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なぜ「ふるさと納税」が国家の根幹に関わる大問題なのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1130回)

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完全版視聴期間 あと34日11時間57分
公開日 2022年12月03日

ゲスト

桃山学院大学経済学部教授

1980年長野県生まれ。2002年法政大学経済学部卒業。07年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。専門は財政学、租税政策。下関市立大学准教授、桃山学院大学准教授を経て21年より現職。共著書に『収縮経済下の公共政策』、『国税・森林環境税 問題だらけの増税』など。

著書

青山学院大学名誉教授

1950年東京都生まれ。73年中央大学法学部卒業。75年一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。博士(法学)。静岡大学法学部教授、立命館大学法学部教授、ドイツ・ミュンスター財政裁判所客員裁判官、青山学院大学学長などを経て2019年より現職。09年、政府税制調査会専門委員。著書に『日本の税金』、『日本の納税者』、『税のタブー』など。

著書

司会

概要

 年末商戦たけなわの師走。テレビではふるさと納税に関連したサービスのCMが盛んに流れている。

 ふるさと納税は「ふるさと」の名を冠しているが、要するに自分が住む自治体とは別の自治体を好きに選び、そこに「納税」すると、ほぼそれと同額の住民税が免除されるというもの。しかも、多くの自治体が少しでも多くのふるさと納税を集めたいがために、返礼品と称する魅力的な商品のお返しをしてくれる。利用者にしてみれば、自分が住む場所以外の自治体に「納税」すると、全体としての納税額は変わらないのに、肉だと魚だのといった各地の豪華な名産品が事実上ただで手に入る制度なので、これを利用しない手はない。しかも、これは他でもない、国が主催している制度なのだ。

 案の定、利用者は2008年の制度開始から年々増加の一途を辿り、その金額も2021年は8,302億円にのぼる。12月末が今年分のふるさと納税の締め切りとなるが、今年は総額が1兆円を越える勢いだそうだ。日本の年間防衛費が5兆円あまりであることを考えると、この金額がいかに莫大なものかがわかるだろう。

 そのような制度が正式な国の制度として存在する以上、これを利用することには何の問題もない。また、そこから派生する様々なサービスが登場するのも当然のことだろう。さらに、自分が生まれ育った「ふるさと」や旅で訪れてファンになった地域などに、住民税の一部を回したいとの思いを持つのも自然な感情だ。しかし、その制度があまりにも堕落していて、しかも国家の根幹を揺るがしかねない重大な問題を孕んでいるとすれば、これを放置することはできない。

 ふるさと納税が国の根幹を揺るがす大問題を孕んでいると指摘するのは、桃山学院大学経済学部の吉弘憲介教授だ。吉弘氏は、ふるさと納税が未来のために使うはずだった税金が返礼品に消えている制度であることを理解する必要があると語る。

 そもそも自分が住む自治体に税金を納めても何の返礼品ももらえないのに、他の地域に納めると豪華な商品が返ってくるという考え方自体が、根本的に間違っている。実は住民は自分が住む自治体からゴミの収集だの公立の小中学校の運営など、様々な「返礼品」を住民サービスという形で受け取っている。それらのサービスは住民税という財源によって支えられているので、住民税を別の自治体に払えば、居住地の住民サービスにはただ乗りすることになる。これは「応益負担・負担分任」と呼ばれる住民税の大原則に反する。

 また、当初は金額の制限がなかったふるさと納税の返礼品は、行き過ぎた返礼品競争に歯止めをかけるべく2019年から納税額の3割という上限が設けられ、一応は地域に縁の深い商品に限定されるというルールも設けられているが、とはいえ住民税の納税額が多い人ほど多くの返礼品を受け取る権利を有していることに変わりはない。つまり、高額納税者=高所得者ほどこの制度のメリットを享受できる「垂直的不公平」という問題が内在しているのだ。本来、所得再分配の手段であるべき税が、この制度によって高所得者をより優遇する逆進性を伴っているということだ。

 計算式はやや複雑になるが、ふるさと納税は概ね住民税額の約2割までの範囲で自由に金額を決められる。その範囲であれば、ふるさと納税を行う対象自治体の数にも制限はない。これまで縁もゆかりもなかった自治体に納税しても、まったく問題はない。利用者はカタログショッピングやオンラインショッピングさながらに、いろいろな業者が発行している返礼品カタログを見ながら、欲しい商品を提供している自治体に上限額まで「納税」していけば、肉だの魚だのといった各地の名産品が次々と届けられる。返礼品には食べ物のほか、旅行券や食事券、宿泊券、宝飾品、家具、スポーツ用品などを提供している自治体もある。

 ふるさと納税により税収が減ると文句を言っている自治体は、自分たちもふるさと納税を受け取れるように返礼品競争に参入すればいいではないかとの指摘もある。しかし、そもそもより多くの税を集めるために自治体間に競争させること自体がナンセンスだ。なぜならば、自治体間のサービス合戦になれば、サービスの質や内容を充実させるにはそれ相応のコストがかかるため、日本全体としての実質的な税の実入りは減少してしまう。競争が成長を促し全体のパイをより大きくする効果があるというのならまだわかるが、元々住民税のパイは一定なので、この制度の下ではそれを自治体間で奪い合うことになる。しかも、ふるさと納税された「税金」は3割が返礼品に使われるほか、カラフルな返礼品カタログの作成やウエブサイトの運営などにも使われるため、実際は納められた税金の半分程度しか対象自治体の手元には残らない。

 税制の権威で元政府税調の専門委員でもある三木義一・青山学院大学名誉教授は、税とは無償で出すことを通じて社会をよりよく運営していくために使われるもので、拠出することに具体的な見返りを期待する性質のものではないことが理解される必要があるという。総務省は、ふるさと納税の意義として「税に対する意識が高まり、自分ごととしてとらえる機会になる」ことを挙げているが、大半の人が見返りを目当てに利用しているふるさと納税は、むしろ税の基本的な考え方を歪めてしまっている。

 そもそも「ふるさと納税」は、「税」の名が付いているが税金ではない。自分が住んでいるわけではない地域に住民税を納めさせることは、応益負担の原則に反するため法的に正当化することが困難だった。そのためふるさと納税は法律上は「寄付金」という位置づけになっている。自分が好きな自治体に寄付を行うと、それとほぼ同額の住民税が控除、つまり割り引かれるという建て付けになっているのだ。しかし、見返りを前提とする寄付は「寄付」の概念にも反する。要するにふるさと納税というのは、呼称は「税」、法的には「寄付」扱いとなっているが、その実態は税でも寄付でもない、人口の多い都市部から人口の少ない地方の自治体への歳入移転の手段に他ならない。ただし、それを実現するために税の基本原則を歪めた上に、寄付額の約半分が返礼品と運営費に消えるという対価を伴う。

 ちなみに、ふるさと納税によって税収が減る自治体に対しては、基本的に減収額の75%が地方交付税交付金によって国から補填される仕組みになっている。これはふるさと納税の返礼品の原資の4分の3が、回りまわってわれわれが支払っている税金から出ていることを意味している。「基本的に」というのは、ふるさと納税の減収分が補填されるのは、地方交付税交付金受給自治体に限るため、東京都や川崎市などほんの一握りの黒字自治体は国から減収分の補填を受けることができず、ふるさと納税の流出による減収分は丸ごと歳入減になる。ただし、全国に1,724ある市町村のうち地方交付税交付金の交付を受けていない自治体は72にとどまり、都道府県では東京都をのぞく全ての自治体が交付を受けているので、ほとんどの自治体はふるさと納税による減収が生じても、その75%までは税金で補填を受けていることになる。

 たしかに、人口移動にともなう自治体間の税収格差の解消が、日本にとっては大きな課題であることは間違いない。しかし、その解決策としてふるさと納税は明らかに邪道であり、間違ったやり方だ。そもそも返礼品を餌にしたこの制度は理念的に堕落している。しかも格差解消の手段としてはいたって無駄が多く効率が悪い。金持ち優遇の垂直的不公平という問題も孕んでいる。これらの問題点は当初から指摘されており、菅義偉前首相が総務相時代にこの制度を無理やり導入しようとした際、総務省には強く反対した幹部がいたが、菅氏は彼らをことごとく左遷したり別の部署に飛ばしたりすることで、制度の実施を政治主導で強行した。

 今やこの制度は740万人もの国民が利用しており、利用者数も年々増えている。それだけの人が既にそのメリットを享受しているため、これを批判したり問題点を指摘すると不人気となることが必至だ。これでは政治家もこの制度を廃止しろとは言いにくい。また、ふるさと納税を仲介したり、豪華返礼品を紹介するなどさまざまな派生サービスも立ち上がっており、テレビCMも盛んに流れているため、メディアが積極的にこの制度の問題点を指摘する動機は起きにくい。そのため結果的に国が実施している公的な制度としては税の基本原則に反し、著しく運営効率も悪い邪悪な制度が、そのまま生き残るばかりか、その規模は年々膨らむ一方だ。

 この制度の問題点を解消するためには、何をおいてもまず、返礼品制度を廃止するしかない。返礼品制度を廃止し、豪華返礼品目当てではなく、本当にふるさとを支援したいと考える人が、住民税の一部をそちらに回すことで、その分税金の控除を受けられる制度にすればいいだけのことだ。元々それが制度本来の趣旨でもあった。しかし、ここまで制度が膨らんでしまった今となっては、言い出しっぺであり問題のある制度の導入を自らの政治力で強行した菅前首相自身がその口火を切るか、もしくはこのまま制度が膨脹を続け、国家の根幹を揺るがすほどの大問題にならない限り、この制度をあらためるのは困難かもしれない。しかし、できればそうなる前に何とかしたいではないか。

 そもそもふるさと納税とはどんな制度でどんな問題を孕んでいるのか、またそれが現実にはどのように運営されているのかなどを、ふるさと納税の問題点を積極的に発信している数少ない財政と税の専門家である桃山学院大学経済学部教授の吉弘憲介氏と、暴漢に襲われ現在入院中の宮台真司のピンチヒッター役を務める税の権威で青山学院大学名誉教授で弁護士の三木義一氏、ジャーナリストの神保哲生が議論した。

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