スマートグリッドがもたらす「引き受けるエネルギー社会」

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第533回)

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公開日 2011年07月02日

ゲスト

富士通総研経済研究所主任研究員

1969年兵庫県生まれ。1993年東京大学法学部卒業。同年ソニー入社。1999年タフツ大学フレッチャー大学院修士課程修了。2007年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。内閣官房IT担当室主幹(ソニーより出向)、東京大学先端科学技術研究センター特任助教などを経て2009年6月より現職。成城大学非常勤講師を兼務。

著書

概要

 原発は怖いけど、風や太陽に依存する自然エネルギーは安定しないため、経済活動や国民生活が大きく影響を受けることが避けられない。そんな理由から脱原発をためらっている人は多いのではないか。そんな不安や疑問を解消する鍵となるのがスマートグリッドだ。
 スマートグリッドとは通信と電力を融合させることで、多様な電力を効率的かつ安定的に送信することを可能にするシステムと説明される。それが実現すれば、これまでのように大規模な原発や火力発電所のみに頼らずに、誰もがいろいろな形で電気を作るようになっても、安定的に電力を供給することが可能になるという。
 スマートグリッドはまた、単なるエネルギー供給の枠を超え、われわれ市民生活のありかたや国の形へも大きな影響を与えるだろう。スマートグリッドとは何なのか。
 これまでの電力は電力会社が設置した大規模な発電所から一方的に受け取るものだった。ユーザーはスイッチを押せば好きなだけ電気を使うことができた。 これに対してスマートグリッドでは分散と双方向がキーワードになる。まず各家庭は消費量をリアルタイムで知ることができるようになる。消費電力のみえる化だ。その情報をもとに消費量を自ら抑制したり、また供給者側も供給量を調節する。つまり、需要者が供給者に協力することで社会全体の電力の最適化を行う電力の供給システムが、スマートグリッドの要諦と考えていいだろう。
 富士通総研主任研究員の高橋洋氏は、今日スマートグリッドが注目されるようになった背景に「供給の分散化」「需要の自律化」「蓄電池の発達」の3つの技術革新が起きていることを指摘する。なかでも需要者(ユーザー)自身が電力を節約したり売ったりする「自律化」が、とても重要だという。これまで電力会社は消費者に自律性など期待できないと主張してきたが、震災後、多くの人々が自発的に節電を行ったことで、いみじくも消費者の自律性が証明された。
 すでに世界ではスマートグリッドは様々な形で取り入れられている。アメリカでは電力の需要増に対する供給の不足を補うための設備投資を抑える目的で、スマートグリッドの整備に取り組んでいる。通信機能を備えた電力計のスマートメーターを設置し、需要者をコントロールすることで供給不足に対応しようしている。それと同時にオバマ大統領のグリーンニューディールに代表されるようにビジネスチャンスとしての期待も高く、グーグルやIBM、GEなどの企業が参入し、国際規格の確立に動いている。
 一方、ヨーロッパは再生可能エネルギー拡大のためにスマートグリッドの整備を行っている。太陽光や風力などの天候に左右されやすい電力を安定的に制御するために、スマートグリッドは不可欠な仕組みだった。
 ドイツでは再生可能エネルギーの固定買取制度、電力市場の自由化を積極的に行い、現在の消費電力に対する再生可能エネルギーの割合は17%、2020年までに35%を目指している。日本は1%にすぎない。人口の減少、経済成長の状況などから日本のモデルとなるのはヨーロッパであると高橋氏は説くが、スマートグリッドが機能する前提となる電力市場の自由化も、発送電の分離も電力の固定価格買い取り制度も日本ではまだ進んでいない。
 電力は広い市場で取引することが最も効率が良いということをヨーロッパの状況が証明している。島国である日本は他国との連系は困難だ。しかし、国内の10社による分割状態を統合すれば市場は拡大する。そしてそれと同時に発送電の分離を行うべきだと高橋氏は訴える。
 戦後、高度経済成長を遂げる中、地域独占的な電力会社は高品質な電力を絶えず送り続けることで社会に寄与してきた。停電がほとんどおきない日本の送電網は世界に誇るべきものだ。しかし今日、社会は大きく変化し、それとともに社会の基盤となる電力業界も変わらなければならなかった。失われた10年、それは電力業界そのもののことだと高橋氏は言う。見たくないものを見ずにおまかせ社会を続けてきたツケが今回の原発事故として現れた。
 スマートグリッドを通して、これからの電力のあり方、そして社会のあり方について高橋氏と考えた。

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