1:54分 PART2:47分)
レズビアン候補参上!

ゲスト:尾辻 かな子氏(参院選立候補予定者)

 7月29日投票予定の参議院選挙に、民主党からの出馬を表明している尾辻かな子氏は、レズビアンである。彼女は、大阪府議会議員として在職中の05年に、自らがレズビアンであることを公表した。今回の選挙で、野党第一党の民主党が、レズビアンを公言する候補者を公認したこと自体が、同性愛者たちにとっては大きな事件であり、大きな一歩と彼女は語る。
 欧米では、同性愛者であることを公表して政治や経済の世界で活躍をする人は少なくない。著名なところでは、アメリカ下院議員のバーニー・フランク氏やベルリン市長のクラウス・ヴォーレベイド氏、パリ市長のベルトラン・ドラノエ氏などがいる。しかし、日本では国会、地方議会を問わず、同性愛者であることを公言した候補者が、議会に当選した前例は無い。(*1)
 レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなどの性的マイノリティを総称してLGBTと呼ばれるが、正式なデータは無いものの、日本にも200万人から500万人のLGBTがいるとみられている。政府も性的マイノリティーに対する差別が人権侵害であることを認めているが、日本では性的マイノリティーに対する偏見も根深く残っており、ゲイやレズビアンを公言した場合、職場などで差別的な扱いを受けるリスクは依然として大きい。
 「私が選挙に出ることで、同性愛者の存在が可視化されることが、まず一歩になる」と尾辻氏は言う。性的マイノリティーはまず自らの存在を認めてもらうところから始めなければならない立場にあり、自らの存在が性的マイノリティーの社会的地位の向上につながることを尾辻氏は期待する。
 参院選で当選できた場合、尾辻氏は性的マイノリティーのみならず、少数民族や在日外国人、障害者、被差別部落出身者、HIV感染者などの他のマイノリティーの意見も代表していきたいと語る。日本がマイノリティーの存在を認め、多様な生き方を認める社会になることが、「誰もが生きやすい社会」につながるからだと尾辻氏は言う。
 しかし尾辻氏がそうした社会の構築を目指す一方で、昨今の日本社会の保守化傾向は、多様性に対する過剰とも呼ぶべき拒否反応を呼び起こしていることも事実だ。そのような状況の中で、レズビアンを公言して国政選挙に立候補した尾辻かな子氏とともに、マイノリティーを受け入れることの意味や、誰もが自分らしく生きる社会を実現するための方策を考えた。
 尚、今番組の司会は、取材で出張中の神保哲生に代わり、下村健一氏がピンチヒッターを務めた。
(*1 東京都世田谷区の上川あや議員がトランスジェンダー(性同一性障害)であることを公言し区議会に当選した例はある。上川議員は現在も区議として活動中。)
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収録日 2007年07月06日(PART1:71分 PART2:67分)
ミートホープが氷山の一角であるこれだけの理由

ゲスト:垣田 達哉氏(食品表示アドバイザー)

 「ミートホープ」の食肉偽装事件が、多くの消費者を不安に陥れている。
 牛挽肉に豚肉を混入させているとの内部告発に始まった偽装事件は、その後「家畜の血液で偽装したひき肉」や「賞味期限切れの冷凍食品のラベルの付け替え」など新たな事実が次々と露わになり、ついには「雨水で肉を解凍していた」などという俄には信じがたいような杜撰な食肉管理の実態が報じられるまでに至っている。食肉の卸段階での汚染は、無数の末端商品に影響を及ぼす上、消費者は目の前の商品にそのような問題の食材が使われていたとしても、それを知る術を持たない。
 しかし、食肉の偽装表示は本当にミートホープ一社の問題なのだろうか。食品業界の内情に詳しい垣田達哉氏は、確かにミートホープは極めて悪質な事例ではあるが、食品業界、とりわけ食肉の表示には、多かれ少なかれミートホープに見られるような杜撰な体質が根強く残っていると指摘する。ミートホープは、氷山の一角に過ぎないというのだ。
 垣田氏によると、元々食品の偽装表示は簡単には見抜けないものだが、特に挽肉は一旦ミンチになってしまえば、DNA鑑定でもしない限り中に何が入っているかを確認することは非常に難しいという。そのため、ミンチには元々精肉として販売できないような部位が混ざっている場合が多いが、その中身が正確に表示されることはほとんど無いのが実情だと言うのだ。
 その理由として垣田氏は、食品の安全を守るために消費者の立場に立った法律が事実上存在しないことをあげる。食品表示については、農林水産省管轄下のJAS法を含め、厚生労働省下の食品衛生法、公正取引委員会が管轄する景品表示法、経済産業省の不正競争禁止法など4つの法律が存在するが、いずれも業界寄りであったり、食中毒などの被害が起きるまで発動されないなど、消費者の安全を守るという観点から見ると、明らかにザル法と言わねばならないものばかりなのが実情なのだ。
 垣田氏はまた、店頭でパッケージに詰める惣菜や弁当、外食にはまったく内容の表示義務が無いことも問題視する。同じ加工食品でも、工場で包装されたものには一定の表示義務があるが、店頭でパッケージされる商品には基本的に表示義務は無い。そのため、実は中国産の「静岡産うなぎ」や、オーストラリア産「和牛」などがいたるところで売られているのが実情だと言う。
 食品表示問題の第一人者である垣田氏と、ミートホープ問題で火を噴いた食品偽装問題の本質と、その背後にある利権構造の実態、そして消費者が自分たちの食の安全を守るために何ができるかを考えた。
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収録日 2007年07月13日(PART1:78分 PART2:35分)
こんな参院ならいらない

ゲスト:村上 正邦氏(元参議院議員)

 「良識の府」と呼ばれる参議院は、衆議院や内閣の行動をチェックする機関として存在意義を示してきた。しかし、21年間参議院議員を務め、参院自民党のトップとして君臨した村上正邦氏は、「小泉政権によって、参議院は2度死んだ」と語り、現在の参議院は、衆議院の暴走に対して、まったく無力な状態に陥っていると嘆く。
 05年8月、僅差で衆院を通過した郵政改革法案は、自民党議員の造反もあり参院では否決された。あくまでも法案成立を目指す小泉純一郎首相は、憲法の規定に基づいた両院協議会に諮ることなく、また衆院に差し戻すこともなく、衆議院を解散した。この結果、郵政改革法案に反対した参議院の意思は踏みにじられ、権威は地に落ち、「参議院は死んだ」と村上氏は言う。
 さらに、郵政選挙後、郵政改革法案が与党の賛成多数で衆院を通過すると、自民党議員の多くは抵抗もせずに賛成にまわった。「ここで、もう一度、参議院は死んだ」と村上氏は語る。
 衆議院が小選挙区制になって以降、衆議院議員は、公認はずしを恐れて、党本部に服従するようになったが、参議院議員も立場は変わらない。選挙運動のためには、衆議院議員の後援会の支持が必要になるためだ。また、郵政選挙で、党が政治資金を握り、造反議員に対しては“刺客”を送り込むという非情な方針を打ち出したため、多くの参院議員は萎縮して、党議拘束に抗ってまで筋を通す気力を失っていると村上氏は残念がる。
 また、参議院自民党のトップに君臨する青木幹雄議員会長の罪も大きいと、村上氏は指摘する。かつて参議院議員は、党よりは院への帰属意識が強く、自らの良識に従って審議をしているという自負があった。村上氏自身も議員会長時代は、「参議院をないがしろにするな」とたびたび自民党執行部とぶつかり合ったと語る。しかし、現在参院自民党は青木議員会長の下で一応の結束は保っているが、党を超えた参院らしい自由闊達な意見は交わされにくくなっているという。
 村上氏は、参院が存在意義を取り戻すためには、「党首選に参加しない」「閣僚にならない」「3年ごとの半数の改選はやめて、任期6年を一括して選ぶ」「決算は参議院が議決権を持つ」「議員定数を100人にする」といった具体的な提案を示している。いずれも、参院が政局や世論に左右されない長期的な政策を議論することを可能にするためだ。村上氏は、日本の参院も米国上院を倣い、外交や防衛、教育といった重要案件だけを審議する場を目指せと熱く語る。
 そして、その実現のためには、「今回の選挙で、自民党が負けた方がいい」とまで村上氏は言い切る。参議院で野党が過半数を占めれば衆院との間にいい緊張関係ができる。衆院で可決した法案が参院で否決される事例が相次げば、参議院の存在意義を国民に知らしめ、参議院改革を行えという世論を盛り上がるのではないかと、村上氏は言う。
 参院選を目前に控え、あえて今参院が抱える問題について、「村上天皇」呼ばれた自民党参院のドン・村上正邦氏をゲストに招いて語り合った。
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収録日 2007年07月19日(PART1:88分 PART2:63分)
この選挙で本当に問われているものは何なのか

ゲスト:中村 啓三氏(政治ジャーナリスト)

 与党の大敗が取りざたされる中、いよいよ7月29日に参議院選挙が投票日を迎える。前回の国政選挙となった2005年の衆議院選挙以降、郵政民営化を始め小泉構造改革の踏襲を謳う安倍新内閣の誕生、教育基本法や国民投票法、防衛庁の省への昇格など、日本という国のあり方の根幹に関わる大きな出来事が相次いだ。本来この参院選はそうした一連の施策が問われる選挙となるはずだ。しかし、世論調査を見る限り、実際に多くの有権者の投票行動を左右する要因は、年金問題と「政治とカネ」に独占されているようだ。
 そこで今回のマル激では、選挙直前特番として、元毎日新聞論説委員長で政治ジャーナリストの中村啓三氏をゲストに招き、2005年の衆院選以来日本の政治に何が起きたかを、特に可決した法案を中心に総検証してみることにした。
 過去3年の間に現在の国会が可決した法案の数は370を超える。その一つ一つを検証することは不可能だが、その中からいくつかの重要法案を抜き出してみると、この選挙のもう一つの顔が浮き彫りになってくる。
 また、ようやく定着してきたマニフェスト選挙も検証を要する。与党自民党の前回の衆院選のマニフェストを改めて見直してみると、自民党は安定多数を得た国会で、マニフェストの公約をことごとく実現してきていることがわかる。つまり、かつての選挙公約のような空手形の乱発とは異なり、マニフェストは、少なくとも与党に関する限りは、実現の可能性が極めて高い政策メニューの一覧となっている。
 そして最後には、マル激が独断と偏見に基づいて重要と考えるこの選挙の「真の争点」に対する各党のスタンス一覧をご紹介した。
 
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