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マル激トーク・オン・ディマンド 第39巻(第391〜400回収録)詳細
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放送日 2008年09月27日(PART1:80分 PART2:36分)
自民党システムの終焉

ゲスト:野中尚人氏(学習院大学教授)

 自民党がおかしい。結果が見えているにもかかわらず、妙に演出ばかりが目立った総裁選を経て、9月24日、麻生政権が誕生したが、就任直後から首相は、民主党に勝つことこそが、新首相の最大の責務であるとの考えを公言して憚らないのだ。そこには、これからの日本をどのようにリードしていくのか、現在の日本が抱える諸問題にはどのように対応していくのか、また野党とのねじれを乗り越えて、どう国会を運営していくのかといった、政権与党としての基本的な使命感や矜持が、ほとんど感じられないといえば、言いすぎだろうか。
 自民党政治が、戦後半世紀の間、日本の政治を支配し、戦後復興から高度成長を可能にし、日本を世界の経済大国にまで押し上げる原動力であったことは、すでに歴史が証明している。しかし、自民党政治を研究してきた学習院大学の野中尚人教授は、自民党支配の根底にあった「自民党システム」は既に崩壊し、自民党の時代は終焉を迎えていると言い切る。
 野中氏の言う自民党システムとは、族議員が多様な意見をボトムアップで吸い上げ政策に反映させる、高度に民主的な仕組みを含んでいた。また、政務調査会など党内に巨大な政策立案機能を抱え、国会に諮る前に族議員を中心に党内で丁寧な合意形成を行う点も、自民党システムの特徴だった。
 族議員が合意形成や意見集約に機能を果たす一方で、派閥が若い議員の面倒を見るとともに、政治教育の場を提供してきた。そして、派閥の幹部が説得することで党内での合意形成が可能となり、小選挙区制や消費税の導入など困難な法案を成立させることが可能だったと、野中氏は指摘する。また、一見、当選回数による派閥順送り人事のように見えて、実際はポストをめぐる熾烈な競争も裏で繰り広げられていた。
 ところが、小選挙区制の導入によって自民党システムの要だった派閥制度は崩れ、トップダウンの小泉改革で、ボトムアップの根回し型意志決定システムは、完全にその息の根を止められてしまった。冷戦構造が崩れ、日米同盟がもはや自明なものでなくなったことも、高度成長が終わり、自民党システムを使って配分する利益が消えてしまったことも、自民党システムをさらに弱体化させる原因になったと野中氏は指摘する。
 自民党システムが機能するための前提が崩れ、システム自体が崩壊した今、自民党がこの先も長期にわたって政権政党の座にとどまり続けることは困難だろうと、野中氏は予想する。また、もし仮に自民党が政権にとどまることになったとすれば、それは党名は自民党のままでも、実質的な中身は、これまでの自民党とは全く違ったものになっているはずだとも言う。
 しかし、もし仮に野中氏の言うように、自民党システムが機能しなくなっているとしても、それを全否定することには注意が必要だろう。その中には、日本が時間をかけて培ってきた普遍的な資産が含まれている可能性も十分にある。一旦これを失えば、次に政権の座につく勢力は、ゼロからすべてを再構築しなければならなくなる。
 これまで日本を統治し、日本の発展を支えてきた自民党システムとは何だったのか。また、どのような理由で、この自民党システムは機能しなくなってしまったのか。仮に民主党が政権政党となった場合、強固な自民党システムに匹敵する新たな統治システムを構築できるのか。  自民党政治への批判と絶望が高まるなか、戦後日本社会を作り上げてきた自民党の政治運営の仕組みにあえてもう一度焦点を当て、その功罪を議論した。
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放送日 2008年10月04日(PART1:77分 PART2:43分)
アメリカ型金融資本主義の終焉

ゲスト:若田部昌澄氏(早稲田大学政治経済学術院教授)

 29日、金融危機に揺れるアメリカを、更なる激震が襲った。金融機関の破綻を食い止める目的でブッシュ政権が急遽取りまとめた金融安定化法案を、下院が否決したのだ。法案の否決を受け、ニューヨーク株式市場はダウ平均が過去最大の下げ幅を記録するなど、混迷の度合いを一層深めている。
 日本のメディアの論調は、法案を否決した米下院の判断に対して、「内向き」「危機感の欠如」など批判的なものが多いようだ。しかし、法案に反対票を投じた議員たちの主張に耳を傾けてみると、民間の経済活動に政府が介入することへの危険性、政府が無限に膨張していくことへの警戒心や、法外な報酬を受け取ってきた金融機関経営者を血税で救うことへの抵抗感など、重要な問題提起を含んだものが多い。
 反対派議員の多くが「ウォール街救済策」と批判する今回の法案に対する反発は、濡れ手に粟の錬金術ともいわれる現在のマネー経済の手法そのものへの反発とも受け取ることができる。
 そこで、今週は経済学史に詳しい早稲田大学政治経済学術院の若田部昌澄教授とともに、今回の危機と、1930年代の世界大恐慌など過去の金融危機との共通点と相違点を議論した。
 若田部氏は、今週下院が否決した法案は決して完璧なものではないかもしれないが、「火災が起きている以上はまずは消火が必要」との理由から、法案可決の必要性を強調する。ここで手を打たなければ、傷口は更に広がり、結果的により大きな負担を強いられることになる可能性が高いからだ。確かに、ウォール街の破綻は、実体経済にも影響を及ぼすため、政府の救済策はウォール街を救うことで究極的には国民全体を救うことを意図したものと見ることもできる。
 しかし、それでもなお、これまで毎年100億円を超える報酬を受け取ってきた銀行経営者たちを、税金で救済することへの抵抗感は拭えない。また、他の民間企業であれば、どんなに困っても政府は救済などしないはずだ。「金融秩序のため」とは言うが、なぜ政府が金融機関だけを救済することが正当化できるのか。いや、もし金融は公共的なものと主張するのであれば、CEOに100億円単位の報酬を支払うことなど到底容認できないはずだ。
 巨万の利潤を求めた金融機関が暴走した結果、金融危機が起き、そのたびに一時的にでも規制を強化して、パニックを鎮める。われわれはこれからもこのサイクルを繰り返すのだろうか。そして、それは避けられないことなのだろうか。クリントン政権の労働長官で、民主党のバラク・オバマ大統領候補の経済政策アドバイザーを務めるロバート・ライシュの近著『暴走する資本主義』を引き合いに出しながら、拡大し続ける金融経済、ウォール街のビジネスモデルへの疑問などについて、若田部氏と議論した。
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放送日 2008年10月11日(PART1:47分 PART2:44分)
民主党マニフェストと霞ヶ関埋蔵金

ゲスト:高橋洋一氏(東洋大学教授)

 連日の株価大暴落で、11月上旬の総選挙観測はやや後退した感があるが、とはいえ、近々に政権選択の選挙が迫っている状況に変わりはない。既に参院で第一党の地位を固め、野党連合を通じて参院の過半数を支配する民主党にとっては、来る総選挙こそが、文字通り政権取りをかけた大勝負となる。
 民主党政権誕生の可能性が現実味を増してきた今、民主党の政策の検証は、以前にも増して重要となっている。民主党主導の政権が実現した場合は、それが日本政府の政策となるからだ。
 そこで今週のマル激では、小沢一郎民主党代表の先の国会での代表質問などで提示された民主党の主要な政策を、東洋大学の高橋洋一教授とともに、特に財源面から検証し、その実現可能性を議論してみた。
 東京大学で数学を専攻した後大蔵省(現財務省)に入省した経歴を持ち、「霞ヶ関の埋蔵金男」の異名を取る高橋洋一氏は、民主党政権の掲げる政策の財源面の裏付けに対して与党から疑問が呈されていることについて、「4年間で50兆程度の財源の捻出は十分可能」と言う。民主党が予算の組み替えを主張していることから、実際には予算項目の付け替えなどもあり、「真水」として必要になる新たな財源は、現在取りざたされている「4年で56兆円」よりも少なくなる可能性があること、より厳密なB/C(便益/コスト)計算を導入することで、相当額の公共事業の削減が可能になることなどとともに、霞ヶ関埋蔵金の存在をその理由にあげている。
 霞ヶ関埋蔵金とは、一般会計と特別会計からなる国の予算のうち、国会のチェックをほとんど受けない特別会計の中に計上されている種々の積立金のことで、その額は50兆とも70兆とも言われている。国が行った事業によって発生した剰余金の一種で、企業の「内部留保」にあたる。企業で利益が発生した場合、それを内部留保に回すか、配当金として株主に還元するかは、本来株主が決めることだが、霞ヶ関埋蔵金の扱いは、少なくともこれまでは官僚の裁量で、各省庁やその傘下にある特殊法人などに積立金として貯め込まれてきた。
 事業の内容によっては「もしもの場合」に備えて一定額の積立金が必要になる事業もあるかもしれないが、いずれにしても、どの程度が適当な積立金なのかについては、これまで議論もないままに、各省庁の官僚の裁量に委ねられてきたという。いわば、国家予算を上回る額の公金が、官僚の判断で各役所内にプールされていたことになる。
 結果的にその運用益が、官僚が天下る特殊法人やファミリー企業などに投入される官僚利権になっていたことも紛れもない事実だ。
 大蔵官僚出身ながら、小泉改革を実務面で支え、霞ヶ関官僚の激しい抵抗に遭遇した経験を持つ高橋氏は、民主党がマニフェストに掲げた政策を実現できるか否かは、財源問題よりもむしろ官僚の抵抗を押さえ込むことができるか否かにかかっていると言い切る。その意味で、官僚の抵抗を排し、公務員数の削減や公務員給与のカット、天下りの禁止を含む公務員制度の改革と、情報公開の徹底をどこまで行うことができるかで、民主党政権の真贋が問われることになるだろうと高橋氏は言う。
 民主党の掲げる政策には、財源の裏付けが本当にあるのか。財源問題の他に、その実現の妨げとなるものがあるのか。その政策が実現した時、日本にどのような変化が訪れるのか。明日の日本政府の政策となる可能性が少なからず出てきた民主党のマニフェストを、高橋氏とともに検証した。
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放送日 2008年10月18日(PART1:63分 PART2:49分)
炎上したっていいじゃないか

ゲスト:伊地知晋一氏(ゼロスタートコミュニケーションズ専務取締役)

 今年6月頃、毎日新聞をめぐりネットが炎上した。英文ウエッブサイト「毎日デイリーニューズ」のコラム「WaiWai」の内容があまりにも低俗だとして、掲示板などに批判が集中し、それをニュースサイトが報じたことで、さらに炎上に拍車がかかり、最終的に毎日新聞や毎日新聞のウエッブサイトに広告を掲載している企業の多くが、広告を取り下げるという事態にまで発展した。広告を出稿する企業に対しネットユーザーたちからの「問い合わせ」が殺到したためだ。ピーク時からすでに4か月近くが経つが、この「WaiWai」問題はいまだにネット上で燻り続けている。
 この「毎日WaiWai」問題は、2つの意味で特筆される。
 まず一つ目は、ネット上の言論が、いったん炎上状態にまで発展すると、実社会にまでも大きな影響を与えることが明確になったということ。そしてそれは毎日新聞のような大企業に対しても、経営の屋台骨を揺るがしかねないほど深刻なダメージを与える力を持っていることが確認された。
 そして二つ目は、これが言論エスタブリッシュメントを象徴する5大紙の一角を担う毎日新聞が、新たに勃興してきたネット言論の前に完全に屈伏した形で事態が収束している点だ。このことで、言論空間としてのインターネットの力が改めて注目されると同時に、その質や内容、社会的責任や公共性についても、再考すべき点が出てきたということができるだろう。
 ブログや掲示板などで特定の個人や団体・企業に対して誹謗中傷や脅迫を含む批判が殺到する状態を「炎上」と呼ぶ。06年、ホリエモンの「ライブドア社長ブログ」で大炎上を経験し、自身のブログでもいわれのない中傷や憶測による批判のコメントが集中した経験を持つ伊地知晋一氏は、ネットというメディアは一度火が点いてしまったら最後、何をしても殺到する批判を抑えることはできないと、自らの実体験をもとに語る。
 毎日新聞の場合も、当初は英文サイトの低俗な記事に対する素朴な疑問や批判が散発的に掲示板に書き込まれる程度のものだったが、毎日側がそうした批判に真摯に対応しなかったことから、時とともに批判や中傷が雪だるま式に膨れ上がり、最後は毎日新聞に広告を掲載している企業にまでいわゆる電凸(でんとつ=電話突撃)攻撃と呼ばれる抗議行動が、大勢の見ず知らずのネットユーザーの手で行われたり、関係者本人や家族の個人情報がネット上にさらされ、そうした人たちにまで電話やメールが殺到する、深刻な事態にまで至っている。
 無論、週刊誌等に出ている「噂」や「ネタ」といった次元の記事を、真偽の確認もないまま脚色し、しかも世界に向けて英文で配信していたことや、まさに炎上の渦中にそのサイトの責任者を社長や役員に昇進させたこと、お詫び記事の中に報復を示唆する挑発的な内容の文章を潜り込ませていたことなど、毎日側の体制や対応にもかなりの問題があったことは明らかだ。しかし、それにしても、世の中に問題企業は多い。なぜ毎日の問題は大火事にまで発展してしまったのか。
 炎上が起きるためには、その条件や一定のパターンがあり、ある程度炎上のリスクは予想できると伊地知氏は言う。そのため、過去の炎上の多くは、当事者がそれを理解できていないために起きたものが多い。
 また、ネット上の炎上が、特定の世代や、特定の意見に凝り固まった人たちが一枚岩になって起こしているように言われることが多いが、それも伊地知氏は否定する。実際ネット上には多様な意見があり、それぞれが自由に発信している結果にすぎない。伊地知氏はむしろ、団塊の世代や、団塊世代の意見を代表する旧来のマスメディアこそが一枚岩であり、それと異なる意見を取るに足らない少数意見としてしか認識できない感覚の方に違和感を覚えるとも言う。
 ネット言論は、各々が狭い世界の中で固まっているという面はあるが、多様な意見が存在し、それぞれが村を形成している。その村と村の間を互いに行き来をしながらも、他の村の内政には干渉しないという特徴があると、伊地知氏は分析する。
 そしてネットユーザーの多くは、マスメディアや団塊の世代が発する、社会はこうあるべきだという固定観念に、圧迫感や嫌悪感を感じている人が多い。マスメディアが発する通り一遍の解説や見解などの2次情報は、ネットユーザーにとっては単なる押し付けに過ぎず、余計なお世話だというのだ。
 とはいえ、ネット上での個人情報の流出や誹謗中傷、脅迫は絶対に許されることではない。実際に炎上を経験し、鎮静化を待つしかなかったと語る伊地知氏も、現在の日本ではネット上の誹謗中傷に対抗する手段が十分に整備されているとはいえないことに懸念を表す。
 論座や月刊現代などが次々と廃刊され、日本を長年支えてきた旧来の論壇が消えつつある状況の中で、「ネット論壇」や「ブログ論壇」と呼ばれる新たに現出した言論空間は、公共的な論壇の役割を果たすことができるのだろうか。あるいは、そもそも「公共的な言論」「公共的な論壇」という発想自体が、もはや時代遅れの発想なのだろうか。
 ホリエモン騒動の渦中にあって、自らが主宰するウエッブサイトで大炎上を経験し、その後著書「ブログ炎上」の中で、炎上現象を独自の切り口で分析している伊地知氏とともに、炎上と言論空間としてのネット論壇の可能性を議論してみた。
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放送日2008年10月25日(PART1:104分 PART2:42分)
初物づくしの米大統領選を10倍楽しむために

ゲスト:吉崎達彦氏(双日総合研究所副所長)

 11月4日の米大統領選挙は、投票日を10日後に控えた今、民主党のバラク・オバマ候補が相当の差をつけて共和党のジョン・マケイン候補に勝利する見通しが、はっきりと見えてきたようだ。
 米国では初となる黒人大統領の誕生、8年ぶりの政権交代、20年ぶりのクリントン・ブッシュ家以外からの大統領誕生、80年ぶりとなる正副大統領の出馬しない選挙、民主、共和両党ともに大本命候補の敗退、党大会までもつれ込んだ民主党の候補者選び等々、初物や異例さには事欠かない選挙戦となったが、そうした話題性を横に置いても、今回の大統領選挙はいくつかの点で重要な意味を持っている。
 長年大統領選挙をウォッチしてきた双日総合研究所の吉崎達彦副所長は、2つの点で今回の大統領選挙は重要な意味を持つと指摘する。
 まず、オバマという47歳で黒人の民主党候補者が、これだけ広範な支持を集めた背景にある、アメリカの政治地図の変化だ。これまで、80年の選挙で共和党のロナルド・レーガン候補が現職の民主党ジミー・カーター大統領に勝利して以来、アメリカでは人口の多い東西両海岸の諸州に民主党が強い支持基盤を持ち、中部から南部を共和党が押さえることがほぼ常態化していた。そのため、フロリダ、オハイオなどの「スイングステート」をどちらが押さえるかによって大統領選挙の帰趨が決する選挙が四半世紀にわたり続いた。しかし、今回の選挙では、バージニア、ノースカロライナ、コロラドなど伝統的な共和党の地盤までが民主党の手中に落ちる可能性が高まっている。これはフロリダやオハイオの「スイングステート」の結果を待つまでもなく、勝敗が決することを意味し、これによってアメリカの政治地図の塗り替えが、約30年ぶりに行われることになる。
 その最大の原因を吉崎氏は、ブッシュ政権に対する失望の大きさの表れと分析する。特に、泥沼化する対イラク政策と、サブプライムローン問題に端を発する金融危機への無策ぶりが、アメリカ政治に新たな力学を持ち込む結果となっているという。
 政治地図の塗り替えは一方で、オバマ氏の元に新たな政治勢力を結集させている。オバマ氏の強みは、民主党の伝統的な支持層である白人インテリ層と黒人層の他、「ミレニアルズ」と呼ばれる若者の熱狂的な支持を集めている点にある。ミレニアルズとは、2000年の千年紀に幼青年期を過ごした世代の俗称だが、この世代は人口に占める非白人の割合が4割に及ぶという特徴を持っている。2000年の国勢調査で、全人口に占める白人の比率が90年の約80%から約75%と下がったことが明らかになっているが、この傾向は若い世代では更に顕著となる。アメリカでは世代によっては、もはや白人をマジョリティとは簡単に呼べない状況が現出しているのだ。オバマ氏が新たに登場した非白人という巨大な政治勢力の支持を集めて大統領に当選することの意味は大きい。
 吉崎氏はまた、オバマ氏の出自が明確に所属する集団を持たないことが、オバマ氏にとって有利に作用していると指摘する。マケイン氏のように星条旗を背負いアメリカのために戦ってきた政治家や、ヒラリー・クリントン氏のように、女性の解放のために戦ってきた政治家は、無条件で強力な支持が期待できる所属集団を持つ一方で、集団の外側には敵も多い。一方のオバマ氏は、イスラム教徒でケニア人の父と白人でティーンネージャーだったアメリカ人の母の間に生まれ、シングルマザーの母と母方の祖父母に育てられ、ハワイ、インドネシアと移り住んだ後、苦学してアイビーリーグの名門大学に進みながら、約束されていたエリートコースを捨てシカゴで貧困層のためのコミュニティサービスに身を投じてきた。白人でも黒人でもなく、ただのエリートでもないが、労働者階級出身でもない。こうした出自や生き方の選択こそが、オバマ氏が特定の集団の代表ではなく「みんなのオバマ」になりえている所以であると吉崎氏は指摘する。
 しかし、それでもまだ一つの大きな問いが残る。もし、アメリカが選ぼうとしているのが、単なる民主党の候補でもなければ単なる黒人候補でもないとするならば、アメリカはこの選挙で何を選ぼうとしているのか。初の黒人大統領誕生という歴史的なこの選挙の持つ意味と、それによってアメリカが向かう方向にどのような変化が出るのかを、吉崎氏とともに考えた。
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放送日 2008年11月01日(PART1:68分 PART2:85分)
解散回避に見る日本の政治とメディアの現状

ゲスト:角谷浩一氏(政治ジャーナリスト)、上杉隆氏(ジャーナリスト)、横田由美子氏(ルポライター)

 5回目の金曜日に無料放送で特別番組をお届けする5金企画。今回は、新しい試みとしてジャーナリストたちが日頃取材しているテーマを徹底的に語り合う「ジャーナリスト・ラウンドテーブル」をお送りする。
 今回は、『永田町コンフィデンシャル』の司会者としてお馴染みの角谷浩一氏、マル激には3回目の登場となる上杉隆氏、小池百合子議員ら主に女性政治家を取材してきたルポライターの横田由美子氏の3人のジャーナリストにご登場いただき、神保・宮台両氏の司会のもとで、解散論争の虚実や麻生政権の現状、民主党の今などについて、自由闊達に議論を展開してもらった。
 自民党総裁選中の9月18日に朝日新聞が「26日総選挙」の大誤報を打ったことについて、上杉氏は、一連の解散報道が、政治ジャーナリズムの現状を映し出していると指摘する。朝日もそれを後追いした新聞各社も、誤報の事実を認めず、30日の麻生首相の会見で当分解散が無いことが明らかになっても、依然として「先送り」「先延ばし」などの言葉を使用して、解散ありきの姿勢をとり続けた。
 また、メディア各社が早期解散の根拠としている、都議選を重視する公明党の意向というものも、実は根拠が怪しいことがわかった。上杉氏が、過去5回の都議選を調べたところ、そのうち4回は都議選の前後1、2カ月以内に国政選挙が行われており、しかもいずれの選挙でも公明党が勝利を収めている。
 事ほど左様に、此度の解散をめぐるドタバタからは、今の日本の政治とメディアのさまざまな実情が浮き彫りになってくるようだ。
 そのほか、麻生政権の内情と30日に発表された追加経済対策の評価、はっきりしない民主党小沢氏の健康問題、女性政治家が活躍する条件等々、日々永田町で取材を重ねる3氏と、解散もできない政権と、誤報を認めることさえできないメディアの狂想曲の行方を、一つのテーブルを囲んで徹底的に語り尽くした。
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放送日 2008年11月08日(PART1:101分 PART2:69分)
オバマのアメリカを展望する

ゲスト:古矢旬氏(東京大学大学院教授)、 杉浦哲郎氏(みずほ総研チーフエコノミスト)

 オバマのアメリカが誕生する。4日行われた米大統領選挙で、民主党のバラク・オバマ上院議員が、同じく上院議員で共和党のジョン・マケイン候補に圧勝した。アフリカ系アメリカ人初の大統領となるオバマ氏は「たどり着くのに時間はかかったが、今、この選挙で、この瞬間に、アメリカに変革が訪れた」と勝利演説で述べ、多くの人の胸を打った。
 今回のマル激は、米大統領選挙スペシャルとして、オバマを選んだアメリカが今何を求め、どこに向かおうとしているかを、2人のアメリカウォッチャーと議論した。
 ハーバード大学の政治哲学者マイケル・サンデルはオバマの勝利について、「アメリカはブッシュのCOMMON GOOD(共通善)を否定した」と指摘し、ブッシュのアメリカを、「COMMON GOODの希求に政府は関与せず、個々人が自らの利益を最大化することに集中」するものだったと総括した。そして、その否定の上に選ばれたオバマ政権の課題は、政府に何ができるかを示すことになるが、個々の帰属集団の要求を寄せ集め、そこにばらまきを行う旧来のニューディール連合的なCOMMON GOODに戻ることも、もはや許されないとして、「個々人が公的貢献を行う見返り」に政府が富の再配分を行う新たなアメリカのCOMMON GOODの基準を作ることになるだろうと予見した。ここでいう公的貢献とは、兵役や地域でのボランティア、コミュニティサービスを指す。
 確かにオバマ氏は、人種、性別、所得分布から見ても、幅広い層からの支持を集めて、圧倒的な勝利を収めた。過去2回の選挙でレッドステート(共和党支持州)とブルーステート(民主党支持州)に真っ二つに分断されてきたアメリカの政治地図が、オバマ氏支持の一点で、12年ぶりに塗り替えられた格好だ。
 オバマ氏を支持した人の多くは、政府はできる限り何もしない方がいいとの立場を貫いてきたブッシュ政権に背を向け、政府が現在の窮状を救ってくれることを期待した。しかし、彼らの要求をすべて満たすだけの国力は、もはやアメリカには残っていないし、グローバル化した時代状況もそれを許さない。
 とすると、オバマ政権が発足しても、すぐに自分たちに見返りが無いことがわかると、早晩支持者たちの離反を招く危険性は常に付きまとう。しかし、その一方で、今回オバマ氏を支持した人たちの中には、単なる短期的な見返りを期待して一票を投じたわけではない人々が大勢いる。それは、ミレニアルズと呼ばれる若年層であり、東部のインテリ階層でもある。
 そうした状況の中で、オバマ政権はアメリカに対して、そして世界に対して、どのようなCOMMON GOODを提示できるのか。
 番組前半は選挙結果とオバマ氏の勝利演説を通じて、オバマ政権の課題を占った。マイノリティからの圧倒的な支持に加え、オバマ氏が白人票の43%を得た(CNNの全国出口調査)ことは、明らかに若い世代で人種の垣根が下がっていることを示す。しかし、それと同時にオバマ氏も、従来の黒人政治家とは異なり、黒人独特のルサンチマンや抗議を行わない新しいタイプの政治家だ。初の黒人大統領として、これまで人種面で分断されてきたアメリカが、オバマ氏の大統領就任でどう融合されていくのかに注目したい。
 またブッシュ政権下で実施された新自由主義的な政権運営は、アメリカに大きな格差をもたらした。一部の成功者が巨万の富を得る一方で、所得の減少は白人にまで広がり、格差は耐えられないまでに拡大した。オバマ政権にとってある程度の再配分政策への回帰は不可避だと思われるが、同時にアメリカを震源地とするグローバル化の波は、もはやとどまるところを知らない勢いで世界を席巻している。言いだしっぺのアメリカだけが、資本の再配分や保護主義に戻ることが許される状況ではない。そこでもまた、オバマ政権は困難な選択に直面するだろう。
 金融問題についても同じことが言える。危機を招いた金融の過度の自由化に対しては、一定の規制強化が必要だろうが、ここまで自由に世界を飛び回るようになったマネーの流れを、果たして本当に規制できるのか。また、それを規制することで、世界経済にどのような影響を及ぼすのか。
 その一方で、現在の金融危機を乗り切るために、アメリカは膨大な公的資金の投入を余儀なくされている。一説には来年度の財政赤字は1兆ドル(100兆円)を超えると言われる。オバマ政権は金融危機と莫大な財政赤字という負の遺産をブッシュ政権から引き継いでの船出となる。今後も、危機の回避と景気回復のためにアメリカ政府は惜しみなく財政出動を続ける他に実際のところ選択肢はなさそうだが、そうすることで財政赤字はさらに膨れ上がる。早晩、米ドルの基軸通貨としての地位の維持は困難になるだろう。もしかすると、アメリカの国際的な地位の低下をアメリカ人に納得させることが、オバマ政権の最も重大な仕事の一つとなる可能性が大きいのだ。
 オバマのアメリカを展望しながら、そこから日本が学ぶべきことは無いのかを議論した。
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放送日 2008年11月15日(PART1:116分 PART2:59分)
今あらためて問う、この裁判員制度で本当にいいのか

ゲスト:西野喜一氏(新潟大学大学院教授)

 市民が重大な刑事裁判に参加することを義務づける裁判員制度の実施が、いよいよ半年後に迫った。今月に入ってからテレビCMも流れはじめ、月末には裁判員候補者に選ばれた人に対する告知の郵送も始まる。もはや引き返せないところまできているかのようにも見える。
 しかし、これまでマル激で何度となく報じてきたように、現行の裁判員制度は大きな問題点を残しており、人を死刑や無期懲役に処する可能性の高い重大な司法制度の変更がこのまま実施されれば、深刻な問題が起きるとの懸念は根強く残っている。また、この制度だけは、とりあえずまず始めてみて、問題があれば直していきましょう、では済まされない面もある。その間、不当な刑罰を受けたり、場合によっては命を奪われてしまう被告が出てしまう可能性があるからだ。
 そこでマル激トーク・オン・ディマンドでは、2回シリーズで裁判員制度をとりあげ、まず裁判員の問題点を指摘する反対派の論客とともに、その問題点を洗い出した上で、後日推進派にそうした問題をどのように考えているのか、また、それでも裁判員制度を導入するメリットとは何なのかをぶつけるシリーズ企画をお送りする。
 まず2回シリーズの前半となる今回は、裁判員にのしかかる過度の負担、公判前整理手続と裁判の簡略化によって失われる精密司法の伝統や、その結果冤罪や誤判の可能性が高まる危険性、厳格な守秘義務規定によって制度の問題点をチェックできない問題などを洗いざらい議論した。
 また、インタビューで登場する作家の高村薫氏による「そもそも人が人を裁くことの意味」やゲストの西野喜一氏による「裁判員制度違憲論」など、この制度の持つ哲学的な矛盾点や憲法上の疑義も取り上げた。
 議論を通じて浮き彫りになってきた裁判員制度の最大の疑問点は、「市民参加」「開かれた司法」などの一見美名の元に、実は全く正反対の効果を生む危険性が高いことにある。
 市民参加と言っても、それを口実に公判前整理手続で論点が大幅に絞り込まれてしまうことで、弁護側は検察のシナリオに対して疑義を差し挟む機会を奪われることになる。
 また、裁判員になった市民はそこでの経験を一切口外してはいけないことになっているため、実際に裁判に参加した裁判員と市民社会全体が、経験則や参加意識を共有することはまず難しいことも問題だ。
 さらに、実際の判決や量刑を議論する評議の過程で、裁判官が裁判員にどのような説明を行うかによって、法律の知識が限られる市民は容易に説得や操作が可能になると思われるが、そこでのやりとりは表には一切出てこない。それを裁判員が明らかにすれば罪になるからだ。評議が割れた場合は多数決で評決や量刑が決まるのだが、それが割れたかどうかも、公表はされないし、裁判員はそれを口外してはならないのだ。
 無論法律の知識も限られ、人を裁いた経験も無い一般市民は、特に凶悪な犯罪に対しては情緒的な反応をしてしまう可能性が高い。被害者の司法参加によって、さらに感情的な判断をしてしまうリスクも高い。これもまた、裁判員の参加が被告人の利益となる蓋然性は低いと言わざるを得ない。
 中には、「開かれた司法を装いながら、実は統治権力側によって、より重罰化への流れを正当化するための道具に使われる」、「裁判員に結果責任の一部を押しつけることで、司法が責任を逃れるための口実になる」など、本来の制度の趣旨とは正反対の影響を懸念する向きもある。そして更に根本的な問題として、「いろいろな問題が起きていても、それが守秘義務などによって表には出てこないようになっているため、問題があってもそれが直らない制度設計になっている」など、根本的な欠陥も指摘された。
 元判事で、裁判員制度に強く反対の意を表明している西野氏とともに、半年後に迫った裁判員制度の実施を前に、今あらためてその問題点を見直すと同時に、仮にこのまま制度が施行された場合、どのようなリスクが内在されているかを考えた。
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放送日 2008年11月22日(PART1:66分 PART2:59分)
日本農業再生の道

ゲスト:神門善久氏(明治学院大学教授)

 世界貿易機関(WTO)は17日、新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の年内「細目合意」を目指す作業を加速させることで一致した。ドーハ・ラウンドの主要な交渉分野は日本にも関係が深い農業だ。石破農水相は、農産品に例外的に高い関税をかけられる「重要品目」の十分な確保を求め、かつ低い関税で輸入量が大幅に増えることがないよう主張する方針を示している。
 農産物の貿易自由化という世界的な潮流が進む中、農家の高齢化や後継者不足、米価の下落や、食料自給率の低下など、日本の農業の衰退を示す要素には事欠かない。日本の農業はこのままで大丈夫なのか。
 農水省によると、05年現在、全国に285万戸の農家が存在するが、これは1960年の606万戸の半分にも満たない。農業問題について独自の視点から積極的に発言を行っている明治学院大学の神門善久教授は、この285万戸のうち「農家らしい農家」であるといえるのは、主業農家の中でも65歳未満の農業専従者がおり、農業所得が過半を超えているおよそ37万戸にすぎないという。120万戸は農地を所有しているが農業を営んでいない土地持ち非農家であり、残りは、高齢者が農業を続ける「高齢農家」や農業外所得を主とする「片手間農家」だと神門氏は指摘する。
 神門氏は、日本の農業の衰退を招く要因の一つが、農地の「転用収入」だと言う。農業所得を主としない農家にとって農地は、低コストで保有でき、公共事業などで価値が上がったときに高額で売却することが可能な、錬金術の道具となっている。さらに、平地の優良な農地でも耕作放棄地が増えるなど、農地利用の無秩序化が日本の農業を衰退させた大きな原因だと神門氏は力説する。
 神門氏はまた、少しでも安いものを買い求めようとする消費者の飽くなき欲求が、輸入食料への依存度を高める要因となっていると指摘し、消費者エゴの行きすぎを戒める。
 日本の農業は今どうなっているのか。このまま自由化を進めても大丈夫なのか。食料自給率が低下しても本当に問題は無いのか。なぜ中国産の汚染食品が広がってしまうのか。独自の主張を展開する神門氏と、日本の農業と食について、徹底的に議論した。
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放送日 2008年11月29日(PART1:101分 PART2:123分)
400回放送記念特別番組 生コールイン 右も左もかかってこい Part2

ゲスト:萱野稔人、鈴木謙介、斎藤貴男、武田徹、宮台真司、神保哲生

 今週のマル激は、400回放送を記念した特別番組を生放送した。
 Part1では、ブッシュ政権と小泉内閣が発足し、9.11同時テロが起きた激動の01年に放送を開始したマル激は、これまで何を伝えてきたのか、過去の放送回VTRを交え、神保・宮台両氏がマル激8年間の軌跡を振り返った。
 Part2、Part3では、視聴者からの電話を直接つなぐ恒例となったコールインを3時間にわたり実施した。
 まずは、すでにマル激ではお馴染みとなっている津田塾大学准教授の萱野稔人氏と、マル激初登場となる国際大学グローバルコミュニケーションセンター研究員の鈴木謙介氏をゲストに迎え、次々とかかってくる電話を一切のスクリーニング無しにつないだ。
 Part3では宮台、神保両司会に、斎藤貴男氏、武田徹氏らマル激レギュラー司会陣が加わり、視聴者とともにさまざまなテーマで議論を展開した。
 
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