2012年1月21日
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コンクリートの放射能汚染は誰の責任なのか
脱原発世界会議報告 放射能被害に国境は無い

報告:藍原寛子氏(医療ジャーナリスト)
スペシャルリポート

 二本松市内の新築マンションの建築基礎部分に使われたコンクリートから高い放射線量が測定された問題で、二本松市、内閣府原子力災害対策本部などは15日、原発から30キロにある浪江町津島で採石された石をコンクリートに使用したことが原因とみられると発表した。
 現在、国、県などが調査を進めているが、この新築マンションで使われた砕石は、二本松市内の大手砕石業者「双葉砕石工業」から多数の建設業者に流通し、県内の側溝や道路、護岸工事、民間の住宅などに使われていたことがわかっている。今後、影響は拡大する可能性が出ている。
 本来、鉄筋コンクリートの新築マンションの場合、居宅内部は放射線の影響が低いとされているが、該当するマンションの高線量が判明したのは、二本松市が行った放射線に対する健康関連調査からだった。
 同市は昨年9月から3か月、市の独自事業で18歳以下の子どもに対するガラスバッジ(積算外部被曝線量計)を配布し、調査を実施。3か月間の積算外部被ばく量が高くなった子どもに対しては、その原因を探ろうと、生活環境調査を開始した。3か月の積算外部被ばく量が1.62ミリシーベルトだったある子どもがこの新築マンションに入居しており、生活環境を調べたところ建物に原因があることが判明した。
 市などの測定では、このマンションに関して(1)屋外の空間放射線量よりも、室内の放射線量が高い(2)本来、空間放射線での汚染なら、壁からの放射線量が高いのに、このマンションの1階の場合は、壁よりも床の放射線量が高い(3)同じマンションでも、二階の室内線量は0.5から0.6マイクロシーベルト、3階は0.2マイクロシーベルトと、上階に行くに従って線量が下がっている(4)近くの同じ仕様のマンションでは室内線量は低い—などが判明した。
 このマンションの建築基礎部分は、ベランダのバルコニー部分と玄関・廊下側通路、そして居室の床が、四角いお椀のように同じコンクリートでつながっている構造。1階はどの部屋も、屋外の空間線量よりも高い線量、1.3マイクロシーベルト前後が計測された。
 コンクリートの素材を調べたところ、砕石が浪江町津島という線量の高いところにある採石場から出荷されたことが判明。同じ砕石を使った市内の水路のコンクリートも同様に空間線量よりも高い数値を示したため、原因は砕石の可能性が高いことが分かった。
 福島県土木部は震災後の5月、県内の建設資材等に対する放射性物質の影響が考えられたことから、国原子力災害対策現地本部に対して、何らかの基準を示すよう複数回求めた。しかしそれに対する回答は全くなく、事実上、県の訴えは棚上げされたままだった。
 20日、枝野経済産業大臣は、東電に対して補償対応への指示を表明したが、新築マンションの入居は、大半が警戒区域から避難してきた被災者で、避難所を転々としてようやく落ち着いた生活を手に入れた矢先の出来事だけに「同じことが繰り返されている。また引っ越ししなければならないのは辛い」と、原発事故に加えて、国の後手後手の対応によるさらなる“人災”を嘆く声が上がっている。
 14、15日に都内で開かれた脱原発世界会議の模様と合わせて、現地の状況を医療ジャーナリストの藍原寛子氏がレポートする。

藍原 寛子あいはら ひろこ
(医療ジャーナリスト)

1967年福島県生まれ。1990年千葉大学文学部行動科学科卒業。同年福島民友新聞社入社。マイアミ大学医学部移植外科、フィリピン大学哲学科などの客員研究員、国会議員公設秘書を経て、2011年よりフリー。
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