2014年4月26日
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DVD特別版 「STOP地球温暖化!日本の課題」

これでいいのか、日本の排出量取引

(第368回 放送日 2008年04月19日 PART1:83分 PART2:47分)
ゲスト:諸富 徹氏(京都大学大学院経済学研究科准教授) 

   今年から京都議定書の第1次約束期間がスタートし、条約を批准した各国は温室効果ガスの削減を本格化しなければならない。京都議定書が締結されたCOP3京都会議で決められた京都メカニズムと呼ばれる温室効果ガスの削減方法のひとつが、排出量取引だ。
 排出量取引は、各事業所に排出できる温室効果ガスの量を割り当て(キャップ)、その枠を超えて排出した事業所が、枠に余裕のある事業所との間で排出する権利を売買する(トレード)ことを可能にする制度だ。日本では、政府がハンガリーから排出枠を購入する他、日本の商社や金融機関も国際的な排出量取引をすでに行っているが、日本国内の排出量取引は、財界の反対が根強いために、まだ制度すら立ち上がっていない。しかし、地球温暖化を主要テーマとする洞爺湖サミットが近づくにつれ、排出量取引の導入が論議の的になってきている。
 EUは、世界に先駆けて05年にヨーロッパ域内排出量取引制度をスタートさせ、排出量取引の実績を着々と積んでいる。また、連邦レベルでは京都議定書から離脱しているアメリカも、州レベルでは、東部の10州が「RGGI」と呼ばれる排出量取引市場を立ち上げた他、ブッシュ政権は「2025年までに排出量増加を食い止める」と宣言するなど、ようやく重い腰を上げ始めている。また、今年秋の大統領選の結果次第では、アメリカの地球温暖化政策が劇的に変わる可能性が高い。
 排出量取引の専門家で、経済産業省にもその導入の重要性を訴えてきた京都大学の諸富徹准教授は、「このままでは、日本は、世界から取り残されてしまう」と危機感をあらわにする。
 日本では、洞爺湖サミットを直近に控え、経済産業省の「地球温暖化対応のための経済的手法研究会」や首相直轄の「地球温暖化に関する懇談会」などが、ようやく「排出量取引」を議題として取り上げ始めた段階だ。しかし、省エネ対策が進んでいる日本では、経産省や経済界に京都議定書自体を不平等条約と考えている傾向が強く、事業所ごとの枠の割り当て(キャップ)という形で、強制的にCO2の排出量削減を迫る排出量取引制度には、まだまだ財界の反対が根強い。
 しかし、EUが排出量市場の立ち上げによって着々と脱炭素化した産業構造の構築を進め、アメリカも舵を切るのは時間の問題と見られる中、世界規模の脱炭素化社会への流れは止めようがない。今、日本がなんらかの対策をとらない限り、21世紀の国際社会の中で日本が様々な面で不利な立場になることは避けられないのではないかと、諸富氏は懸念する。
 どうせ脱炭素化が避けられないのであれば、多少の痛みを伴ったとしても、自ら進んで制度を導入し、少しでも有利な状態を作るか、あるいはぎりぎりまで抵抗して、最後は世界の趨勢や市場の圧力に屈する形で不利な制度を飲ませられるか。どちらが本当に国益に適った判断かは、今こそ大いに議論する必要があるだろう。
 今週のマル激は、EUを中心に広がり始めた世界の排出量取引の現状と課題を明らかにした上で、日本の取るべき選択を考えた。

日本が再生可能エネルギーを推進すべきこれだけの理由

(第372回 放送日 2008年05月17日 PART1:54分 PART2:69分)
ゲスト:飯田 哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)

  7月の洞爺湖サミットを前に、来月発表される「福田ビジョン」では、2050年までに温室効果ガスの60~80%の削減という思い切った目標を日本として打ち出すことが報じられている。しかし、その実現可能性については大いに疑問が残る。なぜならば、エネルギー政策の抜本的な転換を抜きに、80%ものCO2を削減することは難しいと考えられているにもかかわらず、日本は世界の先進国の中でも、エネルギー政策の転換が大きく遅れを取り始めているからだ。
 現在、欧米では温室効果ガス削減の根本的な解決策として、再生可能エネルギーが注目され、各国ともその開発や普及に本格的に力を入れ始めている。中でもドイツの伸びが突出しており、2030年までにエネルギーの45%を再生可能エネルギーで賄う目標をたてているほどだ。地球温暖化問題には後ろ向きと批判されることの多い米国でさえ、2020年に15%という目標をたてているが、日本は2014年までに使用電力の何と1.63%を再生可能エネルギーで賄うことを義務化しているに過ぎない。明らかに桁が違うのだ。
 「世界から見れば、日本の数値目標はジョークにしか思えない」と再生可能エネルギーの普及に尽力してきた環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏は苦笑し、世界の趨勢から取り残されつつある日本の状況を嘆く。
 再生可能エネルギーとは、風力、太陽光、太陽熱、地熱、バイオマス、水力、波力など、何度も資源が再生するエネルギーのことを指す。石油や石炭などのように枯渇することもなく、地域的に偏在がないため、地政学上のリスクがない。化石由来燃料とは違い、温室効果ガスがほとんど出ないため、温暖化防止対策としても最も好ましいエネルギー源なのだ。
 日本のようにエネルギー資源をほぼ100%輸入に頼らざるを得ない資源小国にとって、再生可能エネルギーは21世紀の夢のエネルギー源と言っていいだろう。
 しかし、その日本が、既存の化石燃料や問題の多い原子力から再生可能エネルギーへの転換が図れずに、世界の趨勢から取り残されつつある。再生可能エネルギーの中で最も普及している風力発電で日本は、ここ数年の間に中国やインドにも抜かれて、現在、世界13位にまで落ちている。2004年まで発電量では世界一を誇っていた太陽光発電でも、累積導入量を2005年にドイツに抜かれて以来、差は開く一方だ。
 90年代にスウェーデンやデンマーク、ドイツが再生可能エネルギーを政策的に優遇することで普及を一気に増やしたのを横目に、日本はもっぱら原子力偏重のエネルギー政策を進め、再生可能エネルギーを軽視してきた。軽視どころか、むしろ次々と補助金を打ち切るなどして、市場を縮小させるような政策をとってきたのが実情だ。
 飯田氏は、ドイツやスペインの成功例から、再生可能エネルギーを普及させるために何が必要かは十分わかっており、あとはそれを実行する政治的な意思があるかどうかだけが問われていると指摘する。しかし、新しいエネルギーの台頭は、既存のエネルギー産業、とりわけ電力会社の権益と真っ向から衝突するため、経済産業省も政治も、電力会社の政治力の前で、わかりきった施策を実行に移すことができないでいると言うのだ。
 再生可能エネルギー普及の遅れは、他の面にも悪影響を及ぼし始めている。かつて、世界の太陽光発電機器のシェアではシャープを筆頭に日本企業が上位を独占してきたが、ここにきてシャープはついにドイツのメーカーQセルにトップの地位を奪われてしまった。現在世界3位にある中国の太陽光発電専門メーカーのサンテックは、ナスダックに上場し、猛烈な勢いでそのシェアを伸ばしている。
 ドイツは、再生可能エネルギー関連産業を「21世紀の自動車産業」とまで位置づけ支援し、17万人の雇用創出をし、2兆5000億円の経済効果を発生させている。産業政策的にも、再生可能エネルギーの可能性に目をつぶり続けることはできない状況となっているが、この期に及んでも、日本は舵を取ろうとしないのはなぜか。
 今週は、イラク戦争、原油高と、これほどまでに化石燃料依存のリスクが顕在化し、欧米諸国や中国インドなどの新興国まで再生可能エネルギーを一気に伸ばす中、本来であれば真っ先にそれを推進していなければならないはずの資源小国日本は、なぜいまだに二の足を踏み続けているのか、またその結果がどのようなリスクを生んでいるのかなどを、日々この問題と格闘している飯田氏とともに考えた。

炭素税はCO2排出削減の決め手となるか

(第379回 放送日 2008年07月05日 PART1:80分 PART2:51分)
ゲスト:足立 冶郎氏(NGO「環境・持続社会」研究センター事務局長) 

  洞爺湖サミットに向けて発表された「福田ビジョン」で、日本政府は2050年までに温室効果ガスの60~80%削減、排出量取引の試験的導入など、いくつかの踏み込んだ方針を打ち出している。しかし、その中に環境税の文言が含まれていたことはあまり注目されていない。実際には「低炭素化促進の観点から税制全般を横断的に見直す」との遠まわしな表現にとどまってはいるが、首相の口から「環境税」という言葉が語られたことの意義は非常に大きいと、炭素税研究会のコーディネーターとして環境税(欧米では炭素税と呼ばれることが多い)導入を提言してきた足立氏は前向きに評価する。
 すでにノルウェーやオランダ、デンマーク、ドイツ、イギリス、スイスなどのほか、アメリカやカナダの一部の州などで導入され、CO2の排出削減に効果を上げている炭素税は、製品のCO2排出量に応じて一定比率の税がかけられるため、生産や販売、輸送、使用の際に排出されるCO2の量が多い製品ほど税額が大きくなり、消費者にとっては割高となる。また、企業も排出量削減に努力をすれば税負担が軽減される上、自社製品の市場での競争力も高まる。つまり、炭素税は一旦導入すれば、市民も企業も経済合理的に行動するだけで、社会全体としてCO2の排出量を削減することが可能となる制度といっていいだろう。
 足立氏は、排出量取引が、産業界など大口の排出を抑制する効果が高いのに比べて、炭素税は、個人を含めたあらゆる排出源に対して横断的な効果が期待でき、この2つが同時に実施されることで、さらに効果が高まるという。
 一般に炭素税と聞くと、単に税負担が増えることを想像し、敬遠する向きが多いようだが、足立氏は、炭素税の導入イコール増税にする必要はないと説く。欧州で炭素税の導入に成功した国々の多くは、炭素税の導入と同時に既存の税を減税し、税収中立を実現している場合が多い。つまり、納税者全体にとっての税負担は導入前と変わらないが、CO2排出が多い人や企業にとっては増税となり、少ない人や企業にとっては減税となるという。そうすることで、企業活動やライフスタイルの変更を促すことが、炭素税の目的でもある。
 このように、一見いいことづくめの炭素税ではあるが、実際には品目ごとのCO2排出量の計算が難しいため、石油や石炭、ガス、電力などエネルギー品目に排出量に応じた課税を行い、その使用量に応じて税負担が増減する形式になっている。そのため、特定の産業、とりわけ重厚長大産業の負担が突出して多くなる傾向がある。また、一般消費者レベルでは、低所得層の負担が相対的に重くなる逆進性も指摘される。すでに制度を導入している国でも、国内産業の国際競争力を維持するために、特定の業界の税率を下げたり、低所得層を免除するなど、苦労の形跡も見てとれる。
 しかし、そのようなレベルよりもかなり初歩的な次元で、日本における炭素税導入の道のりがかなり遠いことを、足立氏も認める。京都議定書調印後にドイツやイタリアなどが相次いで炭素税導入を決めた流れを受けて、日本でも04年頃から環境省を中心に環境税の導入が検討されたこともあったが、産業界の強い反対によって頓挫してしまった。
 日本では、エネルギーに関連した税が、経産省、国土交通省など複数の官庁にまたがって管轄されているため、それを統合した形になる環境税の導入には、縦割り行政の抵抗がもろにかかってくる。また、税収中立を実現するため必要となる既存税の減税には、財務省が頑として首を縦に振らない。いざ増税となれば、財務省は歓迎するが、今度は選挙を恐れる政治がそれを許さない。しかも、重厚長大産業主導の財界は、そもそも炭素税の議論をすることすら嫌っている。
 こうなると政治のリーダーシップに期待するほかなさそうだが、国民のほとんどが環境税イコール増税と認識している中、新税の導入に世論の支持を得るのも、容易ではなさそうだ。いみじくも今週から始まった自民党税調では、消費税増税の是非とその時期をめぐり紛糾している。
 サミット前に、「排出量取引」、「再生可能エネルギー」と続けてきた環境シリーズの最終回として、今週は炭素税の意義と実現可能性について、NGOの立場から、炭素税の実現を訴えてきた足立氏とともに考えた。

 

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