2023年05月30日公開

マイナンバーカードとの一体化による健康保険証の廃止は国民皆保険を破壊する

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ゲスト

1948年大阪府生まれ。75年関西医科大学卒業。勤務医を経て81年住江眼科開業。91年大阪府保険医協会理事、99年同理事長、2005年全国保険医団体連合会理事長を経て06年より現職。

司会

概要

 マイナンバーカード健康保険証の機能を紐付けた上で健康保険証を廃止する改正マイナンバー法が今週にも成立する見通しだ。

 しかし「マイナ保険証」をめぐっては、他人の医療情報が誤登録されるなどの重大なトラブルが相次いでいる。このまま健康保険証を廃止して大丈夫なのか。その先には患者にとってどんなリスクが潜んでいるのかなどについて、全国10万7,000人の開業医や勤務医を束ねる全国保険医団体連合会(保団連)の住江憲勇会長に聞いた。

 政府は医療機関に対し、オンラインで保険資格を確認する「オン資」体制の整備を2023年4月1日から義務づけ、既に91.9%の医療機関でマイナ保険証のカードリーダーが設置されており、73.8%が運用を開始しているが、これまでカードリーダーの不具合や誤登録などのトラブルが相次いで報告されてきた。ところがマイナカードの普及を急ぐ政府は、マイナカードを健康保険証と一体化することで事実上強制的にマイナカードの取得を進めようとしている。

 これまでに発生したトラブルの原因が十分に解明されないまま、現行の保険証を廃止すれば、従来から指摘されてきた情報漏洩プライバシー侵害のリスクに加え、医療情報の誤登録という大問題が発生する危険性があると住江氏は語る。医療情報が誤って登録されてしまえば、医師は患者の病歴や投薬歴を正確に把握することができなくなり、「患者の命に関わる問題」にもなりかねない。

 実際、オンライン資格確認をめぐっては、これまでもカードリーダーの不具合などが相次いで報告されてきた。マイナ保険証で資格確認ができない場合、その患者は無保険扱いとなる。そのような事例が多発すれば、日本が世界に誇る国民皆保険制度の根幹が揺らぐと住江氏は言う。

 そもそも健康保険証は、その人物が保険診療を受ける資格があることの証明書として発行されるもので、国民皆保険制度の下、組合健保などの保険者は保険証を発行する義務がある。しかし、マイナカードの取得はあくまで任意だ。法律上、任意で発行されているカードを、国民生活にとっては不可欠な健康保険証に代替させること自体がそもそも無理筋なのだ。

 また、保険証が廃止されれば、認知症障がいを持つ人、高齢者など自身でカードを管理することが難しい人たちは、マイナカードをパスワードとともに代理人に委ねなければならない。しかし、健康保険証の場合と異なり、マイナカードには戸籍や課税情報など高度にプライバシー性の高い情報も紐付けされている。それが漏洩したり悪用されるリスクは決して小さくない。

 医療分野でのIT化そのものは進めるべきだが、健康保険証をマイナカードと一体化することは、医師にとっても患者にとってもメリットがないので認められないと語る住江会長に、ジャーナリストの神保哲生が聞いた。

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