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2016年03月26日公開

電力自由化はエネルギーデモクラシー実現の一里塚となるか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第781回)

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ゲスト

1959年山口県生まれ。83年京都大学工学部卒業。同年神戸製鋼所入社。電力中央研究所勤務を経て96年東京大学大学院先端科学技術センター博士課程単位取得退学。2000年NPO法人環境エネルギー政策研究所を設立し、現職。著書に『北欧のエネルギーデモクラシー』、共著に『コミュニティパワー エネルギーで地域を豊かにする』など。

著書

概要

 4月から電力小売りが自由化され、消費者は電力会社を選べるようになる。異業種から新規参入する新電力(PPS)各社は、あの手この手のキャンペーンで顧客の争奪戦を展開している。大手電力会社からの乗り換えが可能な新電力は、ガス会社、石油会社を始めとするエネルギー関係の他、携帯電話会社や大手コンビニ、鉄道会社、また地方自治体が設立したものなど、選択肢は実に多様だ。その多くが、従来よりも電気料金が安くなることをウリにしているようで、一見、長年にわたり地域独占が続いていた電力市場にも、競争の波が押し寄せてきたかのようにも見える。

 果たして、今回の電力自由化は本物なのか。

 確かに、消費者の選択肢が増えることはいいことだ。しかし、環境エネルギー政策研究所の代表でエネルギー政策に詳しい飯田哲也氏は、今回の電力小売りの自由化にはとても手放しで「全面自由化」とは呼べない多くのカラクリが潜んでいると指摘する。実際に電力の販売は自由化されるが、現実には参入障壁が多く、新規参入は市場の数パーセントにとどまる可能性が高いというのだ。

 今回の電力自由化によってこれまで大手電力の独占だった家庭への電力の販売が、他の事業者に開放される。しかし、実は法人向けの大口の電力市場は既に2000年から段階的に自由化されていて、その割合は電力市場全体の6割に及んでいるが、新規参入のシェアは市場の3%程度にとどまっている。

 毎回「自由化」がまやかしに終わってしまう理由として、飯田氏は電力市場のうち「送電部分」が相変わらず大手電力に支配されている点に問題があると指摘する。家庭用電力販売の自由化によって大手電力会社は発電部門で新規参入してくる新電力と競争することになるが、依然として送電や配電部分は独占的に支配しているため、送電網を利用するためにべらぼうに高い託送料を課すなどして、容易に新規参入を妨げることができる。実際は競争環境が全くといっていいほど整備されないなかでの「全面自由化」なのだ。

 送電網を一手に握る大手電力会社がその気になれば、電気の託送料などいくらでもつり上げることができる。高額な託送料は新電力の命運を左右する大問題だが、大手電力会社にとっては、グループ内で資金が移動するだけなので、どんなにそれが高額になっても痛くも痒くもない。送電網を握る大手電力会社に同じ企業グループ内で発電事業も続けることを許している限りは、大手の独壇場が続くのは当然なのだ。結局のところ、本当の意味で発送電を分離させない限り、真の競争市場など生まれるはずがない。

 しかも、消費者が電力を選べるといっても、今回の自由化では電源種の明記が義務付けられていない上、再生可能エネルギーの使用を明記することが、禁じられている。再生可能エネルギーの導入コストは再エネ賦課金という名目で毎月の電気料金に上乗せされる形で、日本中の全世帯が負担をしているのだから、それを販売する事業者だけが、再エネの商業上のメリットを受けることがあってはならないというのがその理由だそうだが、結果的に、再エネ電力を選びたいと考える消費者がいたとしても、そのような選択ができないようになっている。同様に、原発は嫌だと思う消費者がいても、原発を使った電力を調達している会社は電源種を明示しない可能性が高いため、それもわからないようになっている。

 今回の「全面自由化」については、「既得権益に守られた大手電力会社の手の平の上で新規参入組を遊ばせるようなもの」と、飯田氏は酷評する。

 とは言え、とりあえず小売りが自由化されることで、これまで空気のような存在だったエネルギーに対する消費者の意識が変化し、それが長期的にはそしてエネルギーデモクラシーの実現へとつながる可能性は十分にある。国民生活の根幹を成すエネルギー供給が、原発に代表される中央集中型から、再エネを中心とする地域分散型にシフトしていけば、日本の政治、経済、そして社会の在り方も大きく変わってくるだろうと、飯田氏は期待を込めて語る。

 4月から始まる電力小売りの全面自由化の本物度を、ゲストの飯田哲也氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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