「日本病」による失われた30年をいかに取り戻すか

第一生命経済研究所首席エコノミスト


1971年滋賀県生まれ。94年京都大学工学部卒業。96年、同大学院工学系研究科修了。同年ゴールドマン・サックス証券入社。2008年金利トレーディング部長、15年アジアパシフィックマクロトレーディング統括を経て17年より現職。
経世済民オイコノミア、第5回のゲストはゴールドマン・サックス証券で長く金利トレーダーを務める居松秀浩氏をゲストに、日銀の金融政策と市場の関係や、誤解されがちな投資の意義などについて議論した。
日銀が10年国債の金利を0.25%に据え置く方針を維持し、無制限に国債を購入し続けたため、昨年来、物価高騰に伴い世界的に金利が上昇する局面では、日本国債のイールドカーブはいびつな形となっていた。しかし、この時、海外の投機筋が空売りをしていると非難する論調が一部で生じていたことについて居松氏は、そのような批判があることに理解を示しつつも、世界的に金利が高騰する中、資産を守るために投資家たちが日本の金利上昇に備えて取った行動だったという側面があったことを強調する。
社会の中で投資が果たすべき役割について居松氏は、投資には単なる資産運用という以上に、投資先で新たにどのような価値が創出され、人々の豊かさにつながるのか考える必要性を説く。一例として居松氏は駆け出しの漫画家に対する投資を挙げ、単に金銭的なリスクとリターンを比較すればリスクが大きいように見える事例であっても、漫画家の活動の軌跡を共有する体験ができるなど、多様な価値をリターンとして受け取ることができると考えれば投資として成立し得ると語る。また一方的に支援をするのではなく、何らかの形のリターンを受け取ることによって持続可能な循環が生まれるという。
日銀の金融政策と為替、金利や、投資の社会的意義について居松氏と田内学が議論した。