脱アベノミクスを掲げる石破政権に経済政策の決め手はあるか
第一生命経済研究所首席エコノミスト
1989年千葉県生まれ。2012年筑波大学理工学群卒業。14年同大学院システム情報工学研究科修士課程修了。18年オックスフォード大学計算機科学科博士課程修了(Ph.D.)。博士(計算機科学)。18年日本学術振興会特別研究員(ポスドク)、20年国立情報学研究所助教を経て、22年より現職。
第10回目を迎えた経世済民オイコノミアは、生産力が十分にある成熟経済である日本が次に考えなければならない労働や生産物の適切な分配について、数学的なアプローチを用いて研究をしている東京大学大学院情報理工学系研究科准教授の五十嵐歩美氏をゲストに迎え議論した。
ケーキやおカネなど分配がしやすい物がある一方で、仕事や財産などそれ自体が不可分なものや分配が難しい物もある。それをいかに公平に分配するかの研究を公平分割理論と呼ぶ。公平分割理論では、特に妬みを最小限に抑えつつ公平な配分をする方法が重要になると五十嵐氏は言う。
公平性には色々な定義があるが、その一つに異なる価値観を許容することを意味する「無羨望な配分」というものがある。人によって価値の感じ方が違うものを分配する時に、「自分の持ち分で得られる嬉しさ」が「他人の持ち分で得られる嬉しさ」を上回っていれば、それが自分にとって一番良い配分だと感じることが可能となり、妬みのない分配が実現できるという考え方だ。
そもそも適切な分配とは何か、物資の配分の制度設計にどのような数学的アプローチが可能なのかなどについて五十嵐氏と田内学が議論した。