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マル激トーク・オン・ディマンド 第33巻(第331〜340回収録)詳細
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収録日 2007年08月03日(PART1:50分 PART2:46分)
データから見えてくる「やっぱり自民党は終わっていた」

ゲスト:森 裕城氏(同志社大学法学部准教授)

 自民党の参院選地すべり的敗北で、安倍首相の責任を問う声が強まっている。小泉構造改革の影響で、自民党の伝統的地盤だった地方・農村・利益団体票が離反する一方で、安倍政権が年金や相次ぐスキャンダルのハンドリングに失敗したことで、小泉時代に新たに獲得した都市無党派層からは見放されたことが、今回のような歴史的大敗を招いたというのが、大方の評価となっているようだ。
 しかし、計量政治学が専門の森裕城同志社大学准教授は、選挙データを分析すると、その説明は半分しか当たっていない可能性が高いという。
 確かに今回の選挙では、05年の郵政選挙で小泉自民党を支持した都市無党派層票の大半が民主党に流れた。そのことは、首都圏、愛知、大阪などの3・5人区で自民党が辛うじて一議席を死守しているのに対し、民主党は軒並み複数議席を獲得していることを見ても明らかだ。
 しかし、地方・農村票などの自民党の伝統的支持層が、小泉構造改革の影響で自民党から離反したとの説明に対して森氏は、自民党の支持基盤の崩壊は既に小渕・森政権時代から継続的に起きている現象であり、小泉政権の5年間は首相の個人人気によってそれが覆い隠されていたが、今回それが改めて表面化したに過ぎないと説明する。
 実際、今回の選挙で自民党の絶対得票率(有権者数に対する得票数の割合)は、獲得議席が49だった04年の参院選の19.21%と比べても1.4ポイントしか下がっていない。伝統的自民支持層に長期減少傾向があることは否定できないが、特に今回の選挙でそれが一気に加速したとの事実は、データを見る限りはうかがえない。
 今回の選挙で地方・農村票の自民党離れの象徴のように言われている一人区を見ても、自民党の獲得議席は29選挙区のうち6議席にとどまるが、得票率では17議席を得た民主党の8割強を得ている。テクニカルな理由から議席配分には大きな開きが生じたが、得票率を見る限りは、自民と民主にそれほどの大差は無い。
 しかし、得票率データは同時に、自民党がかつてのような手厚い支持基盤に支えられていた時代はもはや遠い昔の話となり、今日は民主党以上に「風頼み」の政党に変質していることもあらわにしている。それはまた、民主党が意外なまでに自らの地盤を確実なものにしている事実も明らかにする。少なくともデータ上は「浮動票頼みの自民党、都市でも農村でも安定的な支持基盤を築きつつある民主党」という、両党の意外な顔が見えてくると森氏は語る。
 データをもとに選挙結果を解説する気鋭の計量政治学者・森裕城氏とともに、参議院選の結果から見えてきた自民党の現状と、参院選勝利で政局の主導権を握ったかに見える民主党の課題を考えた。
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収録日 2007年08月10日(PART1:56分 PART2:46分)
見えてきた裁判員制度の危うい実態

ゲスト:保坂 展人氏(衆議院議員)

 市民が刑事裁判に参加する裁判員制度の開始を2年後に控え、その具体的な運用内容がようやく明らかになってきた。裁判員の導入を謳った裁判員法は04年の国会で、全会一致で可決されているが、その具体的な内容は、施行までの5年間に最高裁判所諮問委員会で審議されることとされていた。しかし、裁判員の日当から、裁判員選任の方法や評議の進め方など具体的な運用が決定されるにつれて、裁判員制度の新たな問題点が顕わになってきている。
 司法の問題を国会で追及してきた衆議院議員の保坂展人氏は、裁判員候補となった人の思想信条にまで踏み込むような憲法違反をうかがわせる決定が、裁判所と検察庁、弁護士会の法曹三者のごく一部の手で次々と進められていると憤る。
 例えば、裁判員の選任の際に、検察側も弁護側も裁判長を通じて候補者に質問をすることが認められている。もともとは公正な裁判を期するために、原告や被告の知人や利害関係者などを排除することを想定しての制度だが、そこでの質問には、「警察を信用するか、しないか」や「死刑制度に賛成か、反対か」などの、実質的に裁判員となる人の思想信条にまで踏み込むような質問も含まれることが、最高裁が作成した想定問答集で明らかになっている。その結果、「不公平な裁判をする恐れがある」と判断されれば、その人は裁判員から除外される。保坂氏は、「裁判の公平性を担保する」という大義名分のもと、「国家権力の前で、市民の信条や内面を告白させられる」ばかりか、警察を信じ、死刑に賛成の人だけが裁判員として裁判に参加できるような仕組みになっていると指摘する。
 そもそも司法制度改革の議論が始まった当初は、欧米の陪審員制度の導入が想定されていた。しかし、評決権を死守したい司法当局の意向で、市民の権限は裁判員制度という形で大幅に縮小された。そして今、裁判員制度の具体的な運用が明らかになるにつれて、鳴り物入りで始まる裁判員制度が、実際は現状維持色がさらに強いものであることがより鮮明になってきている。
 更に、05年に始まった公判前整理手続きや、裁判員制度の決定の時点では想定されていなかった被害者参加制度などと組み合わさった時、裁判員制度にどのような問題が生じるかについては、まだ未知数の部分が多い。
 泣いても笑っても2年後にはスタートする裁判員制度について、新たに明らかになった問題点とその対策を、保坂氏とともに考えた。
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収録日 2007年08月17日(PART1:94分 PART2:52分)
首相官邸で今何が起きているのか

ゲスト:上杉 隆氏(ジャーナリスト)

 参院選の惨敗で安倍政権への風当たりが強まっているが、当の首相はというと、この騒ぎをどこか他人事のように聞き流しているかのような話し振りで、退陣の意思は微塵も見せていない。
 近著「官邸崩壊」の中で、安倍政権内部の「惨状」を克明に描いたジャーナリストの上杉隆氏は、政権発足直後の昨年秋の段階で、安倍内閣の中枢が事実上崩壊していることを察知し、政権内部の取材を重ねてきたという。そしてその結果、安倍政権では、過去の自民党政権が長年かけて蓄積してきた政権運営のノウハウが、ほとんど何ひとつ踏襲されないまま、功名心に走る首相の側近たちがもっぱら見当違いの行動をとり続ける「烏合の衆」と化していることが、明らかになったという。
 例えば、先週来ニュースを賑わせている、小池百合子防衛大臣と守屋武昌防衛次官の人事をめぐる対立にしても、実際は小池氏と塩崎恭久官房長官の間の感情的な確執が形を変えて表面化したものに過ぎず、本来調整役を務めるべき官房長官や官房副長官らが従来通りの根回しを行っていれば、何ら問題のない人事だったと、上杉氏は指摘する。
 調整役を嫌がる出たがり官房長官、官僚からそっぽを向かれた官房副長官、仕事をしない無能補佐官、黒子に徹することができない首相秘書官等々、聞けば聞くほど驚くような惨状が浮かび上がる中で、上杉氏は、安倍政権の数々の問題点の最終的な原因は「安倍総理自身の資質」にすべて帰結すると結論する。そもそも総理自身が、こうした問題を問題とも思っていないか、もしくは問題に気づく能力に欠けているというのだ。
 とは言え、問題が総理の資質だけなのであれば、政権が変われば片がつく。しかし、より重大な問題は、安倍首相の「居座り」によって、90年代半ばの橋本政権以降進められてきた官邸機能の強化と、小選挙区制と政党助成金の導入によって派閥の影響力が低下したことで、内閣総理大臣への権力の集中が思いのほか進んでいることが、明らかになったことだ。
 強化された官邸機能をフルに活用したと言われる小泉政権は強いリーダーシップを演出したが、それは絶大な国民的人気を誇る首相個人のキャラクターに拠るところが大きいと理解されてきた。しかし、安倍政権の下では、支持率が下がっていても、国民投票法案を含む重大な法案が総理の独断で次々と強行採決され、長老や党人派の幹部たちまでが、それを諌めることもなく、その方針に粛々と従った。また、国政選挙で歴史的大敗を喫しても、誰も首相を引き摺り下ろすことができない。ここまで総理への権力の集中が進んでいることを、今、私たちはまざまざと見せつけられている。
 そしてそれは、総理が単に無能なだけでなく、何か重大な問題を抱える人物が官邸の主となったときに、今の日本ではその暴走を誰も止められなくなる危険性を示唆しているとはいえないだろうか。
 政権内部の取材を続けてきた上杉氏に、権力についての多くの著作を発表している萱野稔人氏を交え、安倍首相の官邸居座りに見る「官邸機能強化」の功罪と、権力の集中が進むグローバル化の時代において、われわれはその権力をどう監視し、どうコントロールすべきかについて議論した。
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収録日 2007年08月24日(PART1:92分 PART2:73分)
ダイオキシン問題は終わっていない

ゲスト:森田 昌敏氏(ダイオキシン2007国際会議議長・愛媛大学農学部教授)

 「国際ダイオキシン会議」が、9月2日より東京で開催され、ダイオキシンやその他の内分泌撹乱化学物質、いわゆる環境ホルモンなどについて、1000人を超える研究者が、世界各国から集まろうとしている。しかし、かつてない規模で国際会議が開催される日本で、なぜかダイオキシン問題の存在について疑問をはさむ懐疑本がベストセラーになり、マスコミ報道も10年前に比べれば激減している。この「なにを今さらダイオキシン」というムードについて、国際ダイオキシン会議の議長を務める森田昌敏氏は、ダイオキシン問題は解決したわけではないと警告する。
 97年、密かに進む環境汚染を告発した『奪われし未来』が発売され、日本各地のゴミ焼却炉周辺で高濃度のダイオキシンが検出されたことが報道されると、一気に世論が盛り上がり、99年には「ダイオキシン類対策特別措置法」が成立した。ゴミ焼却大国・日本においては、ダイオキシン規制とはすなわちゴミ焼却炉問題であった。森田氏も、この規制によって新たに排出されるダイオキシンが激減したことは、大きな成功と評価する。しかし、70年代までに散布された農薬や規制以前に排出されたばい煙から出たダイオキシンが、依然として日本各地に残り、それが人体に絶え間なく蓄積されている事実については、状況は変わらず、深刻に受け止めるべきだと語る。
 ダイオキシンは、人類が作り出した最悪の化学物質といわれるほど、毒性が強い。水に溶けないが、油には溶ける性質を持ち、自然の中では極めて壊れにくい。一度、自然界に排出されると、土壌や水中の汚泥に溜まりやすく、食物連鎖を通じて人体に蓄積していく。
 森田氏は、ダイオキシンの最大の問題は、成人への影響ではなく、胎児や子どもに対する影響であることを強調する。ダイオキシンは、環境ホルモンの一種であり、微量でも胎児には決定的なダメージを与えかねない。人体実験が難しいため人間における因果関係が完全に証明されたわけではいないが、予防原則の観点から、ダイオキシンを含め、環境ホルモンと疑われる化学物質の規制を強化することは重要と森田氏は説く。
 欧州では既に未然防止の観点から、ダイオキシンを含めた化学物質を総合的に規制するシステム「リーチ」を2007年6月にスタートさせている。これにより、化学物質のリスクは、政府や消費者ではなく、企業が責任を負うことを明確化したという。便益のために次々と新たな化学物質を作り出すよりは、安全な化学物質を選んで使うという方向に、欧州は舵を切り、世界をリードしようとしているが、日本はまだアメリカ式の自由放任路線を歩んでいるという。
 1000人を超す世界中のダイオキシン専門家が一同に会するダイオキシン2007国際会議議長の森田氏とともに、ダイオキシン問題の現状と今後の見通しから、根拠無き懐疑論がはびこる日本の社会構造まで、幅広いテーマを議論した。
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収録日 2007年08月31日(PART1:71分 PART2:80分)
5金スペシャル 映画特集 マイケル・ムーアは終わったのか

ゲスト:森達也氏(ドキュメンタリー作家)

 5回目の金曜日は特別番組を無料でお送りする5金。今年3回目の5金は、ドキュメンタリー作家の森達也氏を招いての超辛口映画特集をお送りする。
 まずは、『華氏911』のマイケル・ムーアの新作『シッコ』について語り合う。ロジャー・アンド・ミー以来20年来のムーア信者を自称する神保氏が「今回はいいところは何も無し。マイケル・ムーアは終わった」と酷評したのに対して、「『華氏911』は最低だった」と断じる森氏は、「ドキュメンタリーに大切なメタファが戻ってきた」とむしろ今作品を評価し、そもそもドキュメンタリーとは何なのかをめぐる神学論争に発展。宮台真司は、作り手側に立つふたりに、「ドキュメンタリーの作り手は観客の欲望にどう応えるべきか」を問いかける。
 後半は、カリフォルニア州在住の映画評論家・町山智浩氏も電話で参加し、米国での『シッコ』の評価と、マイケル・ムーアの政治的背景、社会問題を扱った硬派な映画がハリウッドで制作されている理由を語る。
 『シッコ』の他、ブッシュ大統領の暗殺をドキュメンタリータッチで描き物議を醸している『大統領暗殺』、放送禁止語が乱れ飛ぶ『FUCK』、『グッド・シェパード』、『ルワンダの涙』、『ナイロビの蜂』、『ブラッド・ダイアモンド』など、最近話題のドキュメンタリーや実話を基にした社会派映画について、とことん語り合った。
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収録日 2007年09月06日(PART1:68分 PART2:28分)
サブプライムローン危機の本質

ゲスト:小幡績氏(慶應大学大学院准教授)

 8月9日、米のサブプライムローンと呼ばれる住宅ローンの焦げ付きが原因で、世界の金融市場は大混乱に陥った。米欧の中央銀行の迅速な対応で、とりあえず市場は小康状態を保っているかに見える。しかし、長らくアメリカの景気を引っ張ってきた住宅需要の低迷は、これからが本番との観測は根強く、まだ危機は去っていないとの見方が有力だ。
 それにしても米国で住宅ローンが焦げ付くと、なぜ世界中の市場が暴落するのか。この問いに対して、多くの専門家がさまざまな解説をしているが、その多くは、こんな具合だ。米国景気を牽引してきた住宅需要が、翳りを見せ始めている。一方、金融の自由化が進み、あらゆるものが金融商品化されるようになった今日、米国の住宅ローンの債権さえもが、商品化されて金融商品として売買されるようになっていた。サブプライムローンはもともと優良(プライム)以下(サブ)の、信用に問題のある借り手への住宅ローンだが、その債権を証券化してファンドに売ることで、ローンの貸し手である金融機関はリスクを回避でき、一方、買い手のヘッジファンドなどは、そのリスクを引き受けることで投資機会を得ることが可能になった。しかし、証券化によってリスクがあまりにも小分けに分散されたために、どの金融商品に問題のあるサブプライムローン債権が含まれているかが見えにくくなり、いくつかのサブプライムローン会社が破綻したというニュースが伝わると、市場全体が疑心暗鬼に陥って大混乱を引き落とした、と。
 しかし慶應大学の小幡氏は、こうした見方に疑問を呈し、いわゆるサブプライムローン問題は特に目新しいものではなく、米国の住宅バブルの崩壊に伴う混乱に過ぎないと説く。リスクの高い住宅ローンとして知られるサブプライムローンが証券化され、多くの金融商品に組み込まれていることを、投資家たちは最初から知っていたはずだし、サブプライムローンは貸し倒れのリスクが高い債権であることも知っていたはずだ。また、それがアメリカの住宅バブルのおかげで、これまで辛うじてもっていたが、そのリスクが顕在化するのは時間の問題だったことも、投資家は知っていたはずだと言うのだ。つまり、いろいろと後付けで分析するのは結構だが、つまるところサブプライムローン問題とは、わかっていてみんなが乗っかっていたバブルが弾けて、われ先に飛び降りる人たちで市場が大混乱しているだけの、おなじみの光景に他ならないというのが、小幡氏の見立てだ。
 投資家は常にバブルを待望し、バブルが起きると我先にとそれに乗っかり、そしてバブルが弾けそうだと見ると先を争ってそれから飛び降りようとする。人類はこれまでもそんな行動パターンを繰り返してきたし、それはこれからも変わらないだろうと小幡氏は言う。サブプライム問題の本質は金融商品の発達や証券化の問題などではなく、むしろ金融商品の発達で、米国の住宅バブルが世界中に輸出され、それが今にも弾けようとしている、ということになる。
 行動ファイナンスが専門の気鋭の経済学者小幡氏とともに、なぜリスク回避のための証券化がかえってリスクを増幅させるのか、なぜ人はバブルを求めてしまうのかなど、ここまで金融が発達した今日でも変わらない市場の本質を議論した。
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収録日 2007年09月14日(PART1:89分 PART2:41分)
なぜ地震大国の日本が原発なのか

ゲスト:田中三彦氏(元原子炉製造技術者)

 7月16日の新潟中越沖地震で、東京電力柏崎刈羽原発は大きく損傷を受けた、今回は幸い放射能漏れなどの大事故にはいたらなかったとされているが、それはあくまで「たまたまそうだった」という結果論に過ぎない。東京電力は今回の地震が、原発の耐震強度が想定されていた地震の規模を大きく超えるものだったことを認めている。実際には何が起きていてもおかしくなかった。
 しかし、それにしても地震大国の日本で、いまさら「想定されていなかった」とはどういうことなのだろうか。確かに新潟中越沖地震は人的被害も出るほどの強い地震だったかもしれないが、しかしそれは決して前代未聞の大地震ではなかったはずだ。
 原子炉の設計を行っていた田中三彦氏は、もともと日本の原発には耐震性という概念自体が1978年に耐震設計審査指針が策定されるまで、存在しなかったという。それ以前に認可を受けた原発は、耐震性能はメーカーの自主基準に基づいているに過ぎないのが実情だ。田中氏によると、本来原発の安全性を担保している電力会社、原発メーカー、行政の3者は、いずれも耐震性について十分な知見は持っていない。ある程度以上の地震が原発を直撃した場合、本当に何が起きるかは実は誰もわかっていないというのだ。
 元原発設計技術者の田中氏に、日本の原発の地震対策の実情を聞いた。
 また、安倍首相の辞任と後継総裁選びをめぐる自民党内の動きを、政治ジャーナリストの上杉隆氏に電話で聞いた。
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収録日 2007年09月19日(PART1:92分 PART2:58分)
自衛隊はインド洋で何をしているのか

ゲスト(part1):田中浩一郎氏(日本エネルギー経済研究所中東研究センター長)
ゲスト(part2):神浦元彰氏(軍事ジャーナリスト)

 安倍首相の辞任の直接の原因ともなったとされるテロ特措法の延長問題が、自民党総裁選後の臨時国会で大きな山場を迎えようとしている。
 参院で第一党となった民主党の小沢代表は国連の議決がないことを理由に、対アフガン戦争をアメリカの個別的自衛権の行使と位置づけ、その後方支援には正当性が無いとして、特措法の延長への反対を明言している。仮に、給油に特化した新法の法案が提出されても、基本的な態度は変わらないと見られる。
 政権与党としては、憲法解釈を曲げてまで9・11直後からアメリカに対して、イギリスと並ぶほどの忠義を果たしてきたこともあり、ここは何とかインド洋での給油活動を継続したいようだが、野党が参院で過半数を握る現状では、見通しは厳しい。
 しかし、自衛隊は本当にインド洋で必要とされているのか。そもそも自衛隊はインド洋で何をやっているのか。政府はこうした基本的な問いには、ほとんどまともに答えていない。野党が繰り返し情報の開示を求めても、軍事機密を理由にほとんどの情報は閉ざされてきた。
 もともとテロ特措法は、2001年の9・11同時テロ直後にアメリカがアフガニスタンに対する軍事行動に出た際に、「テロとの戦い」を大義名分に日本もその後方支援を担うために作られた法律だった。憲法に抵触する恐れがある上、周辺事態法などの既存の法規ではどうにも正当化できない軍事行動をとるために、なし崩し的かつ場当たり的に急ごしらえした法律だった。しかし、そのテロ特措法は、その後6年間、特に議論になることもなく、毎年延長をされてきた。
 今日、米軍の対アフガニスタン軍事行動は、散発的なアルカイダ残党の掃討作戦がある他は、国連決議に基づく治安維持活動にその主眼が移っていて、そもそも日本がインド洋で給油活動を続ける必要性があるのかすら、怪しくなってきている。
 しかも、本来テロ特措法はアフタニスタンでの軍事活動の後方支援に限られているはずだが、日本が給油した艦船がイラクでの作戦に参加している事実も指摘されている。アメリカの第5艦隊は、ウエッブサイトでその事実をごく当然のことのように公表していたが、日本国内でそれが問題になると、すばやくそのページを削除したという。
 今週のマル激では、前半はアフガニスタン情勢に詳しい田中氏に、「今、アフガニスタン国内はどうなっているのか」を、後半は軍事の専門家の神浦氏に、「インド洋で自衛隊は何をしているのか」を、詳しく聞いた上で、本当に自衛隊は必要とされているのか、日本がすべきことは給油活動だけなのか、テロ特措法が延長されずに自衛隊が戻ってきた場合、どのような弊害が生じるのか、などを考えた。
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収録日 2007年09月27日(PART1:71分 PART2:69分)
貧困は自己責任でいいのか

ゲスト:湯浅誠氏(NPO自立生活サポートセンター・もやい事務局長)

 先月末、厚生労働省がいわゆるネットカフェ難民といわれる人々の実態調査を発表した。それによると、全国に5400人余りの人々が、住居を持たず、ネットカフェなどで寝泊りをしているという。
 しかし、ホームレスや生活困窮者の支援を10年以上にわたり行ってきた湯浅誠氏は、彼らは決して新しいタイプの貧困層ではなく、従来からのホームレスと同じ状態の人々だと語る。湯浅氏はまた、彼らは24時間営業のファーストフード店や公園、友人宅などを点々としながら、寝泊まりしており、ネットカフェを調査しただけでは全体像は把握できないとも言う。
 住民票がある地域と居住地域が一致せず、行政の福祉からこぼれ落ちている点では、ネットカフェ難民もホームレスとなんら変わらない。厚生省の調査では、20代と50代が多いという結果が出ていたが、湯浅氏が代表を務めるNPOに助けを求めて訪ねてくるのは、30代がもっとも多く、夫婦や親子、姉妹兄弟がいっしょにというケースも稀ではないと言う。つまり、従来は、自助努力でなんとかなった人々が、現在は、容易に貧困に陥りやすく、貧困層として固定してしまう傾向が強くなっていると湯浅氏は指摘する。
 一億総中流社会と言われて久しい日本だが、すでにOECD諸国の中では、米国に次ぐ格差社会に変貌している現実が、データで明らかになってきている。米国流の新自由主義的な経済政策を導入し、民営化と自由化を進めた結果、米国と同様に中流家庭が没落し、貧富の格差が進んでいる。
 しかし、財界などを中心に相変わらず「格差を容認しないと国力が落ちる」という理由から「貧困を自己責任」とする主張する向きも根強く残る。こうした風潮に対して湯浅氏は、貧困に陥った人には「教育課程からの排除」、「企業福祉からの排除」、「家庭福祉からの排除」、「公的福祉からの排除」、「自分自身からの排除」と5つの排除が複合的に作用しているため、貧困から立ち直ることが非常に困難であると、自らの経験を元に語る。
 神保哲生に代わり、アメリカの貧困問題の取材を精力的に続ける気鋭のジャーナリスト堤未果を司会に迎え、貧困の現場で奮闘する湯浅氏とともに、日本の貧困の現状とその原因や背景を考えた。
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収録日 2007年10月04日(PART1:68分 PART2:38分)
誰がミャンマー軍事政権を支えているのか

ゲスト:津守滋氏(元ミャンマー特命全権大使)

 ミャンマーの非暴力・反政府デモは全国に飛び火したが、軍事政権は武器を持たないデモ隊にも容赦なく発砲を行い、これを力で押さえ込みつつある。9月27日には、日本人ジャーナリストの長井健司さんが射殺されている。
 国際社会は人道を無視した軍事政権の力の対応を軒並み非難しているが、国連安保理では、ミャンマー国内に権益を持ち自国の人権侵害が批判されている中国とロシアの反対で、非難決議すら行えなかった。また、最大の貿易相手国にして隣国のタイも、エネルギー源をミャンマーの天然ガスに依存していることもあり、軍事政権批判には慎重な姿勢を崩していない。
 2002年まで日本政府のミャンマー特命全権大使を務めた津守滋氏は、今回のデモを市民生活が困窮する中で「起きるべくして、起きた」ものとした上で、権力保持や治安維持のためには自国民に銃口を向けることも辞さない軍事政権を批判する。
 しかし、これだけの人権侵害を行っている軍事政権を、日本を含む諸外国が、経済援助や貿易によって、側面から支援している現実も直視しなければならないだろう。中国にとってミャンマーはインド洋にアクセスするための戦略上の要衝であり、天然ガスなどの豊富な天然資源にはタイや日本、韓国などが食指を伸ばしている。人権侵害を厳しく批判しているアメリカやフランスの企業でさえ、ミャンマーの天然ガスパイプラインプロジェクトに参加しているのが実情なのだ。金額こそ減ってきているが、日本がミャンマーへのODAの最大の供与国であることも忘れてはならないだろう。
 どうも、外交面での表面的な非難声明とは裏腹に、諸外国は天然資源が豊富で地政学的にも重要な場所に位置するミャンマーと、いろいろな形で経済的に結びつき、直接的、間接的にミャンマーの軍事政権を支えているという側面があることは否定できそうにない。
 特に日本はミャンマーとは特別な歴史的結びつきを持つ。ミャンマー建国の父にして、民主化リーダーのアウンサンスーチー氏の父親のアウンサン将軍も、実は戦前の帝国陸軍が軍事訓練を通じて育てたビルマ建国30人の志士の一人だった。そのためアウンサンスーチー氏も独学で日本語を学び、一時京都大学に留学している。また、津守氏によると、ミャンマー国内には、日本がイギリスの植民からミャンマーを開放してくれたとの認識が広く共有されているため、親日感情も強く、日本政府は1988年の軍事政権成立までは多額のODAをミャンマーに供与してきている。
 中東やアフリカ、北朝鮮など他の圧政国家と比べて、日本がミャンマーに対してはるかに強い影響力を行使できる立場にあることも事実なのだ。
 自国民が治安警察に射殺され、軍事政権の強権発動を表面では非難している日本は、果たしてその影響力を人権弾圧や圧政を終わらせるために有効に使っているだろうか。民主化への展望が開けないミャンマー情勢について、対ミャンマー関係の裏も表も知り尽くした津守氏と、歴史的な経緯を振り返りつつ、日本の役割を考えた。
 
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