福島県知事選から読み解く内堀県政の展望
医療ジャーナリスト
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1967年福島県生まれ。1990年千葉大学文学部行動科学科卒業。同年福島民友新聞社入社。マイアミ大学医学部移植外科、フィリピン大学哲学科などの客員研究員、国会議員公設秘書を経て、2011年よりフリー。
小学館の週刊漫画雑誌「ビッグコミック・スピリッツ」の人気連載漫画「美味しんぼ」の放射能の影響に関する一部内容をめぐり、複数の閣僚や福島県、県内自治体などが相次いで同社に抗議するという異例の展開になった「美味しんぼ問題」。
19日発売の最新号では、「表現のあり方を見直す」とし、以後は「休載」する編集部の方針が発売前から報じられた。小学館編集部が誤りを認めた形で一件落着とも取れるが、その裏に深刻な問題が隠蔽されようとしているのを見逃してはならない。
放射線被ばくによる健康影響について、世界の被ばく地で多様な意見があるなかで、「鼻血は被ばくの影響」「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんてできない」などと、登場人物が述べた個人の意見に対して、菅官房長官は会見で「被ばくと鼻血には因果関係がないと専門家の評価で明らか」と明確に否定する政府見解を示した。
このことにより、今後、福島県民の間からは、「鼻血が出た」「疲れやすい」など何らかの自覚症状を放射能と関連づけて考えたり、疑ったり、個人の意見として発表したりすることへの心理的な圧力がかかり、自由な発言が妨げられるとの声が出ている。本来であれば、放射能で汚染された地域の場合、人々の自覚症状に対してより敏感に、そして医療従事者はより慎重に対応すべきであり、多様な医学的意見を考慮しながら対応されるべきだが、実態はそうはなっていない。これは今後の報道、出版、表現活動の自由へも影響する恐れがある。
政府や自治体が抗議した部分は、健康・被ばく予防と避難者支援、除染に関わる内容であり、いずれも後手に回っている政策だ。それらの政策の充実なしに、福島の人々が抱いている政策の遅れに対する不安や不満、そして個人個人の身体異常の自覚症状を、「美味しんぼ」の「風評被害」「デマ」へとすり替え、不満のガス抜きに使ってはいないだろうか。
また、今回の美味しんぼ騒動は、マスコミの自作自演の要素があったことは否めない。福島県内の複数のホテルが、マスコミから「キャンセルは出ていないか」と連日問い合わせを受け、1件でもキャンセルがあったことを伝えると、あたかもそれが美味しんぼの影響であったかのように報じられたと言う。
今回の「美味しんぼ問題」について、医療ジャーナリストの藍原寛子氏が福島から報告する。