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2025年06月28日公開

「ステルス移民政策」のままでは増え続ける外国人労働者に対応できない

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1264回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2025年09月28日23時59分
(あと91日16時間59分)

ゲスト

1954年徳島県生まれ。78年慶応義塾大学法学部卒業。86年米エバグリーン州立大学行政管理大学院修士号取得。専門は移民問題。78年より兵庫県庁、88年より日本国際交流センター勤務を経て2025年より現職。一般財団法人「未来を創る財団」アドバイザリーボードを兼務。著書に『人口亡国-移民で生まれ変わるニッポン』、編著に『自治体がひらく日本の移民政策』など。

著書

概要

 日本は移民は受け入れていないことになっている。しかし、実態はそれとは大きくかけ離れている。

 今月発表された2024年に国内で生まれた日本人の子どもの数は初めて70万人を割り込み、合計特殊出生率は過去最低の1.15となった。この先、長期にわたって人手不足が続くのは確実だ。その一方で、昨年末の在留外国人数は377万人と過去最高を更新、1年で36万人増えた。まさに日本人の人口減を外国人が補っている状況だ。

 それは働く現場を見れば明らかだ。人手不足が深刻化する中で製造業建設業農林水産業などは、今や外国人労働者なしでは回らなくなっている。医療福祉の分野での外国人依存度はこの10年で7倍になったというデータもある。団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、今後さらに介護人材が不足することが予想される中、日本は外国人材に頼るほかなくなっている。特に人口減少がより顕著な地方では、外国人労働者の「争奪戦」になっているとさえいわれる。

 一民間人として国際交流の現場で活動してきた毛受敏浩氏は、「ステルス移民政策」という言葉を使う。実際には多くの移民を受け入れているのに、政府が公式には移民ではないという立場を取り続けているからだ。実際、政府は2018年の骨太の方針で「新たな外国人の受入れ」を示し、それに合わせて入管法を改正、将来の定住を想定した「特定技能」という在留資格の創設や出入国在留管理庁の創設、総合的対応策の策定など、次々と外国人の受け入れ政策を進めてきている。

 しかし、日本政府は、去年の国会で当時の岸田首相が「政府としてはいわゆる移民政策をとる考えはありません」と答弁したように、あくまで移民政策は採用しないとの立場を変えていない。まるで移民という言葉がタブーになっているかのようだ。その結果、外国人が定住するためのオリエンテーションや日本語教育などの支援策の多くは民間任せとなっており、政府が予算をつけて取り組む形にはなっていない。実際は数百万人単位の外国人が日本で働き生活しているのに、その社会的な立場も脆弱なものとならざるをえない。

 毛受氏は、現在のペースで定住外国人が増え続ければ、20年後にはその数は1,000万人の規模になる中、このまま中途半端な形で外国人労働者の数が増加する状況を危惧する。とくに、政府の姿勢があいまいなために日本人の意識が変わらないまま、外国人を雇用の調整弁としてしかとらえない産業界や、ともに暮らす生活者として受け入れる姿勢がない地域社会では、外国人人口が増えるにつれて、今後さまざまなトラブルが起こることも予想される。

 かつては移民政策の是非について活発な議論が交わされていた時代もあったのに、いつから、そしてなぜ、日本では移民という言葉がタブーになってしまったのか。移民問題が欧米で起きているような社会の分断を引き起こすことなく、日本が必要としている外国人の人材を受け入れるためには、日本は何をしなければならないのか。「ステルス移民政策」から脱却して、定住外国人のために「基本法」を制定する必要があると主張する毛受敏浩氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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