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2026年02月28日公開

消費減税の国民生活への効果と影響を検証する

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1299回)

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ゲスト

第一生命経済研究所首席エコノミスト
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1967年山口県生まれ。90年横浜国立大学経済学部卒業。同年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て2000年退職。同年、第一生命経済研究所入社。11年より現職。24年より日本FP協会専務理事を兼務。著書に『インフレ課税と闘う!』、『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』など。

著書

概要

 減税は誰もが歓迎するものだろう。しかし、現在高市政権が進めている食料品の消費税をゼロにすることが、どの程度物価高対策として有効なのか。また、そのリスクとしてわれわれは何を知っておく必要があるのか。

 消費税減税をめぐっては、先の衆院選では各党が一斉に公約「消費減税」を掲げたが、自民党が歴史的な大勝を収めたことから、当面は自民党の公約である「食料品の消費税の2年間ゼロ」が優先的に実現される可能性が高い。

 日本では比率の高い順に消費税、所得税法人税が税収の柱で、その3つで全税収の9割近くを占めているが、その中でも消費税は最大の税収源となっている。しかも、日本ではほとんどの人は所得税が「源泉」されているし、法人税は経営者や個人事業主以外は直接関係してこないので、何かを購入するたびに徴収される消費税は、圧倒的に痛税感が強い。だからこそ、選挙公約でその減税を謳うことはとりわけ集票効果が大きい。

 ところで物価高対策として食品の消費税をゼロにした場合、国民生活はどれほど潤うのだろうか。第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏の試算では、仮に食料品の消費税率が現在の8%(軽減税率)から0%になった場合、世帯あたり平均して年間約6万8,000円の負担軽減効果が見込まれるという。これは2人以上世帯を対象にした試算なので、2人世帯の場合、一人あたりだと年間3万4,000円、毎月2,833円が浮く計算になる。

 この数字をどう見るかはそれぞれだろうが、日頃買い物をする際に感じている痛税感の割には小さいと感じられるかもしれない。過度な期待は禁物と考えておいた方がよさそうだ。

 消費税減税は、そこで潤った分のおカネの一部が消費に回ることで経済活動が活発になり経済成長を促すというのも、期待される効果の一つだ。しかし、食品の消費税をゼロにした場合の経済への影響は意外と小さく、減税によって5兆円の税収が消える一方で、それが個人消費に回る割合はその1割の約5,000億円、そのGDP押し上げ効果は3,000億円分と見積もられているため、現在約590兆円の実質GDPに与える影響はプラス0.05%程度にとどまると見込まれている。

 このようにメリットが限定的であるのに対し、食料品消費税ゼロによるマイナスの影響はかなり大きい。

 まず、消費税はもともとその逆進性、つまり所得が低い人ほど税負担の割合が大きくなる点が問題視されてきたが、消費減税にもその欠点が反映されてしまう。つまり、所得が大きい人ほど消費減税の恩恵が大きくなってしまうのだ。格差が広がる中で、消費減税には所得再分配の観点からも疑問が残る。

 しかも、食品の消費税がゼロになっても、われわれ消費者が購入する食品の価格が消費税の8%分丸ごと安くなるとは限らないことも知っておく必要があるだろう。消費税はもともと事業者に納税義務が課されているため、消費減税の恩恵を直接受けるのは事業者だけだ。消費者は、事業者がその減税分を小売価格に反映してくれたときに初めてそのメリットを享受できる。しかし、原材料費人件費の高騰を価格転嫁できなかったことにあえぐ中小事業者が価格を据え置く可能性もあり、仮に値下げをしても消費減税分の8%を丸ごと引いてくれるとは限らない。食品の消費税がゼロになったはずなのに、小売価格はそれほど下がらない可能性が高いということだ。

 その一方で、税収の柱である消費税の減税が財政に与えるダメージは計り知れない。食品の消費税をゼロにした場合、国と地方を合わせて年間約5兆円の税収減が見込まれている。国の税収約80兆円の3分の1を占める約26兆円の消費税は全額が社会保障に使われることが法律で定められているが、実は年間の社会保障関係費はすでに約38兆円に達しており、消費税だけでは賄えていないのが実情だ。今回の食品ゼロによってそこからさらに5兆円が消えた場合、その穴をどう埋めるのかは容易なことではない。

 さらに深刻なのが地方財政へのしわ寄せだ。消費税はもともと、国と地方自治体の間でおおむね8対2の割合で分配されることが定められている。今回食品の消費税がゼロになることによって減少する5兆円については国が約3.2兆円、地方が約1.8兆円分を被ることになる。しかし、地方自治体の行政サービスの多くは国が定めたルールの下で担われているものが多く、財源が減ったからといって簡単に削ることはできない義務的なものが多い。熊野氏は、地方自治体の減収のしわ寄せが上下水道ごみ処理といった住民生活に直結する行政サービスの低下を招く可能性が懸念されると指摘する。

 失われる5兆円の穴を埋めるために、高市首相は赤字国債には頼らないと明言しているが、具体的な財源は示されていない。熊野氏は、外為特会(外国為替資金特別会計)や年金積立金の活用には無理があり、現実的には「2年に限って赤字国債を発行するしかないのではないか」と指摘する。しかし、赤字国債の増発はインフレ圧力をさらに強めることになる。また消費減税によって財政赤字が拡大すれば、市場からの信認低下によりさらに円安が進行する可能性が高い。円安によって輸入物価が上昇すれば、食料自給率の低い日本では直ちに食品価格の上昇を招くことが避けられない。せっかくの消費減税の効果が一気に吹き飛んでしまう恐れが十分あるのだ。

 物価高に苦しむ国民生活への支援は急務だ。しかし、その手段として消費減税が本当に適切なのか。私たちは減税というポピュリズムの罠に陥っていないか。もし消費減税の5兆円を捻出する手段が本当にあるのなら、それはどう使われるべきなのかなどについて、熊野氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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