東洋医学の効能はどこまで科学的に解明されているか
島根大学医学部附属病院臨床研究センター教授、医師
1978年滋賀県生まれ。2005年大阪大学医学部卒業。13年米・エモリー大学公衆衛生大学院修了。国立病院機構呉医療センター、厚労省医政局地域医療計画課課長補佐、公立昭和病院感染症科などを経て21年より日医総研主任研究員。23年より現職。著書に『かかりつけ医機能と感染症有事』など。
高市政権下で医療政策を巡る議論が錯綜している。
28日に閣議決定された補正予算案には、医療分野における賃上げ・物価上昇に対する支援として5,300億円が盛り込まれた。これは公定価格である診療報酬で運営されている病院で、物価上昇などが経営を圧迫して7割が赤字となっており、このままだと地域医療がもたないとの訴えが各地から聞こえていたことを受けたものだ。もっとも補正予算は単年度限りなので、現在審議中の中医協では診療報酬を上げてほしいと医療機関側からの強い要望が挙がっている。
一方で、政府は連立を組んだ日本維新の会が強く主張する、現役世代の社会保険料の引き下げも模索しなければならない立場に置かれている。その財源として政府が真っ先に挙げたのがOTC類似薬の保険給付外しだ。OTC類似薬とは、市販されている薬と類似した薬を意味し、医師から処方されるため保険給付により個人負担は1割~3割で済む。湿布薬、保湿剤、漢方薬などのほか、医師が処方していた薬を市販できるようにしたスイッチOTC薬まで幅広い薬剤を指す。保険から外れれば患者は市販薬を自分で薬局から購入しなくてはならなくなる。
しかし、さすがにこれは患者団体などの強い反発を受けたため、保険給付を外すことは断念し、新たに追加の負担を課す案が検討されているという。今後の審議で薬剤の範囲や負担額などが決まる見込みだが、最終的にどのぐらいの医療費が削減されることになるのかは、現時点では不明だ。このほかにも、一定の金融資産のある人への保険料や自己負担額の増額も検討されている。
保険料の引き下げというと耳障りは良いが、いざそれを実現しようとすると様々な軋轢が生じる。医療政策が専門で各国の制度に詳しい日医総研主席研究員の森井大一氏は、現在の医療政策を巡る議論はいきなり各論に入っているが、そもそも日本の医療政策の全体像をどのくらいの人が理解したうえで判断しているのかが疑問だと言う。社会保障の議論そのものが国民を置き去りにしたまま進んでいることも、本来はあってはならないことだ。
医療を社会が責任を持つとする医療政策だが、日本ではその手段は主に民間の医療機関が提供しており、基本的に病院が公立である英・仏・独とは制度を異にしている。そのため日本の医療機関は、医療を提供した際にその対価が支払われるかどうか、つまり十分な保険財源があるかどうかがどうしても関心事にならざるをえないと、森井氏は指摘する。
さらに重要なのは、どのような医療サービスが受けられるのかだ。負担する側と給付を受ける側は当然同じ国民であり、医療の質が下がることは誰も望んでいないはずだ。健康なときはどうしても負担ばかりに目がいきがちになるが、誰もがいつ医療のお世話になるとも限らない。そのためにも価値ある医療サービスが提供されることが重要で、そこを取り違えると医療への信頼が揺らぎかねない。コロナ禍で大きな議論となったかかりつけ医についても、森井氏は同様の観点から語る。
英・仏・独のコロナ禍でのかかりつけ医調査なども合わせて、各国の医療政策に詳しい森井氏と社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。