真の「熟議の政治」には自民党内の熟議が必要だ



アメリカでは20日、トランプ政権が発足し、初日からバイデン政権の政策を全面的にひっくり返す大統領令に次々と署名するなど、いよいよトランプ政治の第2弾が始まった。
関税や防衛負担の増額など日本も決して他人事とは言えないトランプ政権の動向からは今後も目が離せない。
一方、日本では、24日から通常国会が始まる。
昨年は自民党の総裁選を僅差で制し首相の座に就いたものの、少数与党として青息吐息の政権運営が続いた石破政権だったが、一枚岩になれない野党の敵失も手伝って、ここまで何とか政権を維持してきた。しかし、本予算が審議される通常国会はそう簡単にはいきそうもない。予算審議の過程で閣僚の失言や不祥事などで躓けば、いつ政局が流動化してもおかしくない不安定な政治環境は今年も変わらない。
石破政権と与党は昨年末に政治資金規正法の改正に漕ぎ着けたが、明らかにその中身は不十分で、世論調査などを見ても裏金問題でピークに達した有権者の怒りは未だに収まる気配を見せていない。企業・団体献金もパーティも禁止できないまま、公開の要となるデータベース化は形式的なものに留めるというのだから、それも宜なるかなだ。結局、企業・団体献金の禁止は自民・公明も立憲・国民も本音ではやりたくないために、やってる感だけ醸し出して終わろうとしているのが目に見えている。これでは政治不信は高まるばかりだろう。
また、「禁止より公開」を豪語しておきながら、総理の肝いりで導入された政治資金収支報告書のデータベース化は完全に骨抜きにされてしまった。データベースの対象が政治資金を受け取る側である政党や国会議員関連政治団体に限られ、寄付をする側の政治団体はその中に含まれていないからだ。これではもし再び裏金が作られた場合、しんぶん赤旗や上脇博之教授がやったような手間と時間のかかるPDF形式の報告書の突き合わせ作業を誰かがしない限り、裏金の存在は明らかにならない。一体何のためのデータベースなのかまったく意味不明だ。
しかも、主要な政治メディアはこの問題をまったく追求しようとしない。理解していないのか、わかっていて触れないのか。いずれにしてもこれも意味不明だ。
そうこうする中で、元SMAPの中居正広氏と女性との間で起きたトラブルが、フジテレビのみならず放送業界を巻き込んだ大問題に発展している。直接放送内容に関わる問題ではないため、今のところ放送法4条の問題にまでは波及しない見込みだが、とは言え日本は先進国では唯一といってもいい、政府が放送局に放送免許を直接付与している国だ。言論機関でもある放送局を政府が直接統制することは憲法に違反することになるため、他の先進国では政府ではなく第三者機関が放送局の認可を行っている。つまり日本はそれだけ政府の放送への介入が容易になっていることになるが、その分放送局のガバナンスに対しても政府は責任を負わなければならないことになる。いいところ取りはできない。この問題は今後の成り行き次第では政治問題にも発展しかねないので、引き続き注意が必要だ。
通常国会を前に、トランプ政権の動向や政治とカネ問題を巡る与野党の迷走ぶり、通常国会の課題、フジテレビ・中居問題の潜在的爆弾性などについて、政治ジャーナリストの角谷浩一とジャーナリストの神保哲生が議論した。