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2025年10月25日公開

最高裁判決で違法とされた生活保護の引き下げは国の責任で一刻も早い正常化を

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1281回)

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完全版視聴期間 2026年01月25日23時59分
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ゲスト

弁護士、いのちのとりで裁判全国アクション事務局長
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1965年兵庫県生まれ。91年京都大学法学部卒業。95年大阪弁護士会登録。中道法律事務所を経て2003年あかり法律事務所を開設。06年より生活保護問題対策全国会議事務局長、16年よりいのちのとりで裁判全国アクション事務局長。共著に『これがホントの生活保護改革 「生活保護法」から「生活保障法」へ』など。

概要

 生活保護基準の引き下げが最高裁で違法と判断されたにもかかわらず、政府が判決内容を誠実に履行しないために、今も各地の裁判所で訴訟が続いている。

 全国で提訴されていた生活保護基準引き下げを問う裁判で、最高裁は今年6月、基準引き下げにいたった厚生労働大臣の判断には裁量権の範囲の逸脱、または濫用があり、生活保護法に違反しているとして、生活保護基準引き下げ処分を取り消す判決を出した。

 この裁判は、2013年に行われた生活保護基準の改定で、これまでにない平均6.5%、最大で10%の削減という大幅な削減が行われ、多くの受給者が窮乏したことを受けて、全国で1,000人を超える原告が引き下げは違法として国を訴えていた。そのうち名古屋と大阪の訴訟が最高裁に上告され、今年6月、最高裁は生活保護基準引き下げ処分を取り消す判決を下していた。

 しかし、最高裁判決が出たにもかかわらず、違法状態は続いており、その後も同様の裁判が各地で続いている。名古屋地裁・金沢支部、名古屋高裁(三重訴訟)では原告側が勝訴しているほか、仙台高裁(青森訴訟)と東京高裁(金沢訴訟)でも今後判決が下される予定だ。

 2013年の生活保護基準引き下げは、第2次安倍政権発足直後に行われた。しかし、この時の引き下げは、厚生労働省が政権に忖度して恣意的に引き下げたものだった。その前年から生活保護バッシングが起こり、当時野党だった自民党は政権公約の1つに生活保護の給付水準の10%削減を挙げていた。

 これまで生活保護基準の変更は社会保障審議会生活保護基準部会の検証を踏まえて行われてきたが、このときは厚労省が独断で削減に踏み切った。生活に必要な食費、光熱費として支給される生活扶助費は、これまで消費水準をもとに決められており、物価を考慮したことはなかったが、このときは「デフレ調整」という名目で、リーマンショック前後の3年間の物価下落から算出された。しかも、計算には総務省が出している一般的な消費者物価指数ではなく、厚労省が独自に計算した指数を用いており、テレビやパソコンの下落率を過大に評価するなど低所得世帯の消費実態とは合わない計算方法を用いたため、総務省の消費者物価指数の2倍以上の下落率となっていた。

 全国訴訟の事務局長で、日弁連で貧困問題対策に取り組む小久保哲郎弁護士は、当事者が声をあげられないことを見越して、もっとも弱い立場の人を標的にしていると憤る。引き下げを違法と断じられながら、官僚組織が原告側に謝罪もせずに司法を軽視した行動をとっていることは問題だと小久保氏は語る。

 確かに、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ための最低保障ラインを決めるのは難しい。現在、厚労省は最高裁判決後の対応をどうするか専門委員会を開き検討をしているが、当初、訴訟に加わった原告たちへの対応はきわめて不誠実だったという。一方で、来年度以降の生活保護基準自体の検討も始まっており、一刻も早く事態を収拾して違法状態を解消する必要がある。

 生活保護基準は、さまざまな社会保障制度と連動する。数字合わせのような恣意的な基準変更では制度の信頼自体も問われる。小久保氏は、当事者にスティグマを与えるような生活保護という用語ではなく、海外の制度などにあるように生活保障という考え方に変えるべきだと主張する。

 生活困窮の当事者に寄り添い続けてきた小久保氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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