2023年01月31日公開

日本の再エネはなぜ増えないのか

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ゲスト

1959年山口県生まれ。83年京都大学工学部卒業。同年神戸製鋼所入社。電力中央研究所勤務を経て96年東京大学大学院先端科学技術センター博士課程単位取得退学。2000年NPO法人環境エネルギー政策研究所を設立し現職。著書に『エネルギー進化論』、『北欧のエネルギーデモクラシー』、共著に『メガ・リスク時代の日本再生戦略』、『原発社会からの離脱』など。

著書

概要

 ここにきて、日本が本気で再生エネルギーを増やさなかったことの痛いツケが回ってきてしまった。

 岸田政権の原発回帰には、2011年の福島第一原子力発電所のメルトダウン事故の後、原発を安易に利用できなくなった日本が、エネルギー源を化石燃料に依存してきた背景がある。元々日本の火力発電依存は地球温暖化の原因となるCO2排出を理由に国際社会から厳しい目で見られてきたが、特に昨年のウクライナ戦争を機に、化石燃料価格が高騰したため、輸入される天然ガスや石油、石炭に依存したエネルギー政策は経済的にも日本にとって大きな負担となっていた。

 しかし、日本にとって根本的な問題は、原発事故を機に日本は再生可能エネルギーを推進していく方針を決めたはずだったにもかかわらず、それから12年経った今も、一次エネルギー全体に占める再エネのシェアは先進国としては最も低い水準の10%程度にとどまっていることだ。再エネが伸びないために化石依存を続けるしかなく、その路線がウクライナ戦争で破綻したために「原発しかない」という話になっているのが現状なのだ。

 しかし、であるならば、なぜ日本はいまだに再生可能エネルギーを増やすことができないのかを厳しく検証した上で、必要な施策を打つことが先ではないのか。環境エネルギー政策研究所所長の飯田氏に聞いた。

 飯田氏は日本が再生可能エネルギーを増やすことができていない最大の理由として、日本が2012年にFIT(固定価格買取制度)を導入した際に制度設計を誤ったことを挙げる。実際に発電を始めていなくても、FITの適用が認定された時点での買取価格が適用される制度にしてしまったため、認定を受けた事業者は太陽光発電のコストが下がるのを待って発電を始めた方が得になってしまうところに問題があると飯田氏は言う。

 太陽光発電の買取価格は年を追う毎に下がっていくことが予想されていたので、土地や資金の確保ができていなくても、先に認定を取った方が有利なことは明らかだった。そのためFITの導入当時はFITバブルともいわれるほど急速な新規参入が起こったが、その全てが実際に発電されているわけではなかった。実際、今消費者が電気料金に上乗せされて支払っている再エネ賦課金の半分以上が、FIT導入から最初の3年間の太陽光発電分に充てられ、消費者の負担を必要以上に大きくしている。買取価格の決定を発電開始時や設備の完成時点など、より合理的なタイミングにしておけば、賦課金もはるかに安く済んだはずだった。その意味でも、日本のFITの制度設計は世界で唯一最大の失敗例になってしまったと飯田氏は言う。日本がFITを導入した時点で世界ではすでに約100か国がFITを導入しており、失敗事例を参考にする余地が多分にあったにもかかわらずだ。

 なぜそのような初歩的な失敗をしたのかについて飯田氏は、日本の官僚制度の問題を指摘する。日本の官僚は他の先進国に比べて学位を学士までしか取得していない人がほとんどで、知の集積のネットワークが乏しいことに加え、2~3年で部署が変わってしまうため、制度の理解度が圧倒的に低いという。日本の政策決定過程は、官僚に複雑な制度を設計するだけの能力がなく、コンサルに投げるなどして表面だけの制度設計になってしまうことが問題で、それが再エネが増えない理由にもつながるという。

 再生可能エネルギーの第一人者の飯田氏に、日本の再エネが増えない理由などをジャーナリストの神保哲生が聞いた。

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