| マル激トーク・オン・ディマンド(第331回) |
収録日 2007年08月03日(PART1:50分 PART2:46分)
データから見えてくる「やっぱり自民党は終わっていた」
ゲスト:森 裕城氏(同志社大学法学部准教授)
自民党の参院選地すべり的敗北で、安倍首相の責任を問う声が強まっている。小泉構造改革の影響で、自民党の伝統的地盤だった地方・農村・利益団体票が離反する一方で、安倍政権が年金や相次ぐスキャンダルのハンドリングに失敗したことで、小泉時代に新たに獲得した都市無党派層からは見放されたことが、今回のような歴史的大敗を招いたというのが、大方の評価となっているようだ。
しかし、計量政治学が専門の森裕城同志社大学准教授は、選挙データを分析すると、その説明は半分しか当たっていない可能性が高いという。
確かに今回の選挙では、05年の郵政選挙で小泉自民党を支持した都市無党派層票の大半が民主党に流れた。そのことは、首都圏、愛知、大阪などの3・5人区で自民党が辛うじて一議席を死守しているのに対し、民主党は軒並み複数議席を獲得していることを見ても明らかだ。
しかし、地方・農村票などの自民党の伝統的支持層が、小泉構造改革の影響で自民党から離反したとの説明に対して森氏は、自民党の支持基盤の崩壊は既に小渕・森政権時代から継続的に起きている現象であり、小泉政権の5年間は首相の個人人気によってそれが覆い隠されていたが、今回それが改めて表面化したに過ぎないと説明する。
実際、今回の選挙で自民党の絶対得票率(有権者数に対する得票数の割合)は、獲得議席が49だった04年の参院選の19.21%と比べても1.4ポイントしか下がっていない。伝統的自民支持層に長期減少傾向があることは否定できないが、特に今回の選挙でそれが一気に加速したとの事実は、データを見る限りはうかがえない。
今回の選挙で地方・農村票の自民党離れの象徴のように言われている一人区を見ても、自民党の獲得議席は29選挙区のうち6議席にとどまるが、得票率では17議席を得た民主党の8割強を得ている。テクニカルな理由から議席配分には大きな開きが生じたが、得票率を見る限りは、自民と民主にそれほどの大差は無い。
しかし、得票率データは同時に、自民党がかつてのような手厚い支持基盤に支えられていた時代はもはや遠い昔の話となり、今日は民主党以上に「風頼み」の政党に変質していることもあらわにしている。それはまた、民主党が意外なまでに自らの地盤を確実なものにしている事実も明らかにする。少なくともデータ上は「浮動票頼みの自民党、都市でも農村でも安定的な支持基盤を築きつつある民主党」という、両党の意外な顔が見えてくると森氏は語る。
データをもとに選挙結果を解説する気鋭の計量政治学者・森裕城氏とともに、参議院選の結果から見えてきた自民党の現状と、参院選勝利で政局の主導権を握ったかに見える民主党の課題を考えた。
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| マル激トーク・オン・ディマンド(第388回) |
収録日 2008年09月06日(PART1:50分 PART2:31分)
政治の機能不全を脱するために
ゲスト:飯尾 潤氏(政策研究大学院大学教授)
9月1日、福田首相が突然辞任した。これで日本の総理大臣が2代続けて、任期の途中で政権を放り出したことになる。国会の衆参両院の勢力がねじれ状態にあるなど、国会運営が難しいなどの事情もあろうが、それにしても日本の政治がもはや完全に機能不全に陥っていることは、誰の目にも明らかだ。
辞任会見の中で福田首相は、ねじれ国会によって次期国会でも重要法案成立のメドが立たないことを、辞任の理由に挙げている。しかし、政策研究大学院大学教授の飯尾潤氏は、そもそも衆院と参院の多数派が違うことで議会運営に困難をきたしてしまうこと自体が、日本の議院内閣制が機能していないことを示していると語る。
議院内閣制を採用している諸外国では、二院の意見が異なることは決して珍しくない。独立して投票される二院制を採用していれば、むしろそれは当然のことで、自民党の長期支配のもと、与党が両院を支配していることを前提に、政権が容易に運営できたこれまでの日本の政治のあり方自体が、世界的に見ればむしろ異常だったというわけだ。
日本ではよく、国民から直接選ばれる大統領の方が、議院内閣制のもとでの総理大臣よりも強い権限を持っていると思われがちだが、実際はそれは間違っていると飯尾氏は言う。議院内閣制では、国会の支配勢力と行政の長たる内閣総理大臣が同じ政党となるため、三権分立の2つが事実上政権与党によって支配されることになり、首相には大統領よりも遙かに大きな権力が集中することになる。
しかし、本来は強い権限を持っているはずの首相が、なぜか日本では強力なリーダーシップを発揮することが難しくなっている。戦前の制度の名残で、省庁や官僚の代理人と位置づけられた国務大臣によって内閣が作られる言わば官僚内閣制とでも呼ばれるべき独特の制度があるため、実質的な政策立案は官僚が行い、閣議も次官会議で決定された議題を承認するだけで、国会が選んだ内閣には実質的な決定権はほとんど何もないのが同然の状態が続いてきた。
一方、議会の側も、自民党政権が長く続いたために、自民党の総裁選が事実上の首相選挙となり、首相は民意とは無関係に、自民党の党内事情で好き勝手に変えられてきた。国会で首相を選ぶ首班指名選挙が、単なるセレモニーに過ぎないことは、日本人であれば誰もが知っている。大臣も当選回数や派閥の推薦などで決められてきたために、国民の任を受けた国会が内閣を選び、首相と大臣が行政を代表するという議院内閣制の本義が、希薄になっていたと飯尾氏は指摘する。
その一方で、日本の官僚内閣制のもとでは、省庁が企業や業界の要望を吸い上げ政策に反映させる仕組みが機能していたため、国民の意見は議会を通してではなく、官僚制度を通じてある程度政策に取り入れられてきた。そのため、与党の族議員は、国民全体のためというよりも、自分たちが利益を代表する業界や団体の代弁をすればよく、それが結果的に議院内閣制の更なる弱体化につながったと飯尾氏は言う。
その意味で、小泉政権は議院内閣制の原理に沿って、官僚の抵抗を排してでも、首相が選挙で掲げた政策や方針がそのまま政策に反映される、日本の政治史上では、むしろ異例の政権だったと飯尾氏は指摘する。しかし、小泉政権以降、日本の政治は再び官僚内閣制に舞い戻っている。
いずれにしても、このまま政治の機能不全が長引けば、日本は山積する国内外の問題にほとんど対応できない閉塞状態が、今後何年もの間続くことになる。今日本の政治が、議院内閣制本来の機能を取り戻すために何が必要なのか。福田首相辞任の背景にある日本の政治プロセスが抱える根本的な問題を、飯尾氏とともに議論をした。
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| マル激トーク・オン・ディマンド(第389回) |
収録日 2008年09月13日(PART1:68分 PART2:56分)
自民党の本気度、民主党の本物度を検証する
ゲスト:上杉隆氏(ジャーナリスト)
2代にわたり総理が政権を放り出したかと思うと、出来レースよろしく演出ばかりがやたらと目立つ総裁選を平然と繰り広げる自民党。他方、党内には小沢代表の党運営への異論が燻っているにもかかわらず、黙っていれば政権が転がり込んできそうな予感から、誰一人として代表選挙に名乗りを上げることさえできない民主党。日本の政治は一体どうなってしまったのか。
自民党の総裁選は、麻生太郎幹事長の一人勝ちが既定路線のようだが、告示日直前に他の4人が次々と名乗りを上げ、一見賑やかな総裁選となった。何と言っても、日本の次の総理大臣を選ぶ選挙だ。候補者たちは連日テレビに出演し、各地で街頭演説を行うことで、相応のメディア露出を確保しているようだ。少なくとも民主党の小沢代表の再選のニュースを打ち消すことには成功しているようだが、ジャーナリストの上杉隆氏は、これは決して自民党にプラスには作用しないだろうと予想する。なぜなら、この総裁選が茶番であることは誰の目にも明らかだからだ。
上杉氏によると、総裁選は告示と同時に決まったも同然だったという。上杉氏が告示日に各候補の出陣式を取材したところ、各陣営に集まった国会議員及びその代理人の数は、麻生氏が165人だったのに対して、他の4人の候補者はいずれも20人前後だったという。
また、一見盛り上がっているかに見えるメディアの総裁選報道も、実際はメディア各社は半ば仕方なく自民党からの仕掛けに乗っているだけで、実際記者達はしらけているし、コメンテーターの多くは平然と「茶番」を口にしている。メディア露出には良い露出と悪い露出があり、単に露出が増えればいいと考えているかに見える自民党の判断は、裏目に出るだろうというわけだ。実際、総裁候補の街頭演説に人は集まっておらず、有権者が自民党に向ける視線は厳しいと上杉氏は予想する。
しかし、他方で民主党は、そうした自民党の末期症状を目の当たりにしながらも、必ずしも有効な手だてを打てていない。党内には黙っていれば政権が転がり込んでくるのではないかとの楽観的な機運が根強く、盛り上がる自民党総裁選を横目で見ながら、有効な対抗策を打てずにいる感が否めない。
そもそも民主党は、なぜ自分たちの政策をアピールする絶好の機会となるはずの代表選で、小沢代表を無投票で再選させたのか。上杉氏は、民主党内には新進党時代に羽田孜氏と小沢一郎氏が代表を争った末にできた亀裂が党を分裂に招いた経緯がトラウマになっているためだと語る。民主党の中堅以上の議員にはその過ちを繰り返したくないとの思いが強く、総選挙を前に党の結束を最優先したのだと言う。しかし、果たしてこの選択が有権者の理解を得られるかどうかは、まだ未知数だ。
もはや茶番であることが明白となった総裁選にあって、上杉氏は小泉純一郎元首相の支持を得た小池氏の動きだけは今後も要注意だと指摘する。小泉氏や中川秀直元幹事長率いる「上げ潮派」の支援を受けた小池氏が、総裁選で予想以上に健闘すれば、今後の政局で台風の目となる可能性が俄然高くなる。民主党の中にも、田中真紀子氏とのタッグで小泉政権が大ブームを引き起こした悪夢を、小池、小泉のコンビが再び引き起こすのではないかと恐れる声は大きい。
フリーの立場で政治の第一線の取材に奔走する上杉氏を迎えて、自民、民主両党の実情と、政治の実態を伝えようとしない「記者クラブ」問題について議論した。
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| マル激トーク・オン・ディマンド(第391回) |
収録日 2008年09月27日(PART1:80分 PART2:36分)
自民党システムの終焉
ゲスト:野中尚人氏(学習院大学教授)
自民党がおかしい。結果が見えているにもかかわらず、妙に演出ばかりが目立った総裁選を経て、9月24日、麻生政権が誕生したが、就任直後から首相は、民主党に勝つことこそが、新首相の最大の責務であるとの考えを公言して憚らないのだ。そこには、これからの日本をどのようにリードしていくのか、現在の日本が抱える諸問題にはどのように対応していくのか、また野党とのねじれを乗り越えて、どう国会を運営していくのかといった、政権与党としての基本的な使命感や矜持が、ほとんど感じられないといえば、言いすぎだろうか。
自民党政治が、戦後半世紀の間、日本の政治を支配し、戦後復興から高度成長を可能にし、日本を世界の経済大国にまで押し上げる原動力であったことは、すでに歴史が証明している。しかし、自民党政治を研究してきた学習院大学の野中尚人教授は、自民党支配の根底にあった「自民党システム」は既に崩壊し、自民党の時代は終焉を迎えていると言い切る。
野中氏の言う自民党システムとは、族議員が多様な意見をボトムアップで吸い上げ政策に反映させる、高度に民主的な仕組みを含んでいた。また、政務調査会など党内に巨大な政策立案機能を抱え、国会に諮る前に族議員を中心に党内で丁寧な合意形成を行う点も、自民党システムの特徴だった。
族議員が合意形成や意見集約に機能を果たす一方で、派閥が若い議員の面倒を見るとともに、政治教育の場を提供してきた。そして、派閥の幹部が説得することで党内での合意形成が可能となり、小選挙区制や消費税の導入など困難な法案を成立させることが可能だったと、野中氏は指摘する。また、一見、当選回数による派閥順送り人事のように見えて、実際はポストをめぐる熾烈な競争も裏で繰り広げられていた。
ところが、小選挙区制の導入によって自民党システムの要だった派閥制度は崩れ、トップダウンの小泉改革で、ボトムアップの根回し型意志決定システムは、完全にその息の根を止められてしまった。冷戦構造が崩れ、日米同盟がもはや自明なものでなくなったことも、高度成長が終わり、自民党システムを使って配分する利益が消えてしまったことも、自民党システムをさらに弱体化させる原因になったと野中氏は指摘する。
自民党システムが機能するための前提が崩れ、システム自体が崩壊した今、自民党がこの先も長期にわたって政権政党の座にとどまり続けることは困難だろうと、野中氏は予想する。また、もし仮に自民党が政権にとどまることになったとすれば、それは党名は自民党のままでも、実質的な中身は、これまでの自民党とは全く違ったものになっているはずだとも言う。
しかし、もし仮に野中氏の言うように、自民党システムが機能しなくなっているとしても、それを全否定することには注意が必要だろう。その中には、日本が時間をかけて培ってきた普遍的な資産が含まれている可能性も十分にある。一旦これを失えば、次に政権の座につく勢力は、ゼロからすべてを再構築しなければならなくなる。
これまで日本を統治し、日本の発展を支えてきた自民党システムとは何だったのか。また、どのような理由で、この自民党システムは機能しなくなってしまったのか。仮に民主党が政権政党となった場合、強固な自民党システムに匹敵する新たな統治システムを構築できるのか。
自民党政治への批判と絶望が高まるなか、戦後日本社会を作り上げてきた自民党の政治運営の仕組みにあえてもう一度焦点を当て、その功罪を議論した。
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| マル激トーク・オン・ディマンド(第393回) |
収録日 2008年10月11日(PART1:48分 PART2:44分)
民主党マニフェストと霞ヶ関埋蔵金
ゲスト:高橋洋一氏(東洋大学教授)
連日の株価大暴落で、11月上旬の総選挙観測はやや後退した感があるが、とはいえ、近々に政権選択の選挙が迫っている状況に変わりはない。既に参院で第一党の地位を固め、野党連合を通じて参院の過半数を支配する民主党にとっては、来る総選挙こそが、文字通り政権取りをかけた大勝負となる。
民主党政権誕生の可能性が現実味を増してきた今、民主党の政策の検証は、以前にも増して重要となっている。民主党主導の政権が実現した場合は、それが日本政府の政策となるからだ。
そこで今週のマル激では、小沢一郎民主党代表の先の国会での代表質問などで提示された民主党の主要な政策を、東洋大学の高橋洋一教授とともに、特に財源面から検証し、その実現可能性を議論してみた。
東京大学で数学を専攻した後大蔵省(現財務省)に入省した経歴を持ち、「霞ヶ関の埋蔵金男」の異名を取る高橋洋一氏は、民主党政権の掲げる政策の財源面の裏付けに対して与党から疑問が呈されていることについて、「4年間で50兆程度の財源の捻出は十分可能」と言う。民主党が予算の組み替えを主張していることから、実際には予算項目の付け替えなどもあり、「真水」として必要になる新たな財源は、現在取りざたされている「4年で56兆円」よりも少なくなる可能性があること、より厳密なB/C(便益/コスト)計算を導入することで、相当額の公共事業の削減が可能になることなどとともに、霞ヶ関埋蔵金の存在をその理由にあげている。
霞ヶ関埋蔵金とは、一般会計と特別会計からなる国の予算のうち、国会のチェックをほとんど受けない特別会計の中に計上されている種々の積立金のことで、その額は50兆とも70兆とも言われている。国が行った事業によって発生した剰余金の一種で、企業の「内部留保」にあたる。企業で利益が発生した場合、それを内部留保に回すか、配当金として株主に還元するかは、本来株主が決めることだが、霞ヶ関埋蔵金の扱いは、少なくともこれまでは官僚の裁量で、各省庁やその傘下にある特殊法人などに積立金として貯め込まれてきた。
事業の内容によっては「もしもの場合」に備えて一定額の積立金が必要になる事業もあるかもしれないが、いずれにしても、どの程度が適当な積立金なのかについては、これまで議論もないままに、各省庁の官僚の裁量に委ねられてきたという。いわば、国家予算を上回る額の公金が、官僚の判断で各役所内にプールされていたことになる。
結果的にその運用益が、官僚が天下る特殊法人やファミリー企業などに投入される官僚利権になっていたことも紛れもない事実だ。
大蔵官僚出身ながら、小泉改革を実務面で支え、霞ヶ関官僚の激しい抵抗に遭遇した経験を持つ高橋氏は、民主党がマニフェストに掲げた政策を実現できるか否かは、財源問題よりもむしろ官僚の抵抗を押さえ込むことができるか否かにかかっていると言い切る。その意味で、官僚の抵抗を排し、公務員数の削減や公務員給与のカット、天下りの禁止を含む公務員制度の改革と、情報公開の徹底をどこまで行うことができるかで、民主党政権の真贋が問われることになるだろうと高橋氏は言う。
民主党の掲げる政策には、財源の裏付けが本当にあるのか。財源問題の他に、その実現の妨げとなるものがあるのか。その政策が実現した時、日本にどのような変化が訪れるのか。明日の日本政府の政策となる可能性が少なからず出てきた民主党のマニフェストを、高橋氏とともに検証した。
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