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2026年03月21日公開

日本はどこでポスト福島のエネルギー政策を間違えたのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1302回)

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ゲスト

1959年山口県生まれ。81年京都大学工学部卒業。83年京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。96年東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得退学。神戸製鋼所、電力中央研究所勤務などを経て2000年、NPO法人環境エネルギー政策研究所を設立し現職。著書に『Ei革命』、『北欧のエネルギーデモクラシー』など。

著書

概要

 70年代のオイルショックの教訓も、15年前の福島原発事故の教訓も、日本はまったく活かせていないようだ。

 アメリカとイスラエルによるイラン攻撃と、それに対するイランの報復がエスカレートする中、エネルギーをめぐる国際情勢は再び緊張の度を高めている。原油価格の上昇は燃料費にとどまらず輸送費や食料価格を通じて日本経済全体に波及し、エネルギーと食料の双方で自給率の低い日本の脆弱性を改めて浮き彫りにしている。日本は世界の中でも中東からの石油に最も大きく依存している国だからだ。

 しかし、問題は外部環境だけではない。福島第一原発事故から15年を経た現在、日本の再生可能エネルギー比率は依然として約25%にとどまり、世界的なエネルギー転換の潮流から完全に取り残されつつある。再生可能エネルギーに関連した様々な技術でも、日本は取り残されつつある。なぜ日本は、ポスト福島のエネルギー政策に失敗したのか。

 飯田氏がまず問題視するのは、ポスト福島の日本の電力システム改革が、実際には「既得権益を守ることを優先した自由化」に終始している点だ。発送電分離は形式上は実施されたものの、実際には送電会社に対する大手電力会社の影響力が依然として強く残っている。その結果、電力市場における意思決定は既存の発電事業者に有利に働きやすく、再生可能エネルギーの導入が優先されにくい構造が温存された。そもそも電力会社にとって、自分たちの利益に直接つながる原子力や火力発電を減らしてまで、事実上誰もが参入できる再生可能エネルギーのシェアを増やしていく動機は働きにくい。この制度的バイアスが、日本の再エネ導入の重たい足かせになっていると飯田氏は言う。

 再エネ普及の柱として導入された固定価格買取制度(FIT)にも、根本部分で構造的な問題があった。日本のFITは「認定時に買取価格が決まる」仕組みを採用したため、事業者は設備コストの低下を待ってから稼働させた方が利益を得やすい。その結果、認定容量は増えても実際の稼働は遅れ、普及のスピードが鈍化するという逆転現象が起きた。本来、技術革新によってコストが低下する局面では、導入が加速するはずだが、日本では制度設計の不備がその流れを阻害してしまった。しかもそれは再エネ賦課金という形で必要以上に一般の消費者の負担を増やす結果となっている。

 ところが、海外では状況が大きく異なる。太陽光や風力は多くの地域で最も低コストの電源となり、導入は急速に拡大している。二酸化炭素を排出せず、燃料輸入にも依存しない再エネは、安全保障と経済合理性の両面から選好されるようになっている。

 議論の核心は、エネルギー問題が単なる技術やコストの問題ではなく、「社会の統治構造」に関わるテーマであるという点にある。従来の大規模集中型エネルギーは、中央集権的な統治と親和性が高い。一方、再生可能エネルギーは地域分散型であり、電力の生産と消費の関係を根本から変える可能性を持つ。この転換は、既存の利害構造や制度の再編を伴うため、必然的に抵抗が生じる。日本で再エネ導入に対する風当たりが強い背景には、こうした構造的要因があると飯田氏は指摘する。

 福島事故後、日本は一時的にエネルギー転換への機運を高めた。しかし、その後の制度設計と政策運営の中で、既存システムとの折り合いを優先し、結果として抜本的な転換の機会を逸した。世界が再エネを軸にエネルギー安全保障経済競争力の再構築を進める中、日本は依然として過渡的な状態にとどまっている。問われているのは、単なる電源構成の見直しではない。エネルギーを誰が、どのようにコントロールするのかという、より根源的な問いである。

 アメリカとイスラエルのイラン攻撃により、対外依存度が高い日本のエネルギー政策がにわかに危機を迎えているが、そのリスクは15年前に致命的な原発事故を引き起こしておきながら、その後、再エネへの転換に失敗し、以前としてエネルギーの対外依存度を引き下げることができていない日本の政策的な失敗という面が大きい。そして、それはまた日本が再エネとデジタルを融合させた新しいエネルギー技術の面で世界から大きく後れを取る原因となっている。

 太古の時代から人類の統治形態はその時々のエネルギーのあり方と表裏一体の関係にあった。人類の歴史は、社会の統治形態をその時々のエネルギー利用の方法に適応させることに成功した国や社会が、より多くの繁栄を享受してきたと言っても過言ではないだろう。その意味でも今の日本の状況は危機的だ。

 今からでも遅くはない。日本はポスト福島の教訓を活かし、エネルギーの対外依存度を減らすと同時に、世界の技術革新の潮流から落ちこぼれないようにしなければ、短期的にも長期的にも大きく国益を損なうことになる。環境エネルギー政策研究所所長でエネルギー政策、とりわけ再生エネルギー分野の第一人者の飯田哲也氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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