[自由貿易を考えるシリーズ]TPPに見る「自由貿易の罠」
京都大学大学院助教
1971年神奈川県生まれ。96年東京大学教養学部(国際関係論)卒業。同年通商産業省(現経済産業省)入省。2005年エディンバラ大学大学院博士課程修了。博士(政治学)。専門は政治経済思想。著書に『世界インフレと戦争』、『日本思想史新論』、『TPP亡国論』、『富国と強兵』、『奇跡の社会科学』など。
経世済民オイコノミア、第3回は評論家として積極的に政策提言などを行っている中野剛志氏をゲストに、現在日本が直面する円安インフレの原因や、昨今の緊縮財政派と反緊縮財政派の間で繰り広げられている論争を通じて、日本経済を4半世紀続いている低迷から救うための最適解とは何かを議論した。
現在の円安の直接的な原因が、今年の2月に勃発したウクライナ戦争に起因するエネルギー価格と食糧価格の全世界的な上昇にあることは論を俟たないが、その一方で中野氏は、日本が平和を前提としたグローバリズムを信奉し、食料においてもエネルギーにおいても自給率を上げる努力をしてこなかったことにも問題があったと語る。
アメリカとの金利差が引き起こしている現在の円安については、現在、アメリカではコロナ後の急激な需要増により賃金上昇を伴う「良いインフレ」が起きているが、同時に地政学的な要因によるコストプッシュの「悪いインフレ」も複合的に生じている。後者を抑えるためにアメリカが金利を上げたことが現在のドル高の背景にあると中野氏は言う。
財政政策について中野氏は「政府には資金的制約がない」という前提から議論を始めるべきだと強く主張する。財政出動の必要性には同意しながらも、中野氏の主張が「無制限なバラマキを引き起こす」という誤解を与えるのではないかと懸念を示す田内氏に対して中野氏は、「必要なところには財政出動をするべき」では「必要」の定義が富裕層にとって都合の良いものとなるためその主張には意味がないとして、これを一蹴する。
低迷する日本経済にとっての最適解とは何かをめぐり、中野剛志氏と田内学が白熱した議論を展開した。