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2026年01月17日公開

2026年、19世紀に回帰するアメリカによる戦後世界秩序の本格的な解体が始まった

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1293回)

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ゲスト

1967年北海道生まれ。90年上智大学外国語学部卒業。97年同大学大学院人類学部博士課程修了。Ph.D(社会人類学)。ケンブリッジ大学、英オックスフォード大学、ハーバード大学客員研究員などを経て2006年より現職。著書に『アメリカとは何か』、『リバタリアニズム』、『白人ナショナリズム』など。

著書

概要

 ドンロー主義を標榜するアメリカは、本気で19世紀への回帰を始めたようだ。

 2026年の国際情勢は、年初から決定的な転換点を迎えた。アメリカによるベネズエラへの空爆とニコラス・マドゥーロ大統領の拘束は、冷戦後に形成されてきた「法による支配」という国際秩序の大前提を根底から揺るがす出来事だった。もはや「例外的事件」として処理できる段階は過ぎつつある。世界は、構造的な変化の局面に入りつつある。

 アメリカ政府は、マドゥーロ大統領夫妻を麻薬テロおよびコカイン密輸共謀などの罪で起訴することで、宣戦布告なしの軍事行動を正当化している。しかし、刑事司法と軍事力を結合させた今回の措置は、主権国家に対する武力介入として極めて異例なもので、その目的が犯罪対策に限定されると考えるのは困難だ。

 実際、トランプ大統領は、ベネズエラの石油資源管理への関与を通じて同国の経済再建を主導し、アメリカの戦略的利益を拡大する構想を公然と示している。世界最大級の確認原油埋蔵量を有し、反米政権の下で中国やロシアと密接な関係にあるベネズエラは、アメリカにとって地政学的・資源戦略的にきわめて重要な位置を占める。今回の軍事介入は、資源を基軸とした勢力圏再編の一環として理解すべきだろう。

 象徴的なのは、トランプがこの一連の政策を「ドンロー主義」と呼んだ点である。1823年にアメリカ第5代大統領のジェームス・モンローが打ち出したモンロー主義は、当初は西半球に対する欧州列強の介入を拒否することを主眼としたものだったが、その後、アメリカ自身の地域的優越を正当化する思想へと変遷していった経緯がある。トランプ大統領がモンロー主義に自身の名前を重ね合わせた「ドンロー主義」は、その歴史的論理を露骨な形で現代に持ち込むもので、「西半球における米国の優位性回復」という主張は、勢力圏政治の明示的な復活を意味する。

 しかし、トランプのドンロー主義はどうやら西半球にはとどまらなそうだ。同様の力学が中東にも及んでいるからだ。2025年末にイランで発生した反体制デモは、短期間で全土に拡大した。トランプ大統領はこれを繰り返し支持し、政権交代を促す姿勢を隠していない。今回のデモでは、1979年のイスラム原理主義革命以前のパーレビ王政の復活を求めるスローガンまでが登場し、元国王の息子でアメリカに亡命中のレザー・パーレビ氏も帰国の可能性に言及し始めている。全土でデモを起こすことで反米政権を転覆させた上で親米政権を樹立する政治工作は、アメリカのCIAが最も得意とする手法であり、今回も外部勢力が体制転換を後押しする典型的な「介入の政治」を想起させる。

 慶応義塾大学SFC教授の渡辺靖氏は、こうした動きを、これまでアメリカが護ってきた「力による現状変更を否定する」という国際秩序の規範を、アメリカ自身が解体しつつある過程と位置づける。ドンロー主義の登場によって、戦後秩序を支えてきた「西側」という理念的枠組みは空洞化し、19世紀的な勢力圏思考が前面に出てきているという。

 新年早々トランプ政権が発表した60を超える国際制度からの離脱も、この流れを象徴するものだ。2026年1月7日、トランプは国連機関や国際機関、国際条約など計66件からの脱退を指示する大統領令に署名した。国連気候変動枠組条約を含むこれらの枠組みは、戦後秩序を制度的に支えてきた中核であり、その放棄は単なる一時的な内向き志向では済まされない。

 アメリカを中心とする法の支配と国際協調を媒介とした第2次世界大戦後の国際秩序を、アメリカが先導して破壊し始めている。その結果、国際社会は、力と資源、地理的優位によって秩序が編成される19世紀型の世界へと引き戻されつつある。

 なぜアメリカは秩序の破壊者となることを選んだのか。この流れはトランプ政権が終わった後も続くものなのか。世界はアメリカ抜きで現在の秩序を守ることができるのか。そうした状況の下で、戦後の国際秩序の恩恵の最大の受益者の1つだった日本はどう立ち回るべきなのか。渡辺氏とともに、神保哲生と宮台真司がアメリカ発の秩序変動が持つ歴史的・思想的含意を徹底的に検証した。

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