2011年11月12日
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スーパーマーケット「いちい」が独自に放射線を測定する理由

報告:藍原寛子氏(医療ジャーナリスト)
スペシャルリポート

 福島市に本社があるスーパー「いちい」(伊藤信弘社長)が今年7月から、各店舗で販売する、主に福島産の農畜水産物を独自に測定し、その結果を公表している。
 いちいではヨウ化ナトリウム・シンチレーション検出器を使用。ヨウ素131、セシウム134、セシウム137について、それぞれ検出限界値10ベクレル/Kgを上回る結果が出た場合は、具体的な数値とともに、産品の種類、産地などの情報をインターネットのホームページと店頭で公開、100ベクレル/Kgという自社基準を超えた場合には、店頭販売しないことにしている。
 伊藤社長は測定を始めた当初は、社内でも意見が分かれたと言う。「大手スーパーや他社がやっていないのに、どうしてうちだけやるのか」「安全なのは分かっているのに、どうして測定が必要なのか」という消極的な意見と、「消費者、生産農家の不安を払しょくするために取り組むのは必要」という積極的な意見があり、社内でのコンセンサスを得るのに時間がかかった。いまでは、社員の理解も深まり、「自社基準を70〜50ベクレル/Kgに引き下げてもいいのではないか」という意見も出ている。
 これまでに2度、7月にシイタケ、10月にナメコが県の基準値500ベクレル/Kgを超えた。行政への連絡で、出荷停止措置にもなっており、人手や設備に限界のある行政の検査体制を補うような役割も果たしている。
 同社の取引先農家は約350戸。当初、測定に対して消極的だった農家も、いちいのバイヤーから直接、測定数値を教えてもらったり、出荷や洗浄方法の工夫、土壌に関するアドバイスなどを受けられることから、最近は積極的に測定を求める農家が増えているという。
 いちいの取り組みには、地元の福島大学の研究グループによるプロジェクト「県産農産物の円滑な流通を確保するための安全性保証システムの構築」(代表:小沢喜仁教授、西川和明教授)が連携。産学連携の実を上げている。
 1986年のチェルノブイリ事故後、欧州では測定した野菜の値札にベクレル値を付けるなどの対策が取られ、安全と安心に対する「可視化」が図られた。福島の地元スーパーと大学による食の安全・安心の取り組みについて、医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートした。

藍原 寛子あいはら ひろこ
(医療ジャーナリスト)

1967年福島県生まれ。1990年千葉大学文学部行動科学科卒業。同年福島民友新聞社入社。マイアミ大学医学部移植外科、フィリピン大学哲学科などの客員研究員、国会議員公設秘書を経て、2011年よりフリー。
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