日本が原発依存から脱却すべきこれだけの理由
原子力資料情報室事務局長
1979年兵庫県生まれ。2003年国際基督教大学卒業。16年法政大学大学院公共政策研究科修士課程修了。東京金融取引所勤務を経て12年より原子力資料情報室研究員。17年より現職。22年より経済産業省・原子力小委員会委員。共著に『検証 福島第一原発事故』、『原発災害・避難年表』など。
2011年の東日本大震災と福島第一原発事故から15年が経った。事故の影響は今なお続いているが、日本のエネルギー政策は再び原発活用へと大きく舵を切り始めている。政府は原発を「最大限に活用する」とする方針を打ち出し、今年1月には東京電力柏崎刈羽原発6号機が約14年ぶりに再稼働した。しかし、事故直後に発令された「原子力緊急事態宣言」は現在も解除されておらず、福島第一原発の事故対応は終わっていない。あの原発事故は今もまだ続いているのだ。
最大の課題は廃炉だ。福島第一原発には約880トンの燃料デブリが存在すると推定されているが、これまでに取り出されたのはわずか0.9グラムにすぎない。溶け落ちた燃料は炉内の構造物と混ざり合って固まり、強烈な放射線を放つため人が近づくこともできない。ロボットによる調査も放射線による故障が相次ぎ、内部の状況すら完全には把握できていないのが実情だ。政府と東京電力は2051年までの廃炉完了を掲げているが、その実現性には疑問の声も多い。
さらに、廃炉に伴って発生すると見込まれる放射性廃棄物は約780万トン。その処分場所は決まっていない。加えて、除染で発生した約1400万立方メートルの土壌も福島県内の中間貯蔵施設に保管されたままで、政府は2045年までに県外で最終処分するとしているものの、受け入れ先は見つかっていない。
事故から時間が経つにつれ、社会の記憶は薄れつつある。しかし今も2万人以上が避難生活を続けており、事故の後始末は終わっていない。一方で世界のエネルギー情勢を見ると、原子力の割合が低下する一方、太陽光や風力など再生可能エネルギーが急速に拡大している。こうした状況のなかで、日本はなぜ原発回帰へと向かおうとしているのか。
今月のセーブアースでは、福島第一原発の廃炉の現状と課題、膨大な放射性廃棄物の行き先、そして原発再稼働を進める日本のエネルギー政策の問題点について、原子力資料情報室事務局長の松久保肇氏と、環境ジャーナリストの井田徹治、キャスターの新井麻希が議論した。