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ビデオニュース・ドットコムが特に重要と考えたテーマをシリーズで追った番組を、テーマごとにCD/DVDにまとめました。

DVD特別版 「迷走する普天間基地移設問題」

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シリーズ・民主党政権の課題2
「対等な日米関係」のすすめ

(第440回 放送日 2009年09月12日 PART1:42分 PART2:51分)
ゲスト:孫崎 享氏(元外務省国際情報局長)

民主党は「対等な日米関係」という表現を好んで使う。民主党はマニフェストにもそれを盛り込んでいるし、民主、社民、国民新党の連立合意文書にも「緊密で対等な日米同盟関係」という文言が盛り込まれている。先日物議を醸した鳩山論文でも「対等」が強調されていた。
 しかし、「対等な日米関係」とは何を指しているのか。そもそも現在の日米関係は本当に対等ではないのか。
 日本の安全保障の根幹を成す日米同盟は、これまで何度か変質を繰り返してきた。著書『日米同盟の正体』で日米関係の現状を批判している元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、変遷を繰り返した結果、現在の日米同盟は60年の日米安保条約締結当時とは全く異質なものになっていると指摘する。
 日米の同盟関係は、警察予備隊の創設や思いやり予算の導入、日米共同軍事演習の開始など古くから多くの変質を遂げてきたが、孫崎氏はその中でも最も重要な変化が、92~93年の日米安保の再定義と2005年の2+2合意だったとの見方を示す。
 92~93年は、それまで日本に対してさしたる軍事的役割を求めてこなかったアメリカが、日本の自衛隊をどう使うかという発想へ大きく方針転換したと孫崎氏は言う。それまで冷戦体制の下でソ連の脅威への対応に専念してきたアメリカが、新たな脅威として北朝鮮やイラン、イラクといった不安定な国家を念頭に「国際環境を改善するために軍事力を使う」戦略へと切り替えた。
 その結果、日本の米軍基地の役割も変化し、アメリカにとっての自衛隊の位置づけも変わった。日米安保の対象が日本の国防から徐々に拡大され、その対象地域も拡大の一途を辿ることになる。
 また、外務省で情報畑を歩んできた孫崎氏は、ソ連の崩壊後、日本の経済力がアメリカにとって真の脅威となったことも、日米同盟の変質を促す要因となったと言う。アメリカの軍事力にただ乗りしながら、軽武装で経済に専念することで、経済的にアメリカを脅かすまでになった日本の国力を殺ぐために、その頃からアメリカは、自国の国際的な軍事戦略に日本を巻き込むためのさまざまな工作を行うようになった。
 それが実を結んだのが、安保成立当時からの明確な「縛り」だった極東条項を「周辺地域」にまで広げ、事実上日米安保の地理的概念を取っ払うことに成功した97年の日米新ガイドライン合意であり、99年の周辺事態法の成立だった。
 そして、アメリカの日本巻き込み戦略の集大成とも呼ぶべき成果が、05年に両国の外務・防衛大臣(アメリカは国務長官と国防長官)の間で合意された、いわゆる2+2合意「日米同盟:未来のための変革と再編」だった。孫崎氏はこの合意によって、日米同盟は締結当時とは全く異なる代物に変質したと言い切る。それは、元々日本の防衛のために存在したはずの日米安保が、遂には全世界の秩序維持のための協力関係へと変わってしまったからだ。
 2+2合意は、日米安保の根幹を成していた国連憲章の尊重も放棄し、国際安全保障環境を改善するために日米共通の課題に取り組むことが掲げられている。そして作戦、戦略、運用、訓練と全ての分野において細かく定められた規定によって、米軍と自衛隊との部隊レベルでの一体化が既に進んでいるという。
 05年の2+2合意はそれだけ重要な安保政策の転換を意味するものでありながら、国会でもほとんど議論されず、マスコミでもその意味を解説する記事は皆無だったと孫崎氏は言う。日本の安全保障の根幹を成す日米同盟に本質的な変更を加える政策転換が、一握りの外務官僚とその重要性をほとんど理解していない政治家によって実行されていたことになる。
 いずれにしても、日米同盟関係はもはや、「日本がアメリカから守ってもらっている」などという牧歌的な次元を遙かに超えた、世界規模の軍事協力関係にあることだけはまちがいないようだ。
 しかし、それでも多くの日本人が、「日本はアメリカに守ってもらっているのだから、日米関係が対等なはずがない」と感じているとすれば、それはなぜだろうか。孫崎氏は、それは長年に渡るアメリカの「情報戦」の成果だと言う。日本にはアメリカのためになることが日本の国益に資すると信じて疑わない人が多くいるため、アメリカは日本に対して簡単に情報戦を仕掛けられる立場にある。本人が自覚しないまま、結果的にアメリカの情報戦略の片棒を担いでいる日本人がたくさんいるというのだ。
 そもそも日米同盟は、アメリカが日本を守るための軍事力を提供する代わりに、日本は米軍に基地を提供することで、バーターが成立していると孫崎氏は言う。以前にこの番組でケント・カルダー氏が指摘したように、アメリカにとって日本ほど重要な軍事拠点は他になく、アメリカも既に日米同盟からは十分な対価を得ている。日米関係は決して「日本がアメリカに守ってもらっている」だけの関係ではないのだ。
 しかし、元々対等と言ってもいいような互恵関係にありながら、あたかも日本がアメリカに隷属しているかのようなイメージを定着させ、日本をアメリカの意向に従わせるのが情報戦の目的だとすれば、日本は情報戦においては、アメリカに完敗していると言わざるを得ないだろう。今回の選挙で民主党の「対等な日米関係」が国民の支持を集めたことが、そのイメージに対する反発の結果だったとすれば、情報戦がうまくいきすぎたために国民の反発を招いたことになり、皮肉な結果だったとしか言いようがない。
 日米関係の変遷と現状を検証し、民主党の掲げる「対等な日米関係」の意味を孫崎氏と議論した。

なぜ普天間問題がこじれるのか

(第459回 放送日 2010年01月30日 PART1:69分 PART2:66分)
ゲスト:鈴木 宗男氏(衆議院外務委員長)

名護市長選で辺野古への移設受け入れに反対する新人の稲嶺進氏が当選したことで、普天間基地移設問題は更に混迷の度合いを深めている。鳩山首相は5月までに結論を出すとしているが、今のところいろいろな地名が乱れ飛ぶばかりで、具体的な展望は一向に開けてこないかにみえる。
 橋本内閣で沖縄開発庁長官を務め、長年沖縄と深い関わりを持ってきた鈴木宗男衆議院外務委員長は、普天間問題がこじれる理由として、小泉内閣以降の歴代政権が、沖縄の人々の基地に対する複雑な思いが理解できていないことを真っ先にあげる。沖縄の歴史や事情も知らないでたまたまポストについた政治家が、ハコモノ的なバラマキで沖縄の人々の心を切り裂いてきたと鈴木氏。普天間をめぐる鳩山政権の迷走ぶりの元凶も「沖縄の人々の心が理解できていない」ことにあると鈴木氏は言い切る。
 沖縄では基地に対する複雑な思いがある。温暖な気候と豊かな自然を持つ沖縄は本来は基地など無くても十分にやっていける。その意味ではもちろん基地なんて無いに越したことはない。しかし、沖縄にとってもし基地の受け入れがどうしても避けられないことなのであれば、その負担や影響を最小限に抑えるとともに、少しでも沖縄の地域振興に役立つ見返りを得ようと考える。あたかも沖縄は、利権が欲しくてあれこれごねているかのように見られる素地が、ここに出てくる。
 沖縄では、基地に出て行ってもらえる現実的な可能性が見えてくれば、基地反対が優勢になる。しかし、どうせ受け入れなければならないとなった瞬間に、強制的に土地を接収されるくらいなら基地地主になって地代を徴収した方がましだし、どの道基地の負担を受け入れなければならないのなら、少しでも多くの経済振興策を求めようという話になる。これは当然だ。沖縄の中に2つの異なる利害が共存するというよりも、沖縄の人一人ひとりの中にそれが共存すると言ってもいいかもしれない。鳩山政権で沖縄問題を扱っている政治家たちには、それが十分に理解できていないのではないかと、鈴木氏は言うのだ。
 もともと日米間で2006年に合意された現行の辺野古崎移設案にしても、当初は環境への負荷を最小化する目的で海上浮揚型のメガフロート案や杭式桟橋案などが模索されてきた。しかし、それでは高い技術を持つ大手ゼネコンばかりが潤い、地元の土木建設業界に恩恵が落ちてこないとの理由から、最終的にはより環境負荷の高い現行の埋め立て式V字滑走路案になったという経緯がある。V字で2本の滑走路にした方が、埋め立て面積が大きくなるからだ。ことほど左様に沖縄の基地問題は、複雑でデリケートな側面を持っている。単に辺野古の代わりの場所を見つければいいという話ではないのだ。
 その意味で鈴木氏は、名護市長選挙の結果を「斟酌しない」とした平野官房長官の発言には怒りを隠さない。鳩山政権がまずすべきことは「沖縄の声を聞くこと」(鈴木氏)なのに、それとは正反対の方向を向いた発言だと言うのだ。また鳩山内閣の他の閣僚も、普天間移設の経緯や事情も踏まえずに、移設先に関して好き勝手な発言を繰り返していると、同じ与党の議員でありながら、鳩山政権の対応には容赦の無い苦言を呈す。
 しかし、その鈴木氏でも、普天間問題への具体的な解決策を問われると言葉に詰まる。まず沖縄の声を聞いた上で、最後は沖縄に「貢献をお願いする」以外に解決方法はないだろうというのだ。
 普天間移設問題をめぐる歴史的な経緯をふり返り、その解決に向けて今政治が何をしなければならないのかを、鈴木氏とともに議論した。
 また、同じく鈴木氏とは、検察の小沢氏の政治資金規正法違反捜査に関連して、鈴木氏が政府に提出した検察の捜査に関する数々の質問趣意書の内容とその回答についても議論した。
(今週は5金にあたりますが、1月は第一週目の放送をお休みさせていただいたため、通常の編成で放送します。)

マル激スペシャルウィークin沖縄

(第435回 放送日 2010年03月13日 PART1:68分)

今週のマル激トーク・オン・ディマンドは、マル激スペシャルin沖縄と称して、神保、宮台の両キャスターが沖縄を訪れ、現地のキーパーソンたちとシリーズで「普天間基地移設問題」を始めとする沖縄をめぐる様々な論点を議論した。
 まず、トップバッターとして、神保、宮台両キャスターは沖縄出身の民主党衆議院議員の玉城デニー氏を、沖縄市に訪ねた。一年生議員ながら、名護市長選の結果を「斟酌」する必要は無いと発言した平野官房長官に噛みつくなど、物申す沖縄選出議員として知られる玉城氏は、沖縄からみた「東京政治」のおかしさを厳しく指摘した。米兵と日本人女性の間に生まれ、父親を知らずに育ったという自身の出自にも触れながら、政府が沖縄に基地負担を求めるのであれば、それがどのような安全保障論に基づくものなのかをはっきりさせることが必要だと主張する。さしたる明確なビジョンもないまま、単に負担だけを沖縄に強いる現在の米軍基地のあり方が沖縄からいかに不合理なものに見えるかを、玉城氏の歯に衣着せぬ発言が浮き彫りにする。
 次に、マル激は、建築家ながら平和運動家として長年にわたり独自の活動を続けてきた真喜志好一氏の那覇の事務所を訪れた。真喜志氏は辺野古に新たな海兵隊の基地が建設された時、米軍はそこにオスプレイという新型の航空機を配備する計画があることを、独自の調査で突き止めた。しかし、真喜志氏がその事実を明らかにした直後に、その情報は米国防総省のホームページから削除され、実際には今日にいたるまで、米側からも日本政府側からも、オスプレイの配備計画は発表もされていないし、確認もされていない。しかし、オスプレイはこれまで事故が多く、騒音も従来のヘリコプターよりも大幅に大きくなるため、オスプレイ配備が事前に明らかになれば、沖縄で大反対運動が起きることは必至だ。そうした重大な事実を隠したまま、今も続く「普天間の代替地探し」の虚構に、沖縄の人々はとうに気づいていると真喜志は言う。
 真喜志氏はまた、米国防総省は既に1960年代から辺野古に軍港を含む大型の基地を建設する計画を持っており、この「普天間基地移設計画」は、米側から見れば、老朽化した普天間をかねてから希望していた辺野古の新しい基地へと差し替える良い機会に過ぎない、と指摘する。にもかかわらず、日本政府はこれを、危険な普天間基地の返還を実現するためのやむを得ない代償として国民に説明してきた。
 真喜志氏は更に、沖縄本島北部の東村高江で進められている米軍ヘリパッド建設も、オスプレイの練習施設になることを、豊富な資料をもとに説明する。
 その後マル激は、元『噂の真相』の編集長で、6年前に同誌を休刊させた後、沖縄に移り住んだ岡留安則氏を、岡留氏が沖縄で居城としている那覇の居酒屋「瓦屋」に訪ねた。沖縄移住以来、ゴルフ三昧の悠々自適な生活を送っているという岡留氏だが、今や伝説の雑誌となった噂の真相亡き後、メディアの劣化が更に進み、いよいよタブーに挑戦するメディアが一つも無くなったと嘆く。
 その後インターネットやツイッターなど新しいツールの登場で、噂の真相と同じようなことが、遙かに安価にできるようになったことを指摘する岡留氏は、いずれ何らかの形で噂の真相を復活させる計画にも触れる。
 続いて神保、宮台両キャスターは、今回の基地移設問題の発端となった普天間基地を抱える宜野湾市に伊波洋一市長を訪ねた。伊波氏は独自の調査で、アメリカが沖縄駐留中の海兵隊をほぼ丸々グアムに移す計画を持っていることを、アメリカの様々な公文書を通じて明らかにしている。普天間の海兵隊を移す先として辺野古に基地が必要とする日米両政府の主張は、実は中身が空っぽなのではないかというのが、伊波氏の主張だ。実は伊波氏はそのことを民主党政権の中枢に伝えるために、12月に上京しており、その際にビデオニュースでも短い緊急インタビューを行っているが、このたびその話をより詳しく聞いた。
 真喜志氏の話と伊波氏の話を併せて聞くことで、現在の「普天間基地移設問題」がいかに虚構に満ちているかが、次第に明らかになっていった。
 同じ日の夜、われわれは沖縄音楽をベースに世界に向けて新しい音楽を発信し続けるりんけんバンドのリーダー照屋林賢氏を北谷の林賢氏のスタジオ「アジマー」に訪ねた。照屋氏が語る沖縄音楽とそのルーツへの熱い思いに、自分たちの音楽と共同体を守り通して来た沖縄への誇りと、それをとうの昔に失ってしまった本土が、様々な不合理な要求を突きつけている構図の背後にある、憧憬と差別の混じった感情を感じ取らずにはいられなかった。
 佳境を迎えた沖縄取材は、少女暴行事件に端を発する沖縄の激しい怒りを背景に、当時の橋本政権がアメリカから普天間基地の返還の合意を取り付けた当時の沖縄県知事大田昌秀氏を氏の那覇の事務所に訪ねた。
 知事時代、米軍用地の強制収容の代理署名を拒否して沖縄の意思を明確に示した大田昌秀氏は、普天間返還が決まったその瞬間から、政府はその代替基地を提供することを念頭に置いていたのではないかと推測する。大田氏の懸念は的中し、その後普天間返還問題は辺野古への代替施設建設問題へと大きくシフトし、大田氏の知事選落選によって沖縄県が新基地計画を受け入れた結果、今日に至っている。
 大田氏は歴代の自民党政権は、最初から普天間に変わる海兵隊の基地を提供するつもりだったとの見方を示す。そして、アメリカ側は既に沖縄に兵力を置いておく必要性が無くなっているが、日本側がそれを強く望んでいるために、まだ一定の勢力が沖縄に残っているのではないかと主張する。それが思いやり予算であり、辺野古への新基地建設だと言うのだ。
 大田氏に知事時代に遡り、普天間移設問題が辺野古新基地建設問題にすり替わっていった経緯を聞いた。
 沖縄取材を締めくくる最後に、いわゆる沖縄密約の存在を裏付ける文書を米公文書館で発見した我部政明教授を那覇の琉球大学に訪ねた。
 奇しくもその2日前、日米密約問題に関する外務省有識者委員会の調査報告書が9日に公表され、4つの密約のうち3つが「密約」と認定されたところだったが、我部教授は密約が必要だった理由として、当時の日本政府の二枚舌外交を指摘する。つまり、日本はアメリカの軍事力にはすがりたいが、日本の世論がそれを許さないため、その間に齟齬ができる。そこを密約という形で、アメリカには「どうぞやってください」と言う一方で、日本国民に対しては「それはできないことになっている」と説明する、そんなことを繰り返してきたというわけだ。
 しかし、結局それは嘘をいかに隠すかということに他ならない。我部氏は、外務官僚が「国民をいかに騙すか」の一点にその能力を傾注してきたことに、怒りを隠さない。そして、その嘘をつき通す大前提に「最後は全部沖縄に押しつければいい」とする安直な考えがあったのではないか。
 我部氏に密約問題が露わにする日本外交の暗部と、沖縄問題との接点を聞いた。

マル激スペシャルウィークin沖縄
『東京政治』への不信感の根底にあるもの

(第465回 放送日 2010年03月09日 PART1:79分)
ゲスト:玉城 デニー氏(衆議院議員)

普天間移設予定先の名護・辺野古を抱える沖縄3区選出の玉城デニー民主党衆議院議員は、1年生議員でありながら、沖縄県民の意思を軽視したとも受け取れる平野博文官房長官の発言に対して抗議文を提出するなど、沖縄の声を中央に伝えることに力を注いでいる。
 しかし、沖縄在留中の米軍兵士と日本人女性の間に生まれた玉城氏が、今、声を大にして訴えるのは、単に沖縄の負担の軽減だけではなく、日本政府が安全保障政策の理念を明確にすることだ。それなくして、都合の悪いことを全部沖縄に押し付けてくる政府のご都合主義的な対応に、沖縄の人々の怒りと不信感は頂点に達していると玉城氏は言う。
 国による沖縄への一方的な押しつけを「東京政治」と呼ぶ玉城氏に、沖縄から見た国の安全保障政策や沖縄政策に対する違和感、沖縄選出の議員として自身が果たすべき使命について話を聞いた。

マル激スペシャルウィークin沖縄
もう沖縄は騙されない 普天間移設問題の真相

(第465回 放送日 2010年03月09日 PART1:87分)
ゲスト:真喜志 好一氏(建築家)

沖縄本島北部の東村高江で進められている米軍ヘリパッド建設。その中に新鋭機オスプレイの配備計画があることを突き止めた真喜志氏に、普天間移設問題に隠された米軍基地再編の真相を聞く。

マル激スペシャルウィークin沖縄
タブーに挑まずに何のためのメディアか

第465回 放送日 2010年03月09日 PART1:69分
ゲスト:岡留 安則氏(元『噂の真相』編集長)

タブーなき反権力スキャンダル誌『噂の真相』の休刊から6年。沖縄に居を移した編集長・岡留安則氏は、普天間問題に揺れる沖縄をどう見るか。

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マル激スペシャルウィークin沖縄
普天間返還に代替基地は不要

第465回 放送日 2010年03月13日 PART1:75分
ゲスト:伊波 洋一氏(宜野湾市長)

普天間の海兵隊はヘリ部隊も含め、ほぼ丸々グアムに移転する。
 これが普天間基地を抱える宜野湾市の伊波洋一市長が、アメリカの公文書を徹底的に調べ上げた結果、明らかになったことだった。
 米軍にとって沖縄はもはや戦略的な意味を失っており、日本政府がその気になれば、代替施設なしても普天間返還は十分に返還可能だと主張する伊波氏に、地元普天間の実情や独自の調査結果を聞いた。

マル激スペシャルウィークin沖縄
照屋林賢が語る 沖縄音楽とそのルーツ

第465回 放送日 2010年03月10日 PART1:86分
ゲスト:照屋林賢氏(りんけんバンド・リーダー)

沖縄音楽をベースに世界に向けて新しい音楽を発信しつづけるりんけんバンド。活動拠点とする沖縄県北谷町のスタジオにリーダーの照屋林賢氏を訪ねる。

マル激スペシャルウィークin沖縄
普天間問題のボタンのかけ違いはここから始まった

第465回 放送日 2010年03月11日 PART1:72分
ゲスト:大田 昌秀氏(元沖縄県知事)

沖縄県知事時代、米軍用地の強制収容の代理署名を拒否して沖縄の意思を明確に示した大田昌秀氏。しかし、普天間移設問題はその後迷走を始める。なぜ普天間の返還問題がこのようにこじれたのか。
 普天間返還合意の舞台裏とその底流にある中央政府と沖縄の微妙なパワーポリティクスの実情を聞く。

マル激スペシャルウィークin沖縄
沖縄密約と普天間移設問題の接点

第465回 放送日 2010年03月11日 PART1:73分
ゲスト:我部 政明氏(琉球大学法文学部教授)

日米密約問題に関する外務省有識者委員会の調査報告書が9日に公表され、4つの密約のうち3つが「密約」と認定された。今回確認された沖縄返還の際の現状回復費負担をめぐる密約の存在を最初に暴き、沖縄密約訴訟原告団の一人でもある琉球大の我部政明教授に、日米密約と沖縄の基地問題の深い関わりを聞いた。

交渉の全てを知る守屋元次官が語る 普天間移設問題の深淵

(第471回 放送日 2009年01月31日 PART1:46分 PART2:50分)
ゲスト:守屋 武昌氏(元防衛事務次官)

普天間移設交渉のすべてを知る男が、ついに重い口を開いた。
 鳩山首相が5月末までの決着を約束した普天間移設問題は、依然迷走を続けているが、沖縄とアメリカの双方を満足させられる解決策が事実上あり得ない状況となった今、この問題が政権の屋台骨を根幹から揺るがす事態はもはや避けられそうにない。
 そもそもなぜこのような事態に立ち至ったのかについては、鳩山首相を含む与党民主党の未熟さやブレに非があったことは論を俟たない。
 しかし、自民党政権下で4年余の長きにわたり防衛事務次官を務め、そもそも普天間移設問題の発端となった1995年の沖縄少女暴行事件以来、最前線で沖縄とアメリカ政府との交渉に当たってきた守屋武昌氏は、昨年まで安全保障情報へのアクセスが制約される野党の座にあった民主党が、この問題の複雑さや怖さを理解できていなかったとしても、それを責めることはできないと同情的な立場をとる。それは、「防衛省の天皇」の異名を取るまでに日本の防衛のトップに君臨した守屋氏にさえ、「結局最後まで自分は沖縄に手玉に取られた」と言わしめるほど、この交渉がいかに複雑かつ手強いものだったかを、氏自身が身をもって知っているからに他ならない。
 10年以上も普天間移設交渉に関わってきた守屋氏は、交渉の困難さをしみじみと語るが、中でも驚愕の事実として氏があげるのが、一旦キャンプシュワブ陸上案で決まりかけていた普天間の移設案が、地元沖縄の自治体や経済団体がアメリカ政府を動かすことで、ひっくり返されてしまったことだった。
 守屋氏は当初から、沖縄県内に米軍基地を新設することなど、沖縄県民が許すはずがないとの前提に立ち、普天間の移設先は既存の米軍基地内しかあり得ないと考えていた。そして、嘉手納基地統合案、嘉手納弾薬庫案などを経て、キャンプシュワブ陸上案というものが浮上した。基地の新設にあたらず、しかも海の埋め立てによる環境破壊も伴わないもっとも合理的と思われたこの案で、日本側がほぼ固まりかけていたその時、突如守屋氏の元に、現在の辺野古沖案の元になる、海の埋め立てを前提とする別の案が、アメリカ側と地元沖縄からほぼ同時に提示されたという。
 いくら守屋氏と言えども、地元沖縄と米政府が共に推す案に反対できるはずがない。実はこの案は米軍基地との親交が深い沖縄の自治体や経済団体が、基地の司令官らを説得し、現場の司令官らの要望に応える形で、米政府が正式に推してきた。地元住民との融和を優先する米政府の弱みをついた見事な交渉術だったと守屋氏は苦笑するが、日本政府がベストと考えていたキャンプシュワブ陸上案は、このようにいとも簡単にひっくり返されたのだった。
 こうして、日本政府は困難が伴うことを知りながら、沖縄県の経済団体とアメリカ政府が推す辺野古沖案が、L字案、V字案などの変遷を経て、最終合意案となっていく。
 もともとこの案は埋め立て工事を伴うために、地元の土建業者が潤うという背景があることはわかっていた。しかし、より大きな問題は、この「辺野古沖」案が、いくつもの無理筋を含んでいることだった。そもそもこれでは基地の新設になり、一般の沖縄県民の反発は必至だった。しかも、埋め立てを伴うため、環境団体などの反対運動に拍車がかかるのも目に見えていた。
 基地の新設にあたるこの案を、沖縄の一般市民が歓迎するはずもない。現行案への根強い反対運動と環境破壊への懸念は、当然のことながら、野党時代の民主党議員たちの耳に入ってくる。そして、この問題の怖さも底深さも知らない民主党は、政権獲得を前に「県外」などというナイーブな公約を打ち上げてしまう。
 鳩山政権が抱える難題の解決方法について「沖縄への思いは人一倍強い」と言う守屋氏は、本当の意味で沖縄の人の利益に叶う対応とは何かを今あらためて考えるべきだと言う。
 沖縄には基地で潤う人と基地に苦しむ人がいて、これまでは主に基地で潤う人が沖縄を動かしてきたと守屋氏は言う。しかし、氏の試算では年間6000億円を超えるという公共事業等を通じて彼らに配分してきたお金を、これからは基地で苦しんでいる個人に直接手渡すような政策が必要だと守屋氏はいう。
 その一方で、防衛当局のトップを務めた守屋氏は、安全保障面でこの問題を甘くみてはいけないと警鐘を鳴らす。
 沖縄は東アジアからインド洋に至る、今やグローバル経済の中心とも言うべき大経済圏の中心的な位置にあり、周辺には数々の不安定な要素が存在する。そのどこかで紛争が起き、経済活動が影響を受けるようなことがあれば、世界経済が壊滅的な打撃を受けることは必至だ。95年に普天間返還を決定した当時、北朝鮮の核開発を東アジアにおける最大の脅威と考えていたアメリカは、9・11以降沖縄の地政学的重要性の認識を新たにしている。そのアメリカは、グローバルな安全保障のためにいち早く展開できる海兵隊を一定規模で沖縄に配備することが必要だと考えているし、それは、アジア全域が望むことでもあると守屋氏は言う。
 鳩山政権は泣いても笑っても5月末までには、一見解が存在しないかに見えるこの連立方程式の答えを出さなければならない。その難問を解くカギを、守屋氏との議論の中に探してみた。

在沖米海兵隊の抑止力とは何なのか

(第476回 放送日 2010年05月29日 PART1:38分 PART2:55分)
ゲスト:孫崎 享氏(元外務省国際情報局長)

普天間飛行場の移設先として「最低でも県外」を公言してきた鳩山首相が、最後に「辺野古」を選ぶしかなかった理由としてあげた唯一の理由が、「米海兵隊の抑止力」だった。
 28日に日米間で合意した共同声明でも「沖縄を含む日本における米軍の堅固な前方のプレゼンスが、日本を防衛し、地域の安定を維持するために必要な抑止力と能力を提供すること」と明記され、米軍が沖縄に駐留することの必要性の根拠を抑止力に求めている。
 しかし、鳩山首相も日米共同声明も、抑止力の中身については、何ら具体的に明らかにしていない。
 日米の安全保障問題に詳しく、外務省ではもっぱらインテリジェンス(諜報)畑を歩んできた元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、米海兵隊の抑止力論を、「まったく的外れな主張」だとして一蹴する。
 海兵隊は有事の際に真っ先に戦闘地域に派遣される急襲部隊であり、「抑止力とは何ら関係がないというのは軍事の常識」だと孫崎氏は言う。また、鳩山首相が名指しであげた朝鮮半島情勢への対応についても、もともとその役割は在韓米軍が担うべきもので、沖縄に海兵隊を配置する理由になどならない。
 こう論じる孫崎氏は海兵隊のみならず、そもそも在日米軍自体が、今日抑止力を失っているとまで言う。
 軍の抑止力は、核兵器に対する抑止力と通常兵器に対する抑止力に分かれる。しかし孫崎氏によれば、中国の軍事的な台頭によって、もはや米国が中国と一戦を構える意思を失っている以上、在日米軍は核に対する抑止力も通常兵器に対する抑止力も、いずれも提供できていない。仮に尖閣諸島などをめぐり日中間で紛争が生じてもアメリカ軍は動かないだろう。ましてや、米本土を核攻撃する能力を持つ相手に対して、他国をまもる目的でアメリカが核を使用することなどあり得ない。だから孫崎氏は在日米軍の抑止効果は、もはや存在しないも同然だと言うのだ。
 では、なぜアメリカは、抑止効果の無い海兵隊員を沖縄に配置し続け、新たな基地の建設を強硬に求めるのか。孫崎氏は、アメリカの海兵隊が沖縄にいることの最大の理由は、年間6000億円にものぼると言われる日本の米軍駐留費支援にあると言う。いわゆる思いやり予算だ。
 日本は海外に駐留するアメリカ海兵隊の99%を国内に抱え、しかも、在日米軍の駐留経費の75%を思いやり予算として負担している。ドイツの30%と比べてもこの数字は圧倒的に高い。つまり、アメリカは世界のどこの国よりも日本に海兵隊を置いた方が経済的に好都合であるという理由から、地域の抑止力などとは無関係に、単に世界中に海兵隊を派遣するためのホームベースとして、海兵隊の基地を日本に持ち続けたいというのが、アメリカの本音だと孫崎氏は言うのだ。
 こうなると普天間移設をめぐる迷走は、どうやらアメリカの言い分を鵜呑みにした鳩山政権の独り相撲の感が否めない。しかし、それでも孫崎氏は普天間問題はまだ終わっていないと言い切る。なぜなら、期せずして鳩山政権が沖縄県民の反基地感情に火をつけてしまったからだ。今後、辺野古移設計画を進めようにも激しい抵抗や妨害活動に遭い、基地の建設が不可能になる可能性は低くない。
 孫崎氏は、地元の反対が非常に強い場合、アメリカは辺野古への基地建設をごり押しはしないだろうと言う。なぜならば、アメリカは、反基地感情を刺激し過ぎることで、それが嘉手納など、アメリカ軍の海外戦略の生命線にまで飛び火することを最も恐れているからだという。嘉手納などに比べればアメリカにとって普天間問題は小さな問題であり、それが少しこじれたくらいで日米関係が損なわれることもないし、問題が他の基地へと波及することは、アメリカは決して望んでいないからだ。
 8ヶ月前にマル激に出演した際に孫崎氏が持論として展開した「日米関係において日本はすでにアメリカに対して対等以上の関係にある」と考え合わせると、結局今回の普天間移設をめぐる迷走は、交渉巧者のアメリカにしてやられたというだけのことだったのかもしれないという気さえしてくるではないか。
 日本がアメリカを失いたくない以上に、アメリカは日本を失いたくないと主張する孫崎氏と、米海兵隊の抑止力や、それを理由に辺野古への移設に踏み切った鳩山政権の意思決定のあり方などについて議論した。

 

DVD特別版 「これでいいのか裁判員制度」

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見えてきた裁判員制度の危うい実態

(第332回 放送日 2007年08月10日 PART1:56分 PART2:46分)
ゲスト:保坂 展人氏(衆議院議員)

市民が刑事裁判に参加する裁判員制度の開始を2年後に控え、その具体的な運用内容がようやく明らかになってきた。裁判員の導入を謳った裁判員法は04年の国会で、全会一致で可決されているが、その具体的な内容は、施行までの5年間に最高裁判所諮問委員会で審議されることとされていた。しかし、裁判員の日当から、裁判員選任の方法や評議の進め方など具体的な運用が決定されるにつれて、裁判員制度の新たな問題点が顕わになってきている。
 司法の問題を国会で追及してきた衆議院議員の保坂展人氏は、裁判員候補となった人の思想信条にまで踏み込むような憲法違反をうかがわせる決定が、裁判所と検察庁、弁護士会の法曹三者のごく一部の手で次々と進められていると憤る。
 例えば、裁判員の選任の際に、検察側も弁護側も裁判長を通じて候補者に質問をすることが認められている。もともとは公正な裁判を期するために、原告や被告の知人や利害関係者などを排除することを想定しての制度だが、そこでの質問には、「警察を信用するか、しないか」や「死刑制度に賛成か、反対か」などの、実質的に裁判員となる人の思想信条にまで踏み込むような質問も含まれることが、最高裁が作成した想定問答集で明らかになっている。その結果、「不公平な裁判をする恐れがある」と判断されれば、その人は裁判員から除外される。保坂氏は、「裁判の公平性を担保する」という大義名分のもと、「国家権力の前で、市民の信条や内面を告白させられる」ばかりか、警察を信じ、死刑に賛成の人だけが裁判員として裁判に参加できるような仕組みになっていると指摘する。
 そもそも司法制度改革の議論が始まった当初は、欧米の陪審員制度の導入が想定されていた。しかし、評決権を死守したい司法当局の意向で、市民の権限は裁判員制度という形で大幅に縮小された。そして今、裁判員制度の具体的な運用が明らかになるにつれて、鳴り物入りで始まる裁判員制度が、実際は現状維持色がさらに強いものであることがより鮮明になってきている。
 更に、05年に始まった公判前整理手続きや、裁判員制度の決定の時点では想定されていなかった被害者参加制度などと組み合わさった時、裁判員制度にどのような問題が生じるかについては、まだ未知数の部分が多い。
 泣いても笑っても2年後にはスタートする裁判員制度について、新たに明らかになった問題点とその対策を、保坂氏とともに考えた。

人が人を裁くとはどういうことか

(2008年11月11日 43分)
作家・高村薫氏インタビュー

半年後に開始が迫る裁判員制度について、死刑制度などで積極的な発言を行っている作家の高村薫氏は、一般人が人を裁くことを意味する裁判員制度には反対の立場を取る。高村氏は、人が人を裁く「裁判」という制度は、法律という一般市民が承認した共同体での約束事に基づいて、法律の専門家が行うことを根拠に成立しているのだと説き、市民感情を根拠に裁判を行うということは理解ができないと語る。また、神の存在がその前提にある欧米の陪審員制度とは、制度の前提が大きく異なることも指摘する。
 人が人を裁くことの意味を問う高村氏に、半年後に施行が迫った裁判員制度の問題点を聞いた。

今の裁判制度のままでは市民の信頼を得られない

(2008年11月13日 53分)
一橋大学大学院後藤昭教授インタビュー

来年5月21日に開始される裁判員制度について、一橋大学大学院法学研究科教授の後藤昭氏は、必ずしも完璧な制度ではないが、市民が権力の行使に自ら参加し、司法の透明度が上がらなければ、司法への信頼を得られないという理由から、推進の立場をとる。
 なぜ今裁判員制度を行うべきなのか、後藤氏が裁判員制度を推進する理由を聞いた。

裁判員制度は現行司法制度の問題を解決できない

(2008年11月14日 41分)
梓澤和幸弁護士インタビュー

施行まで半年となる裁判員制度について、表現の自由や報道被害事件を多く担当してきた弁護士の梓澤和幸氏は、裁判員制度とセットで行われる公判前整理手続と、裁判員に課される厳しい守秘義務に大きな問題があると指摘する。
 密室で証拠が「一般市民でも理解できるような形で」選別、整理される公判前整理手続きも、裁判官と裁判員が密室で評決や量刑を話し合う評議も、その内容を一切公表できないことから、その中で問題のある運営が行われていても、メディアも市民社会もこれを知る機会すら与えられていないのが現行の裁判員制度であると、梓澤氏は警鐘を鳴らす。
 このまま裁判員制度が始まれば、日本の刑事裁判にどのような影響が及ぶことが考えられるのか、梓澤氏に、裁判員制度の問題点とその弊害を聞いた。

今あらためて問う、この裁判員制度で本当にいいのか
ゲスト:西野喜一氏(新潟大学大学院教授)

第398回 放送日2008年11月15日 PART1:56分 PART2:59分)

市民が重大な刑事裁判に参加することを義務づける裁判員制度の実施が、いよいよ半年後に迫った。今月に入ってからテレビCMも流れはじめ、月末には裁判員候補者に選ばれた人に対する告知の郵送も始まる。もはや引き返せないところまできているかのようにも見える。
 しかし、これまでマル激で何度となく報じてきたように、現行の裁判員制度は大きな問題点を残しており、人を死刑や無期懲役に処する可能性の高い重大な司法制度の変更がこのまま実施されれば、深刻な問題が起きるとの懸念は根強く残っている。また、この制度だけは、とりあえずまず始めてみて、問題があれば直していきましょう、では済まされない面もある。その間、不当な刑罰を受けたり、場合によっては命を奪われてしまう被告が出てしまう可能性があるからだ。
 そこでマル激トーク・オン・ディマンドでは、2回シリーズで裁判員制度をとりあげ、まず裁判員の問題点を指摘する反対派の論客とともに、その問題点を洗い出した上で、後日推進派にそうした問題をどのように考えているのか、また、それでも裁判員制度を導入するメリットとは何なのかをぶつけるシリーズ企画をお送りする。
 まず2回シリーズの前半となる今回は、裁判員にのしかかる過度の負担、公判前整理手続と裁判の簡略化によって失われる精密司法の伝統や、その結果冤罪や誤判の可能性が高まる危険性、厳格な守秘義務規定によって制度の問題点をチェックできない問題などを洗いざらい議論した。
 また、インタビューで登場する作家の高村薫氏による「そもそも人が人を裁くことの意味」やゲストの西野喜一氏による「裁判員制度違憲論」など、この制度の持つ哲学的な矛盾点や憲法上の疑義も取り上げた。
 議論を通じて浮き彫りになってきた裁判員制度の最大の疑問点は、「市民参加」「開かれた司法」などの一見美名の元に、実は全く正反対の効果を生む危険性が高いことにある。
 市民参加と言っても、それを口実に公判前整理手続で論点が大幅に絞り込まれてしまうことで、弁護側は検察のシナリオに対して疑義を差し挟む機会を奪われることになる。
 また、裁判員になった市民はそこでの経験を一切口外してはいけないことになっているため、実際に裁判に参加した裁判員と市民社会全体が、経験則や参加意識を共有することはまず難しいことも問題だ。
 さらに、実際の判決や量刑を議論する評議の過程で、裁判官が裁判員にどのような説明を行うかによって、法律の知識が限られる市民は容易に説得や操作が可能になると思われるが、そこでのやりとりは表には一切出てこない。それを裁判員が明らかにすれば罪になるからだ。評議が割れた場合は多数決で評決や量刑が決まるのだが、それが割れたかどうかも、公表はされないし、裁判員はそれを口外してはならないのだ。
 無論法律の知識も限られ、人を裁いた経験も無い一般市民は、特に凶悪な犯罪に対しては情緒的な反応をしてしまう可能性が高い。被害者の司法参加によって、さらに感情的な判断をしてしまうリスクも高い。これもまた、裁判員の参加が被告人の利益となる蓋然性は低いと言わざるを得ない。
 中には、「開かれた司法を装いながら、実は統治権力側によって、より重罰化への流れを正当化するための道具に使われる」、「裁判員に結果責任の一部を押しつけることで、司法が責任を逃れるための口実になる」など、本来の制度の趣旨とは正反対の影響を懸念する向きもある。そして更に根本的な問題として、「いろいろな問題が起きていても、それが守秘義務などによって表には出てこないようになっているため、問題があってもそれが直らない制度設計になっている」など、根本的な欠陥も指摘された。
 元判事で、裁判員制度に強く反対の意を表明している西野氏とともに、半年後に迫った裁判員制度の実施を前に、今あらためてその問題点を見直すと同時に、仮にこのまま制度が施行された場合、どのようなリスクが内在されているかを考えた。

それでも裁判員制度は必要だ
ゲスト:河合幹雄氏(桐蔭横浜大学教授)

第408回 放送日2009年01月31日 PART1:88分 PART2:23分

賛成、反対の双方のゲストをそれぞれ招き、2回シリーズでお送りしている裁判員制度の再検証企画。裁判員制度に反対する新潟大学大学院教授の西野喜一氏を招いての第1回目(第398回・08年11月15日放送)に続き、2回目となる今回は、裁判員制度の導入を支持する法社会学者の河合幹雄氏を招いて、なぜ氏がさまざまな問題点が指摘される裁判員制度の導入を支持しているのかを中心に議論した。
 河合氏は、刑事司法という狭い範囲ではなく、日本の民主主義全体のメリットを考えたときに、裁判員制度は必要との考えを示す。氏は、現在の日本の最大の問題は、市民一人一人が社会を支えているという自覚に欠けていることであるとの考えを示した上で、裁判員制度の導入によって、市民が否が応でも社会参加を強いられれば、それはひいては日本の民主主義の成長に寄与するだろうという考え方を示す。 
 指摘されている裁判員制度の様々な問題点について河合氏は、かなりの部分が運用次第のため、それほど懸念には値しないとの考えを示す。例えば、裁判員制度を導入すると、情緒に流された判決が出やすくなるため、これまでの判例を無視した重罰化の流れが進むのではないかとの懸念については、日本人の気質として、普段はいい加減そうに見える人でも、裁判員に選ばれれば非常に真面目に取り組むので心配はないだろうと言う。そのため、とんでもない判決が出るよりも、むしろ旧来の制度よりも無罪が多くなる「弊害」を懸念すべきだと言う。
 また、透明性を欠いた公判前整理手続や、厳しい守秘義務については、裁判員制度の対象となる殺人事件などは年間で約3000件あるが、被告人が犯行を否認し事実が争われる事件は少ないことを指摘した上で、事実が争われない裁判では、公判前整理手続は重要とならないとの見方を示す。また、裁判員に課せられた厳しい守秘義務についても、詳細が決められていないため、これも運用次第では問題になり得るが、それほど懸念には値しないとの立場を取る。しかし、もしも本当に問題があれば、裁判員は守秘義務を破ってでも民主主義のために声をあげるべきと河合氏は語る。
 河合氏は、裁判員の感情に影響を与える可能性のある被害者の裁判への参加制度には問題があるとの考えを示す。総論で導入に賛成の河合氏から見ても、各論レベルでは裁判員制度にはまだかなり改善の余地は残されているようだ。また、運用次第でやってみなければわからないという部分がかなり多いことも見えてきた。
 それでも裁判員制度は必要との立場を取る河合氏に、制度導入の経緯も含め、ここまで明らかになった裁判員制度の問題点をぶつけた。

 

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検察の裏金疑惑に見る日本指導層の病理

(第116回 放送日 2003年06月06日 PART1:109分)
ゲスト:三井 環氏(元大阪高検公安部長)

検察の裏金問題を告発している元検事の三井環氏をゲストに、検察が秘密捜査のために計上している調査活動費という 名目の予算の実態や、検察の隠蔽体質を考えた。
 また、なぜ日本のメディアがこの問題をまともに取り上げようとしないのか、三井氏の経験をふまえて、メディアの記者クラブ体質を議論した。

三井環裁判の判決から見えてくるもの

(第203回 放送日 2005年02月18日 PART1:77分)
ゲスト:三井 環氏(元大阪高検公安部長)

検察の裏金疑惑を告発していた三井環氏に、2月1日実刑判決が下った。三井氏自身は以前にこの番組に出た際にも、容疑の内容そのものを否定しているが、百歩譲ってそこに何らかの犯罪要件が成立していたとしても、三井氏の容疑は20数万円程度の接待だの、住んでいない住所に住民票を移しただのといった、微罪も微罪、社会通念上は到底犯罪とは呼べないようなものばかりのように思われる。
 しかし、検察は三井氏が検察の裏金疑惑に関して実名でテレビインタビューを受けることになっていた日の朝、三井氏をこの超微罪で逮捕し300日を越える拘留を続けた。そうした上での今回の判決だった。しかし、勝訴に絶対の自信を持っていた三井氏及び弁護団の予想を裏切って、大阪地裁は三井氏に実刑判決を下した。
 はたしてこの判決は妥当なものなのか。その裁判所さえもが判決の中で、裏金疑惑の糾明が必要であると指摘しているにもかかわらず、南野法相は調査の必要無しとしていることを、われわれはどうみるべきなのか。検察のトップにまで及ぶ「調査活動費」裏金疑惑問題と三井氏に対する今回の判決の意味するところを、三井氏とともに考えた。

鈴木宗男は何と戦っているのか

(第242回 放送日 2008年10月25日 PART1:77分)
ゲスト:鈴木 宗男衆議院議員

先の衆院選で復活当選を果たした「ムネオ」が、早速暴れ始めている。「疑惑の総合商社」と揶揄された後、あっせん収賄などの罪で有罪判決を受け控訴中の身の鈴木氏ではあるが、外務省に対して職員手当、プール金や裏金疑惑など関する28件の質問主意書を立て続けに送りつけるなど、まずは自分を「刺した」外務省と対決の姿勢を鮮明にしている。
 また、小泉構造改革についても異を唱え、地元北海道は依然として公共工事を必要としていると訴える。
 一見地元への利益誘導しか頭にない典型的な守旧派政治家のようにも見える鈴木氏だが、その一方で、ロシアと独自の外交ルートを開拓することで「対米追従外交」へのアンチテーゼを提供していたり、地方にも優しい政治を提唱することで弱者切り捨てと批判される「小さな政府」路線を戒めてみたりと、実は鈴木氏の主張には重要なメッセージが含まれているようにも見える。
 ならば、なぜ鈴木氏のこうした主張は受け入れられないのか。このような主張を続けることで、鈴木氏は誰を敵に回しているのか。鈴木氏が踏んだとする「虎の尾」とは何だったのか。2年前の番組出演から胃がん手術、参院選落選を経て国政に復帰した鈴木議員に、その熱い思いを聞いた。

なぜ特捜なのか。なぜライブドアなのか

(第253回 放送日 2006年02月03日 PART1:102分 PART2:71分)
ゲスト:堀田 力氏(弁護士、元東京地検特捜部検事)

政治がらみの疑獄事件の追及で名を馳せてきた特捜部が、ライブドアを電撃的捜査の標的に選んだことが、さまざまな憶測を呼んでいる。知名度こそ抜群だったとはいえ、所詮は新興の中小企業に過ぎないライブドアを、ある意味では形式犯罪とも言える粉飾決算や偽計取引の容疑で特捜が乗り出すことに対しては、違和感を覚える人が少なくないからだ。
 政治家や暴力団の関与の可能性を取り沙汰する声がある一方で、「目標時価総額世界一」を公言するライブドアを行き過ぎた新自由主義シンボルと位置づけ、拝金主義的風潮への戒めに特捜が乗り出したなどとまことしやかに語る評者もいる。
 しかし、かつて特捜検事としてロッキード事件を捜査した経験を持つ堀田氏は、今回の捜査に検察の恣意性はないとの見方を示す。特捜部内には汚職を専門に扱う特殊班とは別にもともと経済部があり、これまでにも今回と類似した事案を捜査対象としてきているという理由からだ。
 それでは、特捜検察の暴走を懸念する声は杞憂に過ぎないのか。
 取材に応じたジャーナリストの魚住昭氏は、今回の検察により強制捜査が世論の要請を受けたものではなかった点に警戒が必要だと警鐘を鳴らす。向かうところ敵無しの感が強い検察に、自ら政治的な判断を下すことを許すのは危険だというのだ。
 確かに、刑事裁判の有罪率が99%と先進国で突出して高い日本では、検察による逮捕は有罪と同意語になっている。メディアは一斉に犯罪者扱いを始め、裁判も始まらないうちから既決囚と同じ矯正施設で厳しい環境の下に置かれる。逮捕と同時に事実上の服役が始まっている言っても過言ではない。
 しかし、堀田氏はそのような制度も、検察の高い使命感や正義感に支えられ、全体としてはバランスの取れた制度になっていると主張する。
 なぜ検察はライブドアを標的にしたのか。なぜ特捜でなければならなかったのか。検察に対するチェック機能はどこが果たすべきで、そのチェック機能は働いているのか。堀田氏とともに法文化の観点から検察のあり方を改めて考えた。

こんな参院ならいらない

(第329回 放送日 2007年07月13日 PART1:78分 PART2:35分)
ゲスト:村上 正邦氏(元参議院議員)

「良識の府」と呼ばれる参議院は、衆議院や内閣の行動をチェックする機関として存在意義を示してきた。しかし、21年間参議院議員を務め、参院自民党のトップとして君臨した村上正邦氏は、「小泉政権によって、参議院は2度死んだ」と語り、現在の参議院は、衆議院の暴走に対して、まったく無力な状態に陥っていると嘆く。
 05年8月、僅差で衆院を通過した郵政改革法案は、自民党議員の造反もあり参院では否決された。あくまでも法案成立を目指す小泉純一郎首相は、憲法の規定に基づいた両院協議会に諮ることなく、また衆院に差し戻すこともなく、衆議院を解散した。この結果、郵政改革法案に反対した参議院の意思は踏みにじられ、権威は地に落ち、「参議院は死んだ」と村上氏は言う。
 さらに、郵政選挙後、郵政改革法案が与党の賛成多数で衆院を通過すると、自民党議員の多くは抵抗もせずに賛成にまわった。「ここで、もう一度、参議院は死んだ」と村上氏は語る。
 衆議院が小選挙区制になって以降、衆議院議員は、公認はずしを恐れて、党本部に服従するようになったが、参議院議員も立場は変わらない。選挙運動のためには、衆議院議員の後援会の支持が必要になるためだ。また、郵政選挙で、党が政治資金を握り、造反議員に対しては“刺客”を送り込むという非情な方針を打ち出したため、多くの参院議員は萎縮して、党議拘束に抗ってまで筋を通す気力を失っていると村上氏は残念がる。
 また、参議院自民党のトップに君臨する青木幹雄議員会長の罪も大きいと、村上氏は指摘する。かつて参議院議員は、党よりは院への帰属意識が強く、自らの良識に従って審議をしているという自負があった。村上氏自身も議員会長時代は、「参議院をないがしろにするな」とたびたび自民党執行部とぶつかり合ったと語る。しかし、現在参院自民党は青木議員会長の下で一応の結束は保っているが、党を超えた参院らしい自由闊達な意見は交わされにくくなっているという。
 村上氏は、参院が存在意義を取り戻すためには、「党首選に参加しない」「閣僚にならない」「3年ごとの半数の改選はやめて、任期6年を一括して選ぶ」「決算は参議院が議決権を持つ」「議員定数を100人にする」といった具体的な提案を示している。いずれも、参院が政局や世論に左右されない長期的な政策を議論することを可能にするためだ。村上氏は、日本の参院も米国上院を倣い、外交や防衛、教育といった重要案件だけを審議する場を目指せと熱く語る。
 そして、その実現のためには、「今回の選挙で、自民党が負けた方がいい」とまで村上氏は言い切る。参議院で野党が過半数を占めれば衆院との間にいい緊張関係ができる。衆院で可決した法案が参院で否決される事例が相次げば、参議院の存在意義を国民に知らしめ、参議院改革を行えという世論を盛り上がるのではないかと、村上氏は言う。
 参院選を目前に控え、あえて今参院が抱える問題について、「村上天皇」呼ばれた自民党参院のドン・村上正邦氏をゲストに招いて語り合った。

検察の裏金疑惑に見る日本指導層の病理

(第116回 放送日 2003年06月06日 PART1:109分)
ゲスト:三井 環氏(元大阪高検公安部長)

検察の裏金問題を告発している元検事の三井環氏をゲストに、検察が秘密捜査のために計上している調査活動費という 名目の予算の実態や、検察の隠蔽体質を考えた。
 また、なぜ日本のメディアがこの問題をまともに取り上げようとしないのか、三井氏の経験をふまえて、メディアの記者クラブ体質を議論した。

理解に苦しむこの時期の小沢氏秘書の逮捕

(2009年03月06日 17分)
元検事・郷原信郎氏インタビュー

西松建設からの政治献金の虚偽記載容疑で民主党の小沢一郎代表の秘書が逮捕された事件について、検察OBで桐蔭横浜大学法科大学院教授の郷原信郎氏は、政治団体を経由した献金に対して政治資金規正法の虚偽記載を適用することは非常に難しいとの見通しを示した。
 長崎地検の検事時代に自ら政治資金規正法がらみの捜査に携わった経験を持つ郷原氏は、そもそも政治資金規正法は必ずしも実質的な資金の提供者を寄付者として記載することを要求していないことを指摘する。「実際は西松建設がお金を出していることが分かっていても、政治団体から寄付を受けたのであれば、政治資金収支報告書には政治団体の名前を記載しても違反にはならない。政治団体がなんら実態の無いダミー団体で、しかも寄付を受け取った側がその事実を明確に把握していたことが立証されない限り、政治資金規正法違反とは言えないが、実態の無い政治団体はたくさんある。」郷原氏はそう語り、選挙を控えて政治的な影響の大きなこの時期に、あえて野党党首の公設秘書の逮捕にまで踏み切った検察の意図に疑問を呈した。

特捜検察の役割を再考する

(第414回 放送日 2006年02月03日 PART1:47分 PART2:45分)
ゲスト:宮本雅史氏(産経新聞社会部編集委員)

民主党の小沢代表の公設秘書が逮捕された直後から、総選挙を間近に控えた今の時期に、政治資金規正法の虚偽記載という形式犯で野党党首の秘書をいきなり逮捕する東京地検特捜部の捜査手法に疑問を投げかける声が、方々であがった。小沢氏自身、秘書が逮捕された直後の記者会見で、「政治的にも法律的にも不公正な検察権力、国家権力の行使だ」と語っている。
 実際、国策捜査などという言葉がメディア上でも飛び交い、検察に対する不信感はこれまでになく高まっているようだ。
 また、その一方で、特捜部が強制捜査に乗り出した以上、何か大きな事件がその背後に潜んでいるに違いないとの指摘も根強い。特捜検察があえてこの時期に野党党首の秘書を形式犯だけを理由に逮捕するとは考えにくいからだ。
 しかし、『歪められた正義』、『真実無罪―特捜検察との攻防』などの著書で特捜検察の問題点を指摘してきた産経新聞社会部編集委員の宮本雅史氏は、市民の検察に対する過度の期待が、検察を暴走に駆り立てる危険性をより大きくしていると警鐘を鳴らす。造船疑獄事件やロッキード事件といった大型の疑獄事件を通じて、特捜検察は大事件を解明し、大物政治家を逮捕するのが当たり前のように思われているが、それが検察にとっては耐え難いプレッシャーになっているというのだ。
 逆に言えば、検察が小さな事件を扱うことがあってもいいではないかと宮本氏は言う。「入り口は小さく、出口は大きく(小さな事件から捜査に着手し、最終的には大物を摘発する)」が検察の伝統的な手法だが、小さな入り口から入ったものの、最後まで大物が出てこない場合があってもおかしくはない。必ず大物を捕まえなければならないというプレッシャーがあると、検察が無理矢理事件のシナリオを創作してしまうような危険を犯すことにつながると、宮本氏は危惧する。
 とはいえ、重大な問題もある。もし検察が暴走したときに、それをチェックする機関が今の日本には存在しないということだ。宮本氏は、本来は裁判所が公正な立場で検察の言い分を検証する役割を果たすべきだが、日本の裁判所は検察の調書に依存しているため、その機能を果たせていないという。日本にも検察をチェックする第三者機関が必要だというのが、宮本氏の主張だ。
 数々の疑獄事件を経る中で法律が強化された結果、政治資金はかなりガラス張りになっている。そうした時代の特捜検察の存在意義とは何なのかを、宮本氏と議論した。

検察は説明責任を果たしているか

(第416回 放送日 2009年03月26日 PART1:70分 PART2:48分)
ゲスト:郷原信郎氏(桐蔭横浜大学法科大学院教授)

東京地検は24日、民主党小沢代表の公設秘書を政治資金規正法違反で起訴した。小沢代表は同日の記者会見で「献金を頂いた相手方をそのまま記載するのが規正法の主旨であると理解しており、その認識の差が今日の起訴という事実になったと思う。過去の例を見ても、この種の問題について逮捕、強制捜査、起訴という事例は記憶にない。納得がいかない」と涙を流しながら話し、代表の地位にとどまる意向を表明した。
 元検事で桐蔭横浜大学大学院教授の郷原信郎氏は、起訴内容が政治資金規正法の虚偽記載のみにとどまったことで、特捜の捜査は完全な失敗だったと断じる。政治団体を経由した企業からの政治献金が容認されてきたことは言わば政界の常識であり、政権交代の可能性が大きい総選挙を半年以内に控えた今この時期に、野党の党首の公設秘書を逮捕する容疑としては、あまりにも形式犯すぎるというのが郷原氏の一貫した主張だ。誰もがやっていることだからといって良しとすべきものではないが、政治的な影響の大きさを考えると、いきなりの逮捕では検察の政治性が批判されることは避けられないと、郷原氏は語る。
 郷原氏の見立てでは、今回の逮捕劇では検察の戦略に初歩的な誤算がいくつかあった可能性が大きいと言う。
 まず一点目は政治資金規正法の解釈だ。逮捕直後に捜査関係者の話として、秘書の逮捕によって小沢氏にも監督責任があるかのような話がリーク報道されていたが、長崎地検次席検事として政治資金規正法違反の捜査を指揮した経験を持ち、この法を熟知する郷原氏は、政治資金規正法の条文では「選任および監督」の責任となっているため、監督責任だけでは政治家本人の罪は問えないことを強調する。最初から明らかに無能な人間を会計責任者に任命したことが立証できなければ、今回の場合小沢氏の罪は問えない。特捜部はそれを十分確認しないまま小沢氏の秘書を逮捕してしまった可能性を郷原氏は懸念する。
 また、検察のもう一つの読み違いは世論の動向と小沢氏の反応だった。特捜が政治とカネの問題で政治家の公設秘書を逮捕すれば、世論の囂々たる非難の中、その政治家は辞任せざるを得なくなるのがいつものパターンだった。そうなれば、仮に罪状自体は弱くても、小沢氏の政治力は検察にとっては恐るるに足らないものになるはずだった。ところが、小沢氏が土俵際で踏ん張り、世論も今のところ小沢批判と検察批判が入り交じったものになっていることから、検察の思い通りにことが進まなかった可能性があると郷原氏は言う。
 検察は本来は捜査についての説明責任は負っていない。粛々と捜査を行い、容疑者を有罪に追い込むための証拠を公判で提示すればそれで責任を果たしたことになる。しかし、なぜ今このタイミングで、与野党を問わず広範に行われている献金行為をいきなり摘発し、野党党首の公設秘書を逮捕起訴までする必要があったのかについては、その政治的な影響の大きさを考えると、検察には明らかに説明責任があると郷原氏は言う。人の一生やこの国の運命を左右する局面で、一罰百戒の名のもとに検察が恣意的な摘発をすることが許されてしまえば、検察の権力は立法府のそれを遙かに超えた、極めて強大なものになってしまうからだ。
 元検事の郷原氏と、小沢氏の秘書逮捕をめぐる検察の判断と説明責任について議論した。また、後半は、郷原氏の持論でもある「杓子定規な法令遵守がいかに日本社会の思考停止を招いているか」を、考えた。

誰も「やりたい放題」の検察をコントロールできなくなっている

(2009年04月04日 36分)
魚住昭氏インタビュー

長年検察の取材を続けているジャーナリストの魚住昭氏は、このたびの東京地検特捜部による小沢一郎民主党代表の公設秘書の逮捕・起訴を「露骨な政治介入」だと批判し、誰も検察をコントロールできなくなっていると言う。
 田中角栄元首相の死去や金丸信自民党副総裁の脱税事件以降、政治と検察の力関係が変わり、検察がやりたい放題できるようになった。そして遂に検察は、ホリエモンの逮捕で平然と市場に介入し、今回の小沢氏秘書の逮捕で、政治に介入することも厭わないような存在となった。 「やりたい放題」になっている検察の問題点と、誰がその検察をコントロールすべきかについて、魚住氏に聞いた。
(インタビュアー:神保哲生)

 

DVD特別版 「特集・民主党政権を展望する」

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対等な日米関係には責務を果たすことが不可欠

(収録日 2009年02月23日 PART1:46分)
浅尾慶一郎 民主党ネクスト防衛大臣インタビュー

民主党のネクスト防衛大臣の浅尾慶一郎参議院議員は、民主党政権下でも日米同盟は日本外交の基軸であることに変わりはないが、アメリカに対して言うべきことを言わない現在の日本の外交には問題があると指摘し、民主党政権ではより対等な日米関係を求めていきいたいと言う。
 一方、日本は国際社会における応分の負担をする必要があるとして、国連安保理決議の要請があり、日本が必要だと認めた場合は、これまで憲法で制限されるとされてきた集団的自衛権の行使や自衛隊の戦闘地域への派遣も含め、日本はより大きな責務を果たさなければいけないと語る。
 民主党の安保政策を浅尾氏に聞いた。
【インタビュアー・神保哲生】

持続可能な年金制度はまず信頼の醸成に力点

(第388回 放収録日 2009年02月26日 PART1:38分)
蓮舫 民主党ネクスト年金担当副大臣インタビュー

日本が世界に誇る国民皆年金制度が、危機に瀕している。民主党のネクスト年金担当副大臣の蓮舫参議院議員は、国民から信頼される持続可能な年金制度を作ることが急務だと語る。そのために民主党政権の年金政策は、社会保障番号制を導入し、保険料を確実に徴収するほか、所得に応じた応分の保険料負担を国民に求めることになると蓮舫氏は語る。また、その一方で、最低年金額を保障することで、低所得層に対して手厚い年金制度になると言う。
 民主党政権下の年金制度を蓮舫氏に聞いた。
【インタビュアー・神保哲生】

子ども手当てと公立高校の無償化で子どもを育てやすい社会へ

(収録日 2009年03月03日 PART1:46分)
小宮山洋子 民主党ネクスト文部科学大臣インタビュー

過去の選挙で民主党は、中学卒業まで一人2万6000円の子ども手当てと、高校の無償化を公約に掲げてきた。民主党ネクスト文部科学大臣の小宮山洋子衆議院議員は、高齢者と比べてこれまで後回しにされていた子育て支援に力を入れることで、日本をより子どもを育てやすい国に変えたいと抱負を語る。  小宮山氏に民主党の子育て、教育政策を聞いた。
【インタビュアー・神保哲生】

天下りをなくし、税金の無駄を無くす

(収録日 2009年03月04日 PART1:54分)
松本剛明 民主党行政改革調査会長インタビュー

民主党は天下りの廃止や幹部官僚の政治任用など、行政制度の抜本的改革を主張している。民主党の行政改革調査会長を務める松本剛明衆議院議員は、民主党政権では「最も皆さんの役に立つ形で、なおかつ効果のある形で、税金を使う仕組みを作る」と説明する。  民主党の主張する行政改革の中身とその考え方を松本氏に聞いた。
【インタビュアー・神保哲生】

税制をゼロベースで見直し、公正な税制に

(収録日 2009年03月04日 PART1:58分)
古川元久 民主党税制調査会副会長インタビュー

民主党税制調査会副会長を務める古川元久衆議院議員は、現在の税制は納税者の視点ではなく、為政者側の視点で決められてきたと言い、民主党政権ではゼロベースで納税者の視点から税制を見直すと語る。  古川氏は民主党政権では、現在高所得者に有利となっている所得控除の仕組みを税額控除へあらため、税額控除額を下回る所得しかない低所得者に対しては、政府がその分を現金で給付する制度を導入したいと言う。  また、公正な税制のために、「社会保障番号」と統一した納税者番号制を導入し、税金の徴収機能も強化したいと言う。  古川氏に民主党政権の税制政策を聞いた。 【インタビュアー・神保哲生】

 

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08年大統領選挙でアメリカは何を選択しようとしているのか

(第365回 放送日 2008年10月25日 PART1:104分 PART2:43分)
ゲスト:会田 弘継氏(共同通信編集委員)

米国の大統領選挙は、民主党の候補者選びが大接戦にもつれ込み、下手をすると夏の全国党大会まで候補者が決まらない可能性が現実味を帯びてきた。メディアもオバマ対クリントンの熾烈な戦いを連日報道し、選挙戦そのものに対する関心は日本でも高まってきているようだ。
 確かに、オバマかクリントンが候補となり、11月の本選挙で共和党のマケインに勝利すれば、アメリカ史上初のアフリカ系アメリカ人大統領、もしくは女性大統領が誕生することになり、その歴史的な意味は計り知れない。2度のワシントン勤務を含め、米国の政治を長年追い続けている共同通信社の会田弘継氏は、年齢も46歳と若く政治経験も浅いながら、「包摂」や「連帯」をスローガンに掲げるオバマが、抜群の知名度を誇るヒラリー・クリントンを圧倒している現状に、アメリカ政治の新しい潮流を感じ取ると言う。アメリカは今、自分たちが黒人大統領を選ぶことができる国であることを世界に見せることで、イラク戦争後の泥沼でずたずたに踏みにじられたアメリカの誇りを再び取り戻そうとしているかのようでもある。
 しかし、オバマ対クリントンの指名争いだけに目を奪われていては、08年大統領選挙の歴史的な意味合いは見えてこない。実際、オバマとクリントンでは主張する政策には、ほとんど大きな差異は無い。
 今回の大統領選挙は、人種やジェンダーの問題を横に置いても、アメリカ政治史における大きな転換点となる可能性が高いと、会田氏は言う。
 20世紀のアメリカでは、1933年のルーズベルト政権下でのニューディール連合以降、1980年のレーガン政権誕生までほぼ半世紀にわたり、アメリカの連邦政府はリベラル色の強い民主党が支配してきた。  80年にレーガンが保守勢力の統合に成功し、50年ぶりに本格的な保守政権の樹立に成功したが、それを引き継いだブッシュ(父)は、内政、外交ともに真性保守の政治路線からはずれたと見なされ、1期のみで民主党のビル・クリントンに政権の座を明け渡す。クリントンは新しいタイプの民主党リーダーとして、競争原理を取り込みながらも社会的弱者層にも一定の配慮をするニューリベラルなどと囃されたが、結局過度なリベラル色が保守層から嫌気され、大統領就任2年後の中間選挙で上下両院とも民主党は過半数を失ってしまう。
 実は現在のブッシュ政権は、クリントン政権時代の遺産とも呼ぶべき共和党による議会の上下両院支配の上に、ホワイトハウスをも共和党が押さえた、共和党の全面支配下での本格政権だった。共和党がホワイトハウスと上下両院を同時に押さえるの
は、何と1952年のアイゼンハワー政権以来のことだった。
 再び本格的な保守政治を期待されたブッシュ誕生だったが、政権発足後間もなく9・11の同時テロによって政策面での選択肢を著しく制限されることになる。そして、ブッシュ政権は、ネオコン主導で前のめりに突っ込んでいったイラク戦争で大きくつまず
き、06年の中間選挙で共和党は上下両院ともに過半数を民主党に奪われてしまう。
 そうした中、08年の大統領選挙で民主党候補が勝利すれば、クリントン以来16年ぶりにホワイトハウスと上下両院を同時に民主党が押さえることになり、久々の本格的なリベラル政権が誕生することになる。しかし同時に、冷戦後のグローバル化された現在の世界では、旧来の保守対リベラルの構図そのものも変質していると会田氏は指摘する。
 今週はアメリカの政治思想史に詳しい会田氏とともに、米国大統領選の現状を分析するとともに、米国の政治思想史の流れ中での08年選挙の位置づけと意味合いを考えてみた。

5金スペシャル 映画とイラク戦争と大統領選挙

(第387回 2008年08月30日 PART1:90分 PART2:48分)
ゲスト:町山 智浩氏(映画評論家)

恒例となった、5週目の金曜日に特別企画を無料放送でお届けする「5金」。今回は、帰国中の在米映画評論家・町山智浩氏をスタジオに迎え、いつもは電話出演の町山節を「動く町山さん付き」でお届けする。
 テーマは映画と大統領選挙。イラク戦争と米大統領選に関する3本の映画をもとに、アメリカの言論と政治が今どうなっているかについて、『戦争報道』(ちくま新書)の著作がある武田徹氏(マル激トーク・オン・ディマンド・キャスター)を交えて、語り合った。
 今回取り上げた映画は、『告発のとき』『リダクテッド 真実の価値』『マイケル・ムーアinアホでマヌケな大統領選』の3本。前半の2本はいずれも、実話に基づくドキュメンタリータッチの映画で、イラク帰還兵による殺人事件と駐留米兵によるイラク人少女レイプ事件を題材にしている。町山氏は、これらの事件は、最近までほとんどアメリカで報道されることはなかったという。それがポール・ハギス、ブライアン・デ・パルマといったメジャーな監督に映画の題材としてとりあげられたこと自体が、一時はタブー視されていたイラク戦争への批判が、ようやく一般市民のレベルまで広がってきたことを示すものだと、町山氏は指摘する。
 しかし同時に、心に傷を負いながら行き場を無くしたイラク帰還兵による犯罪や、イラク人少女に対する暴行といった、この映画が描くイラク戦争の陰は、ベトナム戦争を彷彿とさせる。事実、デ・パルマ監督は89年にベトナム戦争で米兵が起こしたレイプ殺害事件を題材に映画『カジュアリティーズ』を監督しており、アメリカがベトナムの教訓を必ずしも生かせていないことが如実に表れていると町山氏は語る。
 3つ目に取り上げた『マイケル・ムーア in アホでマヌケな大統領選』は、モルモン教徒が大半を占めるユタ州の州立大学で、04年の大統領選の直前に学生委員会がマイケル・ムーアを講演のために招聘しようとしたところ、学生、大学当局、地域住民を巻き込んだ賛否両論の大激論に発展した様子を、ナレーション抜きで粛々と記録したドキュメンタリー映画だ。実はマイケル・ムーアの監督作品ではなく、彼自身は5分程度しか登場しないのだが、この作品について町山氏は、イラク戦争での大失敗がありながら、04年にブッシュが再選したのはなぜなのかを示す数少ない記録映画だと説明する。
 アメリカでは9.11の同時多発テロの後、2001年USAパトリオット法(Uniting and Strengthening America by Providing Appropriate Tools Required to Intercept and Obstruct Terrorism Act of 2001=通称愛国法)などを通じて厳しい言論統制が実施され、イラク戦争を批判すること自体が非愛国的であるとの風潮が、数年前まで一世を風靡していた。この映画では、そうした中、保守人口が大半を占めるユタ州で、イラク戦争を声高に批判するムーアの講演会を開くことが、いかに困難なことだったかがビビッドに描かれる一方で、そうした風潮の中にあっても、言論を封殺すべきではないと主張して立ち上がる学生や大学教員、市民が一定数存在するアメリカの健全さも描かれている。その結果、ムーアを呼ぶことの是非をめぐり論争が起き、結果的に人々がその問題を考えるきっかけが作られていく様子も、よく見て取れる作品だ。イラク戦争を支持しておきながら、その是非をめぐる論争さえ起きない日本と比較しても、興味深い。
 今回は町山、武田両氏と共に、これら3作品を通じて見えてくるアメリカの今と日本との対比を幅広く議論した。

初物づくしの米大統領選を10倍楽しむために

(第395回 放送日 2008年10月25日 PART1:104分 PART2:43分)
ゲスト:吉崎 達彦氏(双日総合研究所副所長)

11月4日の米大統領選挙は、投票日を10日後に控えた今、民主党のバラク・オバマ候補が相当の差をつけて共和党のジョン・マケイン候補に勝利する見通しが、はっきりと見えてきたようだ。
 米国では初となる黒人大統領の誕生、8年ぶりの政権交代、20年ぶりのクリントン・ブッシュ家以外からの大統領誕生、80年ぶりとなる正副大統領の出馬しない選挙、民主、共和両党ともに大本命候補の敗退、党大会までもつれ込んだ民主党の候補者選び等々、初物や異例さには事欠かない選挙戦となったが、そうした話題性を横に置いても、今回の大統領選挙はいくつかの点で重要な意味を持っている。
 長年大統領選挙をウォッチしてきた双日総合研究所の吉崎達彦副所長は、2つの点で今回の大統領選挙は重要な意味を持つと指摘する。
 まず、オバマという47歳で黒人の民主党候補者が、これだけ広範な支持を集めた背景にある、アメリカの政治地図の変化だ。これまで、80年の選挙で共和党のロナルド・レーガン候補が現職の民主党ジミー・カーター大統領に勝利して以来、アメリカでは人口の多い東西両海岸の諸州に民主党が強い支持基盤を持ち、中部から南部を共和党が押さえることがほぼ常態化していた。そのため、フロリダ、オハイオなどの「スイングステート」をどちらが押さえるかによって大統領選挙の帰趨が決する選挙が四半世紀にわたり続いた。しかし、今回の選挙では、バージニア、ノースカロライナ、コロラドなど伝統的な共和党の地盤までが民主党の手中に落ちる可能性が高まっている。これはフロリダやオハイオの「スイングステート」の結果を待つまでもなく、勝敗が決することを意味し、これによってアメリカの政治地図の塗り替えが、約30年ぶりに行われることになる。
 その最大の原因を吉崎氏は、ブッシュ政権に対する失望の大きさの表れと分析する。特に、泥沼化する対イラク政策と、サブプライムローン問題に端を発する金融危機への無策ぶりが、アメリカ政治に新たな力学を持ち込む結果となっているという。
 政治地図の塗り替えは一方で、オバマ氏の元に新たな政治勢力を結集させている。オバマ氏の強みは、民主党の伝統的な支持層である白人インテリ層と黒人層の他、「ミレニアルズ」と呼ばれる若者の熱狂的な支持を集めている点にある。ミレニアルズとは、2000年の千年紀に幼青年期を過ごした世代の俗称だが、この世代は人口に占める非白人の割合が4割に及ぶという特徴を持っている。2000年の国勢調査で、全人口に占める白人の比率が90年の約80%から約75%と下がったことが明らかになっているが、この傾向は若い世代では更に顕著となる。アメリカでは世代によっては、もはや白人をマジョリティとは簡単に呼べない状況が現出しているのだ。オバマ氏が新たに登場した非白人という巨大な政治勢力の支持を集めて大統領に当選することの意味は大きい。
 吉崎氏はまた、オバマ氏の出自が明確に所属する集団を持たないことが、オバマ氏にとって有利に作用していると指摘する。マケイン氏のように星条旗を背負いアメリカのために戦ってきた政治家や、ヒラリー・クリントン氏のように、女性の解放のために戦ってきた政治家は、無条件で強力な支持が期待できる所属集団を持つ一方で、集団の外側には敵も多い。一方のオバマ氏は、イスラム教徒でケニア人の父と白人でティーンネージャーだったアメリカ人の母の間に生まれ、シングルマザーの母と母方の祖父母に育てられ、ハワイ、インドネシアと移り住んだ後、苦学してアイビーリーグの名門大学に進みながら、約束されていたエリートコースを捨てシカゴで貧困層のためのコミュニティサービスに身を投じてきた。白人でも黒人でもなく、ただのエリートでもないが、労働者階級出身でもない。こうした出自や生き方の選択こそが、オバマ氏が特定の集団の代表ではなく「みんなのオバマ」になりえている所以であると吉崎氏は指摘する。
 しかし、それでもまだ一つの大きな問いが残る。もし、アメリカが選ぼうとしているのが、単なる民主党の候補でもなければ単なる黒人候補でもないとするならば、アメリカはこの選挙で何を選ぼうとしているのか。初の黒人大統領誕生という歴史的なこの選挙の持つ意味と、それによってアメリカが向かう方向にどのような変化が出るのかを、吉崎氏とともに考えた。

米大統領選挙スペシャル オバマのアメリカを展望する

(第397回 放送日 2008年11月08日 PART1:102分 PART2:71分)
ゲスト:古矢 旬氏(東京大学大学院教授)、杉浦 哲郎氏(みずほ総研チーフエコノミスト)

オバマのアメリカが誕生する。4日行われた米大統領選挙で、民主党のバラク・オバマ上院議員が、同じく上院議員で共和党のジョン・マケイン候補に圧勝した。アフリカ系アメリカ人初の大統領となるオバマ氏は「たどり着くのに時間はかかったが、今、この選挙で、この瞬間に、アメリカに変革が訪れた」と勝利演説で述べ、多くの人の胸を打った。
 今回のマル激は、米大統領選挙スペシャルとして、オバマを選んだアメリカが今何を求め、どこに向かおうとしているかを、2人のアメリカウォッチャーと議論した。
 ハーバード大学の政治哲学者マイケル・サンデルはオバマの勝利について、「アメリカはブッシュのCOMMON GOOD(共通善)を否定した」と指摘し、ブッシュのアメリカを、「COMMON GOODの希求に政府は関与せず、個々人が自らの利益を最大化することに集中」するものだったと総括した。そして、その否定の上に選ばれたオバマ政権の課題は、政府に何ができるかを示すことになるが、個々の帰属集団の要求を寄せ集め、そこにばらまきを行う旧来のニューディール連合的なCOMMON GOODに戻ること
も、もはや許されないとして、「個々人が公的貢献を行う見返り」に政府が富の再配分を行う新たなアメリカのCOMMON GOODの基準を作ることになるだろうと予見した。ここでいう公的貢献とは、兵役や地域でのボランティア、コミュニティサービスを指す。
 確かにオバマ氏は、人種、性別、所得分布から見ても、幅広い層からの支持を集めて、圧倒的な勝利を収めた。過去2回の選挙でレッドステート(共和党支持州)とブルーステート(民主党支持州)に真っ二つに分断されてきたアメリカの政治地図が、オバマ氏支持の一点で、12年ぶりに塗り替えられた格好だ。
 オバマ氏を支持した人の多くは、政府はできる限り何もしない方がいいとの立場を貫いてきたブッシュ政権に背を向け、政府が現在の窮状を救ってくれることを期待した。しかし、彼らの要求をすべて満たすだけの国力は、もはやアメリカには残っていない
し、グローバル化した時代状況もそれを許さない。
 とすると、オバマ政権が発足しても、すぐに自分たちに見返りが無いことがわかると、早晩支持者たちの離反を招く危険性は常に付きまとう。しかし、その一方で、今回オバマ氏を支持した人たちの中には、単なる短期的な見返りを期待して一票を投じたわけではない人々が大勢いる。それは、ミレニアルズと呼ばれる若年層であり、東部のインテリ階層でもある。
 そうした状況の中で、オバマ政権はアメリカに対して、そして世界に対して、どのようなCOMMON GOODを提示できるのか。
 番組前半は選挙結果とオバマ氏の勝利演説を通じて、オバマ政権の課題を占った。マイノリティからの圧倒的な支持に加え、オバマ氏が白人票の43%を得た(CNNの全国出口調査)ことは、明らかに若い世代で人種の垣根が下がっていることを示す。しかし、それと同時にオバマ氏も、従来の黒人政治家とは異なり、黒人独特のルサンチマンや抗議を行わない新しいタイプの政治家だ。初の黒人大統領として、これまで人種面で分断されてきたアメリカが、オバマ氏の大統領就任でどう融合されていくのかに注目したい。
 またブッシュ政権下で実施された新自由主義的な政権運営は、アメリカに大きな格差をもたらした。一部の成功者が巨万の富を得る一方で、所得の減少は白人にまで広がり、格差は耐えられないまでに拡大した。オバマ政権にとってある程度の再配分政策への回帰は不可避だと思われるが、同時にアメリカを震源地とするグローバル化の波は、もはやとどまるところを知らない勢いで世界を席巻している。言いだしっぺのアメリカだけが、資本の再配分や保護主義に戻ることが許される状況ではない。そこでもまた、オバマ政権は困難な選択に直面するだろう。
 金融問題についても同じことが言える。危機を招いた金融の過度の自由化に対しては、一定の規制強化が必要だろうが、ここまで自由に世界を飛び回るようになったマネーの流れを、果たして本当に規制できるのか。また、それを規制することで、世界経済にどのような影響を及ぼすのか。
 その一方で、現在の金融危機を乗り切るために、アメリカは膨大な公的資金の投入を余儀なくされている。一説には来年度の財政赤字は1兆ドル(100兆円)を超えると言われる。オバマ政権は金融危機と莫大な財政赤字という負の遺産をブッシュ政権から引き継いでの船出となる。今後も、危機の回避と景気回復のためにアメリカ政府は惜しみなく財政出動を続ける他に実際のところ選択肢はなさそうだが、そうすることで財政赤字はさらに膨れ上がる。早晩、米ドルの基軸通貨としての地位の維持は困難になるだろう。もしかすると、アメリカの国際的な地位の低下をアメリカ人に納得させることが、オバマ政権の最も重大な仕事の一つとなる可能性が大きいのだ。
 オバマのアメリカを展望しながら、そこから日本が学ぶべきことは無いのかを議論した。
(今週は特別番組のため、ニュース・コメンタリーはお休みします。)

オバマのアメリカを占う
渡部恒雄東京財団研究員インタビュー

(2008年11月05日 42分)

イラク戦争の失敗と、金融危機を乗り越えるために公的資金を投入することで膨れ上がった莫大な財政赤字という、2つの大きな負の遺産を抱えたアメリカ国民は、ブッシュ大統領の8年間にNOを突き付け、民主党オバマ候補を大統領に選んだ。  96年から約10年間にわたり米ワシントンのシンクタンク・CSIS(戦略国際問題研究所)で研究員を務め、特に米民主党の政策に詳しい渡部恒雄東京財団研究員は、経済面と外交面の双方でアメリカは優位性を失い、さらに道義的なリーダーシップも失ったと指摘する。  オバマ候補が当選を決めた11月5日、渡部氏に、優位性を失ったアメリカはいかなる国を目指すのか、経済と外交を中心にオバマのアメリカの展望を聞いた。

アメリカが選ぶ物語とは何か
中山俊宏津田塾大学准教授インタビュー

(2008年10月22日 71分)

今回の米大統領選挙は、候補者の物語が問われる選挙になると津田塾大学国際関係学科の中山俊宏准教授は見る。 マケインの物語は、ベトナム戦争で捕虜を経験し、忠誠心や自己犠牲のもとに今日のアメリカを作り上げてきたとの自負に溢れている。一方、ケニア人の父と白人でアメリカ人の母の間に生まれたオバマな、「分断ではなく融合」を説く。  ブッシュ政権の8年間のアメリカのあり方を正しくなかったと考える国民が、マケインのアメリカとオバマのアメリカのどちらのアメリカを選ぶのか。

 

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データから見えてくる「やっぱり自民党は終わっていた」

(第331回 放送日 2007年08月03日 PART1:50分 PART2:46分)
ゲスト:森 裕城氏(同志社大学法学部准教授)

自民党の参院選地すべり的敗北で、安倍首相の責任を問う声が強まっている。小泉構造改革の影響で、自民党の伝統的地盤だった地方・農村・利益団体票が離反する一方で、安倍政権が年金や相次ぐスキャンダルのハンドリングに失敗したことで、小泉時代に新たに獲得した都市無党派層からは見放されたことが、今回のような歴史的大敗を招いたというのが、大方の評価となっているようだ。
 しかし、計量政治学が専門の森裕城同志社大学准教授は、選挙データを分析すると、その説明は半分しか当たっていない可能性が高いという。
 確かに今回の選挙では、05年の郵政選挙で小泉自民党を支持した都市無党派層票の大半が民主党に流れた。そのことは、首都圏、愛知、大阪などの3・5人区で自民党が辛うじて一議席を死守しているのに対し、民主党は軒並み複数議席を獲得していることを見ても明らかだ。
 しかし、地方・農村票などの自民党の伝統的支持層が、小泉構造改革の影響で自民党から離反したとの説明に対して森氏は、自民党の支持基盤の崩壊は既に小渕・森政権時代から継続的に起きている現象であり、小泉政権の5年間は首相の個人人気によってそれが覆い隠されていたが、今回それが改めて表面化したに過ぎないと説明する。
 実際、今回の選挙で自民党の絶対得票率(有権者数に対する得票数の割合)は、獲得議席が49だった04年の参院選の19.21%と比べても1.4ポイントしか下がっていない。伝統的自民支持層に長期減少傾向があることは否定できないが、特に今回の選挙でそれが一気に加速したとの事実は、データを見る限りはうかがえない。
 今回の選挙で地方・農村票の自民党離れの象徴のように言われている一人区を見ても、自民党の獲得議席は29選挙区のうち6議席にとどまるが、得票率では17議席を得た民主党の8割強を得ている。テクニカルな理由から議席配分には大きな開きが生じたが、得票率を見る限りは、自民と民主にそれほどの大差は無い。
 しかし、得票率データは同時に、自民党がかつてのような手厚い支持基盤に支えられていた時代はもはや遠い昔の話となり、今日は民主党以上に「風頼み」の政党に変質していることもあらわにしている。それはまた、民主党が意外なまでに自らの地盤を確実なものにしている事実も明らかにする。少なくともデータ上は「浮動票頼みの自民党、都市でも農村でも安定的な支持基盤を築きつつある民主党」という、両党の意外な顔が見えてくると森氏は語る。
 データをもとに選挙結果を解説する気鋭の計量政治学者・森裕城氏とともに、参議院選の結果から見えてきた自民党の現状と、参院選勝利で政局の主導権を握ったかに見える民主党の課題を考えた。

政治の機能不全を脱するために

(第388回 放送日 2008年09月06日 PART1:50分 PART2:31分)
ゲスト:飯尾 潤氏(政策研究大学院大学教授)

9月1日、福田首相が突然辞任した。これで日本の総理大臣が2代続けて、任期の途中で政権を放り出したことになる。国会の衆参両院の勢力がねじれ状態にあるなど、国会運営が難しいなどの事情もあろうが、それにしても日本の政治がもはや完全に機能不全に陥っていることは、誰の目にも明らかだ。
 辞任会見の中で福田首相は、ねじれ国会によって次期国会でも重要法案成立のメドが立たないことを、辞任の理由に挙げている。しかし、政策研究大学院大学教授の飯尾潤氏は、そもそも衆院と参院の多数派が違うことで議会運営に困難をきたしてしまうこと自体が、日本の議院内閣制が機能していないことを示していると語る。
 議院内閣制を採用している諸外国では、二院の意見が異なることは決して珍しくない。独立して投票される二院制を採用していれば、むしろそれは当然のことで、自民党の長期支配のもと、与党が両院を支配していることを前提に、政権が容易に運営できたこれまでの日本の政治のあり方自体が、世界的に見ればむしろ異常だったというわけだ。
 日本ではよく、国民から直接選ばれる大統領の方が、議院内閣制のもとでの総理大臣よりも強い権限を持っていると思われがちだが、実際はそれは間違っていると飯尾氏は言う。議院内閣制では、国会の支配勢力と行政の長たる内閣総理大臣が同じ政党となるため、三権分立の2つが事実上政権与党によって支配されることになり、首相には大統領よりも遙かに大きな権力が集中することになる。
 しかし、本来は強い権限を持っているはずの首相が、なぜか日本では強力なリーダーシップを発揮することが難しくなっている。戦前の制度の名残で、省庁や官僚の代理人と位置づけられた国務大臣によって内閣が作られる言わば官僚内閣制とでも呼ばれるべき独特の制度があるため、実質的な政策立案は官僚が行い、閣議も次官会議で決定された議題を承認するだけで、国会が選んだ内閣には実質的な決定権はほとんど何もないのが同然の状態が続いてきた。
 一方、議会の側も、自民党政権が長く続いたために、自民党の総裁選が事実上の首相選挙となり、首相は民意とは無関係に、自民党の党内事情で好き勝手に変えられてきた。国会で首相を選ぶ首班指名選挙が、単なるセレモニーに過ぎないことは、日本人であれば誰もが知っている。大臣も当選回数や派閥の推薦などで決められてきたために、国民の任を受けた国会が内閣を選び、首相と大臣が行政を代表するという議院内閣制の本義が、希薄になっていたと飯尾氏は指摘する。
 その一方で、日本の官僚内閣制のもとでは、省庁が企業や業界の要望を吸い上げ政策に反映させる仕組みが機能していたため、国民の意見は議会を通してではなく、官僚制度を通じてある程度政策に取り入れられてきた。そのため、与党の族議員は、国民全体のためというよりも、自分たちが利益を代表する業界や団体の代弁をすればよく、それが結果的に議院内閣制の更なる弱体化につながったと飯尾氏は言う。
 その意味で、小泉政権は議院内閣制の原理に沿って、官僚の抵抗を排してでも、首相が選挙で掲げた政策や方針がそのまま政策に反映される、日本の政治史上では、むしろ異例の政権だったと飯尾氏は指摘する。しかし、小泉政権以降、日本の政治は再び官僚内閣制に舞い戻っている。
 いずれにしても、このまま政治の機能不全が長引けば、日本は山積する国内外の問題にほとんど対応できない閉塞状態が、今後何年もの間続くことになる。今日本の政治が、議院内閣制本来の機能を取り戻すために何が必要なのか。福田首相辞任の背景にある日本の政治プロセスが抱える根本的な問題を、飯尾氏とともに議論をした。

自民党の本気度、民主党の本物度を検証する

(第389回 放送日 2008年09月13日 PART1:68分 PART2:56分)
ゲスト:上杉 隆氏(ジャーナリスト)

2代にわたり総理が政権を放り出したかと思うと、出来レースよろしく演出ばかりがやたらと目立つ総裁選を平然と繰り広げる自民党。他方、党内には小沢代表の党運営への異論が燻っているにもかかわらず、黙っていれば政権が転がり込んできそうな予感から、誰一人として代表選挙に名乗りを上げることさえできない民主党。日本の政治は一体どうなってしまったのか。
 自民党の総裁選は、麻生太郎幹事長の一人勝ちが既定路線のようだが、告示日直前に他の4人が次々と名乗りを上げ、一見賑やかな総裁選となった。何と言っても、日本の次の総理大臣を選ぶ選挙だ。候補者たちは連日テレビに出演し、各地で街頭演説を行うことで、相応のメディア露出を確保しているようだ。少なくとも民主党の小沢代表の再選のニュースを打ち消すことには成功しているようだが、ジャーナリストの上杉隆氏は、これは決して自民党にプラスには作用しないだろうと予想する。なぜなら、この総裁選が茶番であることは誰の目にも明らかだからだ。
 上杉氏によると、総裁選は告示と同時に決まったも同然だったという。上杉氏が告示日に各候補の出陣式を取材したところ、各陣営に集まった国会議員及びその代理人の数は、麻生氏が165人だったのに対して、他の4人の候補者はいずれも20人前後だったという。
 また、一見盛り上がっているかに見えるメディアの総裁選報道も、実際はメディア各社は半ば仕方なく自民党からの仕掛けに乗っているだけで、実際記者達はしらけているし、コメンテーターの多くは平然と「茶番」を口にしている。メディア露出には良い露出と悪い露出があり、単に露出が増えればいいと考えているかに見える自民党の判断は、裏目に出るだろうというわけだ。実際、総裁候補の街頭演説に人は集まっておらず、有権者が自民党に向ける視線は厳しいと上杉氏は予想する。
 しかし、他方で民主党は、そうした自民党の末期症状を目の当たりにしながらも、必ずしも有効な手だてを打てていない。党内には黙っていれば政権が転がり込んでくるのではないかとの楽観的な機運が根強く、盛り上がる自民党総裁選を横目で見ながら、有効な対抗策を打てずにいる感が否めない。
 そもそも民主党は、なぜ自分たちの政策をアピールする絶好の機会となるはずの代表選で、小沢代表を無投票で再選させたのか。上杉氏は、民主党内には新進党時代に羽田孜氏と小沢一郎氏が代表を争った末にできた亀裂が党を分裂に招いた経緯がトラウマになっているためだと語る。民主党の中堅以上の議員にはその過ちを繰り返したくないとの思いが強く、総選挙を前に党の結束を最優先したのだと言う。しかし、果たしてこの選択が有権者の理解を得られるかどうかは、まだ未知数だ。
 もはや茶番であることが明白となった総裁選にあって、上杉氏は小泉純一郎元首相の支持を得た小池氏の動きだけは今後も要注意だと指摘する。小泉氏や中川秀直元幹事長率いる「上げ潮派」の支援を受けた小池氏が、総裁選で予想以上に健闘すれば、今後の政局で台風の目となる可能性が俄然高くなる。民主党の中にも、田中真紀子氏とのタッグで小泉政権が大ブームを引き起こした悪夢を、小池、小泉のコンビが再び引き起こすのではないかと恐れる声は大きい。
 フリーの立場で政治の第一線の取材に奔走する上杉氏を迎えて、自民、民主両党の実情と、政治の実態を伝えようとしない「記者クラブ」問題について議論した。

自民党システムの終焉

(第391回 放送日 2008年09月27日 PART1:80分 PART2:36分)
ゲスト:野中 尚人氏(学習院大学教授)

自民党がおかしい。結果が見えているにもかかわらず、妙に演出ばかりが目立った総裁選を経て、9月24日、麻生政権が誕生したが、就任直後から首相は、民主党に勝つことこそが、新首相の最大の責務であるとの考えを公言して憚らないのだ。そこには、これからの日本をどのようにリードしていくのか、現在の日本が抱える諸問題にはどのように対応していくのか、また野党とのねじれを乗り越えて、どう国会を運営していくのかといった、政権与党としての基本的な使命感や矜持が、ほとんど感じられないといえば、言いすぎだろうか。
 自民党政治が、戦後半世紀の間、日本の政治を支配し、戦後復興から高度成長を可能にし、日本を世界の経済大国にまで押し上げる原動力であったことは、すでに歴史が証明している。しかし、自民党政治を研究してきた学習院大学の野中尚人教授は、自民党支配の根底にあった「自民党システム」は既に崩壊し、自民党の時代は終焉を迎えていると言い切る。
 野中氏の言う自民党システムとは、族議員が多様な意見をボトムアップで吸い上げ政策に反映させる、高度に民主的な仕組みを含んでいた。また、政務調査会など党内に巨大な政策立案機能を抱え、国会に諮る前に族議員を中心に党内で丁寧な合意形成を行う点も、自民党システムの特徴だった。
 族議員が合意形成や意見集約に機能を果たす一方で、派閥が若い議員の面倒を見るとともに、政治教育の場を提供してきた。そして、派閥の幹部が説得することで党内での合意形成が可能となり、小選挙区制や消費税の導入など困難な法案を成立させることが可能だったと、野中氏は指摘する。また、一見、当選回数による派閥順送り人事のように見えて、実際はポストをめぐる熾烈な競争も裏で繰り広げられていた。
 ところが、小選挙区制の導入によって自民党システムの要だった派閥制度は崩れ、トップダウンの小泉改革で、ボトムアップの根回し型意志決定システムは、完全にその息の根を止められてしまった。冷戦構造が崩れ、日米同盟がもはや自明なものでなくなったことも、高度成長が終わり、自民党システムを使って配分する利益が消えてしまったことも、自民党システムをさらに弱体化させる原因になったと野中氏は指摘する。
 自民党システムが機能するための前提が崩れ、システム自体が崩壊した今、自民党がこの先も長期にわたって政権政党の座にとどまり続けることは困難だろうと、野中氏は予想する。また、もし仮に自民党が政権にとどまることになったとすれば、それは党名は自民党のままでも、実質的な中身は、これまでの自民党とは全く違ったものになっているはずだとも言う。
 しかし、もし仮に野中氏の言うように、自民党システムが機能しなくなっているとしても、それを全否定することには注意が必要だろう。その中には、日本が時間をかけて培ってきた普遍的な資産が含まれている可能性も十分にある。一旦これを失えば、次に政権の座につく勢力は、ゼロからすべてを再構築しなければならなくなる。
 これまで日本を統治し、日本の発展を支えてきた自民党システムとは何だったのか。また、どのような理由で、この自民党システムは機能しなくなってしまったのか。仮に民主党が政権政党となった場合、強固な自民党システムに匹敵する新たな統治システムを構築できるのか。
 自民党政治への批判と絶望が高まるなか、戦後日本社会を作り上げてきた自民党の政治運営の仕組みにあえてもう一度焦点を当て、その功罪を議論した。

民主党マニフェストと霞ヶ関埋蔵金

(第393回 放送日 2008年10月11日 PART1:48分 PART2:44分)
ゲスト:高橋 洋一氏(東洋大学教授)

連日の株価大暴落で、11月上旬の総選挙観測はやや後退した感があるが、とはいえ、近々に政権選択の選挙が迫っている状況に変わりはない。既に参院で第一党の地位を固め、野党連合を通じて参院の過半数を支配する民主党にとっては、来る総選挙こそが、文字通り政権取りをかけた大勝負となる。
 民主党政権誕生の可能性が現実味を増してきた今、民主党の政策の検証は、以前にも増して重要となっている。民主党主導の政権が実現した場合は、それが日本政府の政策となるからだ。
 そこで今週のマル激では、小沢一郎民主党代表の先の国会での代表質問などで提示された民主党の主要な政策を、東洋大学の高橋洋一教授とともに、特に財源面から検証し、その実現可能性を議論してみた。
 東京大学で数学を専攻した後大蔵省(現財務省)に入省した経歴を持ち、「霞ヶ関の埋蔵金男」の異名を取る高橋洋一氏は、民主党政権の掲げる政策の財源面の裏付けに対して与党から疑問が呈されていることについて、「4年間で50兆程度の財源の捻出は十分可能」と言う。民主党が予算の組み替えを主張していることから、実際には予算項目の付け替えなどもあり、「真水」として必要になる新たな財源は、現在取りざたされている「4年で56兆円」よりも少なくなる可能性があること、より厳密なB/C(便益/コスト)計算を導入することで、相当額の公共事業の削減が可能になることなどとともに、霞ヶ関埋蔵金の存在をその理由にあげている。
 霞ヶ関埋蔵金とは、一般会計と特別会計からなる国の予算のうち、国会のチェックをほとんど受けない特別会計の中に計上されている種々の積立金のことで、その額は50兆とも70兆とも言われている。国が行った事業によって発生した剰余金の一種で、企業の「内部留保」にあたる。企業で利益が発生した場合、それを内部留保に回すか、配当金として株主に還元するかは、本来株主が決めることだが、霞ヶ関埋蔵金の扱いは、少なくともこれまでは官僚の裁量で、各省庁やその傘下にある特殊法人などに積立金として貯め込まれてきた。
 事業の内容によっては「もしもの場合」に備えて一定額の積立金が必要になる事業もあるかもしれないが、いずれにしても、どの程度が適当な積立金なのかについては、これまで議論もないままに、各省庁の官僚の裁量に委ねられてきたという。いわば、国家予算を上回る額の公金が、官僚の判断で各役所内にプールされていたことになる。
 結果的にその運用益が、官僚が天下る特殊法人やファミリー企業などに投入される官僚利権になっていたことも紛れもない事実だ。
 大蔵官僚出身ながら、小泉改革を実務面で支え、霞ヶ関官僚の激しい抵抗に遭遇した経験を持つ高橋氏は、民主党がマニフェストに掲げた政策を実現できるか否かは、財源問題よりもむしろ官僚の抵抗を押さえ込むことができるか否かにかかっていると言い切る。その意味で、官僚の抵抗を排し、公務員数の削減や公務員給与のカット、天下りの禁止を含む公務員制度の改革と、情報公開の徹底をどこまで行うことができるかで、民主党政権の真贋が問われることになるだろうと高橋氏は言う。
 民主党の掲げる政策には、財源の裏付けが本当にあるのか。財源問題の他に、その実現の妨げとなるものがあるのか。その政策が実現した時、日本にどのような変化が訪れるのか。明日の日本政府の政策となる可能性が少なからず出てきた民主党のマニフェストを、高橋氏とともに検証した。

 

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これでいいのか、日本の排出量取引

(第368回 放送日 2008年04月19日 PART1:83分 PART2:47分)
ゲスト:諸富 徹氏(京都大学大学院経済学研究科准教授) 

   今年から京都議定書の第1次約束期間がスタートし、条約を批准した各国は温室効果ガスの削減を本格化しなければならない。京都議定書が締結されたCOP3京都会議で決められた京都メカニズムと呼ばれる温室効果ガスの削減方法のひとつが、排出量取引だ。
 排出量取引は、各事業所に排出できる温室効果ガスの量を割り当て(キャップ)、その枠を超えて排出した事業所が、枠に余裕のある事業所との間で排出する権利を売買する(トレード)ことを可能にする制度だ。日本では、政府がハンガリーから排出枠を購入する他、日本の商社や金融機関も国際的な排出量取引をすでに行っているが、日本国内の排出量取引は、財界の反対が根強いために、まだ制度すら立ち上がっていない。しかし、地球温暖化を主要テーマとする洞爺湖サミットが近づくにつれ、排出量取引の導入が論議の的になってきている。
 EUは、世界に先駆けて05年にヨーロッパ域内排出量取引制度をスタートさせ、排出量取引の実績を着々と積んでいる。また、連邦レベルでは京都議定書から離脱しているアメリカも、州レベルでは、東部の10州が「RGGI」と呼ばれる排出量取引市場を立ち上げた他、ブッシュ政権は「2025年までに排出量増加を食い止める」と宣言するなど、ようやく重い腰を上げ始めている。また、今年秋の大統領選の結果次第では、アメリカの地球温暖化政策が劇的に変わる可能性が高い。
 排出量取引の専門家で、経済産業省にもその導入の重要性を訴えてきた京都大学の諸富徹准教授は、「このままでは、日本は、世界から取り残されてしまう」と危機感をあらわにする。
 日本では、洞爺湖サミットを直近に控え、経済産業省の「地球温暖化対応のための経済的手法研究会」や首相直轄の「地球温暖化に関する懇談会」などが、ようやく「排出量取引」を議題として取り上げ始めた段階だ。しかし、省エネ対策が進んでいる日本では、経産省や経済界に京都議定書自体を不平等条約と考えている傾向が強く、事業所ごとの枠の割り当て(キャップ)という形で、強制的にCO2の排出量削減を迫る排出量取引制度には、まだまだ財界の反対が根強い。
 しかし、EUが排出量市場の立ち上げによって着々と脱炭素化した産業構造の構築を進め、アメリカも舵を切るのは時間の問題と見られる中、世界規模の脱炭素化社会への流れは止めようがない。今、日本がなんらかの対策をとらない限り、21世紀の国際社会の中で日本が様々な面で不利な立場になることは避けられないのではないかと、諸富氏は懸念する。
 どうせ脱炭素化が避けられないのであれば、多少の痛みを伴ったとしても、自ら進んで制度を導入し、少しでも有利な状態を作るか、あるいはぎりぎりまで抵抗して、最後は世界の趨勢や市場の圧力に屈する形で不利な制度を飲ませられるか。どちらが本当に国益に適った判断かは、今こそ大いに議論する必要があるだろう。
 今週のマル激は、EUを中心に広がり始めた世界の排出量取引の現状と課題を明らかにした上で、日本の取るべき選択を考えた。

日本が再生可能エネルギーを推進すべきこれだけの理由

(第372回 放送日 2008年05月17日 PART1:54分 PART2:69分)
ゲスト:飯田 哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)

  7月の洞爺湖サミットを前に、来月発表される「福田ビジョン」では、2050年までに温室効果ガスの60~80%の削減という思い切った目標を日本として打ち出すことが報じられている。しかし、その実現可能性については大いに疑問が残る。なぜならば、エネルギー政策の抜本的な転換を抜きに、80%ものCO2を削減することは難しいと考えられているにもかかわらず、日本は世界の先進国の中でも、エネルギー政策の転換が大きく遅れを取り始めているからだ。
 現在、欧米では温室効果ガス削減の根本的な解決策として、再生可能エネルギーが注目され、各国ともその開発や普及に本格的に力を入れ始めている。中でもドイツの伸びが突出しており、2030年までにエネルギーの45%を再生可能エネルギーで賄う目標をたてているほどだ。地球温暖化問題には後ろ向きと批判されることの多い米国でさえ、2020年に15%という目標をたてているが、日本は2014年までに使用電力の何と1.63%を再生可能エネルギーで賄うことを義務化しているに過ぎない。明らかに桁が違うのだ。
 「世界から見れば、日本の数値目標はジョークにしか思えない」と再生可能エネルギーの普及に尽力してきた環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏は苦笑し、世界の趨勢から取り残されつつある日本の状況を嘆く。
 再生可能エネルギーとは、風力、太陽光、太陽熱、地熱、バイオマス、水力、波力など、何度も資源が再生するエネルギーのことを指す。石油や石炭などのように枯渇することもなく、地域的に偏在がないため、地政学上のリスクがない。化石由来燃料とは違い、温室効果ガスがほとんど出ないため、温暖化防止対策としても最も好ましいエネルギー源なのだ。
 日本のようにエネルギー資源をほぼ100%輸入に頼らざるを得ない資源小国にとって、再生可能エネルギーは21世紀の夢のエネルギー源と言っていいだろう。
 しかし、その日本が、既存の化石燃料や問題の多い原子力から再生可能エネルギーへの転換が図れずに、世界の趨勢から取り残されつつある。再生可能エネルギーの中で最も普及している風力発電で日本は、ここ数年の間に中国やインドにも抜かれて、現在、世界13位にまで落ちている。2004年まで発電量では世界一を誇っていた太陽光発電でも、累積導入量を2005年にドイツに抜かれて以来、差は開く一方だ。
 90年代にスウェーデンやデンマーク、ドイツが再生可能エネルギーを政策的に優遇することで普及を一気に増やしたのを横目に、日本はもっぱら原子力偏重のエネルギー政策を進め、再生可能エネルギーを軽視してきた。軽視どころか、むしろ次々と補助金を打ち切るなどして、市場を縮小させるような政策をとってきたのが実情だ。
 飯田氏は、ドイツやスペインの成功例から、再生可能エネルギーを普及させるために何が必要かは十分わかっており、あとはそれを実行する政治的な意思があるかどうかだけが問われていると指摘する。しかし、新しいエネルギーの台頭は、既存のエネルギー産業、とりわけ電力会社の権益と真っ向から衝突するため、経済産業省も政治も、電力会社の政治力の前で、わかりきった施策を実行に移すことができないでいると言うのだ。
 再生可能エネルギー普及の遅れは、他の面にも悪影響を及ぼし始めている。かつて、世界の太陽光発電機器のシェアではシャープを筆頭に日本企業が上位を独占してきたが、ここにきてシャープはついにドイツのメーカーQセルにトップの地位を奪われてしまった。現在世界3位にある中国の太陽光発電専門メーカーのサンテックは、ナスダックに上場し、猛烈な勢いでそのシェアを伸ばしている。
 ドイツは、再生可能エネルギー関連産業を「21世紀の自動車産業」とまで位置づけ支援し、17万人の雇用創出をし、2兆5000億円の経済効果を発生させている。産業政策的にも、再生可能エネルギーの可能性に目をつぶり続けることはできない状況となっているが、この期に及んでも、日本は舵を取ろうとしないのはなぜか。
 今週は、イラク戦争、原油高と、これほどまでに化石燃料依存のリスクが顕在化し、欧米諸国や中国インドなどの新興国まで再生可能エネルギーを一気に伸ばす中、本来であれば真っ先にそれを推進していなければならないはずの資源小国日本は、なぜいまだに二の足を踏み続けているのか、またその結果がどのようなリスクを生んでいるのかなどを、日々この問題と格闘している飯田氏とともに考えた。

炭素税はCO2排出削減の決め手となるか

(第379回 放送日 2008年07月05日 PART1:80分 PART2:51分)
ゲスト:足立 冶郎氏(NGO「環境・持続社会」研究センター事務局長) 

  洞爺湖サミットに向けて発表された「福田ビジョン」で、日本政府は2050年までに温室効果ガスの60~80%削減、排出量取引の試験的導入など、いくつかの踏み込んだ方針を打ち出している。しかし、その中に環境税の文言が含まれていたことはあまり注目されていない。実際には「低炭素化促進の観点から税制全般を横断的に見直す」との遠まわしな表現にとどまってはいるが、首相の口から「環境税」という言葉が語られたことの意義は非常に大きいと、炭素税研究会のコーディネーターとして環境税(欧米では炭素税と呼ばれることが多い)導入を提言してきた足立氏は前向きに評価する。
 すでにノルウェーやオランダ、デンマーク、ドイツ、イギリス、スイスなどのほか、アメリカやカナダの一部の州などで導入され、CO2の排出削減に効果を上げている炭素税は、製品のCO2排出量に応じて一定比率の税がかけられるため、生産や販売、輸送、使用の際に排出されるCO2の量が多い製品ほど税額が大きくなり、消費者にとっては割高となる。また、企業も排出量削減に努力をすれば税負担が軽減される上、自社製品の市場での競争力も高まる。つまり、炭素税は一旦導入すれば、市民も企業も経済合理的に行動するだけで、社会全体としてCO2の排出量を削減することが可能となる制度といっていいだろう。
 足立氏は、排出量取引が、産業界など大口の排出を抑制する効果が高いのに比べて、炭素税は、個人を含めたあらゆる排出源に対して横断的な効果が期待でき、この2つが同時に実施されることで、さらに効果が高まるという。
 一般に炭素税と聞くと、単に税負担が増えることを想像し、敬遠する向きが多いようだが、足立氏は、炭素税の導入イコール増税にする必要はないと説く。欧州で炭素税の導入に成功した国々の多くは、炭素税の導入と同時に既存の税を減税し、税収中立を実現している場合が多い。つまり、納税者全体にとっての税負担は導入前と変わらないが、CO2排出が多い人や企業にとっては増税となり、少ない人や企業にとっては減税となるという。そうすることで、企業活動やライフスタイルの変更を促すことが、炭素税の目的でもある。
 このように、一見いいことづくめの炭素税ではあるが、実際には品目ごとのCO2排出量の計算が難しいため、石油や石炭、ガス、電力などエネルギー品目に排出量に応じた課税を行い、その使用量に応じて税負担が増減する形式になっている。そのため、特定の産業、とりわけ重厚長大産業の負担が突出して多くなる傾向がある。また、一般消費者レベルでは、低所得層の負担が相対的に重くなる逆進性も指摘される。すでに制度を導入している国でも、国内産業の国際競争力を維持するために、特定の業界の税率を下げたり、低所得層を免除するなど、苦労の形跡も見てとれる。
 しかし、そのようなレベルよりもかなり初歩的な次元で、日本における炭素税導入の道のりがかなり遠いことを、足立氏も認める。京都議定書調印後にドイツやイタリアなどが相次いで炭素税導入を決めた流れを受けて、日本でも04年頃から環境省を中心に環境税の導入が検討されたこともあったが、産業界の強い反対によって頓挫してしまった。
 日本では、エネルギーに関連した税が、経産省、国土交通省など複数の官庁にまたがって管轄されているため、それを統合した形になる環境税の導入には、縦割り行政の抵抗がもろにかかってくる。また、税収中立を実現するため必要となる既存税の減税には、財務省が頑として首を縦に振らない。いざ増税となれば、財務省は歓迎するが、今度は選挙を恐れる政治がそれを許さない。しかも、重厚長大産業主導の財界は、そもそも炭素税の議論をすることすら嫌っている。
 こうなると政治のリーダーシップに期待するほかなさそうだが、国民のほとんどが環境税イコール増税と認識している中、新税の導入に世論の支持を得るのも、容易ではなさそうだ。いみじくも今週から始まった自民党税調では、消費税増税の是非とその時期をめぐり紛糾している。
 サミット前に、「排出量取引」、「再生可能エネルギー」と続けてきた環境シリーズの最終回として、今週は炭素税の意義と実現可能性について、NGOの立場から、炭素税の実現を訴えてきた足立氏とともに考えた。