小規模事業者やフリーランスを軒並み廃業に追い込むインボイス制度に正当性はあるのか

弁護士、青山学院大学名誉教授


今回のポリティコは3ヶ月後に参院選を控え、減税などの経済対策を求める声が日に日に強くなる中で、石破政権の内部やその周辺でどのような政治力学が働いているのかについて議論した。
4月に入り一時は永田町を駆け巡った現金給付という話は、あまりにも選挙対策のバラマキ感が強過ぎるため、自民党の支持率アップにはつながらないとの見方が支配的になり、一旦は立ち消えとなった。しかし、物価高やトランプ関税の影響が懸念されることに加え、統一教会問題や裏金問題、ひいては石破首相自身の商品券問題などもあり、石破政権も自民党も低支持率に喘ぎ続けており、このまま参院選に突入すれば、参議院でも過半数を割り込む恐れが出てきている以上、政権としては何らかの経済対策は打ちたい。
そこで今浮上しているのが、消費税を減税する案だ。もともと野党の多くは消費税の引き下げを求めており、与党内にもこれに同調する声が勢いを増している。具体的には消費税率の引き下げから、食品に限って消費税をゼロにする案などその中身は多種多様だが、石破政権が決断さえすれば、野党の協力も得て消費税減税は十分に実現が可能だ。
ところが、現在の自民党執行部も、そして驚いたことに立憲民主党の執行部も、消費税減税には慎重な構えを崩していない。いずれも財務省の影響を強く受けているかのような発言を繰り返しているのだ。
確かに今の日本の政治環境では、一度税率を下げてしまうと、それを再び上げるのは容易なことではない。また、社会保障の貴重な財源となっている消費税率を大幅に減らすことに、懸念の声があがることはわからなくはない。しかし、その一方で、短期的な物価・景気対策という意味でも、あるいは失われた30年からの脱却という意味でも、まず日本は自国の経済を成長軌道に乗せなければ話が始まらない。一時的に税収が下がっても、景気を取り戻せば、税収はプラスに転じることも期待できる。
石破首相個人は消費減税に傾いているようだが、森山幹事長を始めとする党の執行部や財務省出身の宮澤党税調会長らが石破首相を説き伏せている状態が続いているようで、このままでは石破氏の弱点である優柔不断ゆえに減税が実現しない可能性がある。
しかし、ここで減税ができなければ、参院選の敗北によって石破政権の命運が尽きる可能性が高いのも事実だろう。それを考えたら、石破首相としてはもはや他の党幹部に遠慮している場合ではないのではないか。
立憲民主党内にも、いずれも元財務大臣経験者の野田代表や安住予算委員長らの減税に後ろ向きな幹部たちを尻目に、経産省出身の江田憲司氏らを中心に消費税減税を求める党内勉強会が立ち上がっており、その背後には小沢一郎氏の影も見え隠れしている。
どうやらここから参院選までの期間、政局の最大の焦点は、石破首相が党内の反対や財務省の抵抗を乗り越えて減税を決断できるかどうかになりそうだ。
その先には参院選の結果如何にかかわらず、与野党大連立の話が水面下で進んでいるとも聞く。消費税減税はその試金石ともなる。
消費税減税を巡る自民党内と野党内の政治力学などについて、政治ジャーナリストの角谷浩一とジャーナリストの神保哲生が議論した。