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マル激トーク・オン・ディマンド 第38巻(第381〜390回収録)詳細
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放送日 2008年07月19日(PART1:41分 PART2:59分)
李明博の韓国はどこへ向かっているのか

ゲスト:木宮正史氏(東京大学大学院准教授)

 今年韓国では、1998年から続いた金大中、盧武鉉の「進歩」政権の時代が終わり、10年ぶりの保守政権となる李明博政権が誕生した。
 大統領選挙にダブルスコアで圧勝し、続く議会選挙でも与党が過半数を奪還するなど、李明博政権の船出は順風満帆であるかに見えた。自身が財閥系企業のトップまで上り詰めた経歴を持ち、盧武鉉政権下でガタガタになった韓国経済の再建が期待された李政権だったが、政権発足直後から閣僚の不祥事や米国産牛肉の輸入規制の緩和が市民の反発を招き、一時は75%もあった支持率が17%まで急落するなど、気がつけば政権発足から半年も経たないうちに、早くも危機的な状況に追い込まれてい
る。
 そうした中、今週日本の文部科学省が発表した中学校の教育指導要領の解説書の中に、間接的な表現ながら、竹島が日本の固有の領土であると受け止められる文言が入ったことで、韓国では、政府、マスコミ、市民を問わず、激しい抗議の声があがっている。17日には米国産牛肉に反対するデモに集まった市民の一部が、その足で日本大使館に向かうなど、牛肉問題で火がついた韓国の反米ナショナリズムが、竹島問題で一気に反日ナショナリズムに飛び火しかねない様相を呈している。
 しかし、韓国の政治情勢に詳しい東京大学大学院の木宮正史准教授は、竹島問題はそこまで大きな争点にはならないとの見方を示した上で、この問題が新しい日韓関係を築けるかどうかの試金石になるとの見方を示す。
 木宮氏は、歴史上の経緯がどうであろうと、現在の竹島は韓国が実効支配している上、韓国では教科書で徹底して竹島が韓国の固有の領土であることを教え込んでいるため、韓国人の中に、竹島が韓国の一部であることを疑う人はほとんどいないと指摘する。反対に日本がこれまでそのような主張を韓国に対して明確にしてこなかったため、今回の教育指導要領への記載は一般の韓国人にとって、日本が突然、韓国の領土の一部が自分たちのものであるかのような暴論を持ち出したように映っているのではないかと言う。
 木宮氏はまた、先の大統領選挙や議会選挙の結果は、盧武鉉前政権に対する幻滅の意思表示の意味合いが強く、李明博政権は選挙結果が示すほどの国民の幅広い支持を得ているとは言い切れないとの見方を示す。対韓関係の改善を目指す福田政権にとっては、苦境に陥った李政権に助け船を出すことで、日韓関係を大きく前進させられる可能性があった。そこに竹島問題が再燃したことで、福田政権は大きなチャンスを逃したかもしれないと木宮氏は残念がる。  牛肉問題や竹島問題などで激しく揺れる李明博政権は、どこに向かっているのか。10年ぶりの保守政権の現状と今後の方向性、そして日本にとって10年ぶりの保守政権とのつきあい方などを、木宮氏と議論した。
 ニュース・コーナーでは、大分県の教員採用試験汚職と、総務省によるBSデジタル放送のテレビショッピング総量規制問題をとりあげた。
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放送日 2008年07月26日(PART1:41分 PART2:59分)
見えてきた自殺大国日本の実相

ゲスト:清水康之氏(NPO法人ライフリンク代表)

 日本人の自殺が一向に減らない。先月発表された自殺統計では、07年の自殺者の数が前年を上回り、過去2番目に多い3万3093人に達していたことが明らかになった。これで、日本の自殺者数は、10年連続で3万人を超えたことになる。06年に自殺対策基本法が制定され、政府も自殺問題に取り組み始めてはいるが、OECD加盟国中ハンガリーについで2位という日本の高い自殺率は、いまだに改善の兆しが見えない。
 NPO法人自殺対策支援センターライフリンクはこのほど、自殺者の遺族への聞き取り調査などをもとに、自殺に関する詳細なデータを分析した「自殺実態白書2008」を取りまとめて発表した。自殺者の実態調査は日本ではこれが初めてのものとなる。
 ライフリンク代表の清水氏は、基本法の成立で、自殺を社会問題と受け止め、対策を行っていく足がかりはできあがったが、自殺者の実態調査がこれまでほとんど行われていなかったために、具体的にどのような対策をとればいいかがわからなかったと言う。しかし、このほど白書を作成するために自殺者の遺族に詳細な聞き取り調査を行ったことで、自殺に至る要因などが初めて明らかになった。
 それによると、自殺には主に「うつ病」「家族との不和」「失業」「負債」など10の要因があり、自殺者はその中から複数の要因、平均で4つ以上を抱えていることが多い。自殺者のうち62%が相談機関に何らかの形で相談をしているが、例えば、精神科医はうつ病の相談は受けられるが、多重債務を解決することはできないなど、現行の体制では、一つの相談機関で複数の要因を取り除くことはできない。6割以上が相談機関に相談をしているにもかかわらず自殺を予防できていない理由は、自殺者が問題を解決するためには、複数の相談機関に相談を持ち込む必要があり、自殺寸前まで追い込まれている人には、それだけの余裕がなかった可能性があると清水氏は分析する。理想的には相談機関の一元化が望まれるが、現在の体制下でも、各相談機関が連携を図れば、自殺は確実に減るだろうと清水氏は予測する。
 また、日本の自殺の特徴は、失業率や倒産率など経済的要因との相関関係が顕著だが、白書ではその背景に金融機関破綻による金融不安や貸し渋りや貸しはがし、また、急激に進んだ構造改革などの影響があることも明らかになった。つまり、政策次第で自殺はまだ減らせるはずと清水氏は語る。
 白書により、死にたいのではなく、生きるために手を尽くしたが、最後に自殺しかないところまでに追い詰められる自殺者の実態が明らかになれば、自殺に対する偏見も変わるのではないかと、清水氏は期待を寄せる。
 今週は、清水氏とともに、白書の作成を通じて見えてきた日本の自殺者の実態とその原因となっている社会的な背景や、予防策を議論した。
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放送日 2008年08月02日(PART1:74分 PART2:45分)
われわれはどれぐらい本当の中国を知っているのか?

ゲスト:土井香苗氏(弁護士、ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表)

 史上最大規模の五輪を開催するほどの国力を持ちながら、中国はいまだ監視国家としての顔を色濃く持っている。新聞やテレビはおろか、インターネットに至るまで、中国国民が触れることのできる情報源は、例外なく国家の厳しい監視下にあり、コントロールを受けている。また、海外メディアの取材にも、依然として厳しい制約が課せられている。
 五輪開催を目前に控えた7月29日、米国のブッシュ大統領は、中国の人権活動家5人と会い「中国の指導者に、人権や宗教の自由は否定されるべきではないという米国の立場をはっきり伝える」と約束をした。この強い言葉の背景には、五輪を機に人権問題が改善されることを期待した国際社会の期待が、裏切られている実情があると、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗氏は語る。
 中国は、五輪を招致するにあたり、繰り返し人権問題の改善を約束してきた。2000年の五輪招致に失敗したのも、人権問題が主要因だったと言われている。しかし、最終的には中国の約束が欧米各国の支持を得て、北京五輪の招致に成功をした。
 そして、中国は国際社会との約束を果たすため、「外国人記者に対する暫定規則」を定め、2007年1月1日から08年10月17日までの期間限定ながら、外国人ジャーナリストに自由な取材を保証したはずだった。
 しかし、現実には暫定規則が発効してからも、外国メディアへの暴行、威嚇などの妨害行為がやむことはなかった。中国外国特派員協会が把握しているだけで、2007年1月以降、既に180件以上の暴行、監禁、フィルムやデータの没収といった取材妨害が発生しているという。
 取材妨害は、反政府活動家たちやその家族、抗議デモなど政府にとって好ましくない題材を取材した場合に留まらない。五輪チケットを購入しようと殺到する市民たちを撮影しただけで暴行を受けたケースもあり、報道の自由を約束した規則は完全に有名無実化していると土井氏は指摘する。
 更に厳しい監視下に置かれているのが中国人だ。外国メディアの報道に応じたり、取材に協力しただけで国家機密漏洩罪で投獄されるケースが出ているほか、現在少なくとも26人の中国人ジャーナリストが拘禁されており、それ以上の人々が取材妨害や暴行を受けている。
 五輪期間中、世界各国から2万人以上のジャーナリストが中国を訪れることが予想されているが、ヒューマン・ライツ・ウォッチでは、取材対象の中国人たちに被害を及ぼさないために、『北京五輪取材ハンドブック』を作成し、彼らに注意を呼びかけている。さらに、ジャーナリストであれば、中国で活動する際には、電話から、メール、酒場での話まで、常に監視・盗聴される可能性があることを肝に銘じておくべきと土井氏は警告する。
 もともと北京五輪は、中国の人権問題を改善する千載一遇のチャンスだった。しかし、そのチャンスを国際オリンピック委員会(IOC)も国際社会も活かすことができなかったと土井氏は残念がる。
 オリンピック憲章51条で「報道の自由」は保障されており、IOCがより強硬に人権問題の改善を求めれば、事態が改善される可能性は高かった。にもかかわらず、中国の圧倒的な経済力と国連安保理理事国である政治力を恐れ、多くの国は中国に強い圧力をかけることをためらったと土井氏は批判する。
 しかし、土井氏はまだ希望を捨てていないと言う。先のブッシュ大統領のような形でアピールをすることも可能だし、開会式への出席を表明した福田康夫首相の発言にも期待を寄せる。また、いざ五輪が開幕すれば、衆人環視の中で、監視国家中国の実像が浮き彫りになる可能性も高い。
 その際に、国際社会がどのような態度を取り、中国政府がどう反応するか、五輪期間中は状況を注視したいと土井氏は語る。
 今週は、五輪を目前に控えた中国の人権問題、特に表現の自由と報道の自由について議論をした。翌週は、ドーピング問題を取り上げる予定。
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放送日 2008年08月09日(PART1:52分 PART2:54分)
それでもドーピングは止まらない

ゲスト:増田晶文氏(作家)

 北京五輪は史上最多の参加国と史上最多の参加者を誇る史上最大の五輪と言われるが、同時に、史上最多のドーピング五輪となる可能性が高い。過去最多となる26人のドーピングによる失格者を出した前回のアテネ五輪では、28競技3667人が検査対象となったが、北京五輪では、それを大幅に上回る4500人がドーピング検査を受ける。中国のオリンピック委も917人の検査官を動員して、ドーピングを徹底的に摘発する姿勢を見せている。
 各国がドーピングの摘発に躍起になる背景には、ドーピングにさまざまな副作用や後遺症があり、またそれが長期にわたることがある。同時に、ドーピングが横行すると、スポーツのフェアなイメージが損なわれるリスクも犯すことになる。
 しかし、なぜそれでもドーピングは無くならないのか。ドーピングに詳しい作家の増田晶文氏によると、ドーピングがはびこる背景には、選手として最高レベルに達することを渇望するアスリートの本能と、商業主義の蔓延の2つの要素があると言う。特に商業主義は、選手が金メダルや世界記録を出せば、その選手のみならず、コーチや所属団体までが莫大な金銭的メリットを享受できるため、数々のリスクを冒してでもドーピングの誘惑は強いのが実情だと言う。
 ドーピングと言えば、ソウル五輪の男子100メートル走で世界記録を出しながらドーピング検査で陽性が出て失格となったベン・ジョンソンが有名だが、増田氏は、当時ベン・ジョンソンが使用したとされる筋肉増強剤のアナボリック・ステロイドは、今はむしろ時代遅れのドーピングに数えられると言う。
 今日最も多く使われているドーピングは、エリスロポエチン(EPO)などの増血剤とヒト成長ホルモン(HGH)と呼ばれる筋肉増強剤で、これらは筋肉の発達を促したり、持久力を高めたりする効果がある一方で、EPOでは高血圧や血栓症、ヒト成長ホルモンでは心臓の異常や臓器肥大など深刻な後遺症も抱えている。
 選手達は、こうした薬物を使いながら、それを隠蔽するために、さまざまな手段を使う。利尿剤を使い競技日に合わせて体内から薬物を消していく手法が一般的だが、中には、自分の肛門の中に別の人の尿を入れた袋を隠し持ち、尿検査の際に、素早くそれを取り出して提出しようとする選手までいたという。しかし、近年検査がより徹底されるようになり、尿のすり替えも難しくなっている。これが、近年ドーピングの摘発が増えている背景にもある。
 そして増田氏は、北京五輪では遺伝子ドーピングと呼ばれる新しいドーピングが登場すると予見する。これは、特定の遺伝子に働きかけることで、特定の筋肉を発達させたり、特定の運動能力を向上させたりすることが可能になるというもの。検査で摘発することも難しいため、究極のドーピングになる可能性がある。
 WADA(世界アンチ・ドーピング機関)は遺伝子ドーピングも、特定の遺伝子の動きを抑えたり、活性化させるための薬剤が必要になるため、検出は可能だと言うが、そのためにどのような薬剤が使われるか、全てがわかっているわけではない。どう考えてもこれはイタチごっこの感が否めない。そして、そのイタチごっこは常にドーピングを使用する側が先手を打っているのが実情だ。
 また、ドーピングをそこまで厳しく禁止することのコストやその合理性を考える必要があるとの指摘もある。もし選手が後遺症や副作用を承知の上で、それでもドーピングを使用したいと考えた時、それをどうしても禁止しなければならない理由はどこにあるのか。そもそも、選手をドーピングにまで走らせる根底には、オーディエンスである私たち一人一人が、実は超人的なパフォーマンスを期待しているという現実があるのではないか。それを無視して、商業主義を批判したり、ドーピングを批判しても、建設的な解決策は出てこないのでは無いかと、増田氏は問う。
 北京五輪を横目で睨みながら、ドーピングの実態とその背景にある、天賦の才を得たアスリート達をドーピングにまで走らせるスポーツの現実を増田氏と考えた。
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放送日2008年08月16日(PART1:72分 PART2:41分)
なぜ日本には米軍基地があるのか

ゲスト:ケント・カルダー氏(ジョンズ・ホプキンス大学大学院教授)

 8月15日、日本は63回目の終戦記念日を迎えたが、終戦とともに日本に進駐してきたのが、マッカーサー元帥率いる米軍だった。以来米軍は、日本に駐留を続けている。しかし、世界40カ国に800以上もの基地を維持してきた米国は、冷戦の終結や軍事技術の発達によって、現在欧州やアジアの基地の整理縮小を進めている。9.11以降のテロとの戦いを理由に軍備を増強している中東・イスラム圏を例外とすると、既にアジアではフィリピンからは完全撤退し、在韓米軍も縮小傾向にある。米軍が世界から次々と撤退する中で、米軍の日本国内のプレゼンスは一向に縮小の兆しが見えないのはなぜか。新著『米軍再編の政治学』で米軍基地の現状を問うたジョンズ・ホプキンス大学大学院ケント・カルダー教授とともに議論した。
 第二次大戦後の世界は、米国の基地が世界に点在している現状をそれほど違和感なく受け入れているようだが、そもそも主権国家の国内に外国の軍事基地が存在する状況は、第二次大戦後に出現した歴史的に見ても極めて稀な状況であるとカルダー氏は指摘する。
 もともと海外基地の起源はローマやペルシアの帝国時代にさかのぼる。大航海時代にはスペインやオランダ、英国など海軍力で世界を支配した帝国が、艦船の補給基地や資源確保の拠点として、海外に基地を持った。現在の米軍基地は、英国が世界に張り巡らしたこれらの基地ネットワークを、第一次大戦後に譲り受けたものが多いが、過去の軍事基地はいずれも帝国の領土内に限られ、現在の米軍基地のように同盟国の領土内に外国の軍隊を駐留させることは、第二次大戦前はほとんどなかった。
 第二次大戦時、米国は英国やフランスなど連合国内に基地を展開し、ドイツやイタリア、日本の敗戦国内には占領のための基地を作った。占領が軌道に乗ると順次基地の縮小を行い、軍隊を撤退させていった。カルダー氏は、当初米国は長期にわたって日本に基地を持つことは考えていなかったという。
 しかし、1950年の朝鮮戦争勃発で事態は一変した。中国に支援された北朝鮮軍の侵攻を許したトラウマとソ連の原爆の保持
で、米国の海外基地戦略は抜本的な変更を余儀なくされたと、カルダー氏は語る。その結果、ソ連や中国など共産圏を封じ込める戦略的な役割を担った基地が、ドイツ、イタリア、スペイン、日本、韓国、フィリピンなどで建設されていった。1970年代には、石油ショックを契機に資源輸送のルートとしてのシーレーン防衛の概念が重視されるようになり、海外基地の役割が拡充されていっ
た。
 しかし、冷戦の終結とともに、対共産圏包囲網としての基地の戦略的価値は低下し、再び基地の整備・縮小がはじまった。いわゆる米軍の再編だ。
 ところが、現在、世界各国で米軍の縮小・撤退が進む中、在日米軍は一向に縮小の兆しが見えない。カルダー氏は現在、米軍の海外基地は、地政学的な理由や戦略的な理由よりも、基地存置国と受入国の政治的な状況によって存続か否かが決定されていると語る。日本は、「解放者」として進駐した米軍との関係が良好だった上、政変がなく政権が安定していること、手厚い思いやり予算、そして、基地周辺住民との軋轢を減らす防衛施設庁などの充実した管理体制などがあり、政治的に基地が存続しやすい状況にあるため、基地の縮小が進んでいないとカルダー氏は分析する。
 現在、米国は、長引くテロとの戦いに疲弊し、財政赤字が膨らみ、基軸通貨としてのドルの地位低下が大きくのしかかってい
る。世界最強の軍事力を誇りながらも、全世界に点在する基地を維持することに大きな負担を感じている。今後、米国国内の事情により基地の縮小・撤退が進む可能性が高い。日本でも、今後政権交代があり、思いやり予算の減額や地位協定の改定な
ど、政治状況に変化が生じた場合、米軍基地の撤退や再編が加速する可能性が高いとカルダー氏は指摘する。
 第二次大戦後、世界に展開してきた米軍基地は今後どうなるのか。米軍再編が進む一方、なぜ、日本の米軍基地は整理縮小されないのか。基地の歴史や機能を検証しながら、米軍基地の今後を議論した。
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放送日 2008年08月23日(PART1:64分 PART2:61分)
なぜ日本人男子は結婚しなくなったのか

ゲスト:ゲスト:森岡正博氏(大阪府立大学人間社会学部教授)

 結婚しない日本人男性が増えている。07年の人口動態統計によると、日本人の婚姻率は長期低落傾向にあり、現在の30代後半男性の4人に1人が、20代後半の男性にいたっては3人に1人が、一生独身となることが予測されている。
 なぜ、男たちは結婚しなくなったのか。通説では、不況や非正規雇用など男性の経済力の低下がその原因として取り上げられているが、もう一つその背景には、男性の恋愛や結婚に対する考え方の変化があるのではないかと、性や現代社会について独創的な考察を行っている大阪府立大学の森岡正博教授は語る。
 近著「草食系男子の恋愛学」の中で森岡氏は、肉食動物のように女性を求めて積極的に動くのではなく、女性とゆっくりと関係を深めていきたい男性を「草食系」と呼び、そうした男性が日本人の間で増えていると指摘している。この本には、好きな女性に好かれ関係を深めていくためのノウハウが具体的に書かれているが、その理由を森岡氏は、若者たちにとって恋愛や結婚のイメージが抽象化してきており、どうしたら実際に恋愛を成就できるのかがわからない男性が増えているからだと語る。本来恋愛は、挫折を味わう中で経験的に学ぶべきものだが、現状ではその環境が失われているために、このような本が必要になっていると森岡氏は言うのだ。
 一方で、現代の男性の多くが、恋愛ができなければ一人前ではないという言説に振り回され、彼女ができない、いわゆる「非モテ」問題で、自己嫌悪や劣等感に悩まされている男性も多いと森岡氏は言う。今年6月の秋葉原連続通り魔事件の加藤智大容疑者も、「顔がすべて」「不細工だから彼女ができない」などとネット掲示板に書き込んでいた。森岡氏は、加藤容疑者は、見た目や顔の良さが恋愛の全てではないことを学ぶ機会がなかったため、鬱積した不満があのような形で暴力化したという面もあったのではないかと分析する。
 1986年の男女雇用機会均等法の施行以降、女性の就労形態の多様化とともに、女性の生き方や価値観も大きく変化した。そうした社会の変化や女性の意識の変化に合わせて、結婚のあり方も、従来の法律婚だけでなく、同棲や事実婚など多様なモデルが提示されて然るべきだった。ところが、上の世代によってそれが必ずしも実行されてこなかったために、現代の若者にとって結婚という選択肢が、非常に窮屈なものになっているという面があることは否めない。従来の男性主導のマッチョな恋愛・結婚モデルにリアリティを感じられない男性が確実に増えているのに、他の選択肢が見えないことに、婚姻率の低下の原因があるのではないかというのが、森岡氏の見立てだ。
 今週は少々趣を変えて、恋愛と結婚をテーマに森岡氏と議論してみた。
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放送日 2008年08月30日(PART1:90分 PART2:48分)
5金スペシャル 映画とイラク戦争と大統領選挙

ゲスト:町山智浩氏(映画評論家)

 恒例となった、5週目の金曜日に特別企画を無料放送でお届けする「5金」。今回は、帰国中の在米映画評論家・町山智浩氏をスタジオに迎え、いつもは電話出演の町山節を「動く町山さん付き」でお届けする。
 テーマは映画と大統領選挙。イラク戦争と米大統領選に関する3本の映画をもとに、アメリカの言論と政治が今どうなっているかについて、『戦争報道』(ちくま新書)の著作がある武田徹氏(マル激トーク・オン・ディマンド・キャスター)を交えて、語り合った。
 今回取り上げた映画は、『告発のとき』『リダクテッド 真実の価値』『マイケル・ムーアinアホでマヌケな大統領選』の3本。前半の2本はいずれも、実話に基づくドキュメンタリータッチの映画で、イラク帰還兵による殺人事件と駐留米兵によるイラク人少女レイプ事件を題材にしている。町山氏は、これらの事件は、最近までほとんどアメリカで報道されることはなかったという。それがポール・ハギス、ブライアン・デ・パルマといったメジャーな監督に映画の題材としてとりあげられたこと自体が、一時はタブー視されていたイラク戦争への批判が、ようやく一般市民のレベルまで広がってきたことを示すものだと、町山氏は指摘する。
 しかし同時に、心に傷を負いながら行き場を無くしたイラク帰還兵による犯罪や、イラク人少女に対する暴行といった、この映画が描くイラク戦争の陰は、ベトナム戦争を彷彿とさせる。事実、デ・パルマ監督は89年にベトナム戦争で米兵が起こしたレイプ殺害事件を題材に映画『カジュアリティーズ』を監督しており、アメリカがベトナムの教訓を必ずしも生かせていないことが如実に表れていると町山氏は語る。
 3つ目に取り上げた『マイケル・ムーア in アホでマヌケな大統領選』は、モルモン教徒が大半を占めるユタ州の州立大学で、04年の大統領選の直前に学生委員会がマイケル・ムーアを講演のために招聘しようとしたところ、学生、大学当局、地域住民を巻き込んだ賛否両論の大激論に発展した様子を、ナレーション抜きで粛々と記録したドキュメンタリー映画だ。実はマイケル・ムーアの監督作品ではなく、彼自身は5分程度しか登場しないのだが、この作品について町山氏は、イラク戦争での大失敗がありながら、04年にブッシュが再選したのはなぜなのかを示す数少ない記録映画だと説明する。
 アメリカでは9.11の同時多発テロの後、2001年USAパトリオット法(Uniting and Strengthening America by Providing Appropriate Tools Required to Intercept and Obstruct Terrorism Act of 2001=通称愛国法)などを通じて厳しい言論統制が実施され、イラク戦争を批判すること自体が非愛国的であるとの風潮が、数年前まで一世を風靡していた。この映画では、そうした中、保守人口が大半を占めるユタ州で、イラク戦争を声高に批判するムーアの講演会を開くことが、いかに困難なことだったかがビビッドに描かれる一方で、そうした風潮の中にあっても、言論を封殺すべきではないと主張して立ち上がる学生や大学教員、市民が一定数存在するアメリカの健全さも描かれている。その結果、ムーアを呼ぶことの是非をめぐり論争が起き、結果的に人々がその問題を考えるきっかけが作られていく様子も、よく見て取れる作品だ。イラク戦争を支持しておきながら、その是非をめぐる論争さえ起きない日本と比較しても、興味深い。
 今回は町山、武田両氏と共に、これら3作品を通じて見えてくるアメリカの今と日本との対比を幅広く議論した。
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放送日 2008年09月06日(PART1:49分 PART2:31分)
政治の機能不全を脱するために

ゲスト:飯尾潤氏(政策研究大学院大学教授)

 9月1日、福田首相が突然辞任した。これで日本の総理大臣が2代続けて、任期の途中で政権を放り出したことになる。国会の衆参両院の勢力がねじれ状態にあるなど、国会運営が難しいなどの事情もあろうが、それにしても日本の政治がもはや完全に機能不全に陥っていることは、誰の目にも明らかだ。
 辞任会見の中で福田首相は、ねじれ国会によって次期国会でも重要法案成立のメドが立たないことを、辞任の理由に挙げている。しかし、政策研究大学院大学教授の飯尾潤氏は、そもそも衆院と参院の多数派が違うことで議会運営に困難をきたしてしまうこと自体が、日本の議院内閣制が機能していないことを示していると語る。
 議院内閣制を採用している諸外国では、二院の意見が異なることは決して珍しくない。独立して投票される二院制を採用していれば、むしろそれは当然のことで、自民党の長期支配のもと、与党が両院を支配していることを前提に、政権が容易に運営できたこれまでの日本の政治のあり方自体が、世界的に見ればむしろ異常だったというわけだ。
 日本ではよく、国民から直接選ばれる大統領の方が、議院内閣制のもとでの総理大臣よりも強い権限を持っていると思われがちだが、実際はそれは間違っていると飯尾氏は言う。議院内閣制では、国会の支配勢力と行政の長たる内閣総理大臣が同じ政党となるため、三権分立の2つが事実上政権与党によって支配されることになり、首相には大統領よりも遙かに大きな権力が集中することになる。
 しかし、本来は強い権限を持っているはずの首相が、なぜか日本では強力なリーダーシップを発揮することが難しくなっている。戦前の制度の名残で、省庁や官僚の代理人と位置づけられた国務大臣によって内閣が作られる言わば官僚内閣制とでも呼ばれるべき独特の制度があるため、実質的な政策立案は官僚が行い、閣議も次官会議で決定された議題を承認するだけで、国会が選んだ内閣には実質的な決定権はほとんど何もないのが同然の状態が続いてきた。
 一方、議会の側も、自民党政権が長く続いたために、自民党の総裁選が事実上の首相選挙となり、首相は民意とは無関係に、自民党の党内事情で好き勝手に変えられてきた。国会で首相を選ぶ首班指名選挙が、単なるセレモニーに過ぎないことは、日本人であれば誰もが知っている。大臣も当選回数や派閥の推薦などで決められてきたために、国民の任を受けた国会が内閣を選び、首相と大臣が行政を代表するという議院内閣制の本義が、希薄になっていたと飯尾氏は指摘する。
 その一方で、日本の官僚内閣制のもとでは、省庁が企業や業界の要望を吸い上げ政策に反映させる仕組みが機能していたため、国民の意見は議会を通してではなく、官僚制度を通じてある程度政策に取り入れられてきた。そのため、与党の族議員は、国民全体のためというよりも、自分たちが利益を代表する業界や団体の代弁をすればよく、それが結果的に議院内閣制の更なる弱体化につながったと飯尾氏は言う。
 その意味で、小泉政権は議院内閣制の原理に沿って、官僚の抵抗を排してでも、首相が選挙で掲げた政策や方針がそのまま政策に反映される、日本の政治史上では、むしろ異例の政権だったと飯尾氏は指摘する。しかし、小泉政権以降、日本の政治は再び官僚内閣制に舞い戻っている。
 いずれにしても、このまま政治の機能不全が長引けば、日本は山積する国内外の問題にほとんど対応できない閉塞状態が、今後何年もの間続くことになる。今日本の政治が、議院内閣制本来の機能を取り戻すために何が必要なのか。福田首相辞任の背景にある日本の政治プロセスが抱える根本的な問題を、飯尾氏とともに議論をした。
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放送日 2008年09月13日(PART1:67分 PART2:56分)
自民党の本気度、民主党の本物度を検証する

ゲスト:上杉隆氏(ジャーナリスト)

 2代にわたり総理が政権を放り出したかと思うと、出来レースよろしく演出ばかりがやたらと目立つ総裁選を平然と繰り広げる自民党。他方、党内には小沢代表の党運営への異論が燻っているにもかかわらず、黙っていれば政権が転がり込んできそうな予感から、誰一人として代表選挙に名乗りを上げることさえできない民主党。日本の政治は一体どうなってしまったのか。
 自民党の総裁選は、麻生太郎幹事長の一人勝ちが既定路線のようだが、告示日直前に他の4人が次々と名乗りを上げ、一見賑やかな総裁選となった。何と言っても、日本の次の総理大臣を選ぶ選挙だ。候補者たちは連日テレビに出演し、各地で街頭演説を行うことで、相応のメディア露出を確保しているようだ。少なくとも民主党の小沢代表の再選のニュースを打ち消すことには成功しているようだが、ジャーナリストの上杉隆氏は、これは決して自民党にプラスには作用しないだろうと予想する。なぜなら、この総裁選が茶番であることは誰の目にも明らかだからだ。
 上杉氏によると、総裁選は告示と同時に決まったも同然だったという。上杉氏が告示日に各候補の出陣式を取材したところ、各陣営に集まった国会議員及びその代理人の数は、麻生氏が165人だったのに対して、他の4人の候補者はいずれも20人前後だったという。
 また、一見盛り上がっているかに見えるメディアの総裁選報道も、実際はメディア各社は半ば仕方なく自民党からの仕掛けに乗っているだけで、実際記者達はしらけているし、コメンテーターの多くは平然と「茶番」を口にしている。メディア露出には良い露出と悪い露出があり、単に露出が増えればいいと考えているかに見える自民党の判断は、裏目に出るだろうというわけだ。実際、総裁候補の街頭演説に人は集まっておらず、有権者が自民党に向ける視線は厳しいと上杉氏は予想する。
 しかし、他方で民主党は、そうした自民党の末期症状を目の当たりにしながらも、必ずしも有効な手だてを打てていない。党内には黙っていれば政権が転がり込んでくるのではないかとの楽観的な機運が根強く、盛り上がる自民党総裁選を横目で見ながら、有効な対抗策を打てずにいる感が否めない。
 そもそも民主党は、なぜ自分たちの政策をアピールする絶好の機会となるはずの代表選で、小沢代表を無投票で再選させたのか。上杉氏は、民主党内には新進党時代に羽田孜氏と小沢一郎氏が代表を争った末にできた亀裂が党を分裂に招いた経緯がトラウマになっているためだと語る。民主党の中堅以上の議員にはその過ちを繰り返したくないとの思いが強く、総選挙を前に党の結束を最優先したのだと言う。しかし、果たしてこの選択が有権者の理解を得られるかどうかは、まだ未知数だ。
 もはや茶番であることが明白となった総裁選にあって、上杉氏は小泉純一郎元首相の支持を得た小池氏の動きだけは今後も要注意だと指摘する。小泉氏や中川秀直元幹事長率いる「上げ潮派」の支援を受けた小池氏が、総裁選で予想以上に健闘すれば、今後の政局で台風の目となる可能性が俄然高くなる。民主党の中にも、田中真紀子氏とのタッグで小泉政権が大ブームを引き起こした悪夢を、小池、小泉のコンビが再び引き起こすのではないかと恐れる声は大きい。
 フリーの立場で政治の第一線の取材に奔走する上杉氏を迎えて、自民、民主両党の実情と、政治の実態を伝えようとしない「記者クラブ」問題について議論した。
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放送日 2008年09月20日(PART1:58分 PART2:39分)
新型インフルエンザとのつきあい方

ゲスト:山本太郎氏(長崎大学教授)

 WHOは、新型インフルエンザは発生から約1週間で世界に広がる大流行(パンデミック)を引き起こし、最悪の場合1億5000万人が死亡すると試算し、世界各国に対策を呼びかけている。感染症としては史上類を見ない規模で発生するこのパンデミックに対応するため、日本の厚労省も行動計画を作成し、対策のガイドラインを発表するなど、ようやく重い腰を上げ始めている。しかし、パンデミックがひとたび起きれば、医療機関へ殺到する感染者や感染を免れようとする住民によるパニックが起こり、社会的な混乱を引き起こす可能性が危惧されている。そうした事態に対応するためには、医療体制の確保や感染者の隔離、住民の行動制限や交通機関の運休、学校の休校や通勤の自粛など、複数の省庁や地方自治体、企業などの連携が不可欠となるが、依然としてその体制は十分には整っていないと指摘する専門家は多い。
 それにしても、人類はこれまでもさまざまな感染症に襲われてきた。なぜ、新型インフルエンザだけが、これほど恐れられているのだろうか?感染症対策に詳しい長崎大学教授の山本太郎氏は、現在は、従来のインフルエンザウイルスに替わり、新しいウイルスが登場する可能性が高い時期に入っており、人類は新しいウイルスに対して免疫がないことから、パンデミックはいつ起きてもおかしくない状態にあると語る。それが、現在恐れられているパンデミックが、スケールにおいても重篤さにおいても、従来のインフルエンザの流行とは桁違いになると予想される所以だ。
 これまで発生した新型のインフルエンザは、すべて鳥を宿主とする鳥インフルエンザが変異し、人に感染したものがその起源だった。現在、WHOが厳重に監視をしている鳥インフルエンザH5N1型は、97年に鳥を大量死させたことから注目されたものだが、従来から存在している鳥インフルエンザウイルスは宿主の鳥に重篤な症状を引き起こさなかったが、このH5N1型は宿主を死に至らしめるほど毒性が強い。また、H5N1型の鳥から人への感染は既に始まっている。WHOの発表では、2003年10月から2008年9月までに、世界15カ国387人がH5N1型によるインフルエンザを発症し、そのうち245人が死亡している。その中には極少数ではあるが、人から人への感染も報告されているのだ。
 山本氏は、人類が鳥インフルエンザを根絶することは不可能と語る。宿主である渡り鳥が国境を越えて、ウイルスを伝播する可能性も高い。また、どんなにH5N1型を監視しても、人への感染を引き起こす別のウイルスが突然登場する可能性もある。そのため、新型インフルエンザを完全に封じ込めることは不可能と考え、むしろ、発生後にどうパンデミックを遅らせるかを主眼に対策を練るべきと提言する。
 人類は、記録に残っているだけでも、17世紀後半からたびたび新型インフルエンザのパンデミックに襲われてきた。1918年のスペインかぜや1968年の香港かぜに見られるように、インフルエンザが世界中で流行を起こすと、人類は免疫を獲得し、ウイルスも次第に毒性を弱めていく。予想されるパンデミックも、1年ほどで終息する可能性が高い。そのため、新型インフルエンザが発生した場合は、まず徹底した封じ込めを行い、流行を遅延させることで、時間稼ぎをすることが重要だと山本氏は語る。そのためには、発生地となる可能性が高いとみなされているアジアの一員である日本への期待は大きい。日本政府は新型インフルエンザ発生の際には、率先して発生国に協力を行い、国際的な貢献をする必要がある。それが、自国民を守ることにもつながると、山本氏は説く。
 新型インフルエンザとはどのようなもので、われわれは何をどれほど恐れる必要があるのか。社会的な影響、パンデミック阻止に日本が果たす役割まで、新型インフルエンザと我々はどうつきあうべきかについて、幅広い議論を行った。
 
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