2012年2月4日
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南相馬市民の集団損害賠償請求の準備始まる

報告:藍原寛子氏(医療ジャーナリスト)
スペシャルリポート

 南相馬市の住民による東電への損害賠償の集団申立ての準備が始まった。
 今回の原発事故と放射能汚染の損害賠償に関しては、東電が住民ら被害者に対して事前に賠償額を提示しているが、その金額が低過ぎることや、被害の現状が反映されていないなどの理由から、住民の間に不満が高まっていた。それがここにきて、集団で損害賠償請求を行い、原子力賠償紛争解決センター(裁判外紛争解決手続き機関ADR)に和解仲介の申し立てをしようという動きに発展している。1月29日には市内の生涯学習センターで、弁護士らによる相談会が開催された。
 損害賠償請求の方法は3通り。1)個人が東電に請求する2)原子力賠償紛争解決センターに和解仲介の申し立てをする3)裁判所に訴訟を提起して裁判を行う—など。
 東電が示した賠償額は1)ホテルや旅館、借り上げ住宅、仮設住宅、知人・友人宅に避難した人は一人当たり毎月10万円2)体育館、公民館に避難した人は毎月、一人当たり、12万円3)避難先から帰還した人は、次の月から賠償されない4)知人・親戚宅に避難した人の宿泊費は請求できない5)子どもを持つ家庭への追加請求はなし—など。
 「あまりにも生活実態に合っていない」と集団申立てに向けて動き出したのが、市中心部に近いひばり地区の住民。地域の区長を中心に「ひばり地区復旧・復興対策会議」(小松恒俊会長)を設立、東電の提示額等に関して、1)精神的負担の慰謝料の適正賠償額は月一人あたり35〜40万円2)子どもがいる世帯は追加慰謝料5万円3)親戚や友人宅に避難した際の宿泊費も賠償—などを求める方針を決めた。
 小松会長ら同会議では、東電への賠償に当たり独自の申立書も作成した。それが「南相馬版・紛争解決センター申立書」で、記入の手助けになるよう「原発賠償基礎計算書」も完成させた。原町区太田地区、小高区でも、集団申立てを視野に、損害賠償に関する勉強会、講演会などが行われている。住民を支援する弁護団は「被害実態を東電に知ってもらうことがカギ」と話している。
 一方、村の一部が「避難区域」と「計画的避難区域」にある川内村の遠藤雄幸村長が、1月31日、住民が村に帰ることができるという「帰村宣言」をした。「多くの住民が避難生活を送る郡山市よりも川内村の方が空間放射線量が低い」ことや、「高齢者の中には住み慣れない生活環境で体調を崩している人が多い」こと、「村民の選択肢を増やす」こと、「公共施設などの除染も進んでいる」などが「帰村宣言」に至った理由。
 しかし住民の間では、「戻りたい」「戻れない」「戻っていいのか」など、賛否から不安の声まで、様々な意見が噴出している。
 現在も、村の計画的避難区域には200-250人の村民が生活し、一部の事業所は営業しているが、「病院やスーパーが多い郡山市の方が高齢者にとっても便利」「本当に原発は今後問題を起こさないのか」「子どもを戻しても健康に影響は出ないのか」など、東電や国への不信もあいまって、不安視する声も挙がっている。
 現在の川内村の様子を、住民の話などを映像を交えて、医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートする。

藍原 寛子あいはら ひろこ
(医療ジャーナリスト)

1967年福島県生まれ。1990年千葉大学文学部行動科学科卒業。同年福島民友新聞社入社。マイアミ大学医学部移植外科、フィリピン大学哲学科などの客員研究員、国会議員公設秘書を経て、2011年よりフリー。
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