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原発被災者救済の成否は「ふるさとの喪失」の意味を理解できるかにかかっている

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1039回)

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公開日 2021年03月06日

ゲスト

大阪市立大学大学院経営学研究科教授

1971年神奈川県生まれ。94年早稲田大学政治経済学部卒業。99年一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。東京経済大学経済学部教授、大阪市立大学大学院経営学研究科准教授などを経て、13年より現職。20年より日本環境会議副理事長を兼務。著書に『公害から福島を考える 地域の再生をめざして』、『原発賠償を問う 曖昧な責任、翻弄される避難者』など。

著書

概要

 東日本大震災福島第一原子力発電所の事故から10年。原発事故の被災者にとっては、未だ続く被害の中でこの節目を迎える。福島県が発表している避難者は今も3万6000人。ただし、この数字は仮設住宅を出てしまうとカウントされなくなるため、もはや実態さえ掴めなくなっている。

 これまでも様々な形で、被災者に対する補償は行われてきた。避難区域の被災者への月額10万円の精神的慰謝料のほか、収入の補填、土地や家屋の補償などだ。当初より金額も積み増しされてきてはいる。それでも1万人近い人たちが、東電や国を相手に訴訟を起こし、今も争っている。理不尽な被害を受け、避難生活を続けるなかで裁判を起こすまでに至った事情は一人ひとり異なるだろうが、納得できる救済を受けられていないと感じている人がまだ数多く残っていることだけは間違いない。

 そもそも原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)は1961年、国が原発を積極的に推進するさなかに成立したもので、被害者救済のために過失を証明する必要がない無過失補償となっている。そのため表面的には東電が賠償金を支払ってはいてもその原資は国からの支援だったり、国が東京電力の資金繰りを助けるなど、賠償責任の所在は曖昧なままだ。

 環境経済学が専門で公害研究を続けてきた大阪市立大学の除本理史教授は、被害の実態と賠償の中身がずれていることを問題視する。2011年8月に国が示した補償についての「中間指針」は最低限の目安であったはずだが、東電がこれをもとに補償基準を策定し、それ以上の支払いを認めないということが続いた。事故を起こした当事者が自ら設定した基準に基づき損害額を査定し、補償する仕組みになっていたのだ。これは多くの批判に晒され、金額的には十分とは言えないまでも、対象を自主避難者にも広げるなど、ある程度の譲歩が行われた。

 また、被害者と東電との間で合意ができない場合は、紛争解決センター(原発ADR)が和解の仲介を行うが、集団ADRは不調に終わりすでに打ち切られている。その結果、救済は司法の場に移り、集団訴訟の数は全国で30件にのぼっている。

 除本氏はこれまでの補償が、「ふるさとの喪失」に対する精神的苦痛まで考えが及んでいないことを、早い段階から指摘していた。生活の不自由さのみならず、土地に根ざした暮らしや伝統、文化が根こそぎ奪われたことに対する認識が欠けているのだ。ただ、これは、たびたび現地に足を運びその土地の価値や暮らしを知ろうとしない限り、理解できないことなのかもしれない。

 とは言え、被害の実態が正しく把握されないまま行われる金銭的補償は、被害者たちの間に分断を生み、その後の地域再生への足枷になる。これまでの公害研究を通じて、除本氏は被害を受けたコミュニティがどう再生していくかは、「ふるさとの喪失」をどう捉え、復興に関わるさまざまな当事者たちが地域の価値を理解し、ふるさとをどう取り戻すかにかかっていると話す。

 震災と原発事故から10年が経った今、どのような被災地支援が求められているのかについて、大気汚染公害や水俣での調査研究などを続けてきた除本氏と、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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