消費減税の可否に石破政権の命運がかかっている



石破政権は相変わらず迷走を続けているが、その一方で日本の政局は奇妙な安定が続いている。
自民党内には事あるごとに倒閣運動の萌芽が散見されるものの、本気で首相の首を取りに行こうという政治家も、またそのような勢力も見当たらない。かと思えば、野党は野党で今夏の参院選は不人気な石破首相の下で選挙選に突入した方が有利との計算があるためか、誰も本気で石破政権を倒そうとはしない。
野党にとっては下手に政権など取ろうものなら、政策でも人事でも政権内の他党との調整が多難を極めるであろうことは誰もがわかっている。その一方で、現在の少数与党の状態が続いてくれれば、与党は予算を含めあらゆる法案の成立に野党の協力が不可欠となるため、野党は自分たちが主張する政策を一つまた一つと実現しやすい。政権にいるよりも野党にいた方が政策実現が可能になるという、これまた奇妙な政治状況があり、結果的に石破政権は低空飛行ながらも安定を保っているのが現在の日本の政治状況だ。
しかし、日本はこのような内向きの政治をいつまで続けるつもりだろうか。アメリカのトランプ政権は世界の従来の安全保障の枠組みを根本から壊す姿勢を明確にしているし、経済面でも輸入品に対する高い関税を本気でかけるなど、容赦なき自国優先主義の政策を邁進している。その結果、国際情勢がここまで激変しているのに、日本の政界からはいつまでたっても内向きな議論しか聞こえてこない。こんなことで日本は現在の世界の激流を乗り切れるのか。
石破政権は少数与党であることに加え、自民党内の権力基盤も決して強くない。そのため政権発足当初は、党内力学や野党との折衝に振り回され続け、「石破カラー」と言えるようなものは何一つとして発揮できずにいた。しかし、幸か不幸か今、政局は安定している。ここで石破カラーが発揮できなければ、一体全体、石破政権とは何だったのか、が問われることにならないか。
石破首相は首相の座に着く前は、歯に衣着せぬ発言で数々の具体的な政策提案を行ってきた。それが石破人気の源泉でもあった。最近の世論調査を見る限り、既に石破政権には幻滅している有権者も多いようだが、その一方で依然として、どこかで石破首相は本領を発揮してくれるのではないかとの淡い期待を抱き続けている有権者もまだ残っている。
もし石破政権がどこかで石破カラーを発揮するとすれば、4月初頭に予算が可決した直後が勝負どころとなる。トランプ大統領は日米安保の片務性への不満を表明しているが、それは一貫して石破首相の持論でもあった。また、選択的夫婦別姓も石破首相は長らく推進論者だった。やるべきことは沢山ある。
最後は石破政権がこれといった成果を上げられないまま、不安定な政治状況に振り回されただけの政権で終わるのか、過去の自民党政権では到底成し遂げられなかった政策を1つでも2つでも実現できるのか。いずれにしても石破政権が本領を発揮するために残された猶予は限られている。石破政権の現状と展望について、政治ジャーナリストの角谷浩一とジャーナリストの神保哲生が議論した。