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2025年07月26日公開

自民党大敗と参政党躍進の背景にあるもの

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1268回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2025年10月26日00時00分
(あと87日14時間28分)

ゲスト

早稲田大学教育・総合科学学術院教授
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1971年東京都生まれ。94年早稲田大学政治経済学部卒業。2003年ロンドン大学ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで博士号取得。専門は比較政治学。北海道大学大学院法学研究科講師、成蹊大学教授などを経て23年より現職。成蹊大学名誉教授。著書に『首相の権力』、『議院内閣制』など。

著書

概要

 これは昨今の欧米で起きている「不安のポピュリズム」なのだろうか。それとも新しい政治の始まりなのだろうか。

 7月20日に投開票が行われた参院選では自民党が歴史的な大敗を喫し衆参両院で少数与党となる一方で、「日本人ファースト」を掲げる新興勢力の参政党が大躍進した。これは日本の戦後政治を牽引してきた自民党支配の終わりを意味するのか。また、今後ヨーロッパのように参政党に見られる右派ポピュリズムが日本でも台頭してくるのか。

 今回の選挙では何を措いても自民党の凋落ぶりが際立った。前回2022年の参院選から比例票を545万票も減らし、遂に参院でも少数与党となった。その一方で、参政党は566万票も得票を増やした。自民党が減らした票を上回る規模で参政党が新たな票を獲得している。

 参政党が支持を集めた背景について、比較政治論が専門で早稲田大学教育・総合科学学術院教授の高安健将氏は、「日本人ファースト」のスローガンが支持を集めたのは、人々の不安の現れだと指摘する。今、日本人の多くが将来不安や職の不安など様々な不安を抱えている。家族地域コミュニティの崩壊、郊外の空洞化により、「日本」以外に寄りかかるものがない人々が持つ不安に対して、SNSなどを通じてピンポイントで刺さるメッセージを繰り出す新しい手法が、参政党が特に若年層からの支持を集める大きな要因となったと見られる。

 今回参政党に加えて国民民主党が躍進した背景に、SNS戦略の巧みさが指摘される。実際、自民党や立憲民主党などと比べ、参政党や国民民主党がSNS、とりわけ短く切り出した動画を有効に使い、それが新聞テレビではなくネットを主たる情報源とする若年層の支持につながったことが、世論調査などでも明らかになっている。

 しかし、とは言え今回の選挙では他党もSNS戦略には力を入れていた。参政党や国民民主党の躍進は、単にSNSをうまく利用しただけでなく、将来不安や現状に不満を持つ若年層や現役世代のニーズを汲み取ったメッセージを多く用意し、それをSNSを使って積極的に発信したことが功を奏したと見ていいだろう。

 その一方で、自民党の主張する政策がことごとく若年層や現役世代からそっぽを向かれたことも明らかだった。出口調査の結果を見ると、自民党は高齢層の支持は依然としてそこそこ高いが、40代より下には至って不人気だった。自民党の支持層が高齢者に偏っているのは今に始まったことではないが、近年人口構成が次第に変化し、かつては「若年層」と呼ばれた世代が今や現役世代の中心になっている。自民党にとっては支持基盤の再構築が急務であることも明らかになった。

 また、衆参で過半数割れという歴史的大敗を喫したにもかかわらず、石破首相が早々に続投の意思を表明したことも、過去の日本の政治の常識とは一線を画する出来事だった。23日には読売新聞と毎日新聞が石破退陣を断定的に報じたが、石破首相はこれを一蹴し、続投の意欲をあらためて強調した。首相本人によると、自分から辞任の意向を表明したことも、仄めかしたことも一切ないという。読売と毎日の「スクープ」は明らかに首相を辞任に追い込む意図を持った「思惑記事」だった。

 これまでの永田町の常識では、選挙でこれだけ大敗し、読売新聞などの大手メディアが断定的に退陣を報じる号外まで出せば、首相は厭が応にも退任に追い込まれるのが常だった。しかし、かつてのように一部の大手メディアが党内の一部の勢力と結託して政局を作っていく古い政治報道も神通力を失っていることが、今回の選挙で明らかになった。そうした報道に反発して、SNS上では「#石破辞めるな」というハッシュタグが広がり、官邸前で首相続投を求めるデモまで行われているという。もはや政治報道の分野でもインターネットが既存メディアを完全に凌駕していることが、今回の選挙ではより顕著になった。

 また、今回の選挙では立憲民主党が自民党への反発の受け皿になれていないことも浮き彫りになった。1990年代の政治改革で日本は2大政党制を志向した選挙制度を作ったことになっていたが、前回の衆院選、そして今回の参院選はむしろ日本がより多党制に向かっていることを示した。これが混沌の政治になるか、熟議の政治となるかは、今後、当事者である政治家とそれを監視する市民にかかっていると言えるだろう。

 自民党の大敗と参政党の躍進は何を意味しているのか。この参院選で示された民意、とりわけ若年層や現役世代が抱える将来不安や不満とは何かなどについて、早稲田大学教育・総合科学学術院教授の高安健将氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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