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安倍政権の検証(4)

一貫して強者に優しく弱者に冷たい社会保障改革が行われた

マル激・トーク・オン・ディマンド マル激・トーク・オン・ディマンド (第1015回)

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公開日 2020年09月19日

ゲスト

東京大学名誉教授

1953年群馬県生まれ。76年東京大学経済学部卒業。81年同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。東京都立大学経済学部助教授、東京大学社会科学研究所助教授などを経て98年より東京大学社会科学研究所教授。2019年定年退任。著書に『企業中心社会を超えて 現代日本を〈ジェンダー〉で読む』、『生活保障のガバナンス ジェンダーとお金の流れで読み解く』など。

著書

概要

 安倍政権下の社会保障政策を一言で言い表すとすれば、このタイトルに尽きるだろう。問題は国民の間でそれが必ずしも広く認識されていないことなのではないか。

 以前、この番組で、「アベコベノミクス」という名言で安倍政権の経済政策を評した東大名誉教授の大沢真理氏は、安倍政権は給付抑制と負担増が徹底して行われた7年8カ月だったと指摘する。また、その中でも特に低所得層に対する負担増が顕著だった。実質賃金が低下するなかで、労働時間あたりの報酬額は先進国のなかで日本だけ伸びていない。社会保障関連の政策では、制度の持続可能性という言葉で給付抑制が図られてきた。

 税制についても、より格差を広げる形で制度改正が行われてきた。低所得層ほど負担増となる逆進性が強い消費税を5%から8%、そして10%へと増税する間に、個人所得税はむしろ累進性を緩和し、富裕層の税負担を軽くする税制改正が、継続的に行われてきた。その間、企業法人税も減税されている。富裕層と大企業の優遇は、この政権の常に一貫した政策方針なので、年表にまとめてみれば一目瞭然になるのだが、各年ごとの変化はそれほど大きくないため、ゆでガエルよろしく、個々人の負担がどれだけ増えているかに気づきにくい。昨今は、そのような長期的な視野に立った報道もほとんど見られなくなってしまった。

 真に経済成長を図るためには、まず何よりも貧困を削減し、低所得層の所得を底上げすることで家計消費の増大を図る必要がある。格差是正こそが成長につながるというのが、今やOECDでは共通の認識となっているが、安倍政権の経済政策はとうの昔に陳腐化している。富裕層を富ませばその恩恵が社会全体に滴り落ちてくるとされる「トリクルダウン理論」を未だに信望しているようだと、大沢氏は指摘する。

 また、安倍政権では官邸一強の弊害ともいうべき官僚機構のイエスマン化も、経済政策の決定過程に暗い影を投げかけている。内閣府は、毎年の予算編成の大きな方向性を示す「骨太の方針」を取りまとめる経済財政諮問会議に対し、「社会保障分野での安倍政権の成果」と銘打った資料を去年9月に提出しているが、これは正にタイトルが物語っているように、政権にとって都合のよいデータばかりを並べた広報資料以外の何物でもない。そのようなものを元に打ち出された予算の妥当性には大きな疑問符が付く。せめて「成果と課題」くらいにできなかったのだろうか。

 自助を強調する安倍政権の下では、公的な社会保障でカバーしきれない部分は、国民各々が自分で何とかすることが前提になっている。その証左の一つとして、福田康夫首相の下で設置された「社会保障国民会議」で、現行の社会保障制度には問題があることが指摘され、それを強化していく方法が議論され始めていたが、第二次安倍政権になってから、それまで同会議の大きなテーマだった「社会保障の機能強化」という言葉は、完全に会議の議題から消えてしまったと、大沢氏は指摘する。

 「国難」とまで呼ばれた少子高齢化についても、そのスピードを低下させる政策は打ち出されず、最新の数字では年間出生数は過去最少の90万人を切り、出生率も1.36にとどまっている。女性活躍、一億総活躍、全世代型社会保障と選挙のたびに次々に掲げられた方針も、その後その成果が検証されという話は聞こえてこない。

 安倍政権の検証第4回は社会保障と税をテーマに、大沢真理氏の独自のデータ分析を交えながら、大沢氏と社会学者・宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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