2011年11月26日
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オールFUKUSHIMAの放射線測定器の出荷始まる

報告:藍原寛子氏(医療ジャーナリスト)
スペシャルリポート

 福島県内の中小企業らが世界のボランティアたちの協力を得て製作した自前のガイガーカウンターが11月23日、初出荷された。
 これは、「原発事故の影響下で暮らす人が使いやすく安価で、性能が保証された信頼される測定器を、今本当に必要としている人々に早く提供したい」という思いを持つ福島県内の中小企業や個人の有志が立ち上げたプロジェクト「ガイガーFUKUSHIMA」によるもの。
 東京電力の福島第一原発事故以降、政府から十分な放射線情報が提供されず、多くの住民が不安を抱いたり、実際に市民が被曝をするような事態が相次いだことの反省から、多くの住民が独自に放射線を測定したいとの思いを持った。しかし、震災発生直後は需要が急増したために計測器の入手が困難になったほか、価格も10万円を超すなど、一般家庭では入手しにくい状況が続いた。そこで、「測定器がないなら自分たちの手で作ろう」と始まったのがこのプロジェクトだ。
 製造や部品調達は、プロジェクトの趣旨に賛同した福島県内の中小企業に発注。中間マージンをなくして、低価格に挑戦した結果、一つ9,800円から1万8,800円で製品の提供が可能となった。
 ガイガーカウンターは、ガスが充てんされたガイガーミュラー管(GM管)に放射線が当たると電流が流れ、電圧の変化から放射線量を測定する仕組みで、ガンマ線とベータ線を計測できるが、現在、日本国内ではガイガーカウンター計測器の心臓となるGM管の製造は行われておらず、海外から輸入するしかない。福島の事故を受けて、GM管自体が世界的に品薄となっている。
 そうした事態を受けて「ガイガーFUKUSHIMA」は、福島県大玉村の三和製作所でGM管の製造を始めた。現在販売中の製品はウクライナ製のGM管を使用しているが、年内には国産のGM管を搭載した純福島製の「ガイガーFUKUSHIMA」が発売される予定。
 製品は、モニターで数値が表示されるタイプ(18,800円)と、アイフォンにつないで使うタイプ(9,800円)の2つの種類がある。いずれも従来の同等機種よりも安く、購入しやすい価格にした。代理店方式はコスト高になるため、特定非営利活動法人「営業支援隊」のHP( http://eigyoshientai.jp/ )からのみ注文を受け付けることとした。
 このプロジェクトの活動は、ハードである測定器の開発・製造のみに止まらない点に特徴がある。今後、長期にわたって放射能汚染と闘うことになる福島県民を支援するために、国内だけでなく海外の技術者、研究者約3000人が無報酬のボランティアで参加している。
 オープンな活動であることをモットーとした「オープンガイガー」プロジェクト(
Open Geiger Project: http://opengeiger.com/ )の一環で、ハードウエアや回路図、部品リスト等の製造情報を広く公開して共有し合い、誰でもガイガーカウンターを作れるようにしている。
 地元福島県内でプロジェクトの中心となっているのは、日立の関連会社で技術者をした経験のあるテレジャパンの宗像忠夫社長と三和製作所の斎藤雄一郎社長、郡山市の高校教諭渡辺紀夫さんの3人。
 今後は、原発から20キロ圏内の警戒区域に無人で自動測定できる太陽光パネルを装着した自動モニタリングシステムや、食品を細かく砕かなくても測定できるベクレルモニターの製造など、汚染食品による内部被ばくへの不安に応え、県民のニーズに対応したハードの開発にも取り組んでいくという。
 「ガイガーFUKUSHIMA」の開発と製造に取り組む宗像さんら3人と、地元企業の製造の様子などを医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートした。

藍原 寛子あいはら ひろこ
(医療ジャーナリスト)

1967年福島県生まれ。1990年千葉大学文学部行動科学科卒業。同年福島民友新聞社入社。マイアミ大学医学部移植外科、フィリピン大学哲学科などの客員研究員、国会議員公設秘書を経て、2011年よりフリー。
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