2012年01月14日公開

安定ヨウ素剤を個人管理する「いわき方式」がスタート

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ゲスト

1967年福島県生まれ。1990年千葉大学文学部行動科学科卒業。同年福島民友新聞社入社。マイアミ大学医学部移植外科、フィリピン大学哲学科などの客員研究員、国会議員公設秘書を経て、2011年よりフリー。

司会

概要

 いわき市は12月から、40歳未満を対象とする約6万8千世帯に対して、簡易書留郵便で安定ヨウ素剤の配布を始めた。昨年の原発事故直後に市民に窓口配布した安定ヨウ素剤の有効期限が切れたため、新しいものと交換するのが目的だが、万が一、原発が大事故を起こした際、市民に迅速に服用してもらうというメリットも勘案しての判断で、安定ヨウ素剤の個人管理は県内で初めて。「いわき方式」と呼ばれる独自の方法がスタートした。
 震災直後、原発周辺の自治体では、三春町やいわき市、富岡町、双葉町などの市町で、住民に安定ヨウ素剤が配布されたが、南相馬市では配布が間に合わなかったり、配布をしなかった自治体も出るなど、市町村で対応が分かれた。
 安定ヨウ素剤とは、甲状腺に放射性ヨウ素が貯まるのを避けるため、緊急時に服用する薬剤。放射性ヨウ素の被曝の危険性がある場合、避難の時間を稼ぐために、24時間以内に飲む。吐き気や下痢などの副作用の可能性もあるため、服用の際には医師の指示が必要。国や県の原子力災害対策マニュアル、原発立地市町村が設けている原子力災害対策マニュアルに、安定ヨウ素剤の備蓄が位置付けられており、市町村が安定ヨウ素剤を定期的に備蓄し、緊急時は国の災害対策本部の指示に基づいて市民に配布、医師の指示のもとで服用をさせることとなっている。
 ところが、配布・服用について市町村の対応が分かれた原因は、政府のオフサイトセンターの機能停止と移転などで、政府や県から市町村に対する具体的な配布や服用の指示がなかったことや、被曝線量に応じて配布や投与を進める必要がありながらも、市町村には測定器がなく、国や県などから放射線量の情報提供もなかったことなどが主な理由。
 また、安定ヨウ素剤は市町村役場に備蓄しているため、職員が住民に配る際、自己判断でマイカー等で避難した住民へは安定ヨウ素剤を配布する方法がなく、同じ町村の住民でも、安定ヨウ素剤をもらえた人ともらえなかった人が生じてしまったという問題も起きた。
 いわき市では、「非常事態が起きて、安定ヨウ素剤を配布しなければならない事態が発生した場合、市役所や市役所支所に住民に取りに来てもらう現行方式では、線量の高いところにわざわざ戻ってくるようなことも起きかねない」と判断。「現在でも事実上、安定ヨウ素剤は市民の手元にある」との判断もあり、緊急事態に迅速に対応できるよう、個人管理をしてもらうことにした。
 こうしたいわき市の判断を追認するかのように、被曝医療の見直しを進めてきた原子力安全委員会の分科会は1月13日、原子力周辺の各家庭に安定ヨウ素剤を事前に配布しておくことを提言。安定ヨウ素剤の個人管理、いわば「いわき方式」は、今後全国各地で行われる可能性が高くなった。
 いわき市をはじめとする浜通りの原発立地町等の安定ヨウ素剤の配布と服用に関する対応や、原発災害マニュアルと被災現場での災害対応のありかたなどについて、医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートする。

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