脱アベノミクスを掲げる石破政権に経済政策の決め手はあるか
第一生命経済研究所首席エコノミスト
1967年7月山口県生まれ。90年、横浜国立大学経済学部卒業。90年4月、日本銀行入行。同行調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月より、第一生命経済研究所へ入社。00年11月より現職。著書に「籠城より野戦で挑む経済改革」、「どうすればリスクに強くなれるか」など。
08年株式市場は全面安の幕開けとなった。1月4日の大発会で日経平均は一時616円安を記録し、昨年の最安値1万4837円を更新して引けた。円ドル相場も円高が進み、昨年末より4円以上円高ドル安の1ドル108円台に突入している。また、一方で、原油価格は史上初の100ドルを突破している。
このような波乱含みの中、今年の日本経済はどうなるのか。この株安と円高の原因を読み解きつつ、08年の日本経済が抱える課題と展望を、気鋭のエコノミスト・熊野英生氏に聞いた。
昨年金融市場を襲ったサプブライム問題は、世界的株安の引き金をひき、米国の大手金融機関を軒並み危機的な状況に追い込む深刻な事態にまで発展した。しかし、サブプライム問題の震源地だった米国でさえも、07年通年のNY市場のダウ平均は、前年比でマイナスにはなっていない。にもかかわらずサブプライム問題の被害が比較的少なかったと言われる日本だけが、昨年は大きく値を下げている。どうやら日本市場の株安は、サブプライム問題だけに起因するものではなさそうだ。
熊野氏は、日本の株安の原因を外国人投資家の売りと、国内投資家の消極性にあると分析する。現在の日本の株式市場は、外国人投資家への依存率が高いが、外国人投資家は自国の市場が下がった場合、海外市場の株を売り利益を補填する傾向がある。
これに対して、通常は外国人投資家が売った後に国内の投資家が入ってくるものだが、日本では国内の投資家の足腰が弱いため、外国人投資家の穴を国内の投資家が埋められるまでに至っていない。熊野氏は、これまで日本政府が、企業優先で金融市場の整備を進め、個人投資家を育てこなかったことのツケが、今になって回ってきていると指摘する。
また、現在の日本の市場に魅力がない最大の理由は、政治が安定せず、しかも政権が政策の方向性を示せていないことにあると熊野氏は言う。小泉構造改革を市場は歓迎したが、その後安倍政権を経て現在の福田政権は、どこに向かっているのかが一向に見えてこないことを、市場が嫌気しているというのだ。
いずれにしても、今年前半は、サブプライム問題の影響が尾を引き、第一四半期は米国と連動する形で、日本の市場も厳しい状況が続くと予想する熊野氏だが、夏以降、北京五輪、洞爺湖サミットそして米大統領選と大きな政治イベントが続く中、日本経済浮沈の鍵を握るのはやはり政治をおいて他に考えられないと断言する。
この1年、日本経済を待ち受ける課題とその展望を議論した。