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2023年09月09日公開

党派性の暴走で民主主義の崩壊が進むアメリカと日本への教訓

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1170回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2023年12月09日23時59分
(終了しました)

ゲスト

1965年静岡県生まれ。90年上智大学外国語学部卒業。同年中日新聞社入社。94年退職。97年ジョージタウン大学大学院政治学部修士課程修了。2007年メリーランド大学大学院政治学部博士課程修了。文教大学准教授などを経て14年より現職。20年より上智大学総合グローバル学部長、22年よりアメリカ学会会長を兼務。著書に『キャンセルカルチャー アメリカ、貶めあう社会』、共著に『アメリカ政治』など。

著書

概要

 アメリカ民主主義の根強い抵抗力や回復力を示す事例とされたウォーターゲート事件ペンタゴンペーパー事件も、もはや遠い昔の思い出になってしまったのだろうか。

 アメリカの政治が異常な事態に陥っている。今、アメリカでは元大統領が4度起訴されても、現職大統領の息子に対する特別検察官の捜査が始まっても、最高裁判所の判事の接待漬けが明らかになり深刻な利益相反の実態が露呈しても、さらに公正取引委員会巨大テック企業市場独占に制約を課そうと動いても、そのすべてが党派性の文脈に落とし込まれ、敵陣営からの陰謀だとして一蹴されるようになってしまった。対立陣営が主導権を握る政府に逮捕され起訴されても、痛くも痒くもない。なぜならば、それが党派性の文脈で捉えられることで自身の支持率はむしろ上昇し、結果的に権力の奪取を助けてくれる構造ができあがっているからだ。そのため、仮に現政権下で有罪判決を受けようが、そんなものは所詮陰謀に過ぎないのだから新しい政権の下で恩赦すればいいだけのことと受け止められているのだ。

 アメリカでは今や何が正義なのかがまったく分からない状態に陥っている。普通に考えれば明らかに犯罪が成立する場合でも、それを追求する側が政治的な意図で動いていて、これは陰謀なんだと言い切れば、支持者の大半はそれを信じ、むしろ支持率が上がる。そんな政治文化が今や常態化している。

 実際、トランプ元大統領は8月14日、2020年大統領選でのジョージア州での選挙不正をめぐって起訴された。トランプにとってはこれが4度目の起訴となる。元大統領が起訴されるというのは、もちろんアメリカ政治史上初めてのことであり、本来であれば未曾有の大事件だ。トランプは2024年の大統領選挙への出馬を表明しているが、これまでの常識では大統領候補が起訴されれば、大統領選挙はおろか政治生命にかかわる大きなスキャンダルにならなければおかしい。ところがトランプの支持率は起訴されるたびに上昇を繰り返し、今や現職のバイデンと肩を並べるまでになっている。

 そして、もし24年の大統領選挙でトランプが勝てば、トランプは自身を含め今回4つの事件で起訴された26人の仲間をすべて恩赦する意向だという。だから起訴されても有罪判決を受けても、まったく痛くも痒くもないどころか、そのおかげで支持率が上がり政権交代の可能性が上がるので、むしろこれを歓迎しているようにさえ見える。もしトランプが起訴されている4つの事件のすべてで有罪判決を受け、最高刑を受けた場合、その刑期は700年を超える。しかし、トランプは仮に自分が収監されても刑務所の中から大統領選には出馬する意向だという。合衆国憲法は有罪判決を受けた人物や服役中の人物が大統領になることを禁じてはいないからだ。おそらく憲法はそのような事態を想定していなかったに違いない。

 今、アメリカでは民主主義の行き過ぎで、国や州が2つの党派に分断され、例えば何度起訴されても共和党支持者のトランプ元大統領への支持率は常に5割をくだらない一方で、共和党支持者のバイデンに対する支持率はなんと2%にまで下がっている。つまり共和党支持者は無条件でトランプを信じ、無条件でバイデンの正当性を認めていないのだ。アメリカでここまで党派間の分断が進んだのは、奴隷制の是非をめぐりアメリカの南北が戦った南北戦争時以来と言われ、実際今のアメリカではいつ内戦が起きても不思議はないとまで指摘する識者もいる。

 分断が極度に進めば、社会正義の概念さえ失われてしまう。それが今、われわれがアメリカの現状からくみ取らなければならない教訓なのではないか。

 今回のマル激では、トランプ元大統領、バイデン大統領、最高裁判事のクラレンス・トーマス、連邦取引委員会(FTC)のリナ・カーン委員長の4人のキーパーソンを入口に、すべてが党派性の文脈に矮小化され、正義の定義を完全に失ってしまったかに見えるアメリカの現状を確認した上で、それが日本にとってどのような教訓を与えているかなどを、上智大学総合グローバル学部教授で稀代のアメリカウォッチャーの前嶋和弘氏と考えた。

(※番組中に使用したアメリカ大統領候補支持率のフリップに誤りがありましたので、修正の上、差し替えました。ここにお詫び申し上げます。2024年3月14日21時半)

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