2013年5月7日
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国主導の帰還推進政策が地域社会を分断する

菅野利行氏(富岡町役場総務課課長補佐)
インタビューズ (2013年05月07日)

 「避難した方々を一刻も早く福島に帰す」(野田前首相)という政府の方針に則り、福島では帰還を前提とした避難区域の再編が町村レベルで進んでいる。放射線量の高い地域については「帰還困難区域」として事実上帰還を諦めさせる一方で、年間被曝量が20ミリシーベルト以下となる比較的線量が低い地域については「避難指示解除準備区域」と銘打って、帰還に向けた環境を整備していこうという方針だ。
 しかし、この再編が各自治体にどのような影響を与えるかを、政府はきちんと認識できているだろうか。
 わずか68平方キロメートルの町内に「帰還困難区域」「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」の3つの区分をすべて抱えることになった福島県の富岡町では、この再編によって自宅に帰れる人と帰れない人の間で地域社会が分断される恐れが現実のものとなっている。それぞれ固有の事情を抱え、全国47都道府県に離散しながらも、これまで辛うじて絆を保ってきた地域社会が、今回の再編によって帰れる人と帰れない人に2分されてしまうからだ。
 また、帰還が可能とされる「避難指示解除準備区域」の厳しい現実も、必ずしも正確には理解されていないようだ。福島第一原発から20キロ圏にあり町全体が強制的に避難させられる警戒区域に含まれていた富岡町の場合も、3月25日以降は「避難指示解除準備区域」部分は基本的には出入りが自由になった。しかし、帰宅した住民を待ち受けている富岡は、震災前の富岡とは似ても似つかぬ姿になっていた。
 場所によって相変わらず高い放射線量、町内のいたる所に積まれた「除染」した表土を詰めた黒いコンテナバック、地震と津波によって破壊されたままの上下水道等々。しかも、警察や消防機能が存在しないため、治安維持のためには住民自身が自主的にパトロールをしなければならない状態だという。
 とは言え、こうした困難は何とか乗り越えていけるかもしれない。しかし、それでも自分たちではどうにもならない問題が残る。町中の帰還困難区域との境界にはバリケードが張り巡らされ、仮に一部で帰還が実現したとしても、町は完全に分断された状態になる。
 国主導の帰還政策が、これまで辛うじて保たれてきた富岡町民間の絆を分断してしまうことを危惧する富岡町役場の菅野利行氏に、帰還政策が地域社会にもたらす現実を、ジャーナリストの神保哲生が聞いた。

(聞き手 神保哲生(ビデオニュース・ドットコム))
 
菅野 利行かんの としゆき
(富岡町役場総務課課長補佐)
1957年福島県富岡町生まれ。80年茨城大学農学部卒業。81年富岡町役場入職、教育委員会、企画課などを経て、06年より現職。

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