2023年08月24日公開

汚染水の海洋放出は世界の流れに逆行する

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ゲスト

ハワイ大学マノア校教授

専門は海洋科学、海洋生物学。 1984年ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校にて生物学博士(Ph.D.)を取得。 スミソニアン熱帯研究所(パナマ)、グアム大学教授を経て2004年より現職。

司会

概要

 政府は24日、福島第一原発の敷地内のタンクに貯蔵されている放射性物質を含む汚染水の海洋放出に踏み切った。

 風評被害などを懸念する地元住民、とりわけ漁業関係者らの反対を押し切っての放出となったが、政府はALPS(多核種除去設備)によってほとんどの放射性物質は取り除かれており、残存するトリチウムも海水によって希釈され、国際的な安全基準はクリアされているため、人体や環境への影響は無視できるレベルにとどまるとの立場だ。

 しかし、海洋生物学が専門でグアムやハワイをベースに30年以上、太平洋沿岸のエコシステムを研究し、2011年の福島第一原発事故後、来日し事故の海洋への影響を調査した経験も持つハワイ大学のロバート・リッチモンド教授は、福島第一原発から投棄される水にはトリチウム以外にもALPSでは除去できない核種が多数残存していることを指摘した上で、海水で希釈することによって放出段階では一時的に国際的な安全基準を満たしたとしても、海洋生物に取り込まれた放射性物質が食物連鎖の過程で生物濃縮され魚介類の放射性濃度が高くなる可能性があることを念頭に置かなければならないと語る。

 また、半減期が12年と比較的短く人体への影響が少ないとされるトリチウムについても、有機トリチウムの形で生物に取り込まれた場合、それより遙かに長い年月体内にとどまる場合があり、その間内部被ばくが続くことでがんを含む様々な疾患が発生するリスクが大きくなることを忘れてはならないとリッチモンド教授は警告する。

 「海は既に多くのストレスに晒されています。国連を始め国際社会が海の環境を守ろうという方向に向かっている中で、今回国連機関のIAEAまでが日本の海洋投棄にお墨付きを与えたことは非常に残念なことです。これから何十年も汚染水を海洋の投棄し続けることが本当に正しいことなのかをあらためて再考すべきです」とリッチモンド教授は語った。

 リッチモンド教授にジャーナリストの神保哲生が聞いた。

(英語版はこちら https://youtu.be/BXxSDhE-kbM

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